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決闘にそなえて訓練しよう!

4日目


 学校の練習場にカランとまた折れた剣が落ちる。

 アベルたんが折れた剣を放り投げながら何も言わずにこちらを冷たい目で見てくる。


 うぅぅぅ。私の心も折れそうです…。


 昨日、アベルたんが私に求めたことは2つ。

 1つ目は物を強化する付加魔法を習得すること。

 もう1つは身体強化魔法を弱めてかけることができるようになること。

 つまり、聖女の力を使ったとバレない程度、ちょっと強いかな〜位に身体を強化させるということだ。

 体力のないアベルたんをシュタインさまと互角か少し弱い位に調節しろということらしい。微妙にセコいぞアベルたん。


 とりあえずといった形で2つ目の方を昨日からやってみてるけど、これが微妙に難しい。

 今まで使うか、使わないかでしか使ってこなっかったからだ。

 昨日はやっぱり強くかかりすぎて、何度やってもシュタインさまとの打ち合いの結果剣をボロボロにしてしまった。

 剣が折れるたび無言でこちらを見るアベルたんが怖すぎて、シュタインさまを見て堪能できない。悲しい。

 てか身体強化魔法を使ったアベルたんに少し押されてはいるけど、充分やり合えているシュタインさまはすごい。尊い。

 そんなこんなで昨日の夜には少しだけ強化することができるようになったけど、出力が未だ不安定。

 10がMAXだとするとアベルたんが求めているのが5で、今は2〜8くらいを行ったり来たりしている。


 それより問題は付加魔法だ。


 アベルたんの話だと、第一王子は王宮所蔵のオリハルコンの剣の使用許可申し出たようだ。

 それ国宝です。ガチすぎやしませんか??

 というわけで付加魔法が急務なのです。


 公爵家では鋼の伝説級の鍛治職人の剣は所有しているらしいけど、オリハルコンやミスリルの剣と当たったら強度的には豆腐と鉄ほどの差がある。

 というか、ミスリルやオリハルコンは希少すぎて、剣としてこの国に現存しているのはオリハルコン1本、ミスリル2本の計3本らしい。

 うち1本は王家所蔵、1本は教会が祭具として所蔵、1本は国境の高山の洞窟に封印されている。

 聞いた時はファンタジーぽくてテンションが上がった。


 アベルたんが探してきた文献によると、聖女によって付加魔法がかけられた金属は魔法金属と呼ばれてミスリル、オリハルコンと並ぶ強度になるらしいが、実際に強度を試した人はいないようだ。

 魔法金属の剣も現存していて教会に2本保管されているらしい。


 そしてアベルたんはこれ見よがしに身体強化魔法が強めにかかった時にシュタインさまを積極的に攻撃したりして能力の発現をねらってるけど、いまだ発現せず。


 そして日が傾いてきた…。



 物思いに耽ってると顔の横に剣が刺さる。


「ひいいいいいいいいい!」


「考え事とは余裕だな。どうするんだ?もう少しで日暮れだぞ?

 オレにバカ王子に負けろというのか?

 もう、いっそのことお前が王子と戦うか?」


「なんかもう、そっちの方が楽な気が…」


「女に代わりに戦わせたと知られればオレの恥になるだろうが!!」


「えぇー、アベルたんが自分で言ったのにー。」


 シュタインさまも近づいてきてこちらに声を掛ける。


「アベル様、いくらミモザ嬢の身体強化魔法を使っているといってもお疲れでしょう。

 明日にそなえてそろそろ訓練はお開きにしましょう。」


「…わかりました。練習をやめにするのは構いませんが、今夜は3人で語らいませんか?

 少々気持ちが昂ってしまっていて、話をして気分を落ち着けたいのです。」


「かまいません。夜に女性の部屋に行くのもあれですから、質素な部屋ですが私の部屋でいかがですか?」


「はい、喜んで!」


「…かまいません。」


「では着替えつつ部屋を片付けますね。あと1時間くらいしたら大丈夫です。

 アベル様もミモザ嬢も汗をかいていると思いますし、楽な服にでも着替えて来て下さい。


「はい!!!!!」


 やった!推しの部屋だ。

 シャッターチャンスや!

 ここのHDに永久保存してやる!


「おい、分かってるだろうな?これがラストチャンスだ。」


「…はい。」


 浮かれた気分が一気に沈む。

 今夜で何とかなるだろうか?







 アベルたんと一緒に男子寮に入り、教えてもらっていた部屋に行く。


 ドアをノックすると返事とともにドアが内側から開かれる。



 下ろされた漆黒の髪と洗いざらしのシャツ、部屋着のシュタインさま尊い…!!


 鼻の奥に不穏な気配を感じて手で押さえる。

 いかん、ここで鼻血を出して強制送還を食らいたくはない。

 鼻を押さえながらシュタインさまをガン見する私をアベルたんは相変わらず冷たい目で見てくる。


「失礼する。」


 さっとアベルたんが中にはいったので、それに続く。


「しっ、しっ、失礼しますっ!!」


 あ、サッカー部の部室と同じ匂いがする…。

 良い匂いがするかと思ったけど、そこは運動してる男子ですね…。

 でもこれはこれでアリです!!!

 自分のストライクゾーンの広さに自分でびっくりしつつ、匂いを堪能する。

 これがシュタインさまの匂い…。


「そこの椅子に座って下さい。」


 ベッドの脇に小さめの丸テーブルと、それを囲むようにスツールがおいてある。


「これ、持ってきました。」

 アベルたんが徐に持っていた袋からビンをとりだし、テーブルの上にどんと置く。


「…もしかしてお酒ですか…?」


「また、高そうなお酒ですね。」


 シュタインさまはお酒の高級感に関心しつつも、何事もないようにグラスを用意する。


 えええええええ


「アベルたん、私たち未成年!」


「?ミモザ嬢もシュタイン殿も18歳で、僕は17歳だから何も問題ないだろう?」


そうだった!この国では16歳から飲酒できる上に、この体は18歳だった!


「もしかして酒が初めてか?」


「…はい。」


 私としての意識が戻る前も飲んだ記憶はない。

 そもそも貴族は16歳になったら普通に飲むようになるが、平民では未婚の女性が飲酒するのははしたないとされていた。

 その意識の違いもあったのかもしれない。


「…めずらしいですね。

 このお酒はクセがなくて飲みやすいと思うので初めてでもおすすめですよ。」


 映画でみたようなショットグラスにとろりとした琥珀色の液体が注がれる。


「明日のアベル様の健闘を願って、乾杯。」


 シュタインさまがそう言ってグラスを掲げる。

 それにならうように私とアベルたんもグラスを掲げる。


「「乾杯」」


 おそるおそる口をつけてみると甘い芳香とともに消毒液のようなアルコール臭さが鼻に抜ける。

 次いで口と喉にカァッと熱いような刺激を感じる。


「くはあっあ…ごふっ」


 思わず変な声が出て口を抑える。

 アルコール、強くないですか?


「ぶはっ、お前、なんだそれ。あははは。」


「ふっ、ふふ、失礼しましたっ。ふふっ。」


「ふっ、2人とも笑うなんてひどいです!こっちは死ぬかと思ったのに!!」


 推しが私の失態を見て笑ってる。尊いけど、立ち直れない…。


 しょぼんとして俯いてると、私のグラスをシュタインさまがとって、水と切ったレモンを入れてくれた。


「こうすると飲みやすくなるんですよ。」


 思わずジト目でシュタイン様を見てしまう。

 こちとらアルコール初心者やで!


 すると、突然シュタインさまが私のグラスをとって口をつけて飲む。


 え?それって間接キスですよね!?


「うん、甘く感じる。飲み慣れない女性でも大丈夫ですよ。」


 そういってシュタインさまが口をつけたグラスをこちらに渡す。


 え?間接キスセカンドシーズンですか???

 私がYOUの間接キスを頂いてもいいんですか???


 グラスを両手で握りしめるけれど顔に熱が集まってきて動けない。


 唾をごくりと飲んで覚悟を決める。

 初めての間接キスが推しとなんて夢のようじゃないか。

 さようなら、私のファーストキス!!


 口を付けようとグラスを口に近づけると、アベルたんが肘を腕にぶつけてくる。


「えっ?」

 シュタインさまのキスグラスが!!!!


 グラスの表面の水滴で手が滑ってグラスが飛ぶ。


 ええええええええええええええ


 グラスの落ちる軌道がやたらゆっくりに見えた…。



 ゴトンと鈍い音を立てて床に落ちる。


 わたしのファーストキスが…!!!


「すまない、ミモザ嬢。肘が滑ってしまった。グラスが割れなかったようで何よりだ。」


 なにその、棒読み!

 うぅ、私のファーストキスが無惨な姿に。


「服にこぼれませんでしたか?グラスを洗ってきますね。」


 そういってシュタインさまが布巾で床を拭きながらグラスを持ち上げる。


「あれ?」


「?どうしました?シュタインどの?」


「何かこのグラスやたら重いような…?」


「…ちょっとそのグラスを貸して下さい。

 シュタイン殿、ちょっと下の厨房から果実水をもらってきてもらってもいいですか?」


「?はい、構いませんが。」


 シュタインさまが不思議そうな顔をして部屋から出ていく。

 ううぅ、シュタインさまとのファーストキス…。


 アベルたんは急にグラスを持ち上げると床に強く叩きつけた。

 ごすっとすごい音がする。


「アベルたん!!そこまで私の邪魔しなくても!!!」


「?何を言っている?見ろ、成功してるぞ。」


「え?」


 そこを見るとすごい勢いで床に叩きつけられたにも関わらず形をとどめているグラスが。


「もしかして…」


 手を広げるとそこには紫の雫型の宝石が。


「やったーーーーー!これでミッションコンプリート!!!」


「よし、これで明日は王子をボコボコに!!!」




 お祭りモードの私たちに、果実水を持って戻ってきたシュタインさまが不思議な顔をして見ている。


 うん、やっぱりお酒よりもジュースがうまい!!

小春は恋愛偏差値が低いので間接キスもファーストキスになります。

対してシュタインは遠征とかもある騎士団の生活に慣れているので口をつけるものの共有に関しての意識が低いです。

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