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Side アベル3

「ここが姉様の言うイベントの場所なのですね。」


「ええ、この奥のスペースで明日の朝まで過ごしてもらうわ。

 今から侯爵の別荘に帰って、騎士たちに捜索してもらいましょう。

 ここの洞窟と言わなければ朝まで捜索はかかると思うわ。

 ヒントとして小春ちゃんのハンカチをこの近くに置いておきましょう。

 これで捜索の人たちも気づくわ。」


 出口に向かって進み姉様に慌ててついていく。

 あのピンクは聖女の資格があるといえども、なかなかに頼りない。

 

 後ろ髪を引かれる思いで洞窟の出口に向かって進む。


「…アベルは小春ちゃんのことが心配?」


「…心配というか、ミモザ嬢は頼りない部分もあるので、あの優しいミヒャエル殿と2人でうまく聖女の力を覚醒させられるのかが気掛かりで。」


「大丈夫よ。だって小春ちゃんはシナリオのミモザと同じで元気で一生懸命で少し抜けているキャラクターだもの。

 ミヒャエルも幼少期から私が関わらなかったせいか、シナリオ通りの人物だし、小春ちゃんのそういう性格だからこそ男の人が助けてあげちゃいたくなるんじゃないかしら?

 きっと2人でうまく協力できているわ。

 小春ちゃんを信じましょう。」


「…そういうものでしょうか…。」


「…アベル、私たちに今できることは何もないわ。

 もしかしてアベルは小春ちゃんの事が好きなのかしら?

 何か惹かれるものがあるんじゃない?」


「そんなことはありません。姉様のような極上の女性を見ていたせいか、なかなか僕の眼鏡に適う女性がいなくて困っているところです。」


「うふふ。即答ね。」




 侯爵家の別荘に戻ると出迎えた侯爵家の侍従長にミヒャエルとミモザの2人と砂浜ではぐれたことを伝える。

 侍従長はミヒャエルは土地勘があるので大丈夫と言っていたが、あと2時間もすれば日も暮れるし、護衛の騎士を探しに出すなど対応をするだろう。


「じゃあ、アベル、部屋に戻りましょう。

 もしかしたら捜索で今夜は眠れないかもしれないし、今のうちに仮眠してしまいましょう。」


「はい、ローザス姉様。おやすみなさい。」


「ええ、おやすみ、アベル。」


 姉様と別れたあと、自分に割り当てられた部屋に向かう。

 白を基調とした女性が好みそうなインテリアの部屋は何だか落ち着かない。

 それでもベッドに横になると、慣れない岩場を歩いた疲れか眠気が襲ってきた。


 今ごろあのピンク頭は無事だろうか。

 変な所に落ちてピーピー騒いでいるだろうな。

 仕方ないから明日は捜索に加わって助けてやろう。


 そんな事を思いながら眠りについた。







 「…ミ…さま、……で!」


 階下から聞こえる騒がしい声に意識が浮上する。

 窓を見ると既に月が昇っていた。


 コンソールテーブルの上の時計を見ると、別荘に戻ってから4時間は経っている。

 思った以上に寝てしまっていたようだ。

 もしかしたらそろそろ帰ってこないミヒャエルに使用人達が騒ぎ始めたのだろうか?


 様子を見ようと身なりを軽く整えて1階に向かう。

 1階のロビーには予想外の人物が使用人たちに囲まれ立っていた。


「あ、アベル殿。無事に帰られてたようで何よりです。」


「あ、アベルた…さま。無事手に入れましたよ!」


 にこやかに手を振る緑髪とぶんぶんと忙しなく手を振るピンク頭にぎょっとする。

 ちょっとまて、おまえら結構深い穴に落ちたぞ。

 姉様の言うイベントをこなして出てくるには早すぎる!


「えるるんのゴーレム、すごく楽しかったです!また乗りたいなぁ。」


「こはるんのナイスサポートのおかげだよ。また一緒にあそびたいね。」


「ミヒャエル様、楽しまれたご様子なのはけっこうですが、遅くなられるときはご連絡頂かないと、心配してしまいます。」


「いやあ、ごめんて。こはるんといるのが楽しくてついね。」


 えるるんにこはるんだぁ?ふざけた名前で呼び合いやあがって、えらく打ち解けてるじゃないか。

 てか土魔法のゴーレムは高位魔法だぞ!?ミヒャエルは使えたのか!?

 それに転生前の名前で呼ばせるとは、あの緑にどこまで話したんだ!


 つっこみ所が多すぎて処理しきれない。

 ピンク頭を捕まえて状況を確認しないと。



 ピンク頭にツカツカと歩み寄り腕を取る。


「ミモザ嬢、心配しましたよ。

 お腹も空いたでしょう。

 僕の部屋に軽食を用意して貰いますので、姉様と一緒にお話を聞いても良いですか?」


「えっ、アベルたん、待って。」


 ちょっと強引に腕をひっぱり自分の部屋に向かう。

 姉様も呼んでこのバカピンクに状況を確認しないと…


「アベル殿、ちょっと待って頂きたい。」


 肩を急にグイッとつかまれ、驚いて後ろを振り向く。


「こはるんは僕と夕食の約束をしたのが先約だよ。

 順番は守って貰いたいな。

 それに女性をそんなふうに乱暴に扱うものではないよ。」


「えるるん…。」


 ピンク頭がキラキラした目でミヒャエルを見る。

 お前、状況わかってるのか?


「アベルたんごめんね。えるるんと約束しちゃったから、明日詳しく話すね。」


 やたら楽しそうにミヒャエルと去っていく姿に呆然とする。

 一拍遅れて怒りが込み上げてくる。


 人が少し心配してやったのに何様のつもりだ!!

 というか俺と姉様が協力してやったんだから、こっちへの報告が普通に考えて優先させるだろう?


 ピンク頭の非常識な行動におさまらないイライラを抱え、でも特になす事もなく俺は部屋へ戻った。

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