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洞窟に誘導しよう!

「あら、あちらの岩場に横穴があるわ。

 何かいるかしら?気になるし行ってみましょう?」


「そっちは危ない場所も…


「うわぁ、探検みたいでドキドキしますね。楽しそう!」


「姉様、そんなに急がなくても岩場は逃げて行きませんよ。ふふっ。」


「ちょ…待ってください!」



 いつメン3人で無理やり力技でイベント発生場所の洞窟の近くまで来た。

 えるるんの示す人気の散歩ルートを無視して3人とも笑顔での強行突破である。

 さっきからえるるんはあたふたしっ放しだ。本当ごめん。


 心の中で謝りながら、沖縄のような白い砂浜に急に見えた岩場へと近づく。

 観光地のようなそこまでの砂浜と違い、そこだけ急にごつごつしている。

 そのごつごつした岩に隠れるようにして人が通れるくらいの穴が空いている。

 砂浜を普通に歩いている分には死角になる位置で、知ってなければここに穴があるなんて分からない。さすが友梨愛さんだ。


「けっこう奥までありそうですね。こんな場所に洞窟があったなんて、知りませんでした。」

 ミヒャエルは不思議そうに洞窟に近づいて中を覗き込む。

 中は暗くて奥行きが全然見えない。


「ちょっと中に入ってみますか?」

 アベルたんが手のひらにテニスボールくらいの炎を灯す。光源にするつもりだろう。火魔法は本当便利である。


「確かに興味深いけど、女性を置いていく訳にもいかないし…」


「あら、ミヒャエル。私たちを随分甘くみているのね。

 女といえども体力も度胸もありますのよ。

 魔法だって使えるしなおさらですわ。

 丁度歩きやすい靴で来たことだし、中を覗いて行きましょう。

 危うくなったらすぐ引き返せばいいのよ。」


「そうですよ、え…ミヒャエル様!

 下町育ちの体力を舐めないで下さい。」


「いや、何がいるかわからないし、女性を連れて行くのは危険では…」


「大丈夫ですよ、ミヒャエル殿。僕もいますし、いざという時は姉様は守りますよ。」


 …私のことは守ってくれないんですね。

 ブレないアベルたんの姿勢はいっそ清々しいです。


「じゃあ火魔法の使える僕が先に入って行きますね。はぐれると怖いので姉様は僕の手を掴んでて下さい。」


 えるるんの返事を聞く前に手に火を灯したアベルたんが先頭に立って洞窟に入っていく。

 アベルたんの影に隠れるように手を繋いだ友梨愛さんがアベルたんの後に続く。


「仕方ありませんね。ローザスは活発な女性ですし、止めても聞かないでしょう。

 それでは我々も続きますか?」


 えるるんが当たり前のように手を差し伸べてくる。優しい。癒される。


 えるるんの手を取ってからハタと気づく。

 さっき馬車から降りるときは絵に描いたようなシチュエーションに興奮して気づかなかったけど、私いま、イケメンと手をつないでるーーーー!

 気づいてしまったらもうダメで、一気に顔に熱が集まる。

 今さら手を離すのもおかしいし、どうしよう。


 混乱する私に気づかずえるるんは洞窟の中に踏み込み、私も引っ張られるままそこに続く。


 イケメンと手を繋いでることに緊張したのは一瞬で、洞窟に入るとむわっとした匂いにびっくりする。

 カビのような匂いと何かの生き物の排泄物らしき匂い。

 初めて嗅ぐ匂いに混乱する。


 え?なに?洞窟ってこんなに臭いの??

 男2人は平然としていて、友梨愛さんは口許をハンカチで抑えているがびっくりした様子はない。

 え?洞窟は臭いってもしかして常識ですか?


 異世界に転生しといて何だけど、洞窟という想定外の異世界にクラクラする。

 額に脂汗が滲む。


「ミモザ嬢、どうしました?」

 えるるんが心配そうにこちらをみてくる。

 これは私のためのイベントだ。アベルたんも友梨愛さんも巻き込んでいる以上後には引けない!

 気を取り直して深呼吸しようとするが、カビのような臭いが口に広がりむせてしまう。

「ゲホッゴホッ」


「大丈夫ですか!?空気が悪いのかもしれません、外に出ましょう。」


「だ、大丈夫です…。少しむせただけで…。」


 大丈夫、口から少しずつ息をして、臭いを感じないようにする。


「本当に大丈夫ですか?涙目になってますよ。」


「本当に大丈夫です!!ちょっと暗闇が怖かっただけです!行きましょう!」


「あんまり大丈夫じゃないですよね…ってうわっ」


 えるるんを強引に引っ張るようにしてずんずん奥に進んでいく。

 先を行くアベルたんが苦虫を噛み潰したような顔で時々こちらを振り返るが、それどころではない。臭いを感じない呼吸に集中してるんだ!


 5分ほど奥に向かって歩くと外の光は全く届かなくなった。

 足元の土は湿り気が増して来てぬかるんでいる。

 臭いにはまだ慣れない。むしろカビ臭さが増したようにも思える。


 前を進む2人の歩みが遅くなって友梨愛さんに触れるほど近くなったとき、急に足に何かが当たり、ぬかるんだ足元がずるっと滑る。


「きゃあっ」

 軽く転んで終わりかと思ったら足元が滑り止まらない。

 あれ?ここもしかして下方向に何かの穴がある?


「ミモザ嬢っ!」

 手を繋いでたえるるんが踏ん張って手をがっしりつかんでくれる。


「えるるんっ…」


「大丈夫ですか?今引き上げますっ」

 半分すべりおちた体が引き上げられる。ありがたい…。


「ミモザさん大丈夫?私も手伝うわ…、きゃっ」

 もう少しで引き上げられるというところで友梨愛さんがつまずいて、えるるんに体当たりのような形でぶつかった。


「うわっ」

「ええーーーーーー!」


 えるるんの健闘虚しく私とえるるんはそのまま穴らしきものに滑り落ちていく。


 えるるんの肩越しににこにこしながら小さく手を振る友梨愛さんと、笑顔を浮かべたアベルたんが見えた。


 お前ら、確信犯だな!もしかしてこの穴がイベント発生ポイントなのか!!

 てか落ちても無事帰れるの!??


 

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