88 式の後の食事会(前編)
(Side 由奈)
暁斗君からの連絡で胡桃ちゃんの過去が判明し、今後も支える事をひなたちゃんと一緒に確認した所で丁度食事会が始まったそうだ。
そこに…
「ザックさん経由で話を聞きました。 胡桃ちゃんにそんな過去があったなんて…」
「本当に私達、再会に浮かれてて…。 なんて謝罪すればいいのか…」
「いや、こちらこそごめんね。 せっかくの結婚式なのに…」
食事会開始直後、ザッケローニさんの嫁となった三人の内の二人、奥井 瑠奈さんと九条 柚子さんが来た。
七絵ちゃん達との再会に浮かれて胡桃ちゃんの心の淀みに気付かなかったことを謝罪していた。
こっちも折角の結婚式なのにこんな形になってしまって申し訳ない感じだ。
「胡桃ちゃんもごめんね、もっと私たちが気付いてあげれば…」
「ん…、もう、だいじょうぶ」
私が抱きかかえている胡桃ちゃんに謝る柚子さん。
胡桃ちゃんは落ち着いた様子でちゃんと受け止めていた。
「しかし、直に見ててもそのドレス似合ってるね」
「そうだね。 アイリスちゃんも綺麗っていってたね」
「あ、あはは…。 ありがとうございます」
二人が身にまとっているウェディングドレスを見て私とひなたちゃんは率直な感想を述べた。
特に瑠奈さんは照れていたみたい。
「そういえば、七絵から聞いたんですが、来宮さんは暁斗さんって人の嫁になってるんですか?」
「そうだね。 私とひなたちゃん…後、会場にいるアイリスちゃんとクリスタちゃんもかな? 結構な大所帯だよ」
「そうなんですか…」
色々あってすっかり忘れたけど、クリスタちゃんも正式に暁斗君のお嫁さんとして過ごすことが認められたみたい。
今まで表向きは従者としてだったから、よかったとは思う。
で、瑠奈さんからの話に胡桃ちゃんは恥ずかしいのか私の胸に顔を埋めていた。
まぁ、理由的には仕方がないのかな?
「いつか胡桃ちゃんのドレス姿見せてほしいな」
「ん…」
柚子さんが胡桃ちゃんにいつかドレスを着てほしい的なお願いをしていた。
胡桃ちゃんも頷いたという事は、いつかはドレスを着るという事だろうね。
私もひなたちゃんも着たいと言う願望はあるが、ある程度の解決をしてからになる。
追手だったりあの二人の脱走勇者が私たちに絡む可能性もあったり等で。
「せっかくですし、暁斗さんに会わせていただけないでしょうか?」
「いいよ。 七絵ちゃんもそこにいるみたいだし、行こうか」
そう言って、胡桃ちゃんを抱えたまま暁斗君がいる部屋に案内することにした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
(Side 暁斗)
「あれ、早速食べてる?」
「にぃ、七絵、ずるい…」
「あ、わ、悪い…」
「お、お帰りなさい…」
出された料理に我慢できず七絵と先に食べていたタイミングで由奈達が戻ってきた。
胡桃もそれを見てしまい、ふてくされたので何とも言えない気持ちになった。
七絵も申し訳なさそうに苦笑いを浮かべている。
「ごめんな、胡桃。 料理のラインナップに我慢できなかったんだ」
「抱っこしてくれたら…ゆるす」
「了解したよ、胡桃姫」
俺は彼女の要求に応えた。
由奈から俺に抱っこされる形だが胡桃の機嫌はこれで戻ったようだ。
俺の顔に頬ずりしており、なかなか可愛い。
「ホントに胡桃ちゃん、好き好きオーラ出してますね」
「君は…?」
「初めまして。 九条 柚子です」
「私は奥井 瑠奈と申します。 よろしくお願いします」
「ああ、君達がザッケローニさんの嫁になった三人の内の二人か。 俺は佐々木 暁斗、よろしく。 後、折角の結婚式なのに申し訳なかった」
「いえいえ、私達も七絵との再会に浮かれて、来宮さんの事を考えてなかったので」
なかなか真面目でしっかりしているなぁ。
無理やり安川のグループに入れさせられた経験もあったからかも知れないが、なんだかんだで胡桃を気にしていたようだ。
「もう一人は?」
「春菜ちゃんは、アイリスさんとクリスタさんとのお話に参加してますね。 それが終わればこっちに来ますよ」
「なるほど…。 お、胡桃はアレが食べたいのか?」
「ん…っ」
「微笑ましいですねぇ」
胡桃が食べたいものをスプーンで掬い、それを食べさせる光景に二人は微笑ましく見ていた。
「それじゃ私たちは会場に行くよ。 アイリスちゃんとクリスタちゃんがこっちに来るから」
「分かった。 ザッケローニさんに挨拶するんだぞ」
「うん、それじゃ」
「あ、そろそろ私も会場に行きます」
そう言って、ひなたと由奈は会場に向かう。
七絵も慌てて会場に向かって行った。
程なくして、アイリスとクリスタがこっちにやってきた。
食事会もそろそろ大詰めとなっていた時間帯だった。
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