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妹と妹

「『神殺し』…?」


 カヤミが我に返り、絞り出すように声に出した。


「あぁ、そうだ。ちょっと神をぶった斬りたくてな。『神鉄』は俺が採ってくるし、この通り『神火』は俺が用意出来る。だからカヤミ、『神殺し』の刀を打ってくれ」


「はい?」


「そうか! やってくれるか! いやぁ、二つ返事とは有難いなぁ」


「誰が打つって言ったのよ!」


「主様、今のを『了承(はい)』と受け取るのは、ちょっと苦しいかと……」


「くっ! ノリでいけるかと思ったが、駄目か!」


「お前さん……脳みそまで筋肉か?」


「「「正解です」」」


「やかましいわ!」


 俺たちが騒いでいると、カヤミは何も言わずに出て行ってしまった。


「騒ぎすぎたかな?」


「かといって、あなたは静かに何て出来ないんでしょ?」


「まぁ、そうだな。俺は、暗いのは嫌いだからな」


 俺はカヤミが出て行った扉を眺めながら、エディスの問い掛けに応えた。


「なら、あの人()私達と同じ様に、照らしてあげてください」


 セアラが優しく微笑みながら、俺に告げた。




「いきなりなんなの!? あの男は!」


 私は、初心者装備の癖して堂々と『神鉄』を採ってくると言い放ったあの男の事を考えながら、鍛冶場に向かった。


「何が『神殺し』よ……そんなの出来るわけないじゃない」



『初代』『刀工』が『神鉄』を『獄炎』で鍛えて打った『神の刀』



 世間一般では喪失したとされている『神の刀』は、代々の『刀工』が受け継いでいる刀だ。正に、その刀を持つことが『刀工』の証であり、その刀を超える事こそが代々の『刀工』の夢なのだ。


 あにぃは、その偉業に果敢に挑んだ結果、一握りの神鉄を私に渡して逝ってしまった。


「あにぃに出来なかった事が、私に出来るわけないじゃない」


「そんなのやってみなきゃ、わからんだろうに」


「な!?」


 私は突然声が聞こえてきて、驚き振り向くと、鍛冶場の入り口にさっきの男が立っていた。


「勝手に、鍛冶場に入るな!」


「いやいや、まだ入ってないだろ?」


 確かによく見ると、男は出入り口の外側に立っていた。


「屁理屈を言って……何の用!」


「そう、きゃんきゃん吠えるなよ。さっき言ったのは冗談じゃないってのを、きちんと伝えに来たんだよ。あそこじゃ騒いでいるうちに、あんたが出て行っちまったからな」


「ふん! あんたみたいな初心者に、何が出来るって言うのよ。どうせ、さっきの女の子達の前で格好つけたかっただけでなんでしょ? 口だけの男が、私は一番嫌いなのよ」


「まぁ、確かにこれ(革鎧)()を出発した時の選別だがな。あんまりそっちも、見た目で判断してると程度が知れるぞ?」


「はぁ!? なんですって!」


 私は完全に頭に来て、一発ぶん殴ってやろうと男向かって歩き出した。


 すると、男は逃げた(・・・)


「は? 何で逃げるのよ! 殴らせなさいよ!」


「いやいやいや! やっぱり、そうだったか! この世界の(・・・)女は、何でこんなに煽り耐性がないんだよ!」


「あんたが、先に喧嘩売ってきたんでしょうが! 男なら、黙って殴られなさい!」


「確かに、若干は言い返したが、元はと言えばそっちが先に煽ってきただろうが! それにな、手にハンマー持って近づいてきたら、誰でも逃げるわ!」


 男はそう言いながら、追いつくかギリギリを保ちながら、私の前を走って逃げる。


「おちょくってんの!? さっさと止まって殴られるか、さっさと追いつかれて、殴られるかしなさいよ!」


「どんだけ、殴りたいんだよ! 魔物じゃあるまいし、言葉を使え言葉を!」


「誰がゴブリンよ! あんた全ての女性に対し、喧嘩売ったわね!」


「どんな耳してるんだ! そこまで言ってねぇだろ!」


 その男は、そんな事を言いながら、暫く逃げ回っていると急に速度を落とした。


「やっと殴られる気になったのね。さぁ、行くわ……よ……あれ? ここは、霊峰の麓の入り口……」


 私の様子を見ていた男が、苦笑していた。


「まさか本当に、ここまで付いてくるとは思わなかったぞ。途中で気づくと思ったんだが、どんだけ俺の頭しか見てなかったんだよ……」


「……五月蝿い。何でここに来たのよ」


「どうしても、俺にはあんたの力が必要なんだよ。冗談でも何でもなく、俺は悪神に喧嘩を売っている。どうしてもあのクソヤロウを、俺は斬らなきゃならない」


 男は一転して、真剣な眼差しで私を真っ直ぐ見て、そんな出来ない事を言う。


「あんた、頭大丈夫? 仮にそれが、本当だとしてもそんなの無理に決まってるじゃない。悪神なんて、そもそもいるかどうかも分からない存在を斬るだなんて……」


「悪神はいるさ。少なくとも、俺の大事な仲間を泣かしてやがったクソヤロウだ」


 男は、明らかな怒りの空気を纏いながら言い放つ。


「……私には、関係ないわ。こんな所で何をしたかったか、知らないけど。あの山に私は、何も感じない。それじゃあ、私は戻るわ。次舐めた事を言ったら、試し斬りの素材にしてやるから」


 私は、霊峰に背を向け村へと戻る道を、引き返した。




「何も感じないなら、何でそんなに悔しそうで怒りに満ちた目をするんだ……分かりやすいんだよ」


 俺は、一人霊峰の麓にある山道の入り口に立ちながら、遠くなるカヤミの背中に向かって呟いた。


 俺は、その後も少し霊峰を眺めて立っていた。すると、予期せぬ再会を果たすことになった。誰かが近づいて来た気配感じ振り返ると、あの(・・)女騎士が歩いてきていた。


「げっ! 何でここに!」


「マスター、もう忘れたんですか? ここに来る途中に調子にのって、『漆黒の騎士(ジェットブラック)』になってたでしょう」


「……そうだった」


 あちら(ディアナ)も俺に気づいたらしく、近づいて来るにつれ顔が険しくなって行く。


「貴様、よくもまた私の前に姿を現せられたものだな」


「いやいやいや、今そっち(ディアナ)からこっちに歩いてきたじゃねぇか」


「ふん! 屁理屈を言いおって」


「なに? 最近俺ってG(黒い悪魔)並みに嫌われるんだけど……そろそろ泣くよ?」


 俺は、二人続けての仕打ちに心を折られそうになっていると、ディアナが口を開く。


「なぜ偽物が、こんな所にいるのだ?」


「おまけにさっきから、お前とか貴様とか偽物とか……俺にはヤナって言う名前があってだな」


「ごちゃごちゃ五月蝿い! またここにいらっしゃるであろうジェット様の名を、騙ろうと言うのなら……今から斬ってやる」


「はぁ……疲れる……ここには、自分の刀を打ってもらいに来てるんだよ」


 ヤナビから『自業自得です』と聴こえてくるが、絶対無視だ!


「ほう、まだ駆け出しであるのにも関わらず、自分専用の武器を得ようとするとは、中々意気込みだけはあるじゃないか」


 そう言いながら、ディアナは霊峰を見つめていた。


「あのな、だから俺はBランクの冒険者……」


「あの霊峰には、氷雪竜が巣食うのだ。度々配下の竜達が、山から飛び立ち被害をもたらす」


「いや……訊けよ……しかも、話がいきなり芝居がかりやがって……お前は劇団員か……」


 俺は、いきなり自分の世界に入りだすディアナに呆れながら、茶化すと斬られそうなので、黙って話を聞く。


「私の兄が率いる討伐隊がその竜の被害を止めるべく氷雪竜に挑み、そして死んだのだ」


「結構重いな、おい……それで、お前は敵討ちに挑みに来たのか?」


 俺がそう言うと、ディアナは珍しく卑屈な笑みを浮かべた。


「はは、兄が出来なかった事を、私ごときが出来るはずが無いだろう。兄は、伯爵様に仕えていなければ、騎士国において聖騎士(パラディン)になれたかもしれないと言われたほどの騎士だったのだ……私など、挑む事すらおこがましい」


 そう言いながら、硬く拳を握りながら霊峰を睨みつけるディアナの眼差しは、明らかに悔しさと怒りが混じり合った目だった。


「お前もかよ……」


「何を言っているのだ? まぁいい、二度とジェット様の名を語るんじゃ無いぞ」


 ディアナは、そう言って立ち去ろうとしたので、念のため尋ねた。


「ちなみに、なぜお前はここに?」


「ロイド伯爵様御一家が、闘剣大会にお越しになるからな。その為の先見隊として、村に異常が無いか来たのだ」


本当(本音)は?」


漆黒の騎士(ジェットブラック)様の捜索だ!」


 そう拳を握り締め、力強く宣言したディアナは、堂々と道を引き返していった。


「マスター、モテモテですね、ゲスですね」


「……」


 俺は、意気消沈しながら、村へと戻った。戻りながらアシェリに呼出(コール)すると、先に宿屋戻ったらしく、俺も宿屋へと向かった。


 そして、宿屋に付いて、扉を開けると目の前に見知った顔が並んでいた。


「何コレ?」


「「ヤナ!」」

「「ヤナ君!」」


「ヤナ様、いきなり疲れた様な顔をしないで下さい。泣きますよ? よよよ」


 俺は続々と集まる知り合いに、若干疲れた顔をしていると、ミレアさんに嘘泣きをされて、更に疲れた。


「マスター、これはアレですね」


「アレってなんだよ?」


「ラブコメの予感です」


「やかましいわ!」


 どうにもドタバタする予感を実際感じながら、俺は一人呟いた。




「なる様になれだ……」


「マスター……もう少し成長しましょう? ね?」




 こうして、舞台に登場人物が集まり、物語の幕が上がるのであった。


↓大事なお知らせがあるよ∠(`・ω・´)

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