表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

78/326

かつての約束

第五章『刀と竜』の開幕であります


さてはて


この章は誰の物語なのでしょう


お楽しみご覧あれ

「新しい仲間も増えたが、特にこれまでと変わらない(・・・・・)から、みんなよろしく」


「「「はーい」」」


 するとエディスが、少し申し訳なさそうに胸元を触りながら、俺に話しかける。


これ(・・)って、本当に消えたの?」


 取り敢えず勢いでついて来たものの、矢張り不安らしい。


「まぁ、多分大丈夫じゃないか? 他の二人も別にでてないだろ? セラは、服着てるからわからんけど、全く瘴気感じないしな。アシェリも瞳に出てないし」


「「「は?」」」


「ん?」


 三人が、絶句しているので俺は話を続ける。


「三人とも巫女だぞ? ただ三人とも俺が聖痕を神火の清め(アブルーション)で、もう綺麗に直したから、もう瘴気は呼ばないから大丈夫だけどな」


「「「はぁああああああ!?」」」


「あと実は……俺は勇者達と同じ、異世界からの召喚者なんだ!」


「でしょうね」

「まぁ、妥当かと」


「そこは、驚かないんだ!?」


 セアラは当然知っている事なんだが、他の二人が驚いてくれない。なんか寂しい。


「えっと? 異世界からの召喚者だぞ? もっとこう、『えぇえええええ!?』みたいな反応無いの?」


「あれだけ、無茶苦茶な事してればねぇ」

「勇者様達と、やけに仲よかったですしねぇ」


「ヤナ様……」


「みなまで言うな……」


 取り敢えず、すんなり異世界人という事を受け入れられて良かったと安心した。古来よりこの世界は、異世界から勇者を召喚し魔王を倒してきた為、特にそこに(異世界人)違和感は無いらしい。


「じゃあ、主様も魔王を倒す使命を?」


「いや? 俺は彼奴らと同じ『召喚されし勇者』ではなくて、『召喚を要求した者』だからな。そもそも魔王を倒す為に召喚された訳じゃなくて、勝手に付いて来ただけだ」


「「はぁああああああ!?」」


 やっと驚いてくれた事に、安心しながら話を続ける。


「でだ、ここからがもっと大事なんだが、魔族の話によると三人は、悪神の巫女ではなく、本来は女神と共に悪神を封印した巫女の魂が輪廻した者だって事だ」


「「えぇえええ!?」」


「だからな? もっと胸張れ。俺が異世界からの召喚者である『女神の使徒』だと言うのであれば、三人は『女神の巫女』だからな」


 俺のその言葉に、アシェリとエディスはやや放心していたが、表情は少し誇らしげになった様に見えた。


「ヤナ様? エディス様は先ほど巫女だと分かったという事でしたが、アシェリちゃんはもっと前から巫女だと知っていたのですよね?」


 セアラが、そんな事を確認してくる。


「あぁ、そうだな。それが何か?」


「何故今まで、『女神様の巫女』の事をお話しにならなかったのですか?」


「え?」


「え? まさか……忘れていた訳じゃ……」


「……ハハハ、ソンナワケ……無いよ?」


 物凄い半眼でアシェリに見られたが、本来なら世界の希望となるような『女神の巫女』が迫害されてきたと知ったら、子供にはショックが大きすぎるのじゃ無いかと思い、伝えるのを躊躇っていた。


 ただ、共に過ごして分かったが、アシェリはとても子供と思えない(・・・・)ような、芯の強さを感じた。それで、この事も受け入れられるだろうと、判断したのだ。


「分かりました。でも、何故今その事を私たちに?」


 エディスが訪ねてくるので、少し真剣な顔をしながら答える。


「セラとアシェリには伝えているが、俺は俺で悪神のクソ野郎に喧嘩を売っていてな」


「は?」


「魔族越しに『神殺し』を宣言している」


「えっと? ……バカなの?」


「あのクソ野郎(悪神)が、三人みたいな人間を作り出した訳だろ?」


「……そうですね」


 エディスは、辛そうに答える。


「そんなの(ヒーロー)が、放っておく訳が無いだろう」


「……バカじゃなくて……大バカなのね」


 エディスは、少し笑っていた。


「やかましいわ。という事はだ、俺といると自然と悪神に近づくことになる。これまで以上に魔族やら瘴気纏いやらが寄ってくるぞ? アシェリとセラは魔族越しにあっち(悪神)側にバレてるのもあって一緒にいるが、エディスは魔族に見られて無いと思うから、自由にしてくれていいんだ。わざわざ付いてきて危険な目にあわなくてもいいわけだ」


 俺はエディスをじっと見ながら、今の状況を説明する。


「逆に付いてくると、もっともっと強くならないと死ぬだろう。相手は神だからな、もう一度考え直し……」


「付いて行くわ」


 俺が全てを言う前に、エディスは答えを返した。


「何があっても相手を受け入れるのが、パートナーよ? ねぇ? あなた」


「男前すぎるのは良いけど、夫婦みたいでむず痒いんだが?」


「「フウフ?」」


「え?」


 アシェリとエディスが知らない言葉を聞いたという反応を見せるので、思わずセアラを見た。


「ヤナ様、この世界ではヤナ様の世界で言うところの『婚姻』というのは、人族の王族のみしか行いません。あとは勇者様の子孫の中には、そういった事をしている家もあるそうですが、一般的にはエディス様のような冒険者はパートナー契約や、一般の平民がお互いに暮らす場合は、事前に財産や子供の事に関して、契約を()個人其々が結ぶ事になります」


「それだと、重複して契約してたりする人間もいるんじゃないのか?」


「えぇ、同じ種類の契約を複数結ぶ場合、新しく契約する人間と元々契約している人間が、双方再度契約を結び直す事になります。そこで、揉めるという事もありますね」


 この世界は、いつ死ぬかわからない。当然、一人とずっと契約する人間もいれば、多くの人間と契約し、子孫を残したいと思う人間もいる。結局は、双方の契約次第という訳らしい。


「王族にしても、正室、側室といます。むしろ、勇者様の世界では、同時期に一人としか『婚姻』を結ばないと言うのは、それだけ平和なのだと思います」


 その辺の知識にいては、城にいる時も元の世界に帰る何としてでも戻るつもりでいた為、全く聞いていなかった。今更にして結構なカルチャーショックだった。


 俺がそんな事を思っていると、セアラは更に驚愕することを告げた。


「ですのでヤナ様? ヤナ様は何人とでも『契約』を結んで貰っても大丈夫なのですよ? 既にここの三人と契約してますしね」


「三人?」


「アシェリちゃんは『奴隷契約』、エディス様は『パートナー契約』、私とは『同伴者契約』を結んでおります」


 俺は最後のセアラ言葉が聞きなれない言葉だったので、再度聞き返す。


「セラのその『同伴者契約』って何だ? セラとそんな契約した覚えが、無いんだが?」


「前に『必ずついていきます』と私がヤナ様に言うと、ヤナ様は『約束だ』と仰いましたよね?」


 なんだろうこの背中に伝う汗は。


「……言ったな」


「その際に、いつまで付いて行って良いか、ヤナ様は期限を設けましたか?」


「え? そんな期限なんて決めてないだろ? だって、ただの約束にそんな契約書みたいな……」


 期限を決めてないと俺が口にした瞬間、セアラは嗤ったのだ。思わずセアラの後ろにあの人を幻視する様な嗤い顔で。


「そう、決めていないという事は、即ち無期限ですよね? あと『口約束も契約』です」


「はぁああああああ!? あの人だな! あの人の悪知恵だな! 待て! そもそもあのおっさん達(王と大臣)が無期限なんて許可する筈が……は! まさか!」


 セアラは優雅に嗤いながら、答える。


「えぇ、あの時にヤナ様と『一緒にいる』事を皆さんがいる前で、あの二人も『許可』しましたよね? あの二人が『許可』した事を、誰が覆せると?」


「な!?」


「この世界は各個人で契約を結ぶと申し上げましたよね? ふふふ、因みに契約破棄の方法も決めていなかった(・・・・・)ので、双方が合意しない限り契約は解除出来ませんので」


「……逞しすぎる……」


「あなたって、前からチョロかったのね」

「主様って、最初からチョロかったんですね」


 そして、『契約破棄』が出来ない『奴隷』と『パートナー』と『同伴者』がいつの間にか、俺の周りにいる様になっていた。


「異世界は……恐ろしい」


 すると、もう一人(・・)が声をかけてきた。


「チョロター、そろそろ私を皆さんに紹介して下さい」


「「「声が!? どこ!?」」」


 俺の目の前(・・)から聞こえる声に、三人は周りを警戒し始めたので、問題無い事を伝えた。


「誰がチョロターだ……はぁ、今の声は俺のスキル『案内者(ナビゲーター)』のヤナビだ」


 そして、ヤナビの事を三人に説明した。


「自分のスキルにまで、まんまとしてやられるなんて……」

「もうちょっと、頭を鍛錬しませんか?……」

「次から、何か(・・)と契約する前に、みんなに相談して下さいね……」


「返す言葉もありません……」


 そして、余計な事を更にヤナビは付け加える。


「因みに私の声も容姿も、マスターの全力の妄想力で創造されおります」


「ちょっ! 違う! 断じて違う!」


 俺は全否定したが、既にもう遅かった。


「え? 結構幼そうな声だけど……?」

「容姿って?」

「身体があるのですか?」


「マスター、あのマスターの欲望の塊且つ妄想の産物である私の身体を、さぁ早く創って下さい」


「嫌だ! 断じて断る! 絶対次は、姿を勝手に変えさせねえぞ!」


「必死すぎて、可哀想になってくるわね」

「よっぽど、見せられないような妄想だったんでしょうね」

「ヤナ様……色々我慢なさっているから、妄想に逃げているんですね」


 三人から、憐れみの目線向けられ両肩と頭に手をトントンとされた。


「やめてぇえええええ!」


 俺が、気がすむまで悶絶した所で、この日は解散しようとした。


「はぁ、何だか凄い疲れた……じゃぁ、取り敢えず今日は解散な。みんな疲れてるだろうから、早く寝ろよ」


「「はーい」」


 アシェリとセアラはいつも通り、二人で部屋を出ていき、自分たちの部屋に戻った。


「で、何でいるの? エディスは」


「え?」


「え? じゃねぇよ。ほら、自分の部屋に戻れ」


「部屋とってないですよ?」


「はい?」


 エディスが何がおかしいのかという顔をしているが、おかしい事しか思いつかない。


「だって、あなたは私とパートナー契約を結んだんですよ? ちゃんと結ばれないとイロイロ」


「やかましいわ。それにほれ、後ろ」


 俺は、先程から扉の隙間から見えているセラ(・・)の目を、指差した。


「ひぃ!?」


「エディス様だけ、一緒にとか……ダァメェ」


「あなた、助けて!」


「仲良くしろよぉ」


 ガシッとセアラに掴まれ、エディスは引きづられ部屋を出て行った。


 アシェリとセアラの部屋は、魔物の大氾濫(スタンビード)前の時に、まだ部屋が空いていたので、女将さんが気を利かしてくれて二人部屋に変えてくれていた。そのため、三人でも多少狭いが一人は子供だし大丈夫だろうと、放っておいた。


 静かになった部屋で、一人なった俺は今日あったことを思い出しながら、深い息を吐く。


 大きな被害は出なかったものの、少なからず防衛戦において、魔物にやられた犠牲者は出た。


 氾濫した南では、王都に繋がる街道沿いの村は、人は避難して来ただろうが、村自体は壊滅だろう。


「別に完璧主義って訳じゃ無いんだが……それでも、嫌なもんは嫌なんだよな……」


 結局の所、元凶を叩かない限り、同じ事を繰り返す。特にこの世界は、このままだといつか完全に瘴気で滅ぶようになって(・・・)いる。


「女神様ってのは、何してんのかねぇ」


 この世界で度々耳にする『女神様』だが、自分の世界が終わろうとしているのに、何をしているのか。


「それか、何も出来ないのか……まぁ、どっちにしろ俺がやる事は一つだ」


 そう呟きながら、アメノ爺さんから選別に貰った大太刀『烈風』『涼風』を鞘から抜いて、眺める。


「今回、大分無茶したもんなぁ……」


 月明かりに照らされる二本の大太刀は、刀身にひびが入っており、刃も至る所が欠けていた。


 自分の腕の無さを痛感し、二本の大太刀には申し訳無い気持ちだった。


「やる事は一つだが……やらなきゃいけない事は、多そうだ」


 俺はそう呟きながら、二本を鞘に納め、ヤナビ(サングラス)を外し、ベッドに寝転がった。ヤナビも流石に、寝るときは外れてくれるらしい。


 久しぶりに横になった俺は、静かに目を閉じた。


「お休みなさい。マスター」


「あぁ、おやすみ」


 ヤナビの優しい声を聞いたのを最後に、俺は完全に眠りに落ちた。




 この日、一人の召喚者が、三人の巫女と共に、この世界を冒険する事を決めた。


 かつての約束を果たそうとするかのように




 ……もし……もし次があるのであれば……今度は君たち巫女を救う為にここにまた来るよ。勇者に魔王は任せてさ。



 頑張ってね。期待はしてないけど。



 はは……ひどいな。きっと今度の俺は、今度の君を救えるさ。



 なら……今度は絶対に倒れちゃ駄目よ。



 あぁ、絶対に倒れないよ…倒れてなんかやるものか……



↓大事なお知らせがあるよ∠(`・ω・´)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ