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神と神

 この戦いは、新しき神話となる。


 異世界からやってきた男の英雄譚は、神と神との戦いにまで辿り着いた。


 人の身を捨て、神の位階に登りし男。


 そして男に人の心を失くさせたく無い乙女達は、自らもまた人の身を捨てることで男を心を護った。


 

『女神の力を奪ったのか。いよいよお前は、私と同じになろうとするわけだ』


 ヤナの持っていた二振りの刀は既に融合し、神剣へと変わっている。その一撃を神の衣を着た少年の姿の簒奪神ゴドロブは、微動だにせずに受け止めていた。ヤナの剣戟は、ゴドロブに当たる寸前で止まっていたのだ。


「媒体を使わずこの世界に顕現出来てるってことは、ここは既にお前の神域扱いかよ」


『正解。でも、此処だけじゃないけどね。君が女神の力を奪ってくれたおかげで、瘴気がどんと広がりちゃってね。僕の神域は、広がり続けてるよ』


「で、広がりきったら、この世界をモノにしたってことか」


『分かりやすいだろ? 陣取りゲームさ。そして広がれば広がるほど、僕の眷属達は強くなるっと』


 ゴドロブが右腕を横に薙ぐと、ヤナは後方へと吹き飛ばされた。


「ヤナ!」

「何がどうなてってるのか訳わかんないけど、シラユキ達は生きてるの!?」


 コウヤが駆け寄り、アリスが周りの傷が消え黄金に輝くシラユキ達を見ながら叫ぶ。ルイはゴドロブの今の動作だけで傷付いているヤナを回復させるために詠唱していた。


「色々全部、説明なんざしてる暇ないが、白雪達は死んでない! 俺はアイツをぶっとばす! 勇者達、エイダ、シェンラはクソ神の隣に立っている彼奴を逃さず仕留めろ!」


 ヤナの言葉が終わると同時に、ゴドロブの横に立っていた魔族の少年が空に浮かび上がると、足元に魔術陣が浮かび上がった。


「シェンラ! 行かせるな!」


「任させるのじゃ!」


 一瞬にして魔族の少年の横へと飛び上がると、ノータイムで天竜の息吹を放った。


「エイダ! 彼奴を逃さないように結界で隔離だ! 勇者達とお前達で彼奴を救ってやれ!」


「ダーリン! 私、フーちゃんと融合中ですから、これが終わったらそのまま親子ど」


「うるせぇ! 黙れ! 真面目にやれ!」


 騒がしくもしながらエイダは魔法陣を描くと、不死鳥の炎を纏い術を発動させた。そして聖なる炎が三人の勇者、シェンラ、エイダ、魔族の少年を包み始めた。


「ヤナ君! 必ずもう一度、一緒に電車で学校行こうね!」


「あぁ、全員でまた学校に行くぞ!」


 そしてエイダの不死鳥の結界陣は、ヤナとヤナビ、要石の巫女達、簒奪神ゴドロブを残し包み込んだ。


『へぇ、よくアレを世界の破壊に向かわせると分かったね』


「嫌がることしかしないだろ、クソ神が」


『違いないね。あっはっはっは』


 目でヤナを見下しながら大声で嗤う姿は、神と名のつく者とは思えぬ程に狂気の塊に見える。


「マスター、私は如何……いかがわしいことしましょうか」


「エイダと言い、誰に対して対抗意識燃やしてんだよ」


「神域での一発はリアルとは言えずノーカンです。やはり現実世界の一発目争いは、この戦闘後に活発化することが確実な情勢。今のうちから私を意識させようかと」


「うるせぇ黙れ! 早くサングラスに戻りやがれ!」


『締まらないなぁ……割と周りは結構死地になってるよ?』


 ヤナビがサングラスとなりヤナの顔に掛けられると、ヤナから迸っていた神気が一気に洗礼されたものへと変化した。


『……へぇ、新米神の割には見事なものだね。その神器のおかげかな』


「それだけじゃないさ。俺の巫女達、刀に転生したカヤミとディアナもまた一役かってるのさ。決して俺だけの力ではない」


『それで女神クリエラもまた、瘴気の拡散を遅らせているというわけか』


「流石に気づくか」


 女神クリエラは、一緒に戦うわけでなく自分の神域から、世界を少しでも瘴気の汚染を遅らせるべく、管理権限のみの力しかなくても死力を尽くしている。


『あの勇者達も結構大変だよ。さっきのあれって正真正銘のラスボス魔王だから、強いよぉ』


「ラスボスが彼奴なら、お前はなんなんだよ」


『負けイベントの裏ボスかな』


「ぬかせ」


 ゴドロブは薄ら笑いながら、ゆっくりと横へ歩き出した。そしてヤナも合わせて並行するように歩き出す。不死鳥の陣から離れる方向へと歩く二人は、数分間何も話すことなく歩いた。そして、ゴドロブが足をとめヤナに向き合った。


『知っているかい? 神同士の戦いは、剣や魔法で切ったはったみたいなものではないんだよ。剣やなんかで神殺しを成そうとするのはあくまで、神を人が殺そうとする場合だ』


「俺が持つ神剣は、神同士の戦いには無意味だと言いたいのか?」


『いやいや、そういう訳じゃないんだ。神の武具にまで存在を高めた物は、強い神気に耐えうる。そしてそのような武具は、神の力を高めるものだ。だからとても大事にすると良いよ』


「やけにしゃべるな」


『それはそうだよ。神が神を封印しようとするのであれば、まだこれからも長い付き合いになるんだ。おしゃべりする機会だってあるだろうけど』


「それはない。お前を封印するつもりは俺にはない」


『だろ? だからさ、今しゃべっておかないと。神々の戦いは、自らの存在を賭けた相手の力の奪い合い。時間だって殆どが刹那の時間で終わってしまうからね』


 ヤナはゴドロブが何を言おうと、構えと解くことはない。


『でも悲しいよ。君は最後の会話を拒むようだ』


「クソ神とおしゃべりするぐらいなら、さっさと帰りたいんでね」


『残念だよ。それなら始めようか。神と神の戦いを』


「こっちは、いつでも準備万端なんだよ」


 簒奪神ゴドロブもまた、身体から瘴気とは異なる神気を迸らせた。


『あ、ちなみに刹那で勝負は決まるって言ったけど、神的時間の感覚での刹那だからね』


「それがどうした」


『人の時間に合わせたら……決着は人間の時間感覚で言えば、何年後か分かんないな! 十年? 百年? 千年かもねぇ! さぁ、君を覚えている人間が何人いるだろうね! あっはっはっは!』


「はぁ!?」


 直後、天を割る程の光が二人を飲み込んだ。そして数秒後に、巨大な光の柱は徐々に細くなり、最後は綺麗に消え去った。


 この時より、この世界にはある変化が起きる。


 新しく魔族は生まれなくなり、瘴気は徐々に薄まっていく。瘴気を纏って暴れていた魔物に関しては瘴気が霧散すると同時に崩れ去った。


 人々が困惑する中、教祖ユーフィリアに女神クリエラより神託が下り、簒奪神ゴドロブと神に至ったヤナによる神々の戦いの決着が着くまでは、このままであると判明する。そして決着までに要する時間は予測不能であり、明日かも知れないし千年以上かかる場合も考えられると伝えられた。


 要石の巫女達は、この世界に存在しているが魔族と同じく動く気配はなく。ジャイノス王国に運び込まれ、厳重に護られることとなった。そしてその後、女神クリエラにより神域に保管されることになる。


 その他の勇者に関しては、頑なに元の世界への帰還を拒んだ。ヤナが戻るまで此処にいると。その思いを汲み取り、女神は勇者達の刻を止めた。


 そして……刻は過ぎる。


 戦いの記録は英雄譚になり


 英雄譚は伝説になり


 伝説は神話になった。


↓大事なお知らせがあるよ∠(`・ω・´)

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