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偽聖女に全てを奪われ追放された無能令嬢ですが、隣国の冷徹王太子に拾われ、真の奇跡を開花させて溺愛されています  作者: 黒崎隼人


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エピローグ「美しく蘇る大地の庭園で」

 春の柔らかな陽光が、一面に咲き誇る色とりどりの花々を優しく照らしている。

 かつては魔力不足の歪みのせいで枯れかけていた宮殿の広大な庭園は、今や大陸で最も美しいとされる、光あふれる楽園へと姿を変えていた。

 エレニアは、仕立ての良い白いエプロンドレスをまとい、穏やかな表情で通路を歩いている。

 彼女が歩みを進めるたびに、足元の草花が嬉しそうに葉を揺らし、周囲の空気に甘い香りを振り撒いていた。

 彼女の右手には、小さなじょうろが握られており、そこから注がれる水には、淡い緑色の魔力が美しく混ざり合っている。


「みんな、今日も元気に咲いてね」


 彼女が微笑むと、周囲の木々が一斉に葉を鳴らし、彼女の言葉に応えるかのように輝きを増した。

 ベルン王国を追われ、激しい雨の国境で泥にまみれていたあの日から、数年の歳月が流れていた。

 あの後、ベルン王国は帝国の支援を完全に断たれ、魔力の枯渇と深刻な作物不作により、国家としての機能を失い没落した。

 レナード王子は廃嫡され、マリアは詐欺の罪で幽閉の身となったという。

 エレニアの実家であったアールスト公爵家も、度重なる不祥事の末に爵位を剥奪され、すべての財産を失って没落した。

 しかし、現在、帝国の皇后となったエレニアの心には、彼らへの怨みや憎しみはひとかけらも残っていない。

 自らの力を正しい場所で使い、多くの領民を救い、そして何より、最愛の伴侶に深く愛されることで、彼女の心は完全に満たされていたからだ。

 自分の存在が誰かの救いになっているという確信が、かつて失われていた彼女の誇りと自己肯定感を、完全に蘇らせていた。

 背後から、力強い、しかし確実な足音が近づいてきた。

 振り返ると、そこには帝国の皇帝となったアルフレートが立っていた。

 彼は、日常の執務のためのシンプルな、しかし気品あふれる黒い上着をまとっている。

 彼の氷河のような双眸は、エレニアの姿を捉えた瞬間、とろけるような深い愛の色彩へと一変した。


「エレニア、やはりここにいたか」


「アルフレート様。お仕事はよろしいのですか」


 エレニアは、じょうろを置いて微笑んだ。

 アルフレートは彼女の前に立つと、周囲の視線も構わず、躊躇うことなく手を伸ばして彼女の細い腰を強く引き寄せた。

 二人の身体が密着し、彼特有の心地よい白檀の香りと、高い体温がエレニアの全身を包み込んでいく。


「お前が足りなくてな。少しでも離れていると、胸の奥が寂しくなる」


 アルフレートはそう言うと、エレニアの豊かな髪に顔を埋め、その甘い香りを深く吸い込んだ。

 彼の独占欲と溺愛の深さは、月日が経過した今でも、薄れるどころかいっそう強くなっている。

 エレニアは彼の広い胸に顔を預け、その力強い心臓の鼓動を聴きながら、自らの薬指で輝くエメラルドグリーンの指輪を見つめた。


「私は、今、本当に幸せです」


「私もだ、エレニア。お前と共に歩むこの未来こそが、私の生涯の唯一の真実だ」


 アルフレートは彼女の顔を優しく持ち上げると、その美しい唇へと、静かに自らの唇を重ねた。

 二人の吐息が温かく混ざり合い、庭園に咲き誇る花々が、まるで二人を祝福するように、いっそう美しく光り輝いた。

 本当の真実の愛を見つけ、自らの価値を取り戻した元悪役令嬢は、最愛の皇帝の腕の中で、どこまでも幸福な、幸せな未来への一歩を、これからも永遠に刻み続けていくのだった。

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