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158話 英雄が来たギルド

 ともかくもオードヴィア王国ホロラルド伯爵領に到着。

 ユクハちゃんには森に待機してもらい、私だけで領都の街中で宿屋を借りて市中を散策しながら情報を集める。

 そして三日目の正午。人気のない場所に転移ゲートの目印を設置して待っていると、時間通りにラムスとノエルが転移ゲートを開いてやって来た。 


 「来たぞサクヤ。無事にオードヴィアに着いたようだな」


 「サクヤさま、お久しぶりです」


 「うん………待ってたよ」


 「なんだサクヤ。やけに元気がないな。何があった?」


 「じつは、こっちに来る途中やらかしたかもしれないんだ。旧ドルトラル辺境あたりで襲撃を受けて撃退したんだけどね」


 「なんだ、魔物にでも遭遇したのか? とくにケガもないようだが、なにをやらかしたのだ」


 「相手は魔物じゃないんだよ。ネコ耳とウサギ耳をした、いわゆる半獣人と言われる女の子たち。それに陸の上で津波をおこすスゴ腕の魔法師が相手だった」


 「ほう、大した魔法師だな。うん? 魔物地帯の真ん中で人の襲撃があったのか?」


 「そう。私も変だと思って地図を確認したんだけどね。どうもその辺り、最後の目的地のエルフ賢者のかくれ里らしいんだよ。偶然そこに降りようとしたみたいだ」


 おそらく、あの娘たちは賢者のガーディアン。かくれ里を守っているだけあって、そうとうな強さだ。


 「なるほど? ユクハを見て、魔物の襲撃と勘違いしたのか。しかし襲撃が来たなら迎撃するのは道理。向こうから襲ってきたなら、誤解をとけば問題ないのではないか?」


 「そうなれば良いんだけどね。ちょっとやりすぎちゃったから、和解できるかなぁ」


 どうにも、そのことが気になって鬱モードが抜けない。


 「ええい、辛気臭い! 今日はここの領主と交渉だろう。さっさと切りかえろ」


 「そうですよ、元気出してください。謁見用の服なんかも持ってきたんです」


 そうだよね。いつまでも落ち込んでいたら、協力してくれるみんなに申し訳ない。エルフ賢者との和解はあとで考えよう。


 「わかったよ。それじゃホロラルド伯爵との交渉のことを考えよう。目的は、伯爵閣下が所有する封印精霊ゴクモンのお守り(アミュレット)を譲っていただくことだけど。いちおうそれなりのお金はある」


 「貴族家所有の宝物とあらば、金だけでは手放さないかもな。通常コネやら等しい価値の宝物やらが必要になるものだぞ」


 「まぁ普通はそうなんだろうけどね。今だけは、そういった面倒が無くなっている可能性があるんだ」


 「ほほう?」


 「今現在、禁足地であるアクロイア聖碑にとある賊が立てこもっている。そいつらは伯爵家騎士団さえも撃退する強者(つわもの)どもなんだ」


 街中を回って軽く情報収集しただけでも、その話でもちきりだ。

 どうあっても賊を討伐しないと、伯爵閣下の統治能力の是非が問われるだろう。


 「ふうむ? なるほど。つまりそいつらを退治する見返りとして、アミュレットをいただくと言う訳か」


 「その通り! しかもその賊というのが、ターゲットの一人なんだ。伯爵閣下から賊退治の依頼を受ければ、ターゲットの二つを同時に手にすることが出来るというわけさ」

 

 「なんだ、楽勝ではないか。しかも相手が女なら、お前のお楽しみだな」


 「そう! この地を荒らす悪の女魔法師を、私の愛あるエロテクでおしおきしてやる! ふははは」


 「エロス剣王め。ガハハハハハ」


 「サクヤさま、がんばってください。うふふ」


 「「「アハハハハハハハ」」」


 みんなで仲良く大笑い。

 楽しく気分が盛り上がったところで作戦開始。


 さて。通常有力貴族様に謁見するには、かなり面倒な手続きをしなければならない。伯爵閣下が懇意にしている商会とかに口ぞえしてもらい、執事様にお申込みをして………とかナントカ。

 だがしかし! 今だけはそんな面倒をする必要はない。

 私たちは地元の冒険者ギルドへと足を運んだ。ここで目的は十分に達成されるのだ。


 ホロラルド伯爵領はかなり発展しているらしく、冒険者ギルドの建物も二階建ての大きな造りになっていた。

 中に入り依頼掲示板を見ると、もう昼過ぎだというのにかなりの依頼票が張ってある。つまり領内の面倒に人手が足りていないということか。例の事件で騎士団や冒険者に大量の犠牲者が出たというのは本当らしい。

 冒険者の習性でついそれを見たくなってしまうが、私たちの用事はそんな所には張っていない。依頼票は無視して、真っすぐ受付のお姉さんの所へ進んだ。


 「たのもーう。オレ様たちは他所(よそ)から来た冒険者だ。仕事をいただくぞ」


 「はい。どこかの冒険者証をお持ちであれば、他所(よそ)の冒険者の方にも仕事を紹介することが出来ます。どこの国の方でしょう?」


 「ゼナス王国だ。冒険者証ももちろんある」


 「わかりました。現在このホロラルド伯爵領では冒険者や騎士方の不足により、腕の良い冒険者の方々は歓迎しております。かなり割の良いお仕事もまわせますよ。犯罪者を追う方とモンスター討伐のどちらを希望されますか?」


 「フフン、オレ様たちは雑魚は狙わない。アクロイア聖碑に立てこもる賊どもだ。そいつらのオーダーをよこせ」


 ――ザワッ


 にわかにギルド内が騒がしくなった。一斉に私たちに視線が向けられる。

 やれやれ。この注目が苦手でラムスに交渉まかせたんだけど。


 「あの……その案件の受注はギルド長の許可が必要となります。なによりあそこの賊は、腕が立つ程度の方々では殺されるだけです。あなた方はなにを相手にするか分かっておられますか?」


 「ククク心配は無用だ。サクヤよ、お前の冒険者証を見せてやれ」


 「私は目立ちたくないんだけどなぁ」


 まぁアクロイア聖碑の賊討伐を希望する時点で、それは無理か。

 私は懐から自分の冒険者証を取り出して受付のお姉さんの前に出す。

 希少金属アダマンタイトで作られたアダマンタイト級の冒険者証を。


 「これはまさかアダマンタイト級冒険者証!? 名前は……サクヤ・ノハナ? ハッ! まさか剣王サクヤ!!?」


 ザワザワッ ザワザワッ


 ――「剣王サクヤだって!?」

 ――「本物か!?」

 ――「おいおい、ゼナス王国の英雄様が、どうしてこきに居るんだ」

 ――「バカかお前。アクロイア聖碑の話を聞いて出張ってきたに決まってんだろう」


 ギルド内は私への注目で大賑わいだ。ああ、もう恥ずかしい。


 「し、失礼いたしました! ただいまギルド長にご報告いたしますので、お待ちください!」


 バタバタとお姉さんは奥の部屋へ駆けてゆく。

 待って! 私たちをこの空気の中に置いてかないでええ!


 「サクヤさま、なんか人が寄ってきますよ。きっと武勇伝とか聞かれるんじゃないですか?」


 「ラムス、どうしよう。武勇伝を話すとか苦手なんだよ」


 「よしきた。オレ様にまかせろ」


 ラムスは「ドカッ」と足音を鳴らし、尊大な態度で近寄ってくる兄ちゃんやオジサンの前に立つ。


 「そぉだ! このお方こそ、世界最強最高の冒険者! 剣王サクヤ様だああ! 雑魚冒険者どもが。頭が高いわあああッ!!!」


 「「「え? ああ! ははあっ!!」」」


 ギルド内の冒険者たちはいっせいに膝をつき頭を下げる。

 ちがう! そうじゃないんだよ、ラムス!

 こんな異国のギルドで、水戸黄門ゴッコしたいわけじゃない!


 「うむうむ苦しゅうない。では、オレ様と剣王サクヤの数々の武勇伝を語ってやろう。朝までなぁ!」


 朝まで!? それにつき合わされて、私もこうして立ってなきゃなんないの?

 虎の威を借るキツネもいい加減にしろ!

 こんな異国に来てまで、ナニしてんだあああああ!!


 ――と、心の中で叫んでも、こういう時のラムスのイキオイには敵わない。


 「そして! 魔人王ザルバドネグザルの罠にハマったオレ様とサクヤは、無数の魔獣と戦うハメになってしまったのだ。だがしかし! 傷つきながらもサクヤの目はザルバドネグザルの急所をスルドク狙う。その意を汲んだオレ様は、ヤツまでの道を切り開くべく決死の特攻を敢行した!」


 はい、全部デタラメの武勇伝です。

 でも話は面白くて、一躍ラムスもザルバドネグザル戦の時の私の相棒ポジになってしまいました。


 いやザルバドネグザル戦の時のアンタは、全軍を統括する総督だったろう。

 なんで総指揮官が私といっしょに最前線に出てんだ!

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― 新着の感想 ―
武勇伝をでっちあげるラムス。 この人サクヤの兄の分身のはずだけど……。 エゴな所は似てるけど……。能力的には大分違いがあるからな……。
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