5:緑の怪奇と憎悪の権化
――何とか他の隊員達に追いつき、僕と美玖と莉寧は安堵した。
今回の任務は『鬱憎』と呼ばれるパラサイトの討伐だ。
軍服に身を包んだ周囲の隊員達を見て、僕は不敵に笑った。
――これだけの数いれば屹度、寄生虫達も楽勝に倒せるな。
そう思ってしまうほど、心強かった。
団長の鵆飛鳥が率いる、禍殲異能特殊隊C軍の隊員達はこれから『危険指定区域γ』と呼ばれる場所へ向かっているらしい。
「よう、神剣使い」
「塗田さん!」
塗田さんは僕の先輩だ。
禍殲異能特殊隊で副団長を務めるほどの実力者だ。
「神剣が使えるからって、気を抜かすんじゃねぇぞ」
「はい!」
塗田さんから鼓舞され、僕は益々気合と集中力が向上した。
すると、隊員の一人がその場に立ち止まった。
「何だよ、あれ……」
隊員が指差したのは、上空を滑空している緑色の龍の様な生物――。
パラサイトで間違いないだろう。
そして別の隊員が立ち止まり、どこからか弓矢を出現させて龍に放った。
「おい、やめろ!」
団長の制止も聞かず、龍に向かって矢を放った隊員。
だが矢で龍を射ることはできなかった。
すると、龍は矢の飛んできた隊員達の方へと軌道を変えた。
そして大きく口を開くと、口の中から謎の緑の液体を大量に吐き出した。
「逃げろ!」
団長が叫ぶ。
一人、緑の液体を身体全体に浴びた。
身体に緑の液体が触れた瞬間、その部位の肉が溶けた。
何だ、あれは。
「美玖、少し離れてろ」
「優? 駄目だ、あれは危険だ! 今すぐに逃げないと――」
「大丈夫だ。僕がこれくらいで負けるわけないだろ」
僕は神剣を手に取り、そして笑った。
次々と隊員達を呑み込み、溶かしていく緑の液体を、僕は神剣で一振りすることで緑の液体を風圧で吹き飛ばした。
僕の身体には緑の液体は一つもかからなかった。
神剣の一振りだけで、隊員達全員に襲いかかっていた緑の液体は全て吹き飛んだ。
だが、守り切れなかった何人かは死亡した。
「酸を飛ばし、大空を滑空する化け物――あれは『緑の怪奇』だ」
団長は顔色を一つも変えずにそう言った。
『緑の怪奇』か……聞いたことはないな。
取り敢えず、僕は大きく跳躍して龍の翼を神剣で断ち切った。
龍は体制を崩し、翼を失ったため地面に落ちる。
そして僕は龍の喉笛を神剣で切断し、殺した。
隊員達の元へ跳躍して戻る。
「瞬殺だったな」
「そうですね」
副団長が関心げに僕に言った。
莉寧と美玖は僕に手を振る。
「凄いね! 流石は優さん!」
「やったな、優」
そんな糠喜びも終わりにして、
「――さて、鬱憎が来るぞ」
団長と副団長、生き残った他の隊員達と僕達三人は上を見上げた。
『鬱憎』と呼ばれた生物は、とても巨大だった。
身体は人間の上半身であり、下半身は蛇。肩からは羽が生えており、頭からはユニコーンの様な角が生えていた。
巨躯をうねらせ、鬱憎は迫ってくる。
街を破壊しながら突き進んでくるその姿に、数人の隊員達は怯える。
すると鬱憎は掌から触手を出した。
触手により五人の隊員達が捕まえられ、鬱憎の方へと連れ去られる。
その触手を、僕は神剣で切断した。五人の隊員達を救出し、僕は団長と共に鬱憎の近くへと走る。
すると、助けたはずの隊員達が急に悶え苦しみ始めた。そして、全身が黒色になり爆発した。
「何が起きた!?」
副団長は声を荒げる。
だが応答はない。唯一あるとしたら、恐怖に染め上げられた隊員達の視線だった。
「振り返るな。私達はこいつを狩るだけだ」
「団長の割には、意外と隊員に冷たいんですね」
団長は僕に言う。
溜め息を吐き、僕は団長と共に大きく跳躍した。
途端、鬱憎が触手で団長を捕まえようとした。だが、触手は団長の手にした双剣によって切り裂かれる。
団長の華麗な身のこなしを見て、僕は更に集中力を高める。
「馬鹿野郎、あたしを置いて二人で楽しんでんじゃねぇよ」
後ろから美玖の声がした。
着いてきたのだ。
美玖は八重歯を口元から露出させながら、不敵に笑う。
こういう時の美玖は強い。
『白き悪魔』と闘った時、僕を学校から救った時――あの表情をしていた。
「わたしもちゃんといますよ!」
僕は隣からの声に振り向く。
莉寧だった。
「――お前達、死ぬんじゃねぇぞ」
「「「はい!」」」
団長の声に、僕と美玖と莉寧は笑った。




