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パラサイト・ブラッド   作者: 否定
5/6

4:絶望が訪れる前の、とても楽しい時間。

 ――親子を『白き悪魔』から救出し、見事に任務は遂行した。

 僕は美玖と共に『白き悪魔』正式名称『矗矗(しゅくしゅく)』と呼ばれるパラサイトを討伐した。

 そして現在、僕と美玖は基地内の食堂へと訪れていた。

 

 「美玖はどれ食べるんだ?」

 「あたしは……あれがいいな」

 

 美玖は唐揚げ定食を指差した。

 そういえば、美玖は昔から唐揚げが好きだったな。

 すると、美玖が僕の手を引いてデザートコーナーへと連れて行った(強制的に)。

 

 「ちょ、美玖、僕まだ何食べるか決めてないんだけど……」

 「いいじゃねぇか。ほら、見て見て、美味しそうなケーキが並んでる……!」

 「あ、ああ」

 

 見ると、食器の上に沢山のケーキ達が乗せられていた。

 無邪気な幼子の様にはしゃいでいる美玖を隣に、僕は苦笑する。

 

 「あたしはチョコが好きだからチョコレートケーキにするぞ」

 「じゃあ僕もチョコで」

 

 僕はおぼんの上にある皿チョコレートケーキを二つ乗せた。

 はぁ、何で僕は美玖の荷物係みたいなのをやらされているんだ……。

 僕とは対照的に、美玖はおぼんを手に取っていない。つまり、僕が美玖の食べるデザートを持たないといけないと言うことだ。まあ、悪い気はしないから別にいいが。

 そして、美玖の注文しておいた唐揚げ定食が手元に届く。やはり、美玖は僕に唐揚げ定食を持たせた。

 零(こぼ)れたら終わりだぞ、おい。

 現在、僕は二つのおぼんを片手ずつ持っている。

 ぐふぅ、自分の食べたい料理が決められない……。

 

 「じゃあ、早速食べようぜ。ほら、あそこ空いてるぞ」

 「あ、ああ……それより僕のは?」

 「じゃ、座ろうぜ」

 

 美玖は僕の言葉を無視した。

 渋々と椅子の上に腰を下ろし、僕は溜め息を吐く。

 取り敢えずチョコレートケーキを食べるか。

 ぱくっ。味は最高だ。ここ最近一番幸せな気分かも。

 

 「あ、優さんと美玖ちゃんだ! おーい!」

 「莉寧か――ここ空いてるから座っていいぞ」

 「ありがとうございます!」

 

 莉寧は僕の隣に座った。

 そして、莉寧は頼んでいた饂飩(うどん)を食べている。

 美玖と莉寧の女子二人に挟まれているも、僕は何一つ感銘を受けなかった。

 因みに、美玖は今嬉しそうに唐揚げ定食を頬張っている最中だ。

 

 「可愛い……まぁ、ずっと根に持ってても意味ないしな。許してやるか」

 

 美玖を見つめながら僕は呟いた。

 すると、莉寧が僕の肩を少し小突いてきた。

 僕は莉寧の方を向く。

 その途端、莉寧は耳打ちしてきた。

 

 「ねぇねぇ優さん。美玖ちゃんってあんなに可愛かったんですか? やばくないですか? 可愛すぎて鼻血が出そうです!」

 「まあ、普段は粗暴な言動して怖いけど、自分の好きなものに対しては優しいんだよ」

 「じゃあ優さんは美玖ちゃんに慕われていると言うことですね」

 「な――!?」

 

 美玖が僕のことを慕っているだと!?

 そ、それは、つまり……僕のことを好きだと言うことになるよな?

 ごくりと固唾を飲むと、僕は美玖の横顔を見つめていた。

 僕の視線が気になったのか、美玖はこちらを向いて「何だ?」と尋ねた。

 

 「いや、何でもない……」

 「――? ならいいけどよ」

 

 唐揚げを一口、美玖は齧(かじ)った。

 僕は安堵の吐息を零した。

 危うく僕と莉寧の会話が聞こえていたのかと思った。

 すると、莉寧が大変なことを。

 

 「美玖ちゃんって、優さんのこと好きなんですか!」

 

 そう、莉寧はこの食堂にいる誰しもに聞こえる大声で美玖に尋ねた。

 美玖は下を向いて静かに震えていた。

 僕は不安に思い美玖に「大丈夫?」と聞くも、何も反応しなかった。

 

 「り、莉寧の……」

 

 途端、美玖は何か呟いた。

 すると、美玖は真っ赤になった顔を上げて――、

 

 「馬鹿野郎!!」

 

 そう叫んだ。

 美玖は涙目になりながら、食堂から走り去っていった。

 

 「おい、莉寧。今のは美玖があまりにも可哀想だぞ」

 「確かに……すみません、わたしのせいで美玖ちゃんを泣かせてしまって――」

 「謝罪は僕じゃなくて美玖にしたほうがいいと思うんだけど……僕、美玖のところに行ってくる」

 「優さん?」

 「ここで待ってて」

 

 僕は席を立ち、食堂を後に美玖の寮へと向かった。

 美玖の部屋に着き、ドアを数回ノックする。

 

 「美玖、いるか?」

 「――」

 

 しかしながら返事はない。

 すると、ドアが少し開いていた。

 その隙間から美玖が顔を覗かせる。

 僕は美玖を見て微笑む。その途端、美玖は顔を赤くしてドアを閉じた。

 がくりと肩を下ろし、僕は溜め息を吐く。

 

 「駄目だったか……」

 

 すると、再びドアが開いた。

 そして美玖が僕を見る。

 

 「は、入っていいぞ……」

 

 声を震わせながら、美玖はそう言った。

 僕は恐る恐る部屋の中に入ると、その場に正座した。

 

 「ねぇ、優……優はあたしのこと好き?」

 「好きだ」

 「ひゃあっっ!!!」

 

 美玖は顔を真っ赤にして可愛い悲鳴を上げた。

 そして顔を覆い、指の隙間からちらちらと僕を見ている。

 

 「僕は美玖のことが好きだよ。ていうか、好きなのが当たり前だよ。だってずっと一緒にいるんだ。それに、昔、美玖は今と相反してとても恥ずかしがりで内気な子だったよ」

 「ば、馬鹿……それはあたしの黒歴史だ! 言うなって言っただろ!」

 

 美玖は顔を真っ赤に(今度は恥辱によるものではなく、瞋恚(しんい)で)して怒鳴った。

 だが、美玖の怒りは一瞬で収まった。

 

 「その……あたし、優君のことが好きなのは本当だけど――って、口調がぁ!?」

 「昔に戻ってるな。まあ、昔も今も喋り方はどっちも好きだけどな」

 「もう好き好き言わないで……」

 

 下を向いて、もじもじとしている美玖。

 するとドアが急に開いた。

 

 「――大変です優さん! 緊急任務が!」

 「緊急任務……?」

 「はい、基地内にいる者は皆『鬱憎(うつぞう)』と呼ばれるパラサイトを討伐しに行きましたよ! 急がないと!」

 

 何だと……。

 僕は隣にいる美玖を見た。

 美玖は僕を見ていた。

 

 「そうだな――僕たちも行くとするか」

 

 ――絶望と恐怖が訪れる混沌の時間は、この後に訪れる。

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