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一章3話 シルバーリーフの姫君

「うわぁ~リョウお兄さんこれ凄く油っぽいよ~」


今俺は昨日の賭けの勝ち分を手に街に出ている、隣にはいつの間にか付いてきていたリリカが先程出店で買い与えた焼き鳥のようなもの(確実に鶏の肉以外だな)を頬張っている。


「おいおい、頬にタレが付いてるぞ」


「??」


焼き鳥のタレを頬に付けたまま首をかしげる、タレを拭ってやると再度焼き鳥を食べ始めた。


街に出てきたが、これといって目的が有るわけではない、まぁ只の観光だな、適当に回って適当に帰るつもりだ。

始めはリアを誘ったのだがあまり離宮から出るのは良くないとか言って断られた、仕方ないから1人で出かけたのだが、見ての通りいつの間にかリリカが付いて来ていた。

まぁ、案内でもしてもらおう思い連れてきたがリリカも街にはあまり出たことが無いらしいので、当初の予定通り適当にぶらついている。


「リョウお兄さん!アレ何?」


いや、この世界のこと俺に聴かれても分からないぞ・・・


どれどれ?何かの屋台みたいだな、ってか祭りとかである射的屋じゃないのか?


・・・ちょい待て、射的屋なら鉄砲のあるはずの場所にあるのは何だ?短い杖?デザインがもの凄く魔女っ娘の杖チックなんだが・・・そこ以外は射的屋と変わらないな、少し離れた場所に有る(多分)点数の書かれた的、隣に店のおっさんと景品と景品の引き換え点数の表かな。


「おっさん、これどうやるんだ?」


「ん?いらっしゃい、やり方だが、この杖に魔力を送ると風の気弾が出る仕組でな、それで的を5回狙う、合計点に応じて景品がもらえるって訳だ」


ふーん、魔法が有るから文化も所々それ系に変化してるのかな?でもこれって魔力の無いやつは出来ないよな。


「だそうだ、やるか?」


俺は魔女っ娘の杖を持って射的、なんて羞恥プレイする気は無いのでリリカに振る。


「うん、やってみたい!」


おっさんに金を払いリリカが杖を構える。


「いくよ~『シュ~ト』」


―ビシュン―


お、真ん中付近の中位の的の中心部を焼き払った・・・え?焼き払った?風の気弾が出る筈じゃなかったのか?今出たのって・・・雷光?焼かれた的も帯電してバチバチ音を鳴らしているし、杖が不良品か!?


「えへへ、リョウお兄さん当たったよ」


「お、おう」


あ~気楽に考えてたけど魔法ってもしかしてヤバイ?俺、身体強化は出来るけど雷に撃たれて無事でいる自信無いぞ、もしかしてこの世界での俺の弱点って魔法か?


「どんどん行くの!『シュ~ト』!」


おぉ、何故か雷が出るのは変わらないが次々と的を射抜いていく、うまいな俺は点数が読めないから今何点か分からないが・・・


「く、250点、やるじゃねぇかお嬢ちゃん好きなものを1つ持って行きな」


どうやら高得点のようだ、ってか風の気弾が雷に変わってたことはスルーか?


リリカは景品の中に埋もれていた蒼い宝石の付いた首飾りを選んだ。


ん?なんか今宝石が光ったような気がしたんだけど気のせいか?


「えへへ、リョウお兄さんありがとう」


いや俺は何もしてないんだがな、まぁいいリリカが笑顔になるのを見ると悪い気はしない。


「え?あぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・」


は?何が起こった?今ものすごい勢いでリリカが拉致られた?


ってなぜ!?とにかく追いかけよう!


幸い見失ってはいない、確かに凄い早業だったが俺の身体能力なら余裕で捕捉し追跡できる、脚に強化をかけ速攻で追いつく。


「おらぁ!」


拉致犯にドロップキックを喰らわせる、衝撃で拉致犯はぶっ飛びリリカが空に投げ出されたところをキャッチする。


「大丈夫か?」


「は、はい、ビックリしたの・・・」


無事なようだ、さて犯人はと・・・あれ?ここって・・・

拉致犯を追っているうちに裏路地のかなり治安の悪い所まで来てしまったようだ、周りから良くない感じの視線を多数感じる。


「くそ!てめぇは大人しく姫さんを渡しやがれ!」


姫さん?誰だそれは?って、ここには俺とリリカだけ・・・俺は姫さんじゃ無い(男だしな)、てことは・・・


「え~っと、リリカ?お前ってこの国の姫なのか?」


「ん?そう言えば言ってないの」


わぁお、ってことは姉のリアも姫か!?何で一国の姫が護衛も連れず知り合って間もない男と街に出かける!?(←リリカ)何で離宮で兵士に混じって訓練してんだ!?(←リア)


考えるのは後だ、今の拉致犯の声で周りから感じていた視線の元が姿を見せる、間違いなく拉致犯の仲間だな。


「お前らは真昼間から何やってんだよ・・・」


真昼間っから犯罪行為を働く駄目な大人達に呆れる、リリカを庇うように立ちこれからどうするか思考する。

相手は見える範囲で6人、手にはナイフ、もしくは短剣、たいした脅威ではない、だが気配でまだ何人か潜んでいるのが分かる、もと来た道を戻るのがいいと思うが、すでに6人中2人に塞がれている。まぁぶっ飛ばせばいいだけだがな。


面倒だ・・・逃げよう、元の世界の時みたいに二度と逆らえないように恐怖を植えつける必要も無いわけだしな。


そう決めた俺は直ぐにリリカを背負う


「よし、リリカしっかり摑まってろ」


「お姫様抱っこがいいの」


「我慢しろ」


リリカ、お前周りを囲まれてるのに余裕過ぎるだろ・・・


まぁ、余裕なんだけどな。


リリカがしっかり摑まるのを確認すると、俺は脚に強化をかける。


俺たちの動きに焦って近付いて来た犯人がいたが無視して地を蹴り駆け出す、上に、そして壁を駆けて建物の屋根の上に出た。


「さて、面倒ごとにも巻き込まれたし一旦帰るか?」


「むぅ、仕方ないの・・・」


「不満そうだな、城まではこのまま背負って行ってやるから機嫌直せ、ちょっとしたジェットコースター気分を味わわせてやるぞ」


「ジェットコースター?」


そうか、まぁこっちの世界には無いよな。


「口は閉じてろ、舌噛むぞ」


屋根を蹴る、速度はそれなりに出して屋根の上を飛び回り、あっという間に城まで戻ってきた。


「さて、(むこう)まで送った方が良いのか?」


「うん!」


城門をくぐってからは、まぁリリカを背負ったままだが、ゆっくり歩く。


城に着くまでにここのことを聞いたんだが最初に聞いておくべきことだったな。

この城はシルバーリーフ城、この名前だけでも聞いておけばリリカたちが王族だと気付けただろう、この城と城下町を合わせて王都シルバーリーフ、ナインティリア大陸に存在する九つの国のひとつらしい。

魔法王国として発展していて王族は強い魔力を持つんだとか、俺ってまだ魔法らしい魔法見てないな、さっきのリリカの射的は児戯に等しいものだろうし・・・


「あら?リリカどうしたの?」


リリカに言われるまま城の中を歩き、奥へ奥へと進んでいたらリリカと同じ銀髪を、腰の辺りまで長く伸ばした女性が声をかけて来た。



____________________________________________________________________


珍しいものを目にしました。私やマテリアには甘えることの良く有る妹のリリカですが、他のものにはなかなか心を許しません、そんな妹が男の子に背負われ楽しそうにしています。


そんな珍しい光景に私は思わず声をかけていました。


「マナお姉様、ただいまなの」


ただいまって、この娘また無断で城を抜け出したのかしら?


「また城を抜け出したの?行くなとは言いませんが、ちゃんと護衛を付けて私に報告してから行きなさい」


「リョウお兄さんがいたから大丈夫なの!」


あら?そういえばリリカを背負っている男の子、私たちと同じ銀髪でリリカが話してくれたマテリアの所へ来た少年の特徴と一致している、と言うことはこの子が、リョウイチ アカヤなのね。

どうやって会おうかと思っていたけれどこんな形で会えるなんて、今は時間も有るし好都合ですね。


「そう、貴方がリリカを護ってくれたのですね」


「いや、俺は一発かまして逃げただけだしな」


あら?只一緒に街を廻っていただけかと思ってましたが、実際にリリカを護ってもらわなくてはいけないことが起こっていたみたいですね。


「いえ、ありがとうございます。


そうだ、時間の方がよろしければこれから一緒にお茶でもいかがですか?」


「リョウお兄さん一緒にお茶しましょう!」


少しでもリョウイチさんのことを探ろうと思い誘ったのですがリリカが凄く喜んでくれています。


思わず頬が緩んできますが、いけませんね、私もマテリアもリリカには甘くなってしまう所があります。今はリョウイチさんのことをしっかりと調べなくてはいけません。


「あ~そうだな、街もあんまり見て回れなかったし時間が余ってるんだ、ご馳走にならせて貰おうかな」


「それでは準備させますね」



____________________________________________________________________


マナお姉様、ってことはコイツも姫か・・・メイドを呼びお茶の準備を言いつけた後俺たちを先導して歩く女性をぼーっと眺めながら歩く、てかリリカ、そろそろ降りようか?


「む~」


未だに俺の背に乗っていたリリカを下ろす、何か不満そうにしていたが気にしないでおこう。


案内されたのは城の中部にある庭園のような場所、旨く外から光を取り入れる造りになっているらしく花や木が元気に咲いている。


元々設置されているらしいテーブルにはメイドさんによるお茶の準備が整えられていた。


クッキーっぽいお茶菓子が有るがこれはクッキーか?


椅子に着きメイドさんによってお茶がカップに注がれる、

俺たち全員の分を終えるとメイドさんは庭園を出て行った。


「ふふ、じゃぁ遠慮無く召し上がってください」


「あぁ、どうも」


「いただきまーす」


お、このクッキー、サクサクで甘すぎない、なかなか旨いな・・・


「リリカがお世話になったようですね、改めてお礼を言わせてください」


「別に気にするほどのことじゃ無い、えっと、あんたはリリカの姉なんだよな?だったらあんたもこの国の姫か?」


「はい、私はマナ、マナ シルバーリーフです。リリカの姉でこの国の姫ですね」


「ほ~」


だからどうだって訳じゃないんだけどな・・・


「私からいくつか聞いてもよろしいですか?貴方のことはリリカから聞いて気になっていたんですよ」


どんな話を聞いたか知らないがたいした事は答えられないぞ、基本異世界から来た事を話す気は無いし吸血鬼のハーフであることも言う気は無い。


マナの質問に当たり障りの無い程度で答えておくことにする。


「そうだ、俺からも聞いていいか?」


「あ、はい、こちらから聞いてばかりもなんですよね」


「あいつ、リア、マテリアもお前達と同じ姫なんだよな?」


「・・・・・・・・・」


黙っちまったよ、聞いたら不味かったか?


「貴方はリリカ(この子)がマテリアと話している所を聞いたのですね・・・

私たちにも事情が有るのです、世間的には第一王女が私、第二王女がリリカという事になっています。

あの子、マテリアは私たちとは関係ない人間としてこの城にいます。そのことを知っているのも城のごく限られた人間だけです。貴方にもこのことは黙っていてもらいたいのですが・・・」


「あ~はいはい、暴力で解決できない厄介ごとはごめんだ、悪かったな言いにくいこと聞いて」


「いえ、下手に知られるより理解して黙っていてもらう方が良いですから、秘密にしていてくれますよね?」


「お、おう」


マナ、顔は笑顔なんだけど、今背筋に悪寒が走ったぞ、本能的に恐怖を感じるなんてコイツやるなぁ・・・


「あ、悪いそろそろ行く」


「リョウお兄さん行っちゃうの?」


「あぁ、ちょい用事が有るの思い出した」


そういえば街に行ったのも約束の時間までの暇潰しだったんだよな、マナと話し込んですっかり時間が経っちまったが急がないと遅れるぞ。


「急ぐから、マナ、リリカ、またな」


俺は返事を待たずに窓から外へ出た。ここ3階位の高さだが強化をかければ大丈夫急ごう、


時間に遅れて文字を教われなくなるのも困るからな・・・


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