三章10話 紅月の丘、法炎の公子
そこは紅い月映える夜の丘、相変わらず紅と白の花がちらほらと咲いている・・・
(お兄さん、大丈夫ですか?)
前回と同じ言葉と共に自称神様の分身が現れる。
「お前、前回の最後になんか意味有りなこと言ってなかったか?なんか出てくるのがあれで最後みたいな感じだったぞ?」
(あれ?聞こえてましたか?でも大丈夫ですよ、僕が消えるのはまだまだ先のことになりそうですからね、もっとも、今の僕はほとんど力を持たないお飾りの神代理ですけどね)
ふ~ん、まぁどうでもいいか。
「それより俺が又この夢を見てるってことは・・・俺、又死にかけてるのか?」
(いえいえ、今回は身体には何の問題も無いですよ、眠っているだけです、ただ・・・)
はぁ?魔剣武装の力が身体に馴染んでない?本来ならエルリオールに来る時に力を与えられる為、使う頃には身体に馴染んでいる特殊能力を俺はこの世界に来てから貰っている、そのせいで能力がまだ身体に馴染んでいないと言うことらしい。
(おまけに、お兄さんの対戦相手の使っていた双剣は天剣です)
天剣?そう言えばミーナが魔剣鍛冶師の第一目標とか言ってたな魔剣を超えた剣、心剣にも匹敵する力を持っているとかなんとか・・・
(今のお兄さんじゃ天剣を天剣武装する事は出来ませんよ、今回みたいに剣に拒絶されて気絶します。力が身体に馴染むまでまだかかると思いますから気をつけてくださいね)
そうか、って事はさっきの試合俺は負けたって事で間違い無いな・・・なんか納得いかないが、自分の能力をきちんと把握できていなかったせいだし仕方ないか。
「にしても、もっと早くに教えといてくれよな・・・」
(すみません、僕にもエルリオールに干渉するには制限がありますから、今回のように何らかの事情で意識を失った状態でかつ夢の中でしか話をする事もできないんですよ、普通に寝ているだけに人には一部の例外を除いては話しかけられません、神と言っても代理ですし、今は力をほとんど失ってますからね)
「まぁいいか、他に何かあるか?」
(そうですね・・・あ、そう言えば又1つ世界を救ってくれましたね、ありがとうございます)
「は?」
何の事だ?戦争の時の話しか?
(いえ、昨日の事ですよ、ルージュの王子を救ったでしょう?世界の読んだ予言には、この段階での彼の死がルージュの滅亡に繋がると有りますから、彼を救い国に戻した事は未来をいい方向に変える一手になりましたよ)
「そうか・・・」
俺はただライネスにまだ死んで欲しく無かっただけなんだけどな。いい結果になったならそれで良い。
「あぁ、そうだ、俺と同じ世界から来たって男が接触してきたぞ、アイツのこと知ってるか?」
前の試合前に俺に接触して来た男のことを思い出し自称神代理なら知ってるんじゃないかと思い聞いてみる。
(僕は立場上あまりそういったことを話せないんですけど・・・)
「気にするな、知ってるならさっさと話せ」
(・・・・・・やっぱり詳しくは話せません、でも、信用は出来る人物ですよ)
少し悩んだようだが、あの男が何者なのかって事は話してくれないようだ。
だが、信用出来る人物って事は・・・あいつの言ってたことは事実か、実際にライネスも放って置いたら死んでたしなぁ・・・
となると、あんまりここでのんびりもしていられねぇな。
「んじゃ、とっとと戻るか・・・」
(はい、次に会うことが無いことを祈ってますよ)
「はは、まぁ気を付けるさ」
そして、俺の意識は紅い月の浮かぶ夜の世界から遠退で行く・・・
目を覚ますと白い天井が見えた。
ここは・・・医務室か?まぁそうだよな、試合中に意識を失ったら当然運ばれるよなぁ。
「リョウ、起きたの?」
すぐ近くでリアの声がして、そちらを向くとベッドの脇の椅子に座っていたのだろうが、俺が起きたのに気付いた為、身を乗り出しこちらを覗き込んでいるリアが居た。・・・どうでもいいけど、ちょっと近くないか?
「あぁ、俺、試合は・・・負けたんだよな?」
「うん、それと今日の準決勝はもう全部終わってるよ」
って事は、今日は何も起きなかったか・・・何か起こるとなると、明日の決勝戦中か、各国の来賓共が来賓席から出て来る授賞式中か?
「明日、決勝以外に三位決定戦が有るけど大丈夫?出られる?」
「それは問題無い、気絶したとは言え殆んど無傷だったからな、今まで休んでた訳だし今からでも行けるぞ、でもまぁ、明日はあんまり消耗したくないんだよなぁ・・・」
「今朝話してた、何か起こそうとしてる人がいるってやつ?」
「そう、だから明日の試合には出ないことにする・・・」
これで入賞は出来なくなったけど、まぁいいだろう、暇潰しに出場しただけだからな、それよりも片付けないといけない問題がある、ライネスを殺そうとした奴、明日出て来るかな?出て来やがったらぶっ飛ばさないとなぁ・・・
「それじゃぁ一緒に来賓席で観戦してよっか?」
「そうだな、リジアの天剣にも興味があるし、決勝は一緒に観戦するか」
とにかく明日が勝負だな、何が起こるか分からないけど、さっさとぶっ潰してまた別の暇潰しを考えよう・・・
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流石、飛竜による移動は早いですね、先刻フリージアを発った僕はいまルージュのフレイムロウ城上空まで戻って来ています。
上から見る限り何の変化も無いようです、僕を襲った男の言っていたルージュを落とすと言うのはまだ先のことなのでしょうか?
兎に角、竜騎士の男性に城の前に降ろしてもらう事にします。
「兄様?まだ大会は終わってない筈ですけど・・・何か有ったのですか?」
城内を進んで行くも普段と変わり無い様子で、難無くエルの所まで辿り着けました。
「エル!無事ですか!?何か変わった事は起こっていませんか?」
「え?ええ、何の問題も有りませんよ、父様の調子もだいぶ良くなって来ていますし」
まだ、と言うことなのでしょうか?
思わず気を抜きそうになった所に爆発音と城を揺らす振動が響いて来た。
「え?!何ですか!今の音は?!」
「この音・・・父さんの寝室の方から!?」
僕は慌てて駆け出します。エルから今はだいぶ調子が良くなったと聞きましたけど、父さんも病み上がりの身、襲撃に対応できるとは思えません。急がないと・・・
父さんの寝室に着き目に飛び込んできたのは、破壊された壁と赤い炎に包まれ燃える父さんの寝ていた筈のベッド、馬車ぐらいの大きさをした黒い毛並みを持つ双頭の狼の魔獣、最近良く魔獣や魔物の襲撃が有りますね・・・
そして父さんは、その狼に自身の身の丈ほどの大剣を振り回し斬り掛かる・・・父さん回復しすぎなんじゃないでしょうか?
「ふん!!畜生風情が!私をどうにかできると思うなよ!!」
「父さん!!」
良かった、部屋はボロボロだけど父さんは無事、むしろ元気すぎるくらいだ。
「兄様!いったい何が・・・!!」
遅れて付いて来てたエルも状況を見て息を呑む。
「ライネスにエルナスか!いい所に来た!」
父さんが僕たちに気付き声を張り上げながらも魔獣に斬りかかりますが、父さんの剣は魔獣の体毛によって弾かれてしまい、全く傷を与えられていません。
この魔獣、戦場で古代遺物を守っていた奴と同種の魔獣でしょうか?
「襲撃ですか父様!!」
エルが現状を理解しようと問いかけますけど、アレは聞くまでも無く敵、おそらくは僕を襲ったローブの男によるもの・・・僕は一足先に攻撃を開始します。
「我が内に眠りし紅き力に炎を灯す・・・」
マテリアさんに消された僕の魔力は殆んど回復していません、でも、リョウとの契約で得た紅い魔力が有ります。
「汝、猛る灼熱の赤
我が手に集いし炎は槍となり
敵を貫け 『フレイムランス』!」
紅き魔力で生み出した炎の槍を魔獣に放ちますが、やはりこの魔力・・・僕の本来持つ魔力と質が違う、炎の槍は紅い魔力の影響で炎の大槍と成り魔獣の腹に突き刺さり炎を上げる。
「燃えるなら外でやっていろ!」
悲鳴を上げながら燃える魔獣を父さんが大剣を振りかぶり外に打ち出しました。やはり回復しすぎではないでしょうか?良い事なんですけどね。
僕は下で苦痛に暴れる魔獣に止めを・・・
「汝、灼熱する赤
雄々しき姿は円柱
天より貫け朱き焔よ 『フレイムフォール』」
炎の柱が魔獣に降り注ぐ、炎は魔獣を包み込み燃やし尽くさんと燃え上がる。
「兄様、城内のほかの場所にも魔獣が出現しているようです」
エルに向き直ると、兵士が報告にを終え駆けて行く所でした。
もう一度外を見渡すと城内のいたる所で戦闘が行われているようです。
「あの魔獣に武器による攻撃は通りません、魔法の使える者を向かわせて下さい!僕も直ぐに向かいます!」
駆けて行く兵士の背中に呼びかける、兵士は「了解しました」と返事をして駆けて行きます。
「さて、僕も行きます。エルは父さんに付いていて下さい」
「ライネス、あれはいった何なのだ?」
「詳しい事は僕が予定より早く帰ってきた理由も含めて後で話します」
城内で暴れる魔獣に対処すべく、僕も駆け出します。
フリージアで魔法を使った時も感じましたが、リョウとの契約で得た紅い魔力による魔法の行使は、本来の僕の魔力で魔法を行使するよりも威力が上がるようです。
古代遺物を守っていた魔獣を倒した時のように高位の魔法を使わなくても魔獣に対応できています。これなら城内の魔獣を片付けるまでは持ちそうですね・・・
リョウとの契約で得た命と力、未来の為に存分に奮いましょう!!




