三章9話 天剣、準決勝
「ふ~ん、それでライネスさんにまで供血しちゃったんだ?ま、本人が了承したならいいのかな?」
夜、宿でリアに今日ライネスに供血した経緯を話す、それと、これから大会中に何か起こりそうだと言うことも話しておく、これでリアも何か有った時に上手く動いてくれるだろう。
「とにかく何か起こりそうなんだよね?分かった、気をつけておくわ」
「あぁ・・・リアも含めて各国の重要人物が集まってるからな、殺られちまわないように頼む」
ライネスを襲ったのは魔法使いみたいだし、リアの力なら魔法使いをほぼ無力化できるな。
ま、今何が起こるか考えても仕方ない、明日も試合だし、今日はもう休むことにしよう。
『それでは準決勝第一試合を始めます!』
リングの上に立つのは俺と・・・
準決勝第1試合
深紅の魔王 奏天の冒険者
リョウイチ アカヤ 対 リジア フリージア
フリージアの代表に挨拶をしに行った時に留守番をしていた男・・・
「よ、こんなトコまで残ってたんだな、さすが魔王ってか?」
「魔王って呼ぶな、自分で名乗った訳じゃねぇ」
ったく、ライネスが余計なこと言ったせいだな、今度絞めよう・・・
「はぁ・・・まぁいい、さっさと終わらせるぞ」
リジアは双剣使いのようだな、軽く装飾された剣を両手に持ち構えている、ふむ、来ないならこっちから行くぞ、身体強化して突っ込む。
俺は両の拳、リジアは双剣、拳と剣で打ち合う。
俺の繰り出した拳をリジアが剣で受け流す、その際に流れのまま腕を斬りつけて来るけど身体をずらしてかわす。追撃を拳・・・手甲で受ける。
「ちっ・・・」
手甲が軋んだ、思ったより威力が有るな、あまりまともに受けない方がいいな。
こいつ相当な腕前だ、左右の剣が攻防を巧みに切り替え俺を襲う、少し変則的だが同じ双剣使いのソルダと訓練してなかったら付いて行けてなかったかも知れない。
俺も両手で手数は変わらない、でもリーチが剣と拳じゃこっちが不利だ、だから足も使う。
防具は付けていないが鉄血で強化すれば問題無い。
「お前は動きに無駄が多いな、力は俺以上なのにもったいない・・・」
俺の戦い方は街の不良共を相手にしていた時の喧嘩レベル、動きに無駄が多いとか言われても仕方ないだろうな、それでも結構やってこれたんだが・・・リジアはそうはいかないみたいだな。
強化状態の俺の攻撃が双剣によって受け流される、攻撃後の隙に双剣の攻撃が俺に迫り離脱、それの繰り返しだ。
「ちっ、魔剣武装!」
懐に忍ばせておいたミーナに貰った短剣を魔装、即衝撃波を放つ。
「カオスアルマか・・・万象を奏でる『風斬り』」
リジアは即座に右手に持つ双剣を振るう、すると、そこから鎌鼬が発生し俺の放った衝撃波を打消した。
「(今剣が碧色の光を帯びていた・・・)それも魔剣か?」
「だったらどうする?これもその力で取り込んでみるか?」
あぁ、やってやらぁ。
「今の俺は魔剣が相手なら負けない」
「さて、どうだろうな?」
余裕こいてられるのも今の内だ、一度魔装を解く。
「万象を奏でる『水流』」
水が頭上から俺に襲い掛かってくる、それを避けながらリジアに突っ込んで行く。
「万象を奏でる『雷撃』」
げ!ちょっと待て、今辺りは水浸しだぞ!
「ちっ!魔剣武装!!」
上か!?雷が落ちてくる、もう一度魔装して衝撃波を放ち地面に落ちる前に全て消しきる事に成功する。
「くっ!!」
でも一息ついている暇は無い、俺が雷を消している間にリジアが側まで間合いを詰めて来ている。
「万象・・・双剣風華!!」
リジアの双剣が風を纏い高速で無数の斬撃を放つ、これの距離では・・・避けられないか。
喰らう覚悟を決めて出来るだけ拳で弾きながら突っ込む。
「な、突っ込んで来やがった!?」
避けるか防ぐかすると思ってたのだろう、リジアが驚き戸惑ってるうちに剣を掴む事に成功する。少なからずダメージは有るがこれで・・・
「力を秘めし魔の刃・・・
今一時、この身体は汝を糧とする・・・
理を越え、朽ちたるこの身体に魔を宿す・・・
朽ちたるこの身体をを鞘とする・・・」
「くっ!しまった!」
「魔剣武装!」
―バキン―
「あれ?」
妙な音と共に手が剣から弾かれる、どうなってるんだ?
―バタ―
あれ?俺、倒れた・・・?
「お、おい?どうした?!」
ちょっと待て、身体・・・動かないぞ・・・
準決勝第1試合勝者
奏天の冒険者 リジア フリージア
落ちていく意識の中、審判によるリジアの勝利宣言を聞いた・・・
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「リョウは大丈夫なの?」
試合中に気絶したリョウイチは、闘技場の医務室のベッドで寝かされていた。今は試合後直ぐにリョウイチの元に飛んで来たマテリアがリョウイチの診察をした治癒士に話を聞いていた。
「全く問題ない、身体は健康そのもの、今はただ寝ているだけだから心配する必要無い」
試合中、リョウイチの体に付いた軽い傷は医務室に運ばれた時点で既に完治していた為治癒士はただ状態を確認しただけで何も治療を行っていない為、普通なら不安に思うのだろうけど、マテリアはリョウイチの異常な自己治癒力を知っているのでその言葉のみで安心し胸をなでおろした。
「ったく、急に倒れるから驚いたぞ、問題無いみたいだし後はアンタに任せるな」
リョウイチの試合相手だったリジアも急に倒れたリョウイチを心配して、共に医務室まで来ていた。
「はい、ありがとうございました」
「はは、俺はなんもしてないけどな・・・」
そう言ってリジアは医務室を出て行き、治癒士も怪我人が出たと呼ばれ出て行き、医務室にはリョウイチとマテリアだけとなった。
「まったく、何が起こるか分からないんだから・・・寝てる場合じゃないよ」
マテリアは穏やかな表情でリョウイチが目を覚ますまでずっと、その寝顔を眺めていた。