一章1話 異世界
身体の痛みで意識が覚醒する、どうやら足が折れてるみたいだ。
まぁ、空から落ちてきて骨折だけで済んだのは下になんかクッションになる物があったからなんだけど、咄嗟の事で身体強化を忘れたのがいけなかったな、してりゃどうってことなかったのに・・・
「(とりあえず、自己治癒強化)」
しばらくしたら歩けるようになるだろう、さて・・・
「ここはどこだ?」
今俺が居るのはやたら高そうなベッドの上だ、少し周りを見るとだいたい10畳くらいの広さの部屋なんだが全体的に高級そうな調度品で調えられていた。
外国じゃなくて、ここ異世界だよな?誰か現状を説明できる奴いねぇの?
おっ、骨折の治療終わった、いつもより早いな、ん?あ~足手当てして有るな・・・気づかなかった。
まぁいいや、とりあえず外して、よし、腹減ったし探索するか。
ここは、厨房か?何か食い物もらえないかな・・・てか、ここでの俺ってどういう扱いだ?
怪我の手当てとか寝かされてた場所から見て敵対されてる訳じゃないみたいだけど、まぁ、どうでもいいか。敵対されたら全部ぶっ飛ばせばいいだけだ。
「あれ?どうしたんですか?」
厨房からエプロンをつけた男の子がこっちに気付きやって来た。
「何か食いもん無い?出来れば肉がいい」
「食べ物ですか・・・もう皆さんの昼食は終わっているのでまともな物は残っていないんですけど、ボクたちの賄いでよかったら一緒に作りますよ」
賄いか・・・まぁ食えればなんでもいいか。
「んじゃ頼む」
「はい!ちょっと待っててくださいね」
近くにあったテーブルに着き厨房の様子を見る、
見たことの無い野菜や見覚えの有る野菜が次々と切り刻まれていく、野菜が空中でどんどん細かくなっていく。白い液体、ドレッシングかな?がかけられて多分サラダが完成した。
次に厨房の隅に有る鉛色の箱からでかい肉の塊・・・ハムか?を取り出して薄くスライスしていく。皿に盛り付けて完成か?
で、アレはパンか?塊、一斤丸々取り出してこれも食べ易いように切っていく、完成。
「出来ましたよ~」
おお、見事な包丁捌きだったな。でもコイツ切る以外の調理をやってねぇ・・・まぁ、とりあえず今は食えればいいか。そのうちエルリオールの食材や調理法を調べとかなきゃいけないな。
腹を満たし男の子にお礼を言い探索を再開する。
見た感じは西洋の城、結構歩いているのにさっきの男の子以外の人に出会わないのは何故だろう?ただ単に人が少ないだけか?適当な部屋をチョイス・・・
開く、閉じる!
しまった、中に着替え中の女の子が居た、迂闊に扉を開けた自分を殴りたい、とりあえず女の子の悲鳴が聞こえる前に逃げ出そう。
だが俺が焦って逃げ出した後に悲鳴が響くことは無かった。
____________________________________________________________________
今のは昨日の・・・足を骨折していた筈なのにどうして動けるの!?
急いで着替えを終えて、逃げて行った彼の後を追う。
彼は何処に行った?この離宮、働いてる人は少ないけど結構広い、まずは彼を寝かせていた部屋を見に行ってみようかな・・・
部屋はもぬけの殻だった、彼の寝ていたベッドの上には治療した時に使った包帯などが乗っていた。
後は適当に探すかここで待つかだけど・・・彼がここへ戻ってこれるかどうか・・・
魔法の作用しないここで、どうやって怪我を治したのかも気になるし・・・うん、探しに行こう。
____________________________________________________________________
え~何事も無く逃げられていたかと思います。ただ・・・
「迷った、ここ何処だ?」
建物の外に出てしまった。この建物の近くに銀色の城が見える、ここは離宮とかかな?で、俺が今居るって・・・
「誰だ?兵士以外がここで何してる?」
あきらかに兵士な人に声をかけられた。まぁ、訓練所っぽい所だから兵士が居ても可笑しくないな、せっかく出会えた人間だ、とりあえず話をしよう。
「あ~ここ何処だ?」
「どこだって、まず質問に答えろ、お前は誰だ、ここで何してる」
ち、めんどくせぇ奴に当たったな、ぶっ飛ばしたくなってきたが、ここは大人しくしておくか・・・
「赤夜 涼一、迷子だ!」
あ、言ってて情けなくなってきた・・・この歳で迷子ってどうだよ。
「ふむ、やはり知らん名だな・・・侵入者ってことか、拘束しておくか」
待ておっさん、こらこら丸腰相手に剣を抜くな!キレるぞ!
「(鉄血)」
俺の右腕が鋼色変化する、俺の持つ能力、身体能力強化の1つ身体の硬質化で腕から手の先を強化して兵士の剣を掴む。
ただの脅しで剣を抜いただけなんだろうな、俺の手には傷1つ付かなかった。そのまま力を込める。
「な!動かん!」
必死に剣を引っ張る兵士が笑える、まぁ、何時までもこんなおっさんに付き合ってる気は無いため、おっさんが剣に引く力を込めた瞬間に手を離す。
尻から盛大に転びやがった、内心爆笑しつつ足に強化をかけ建物内に隠れる、俺が突然消えておっさんは辺りを見回しているが、何時までもおっさんを観察している趣味は無い、再び適当にうろつくことにする・・・迷子?さぁ?どうにかなるだろ。
____________________________________________________________________
「はい、銀髪の男の人なら先程来ましたよ、何か食べたいって言うんで賄いを一緒に食べましたけど・・・もしかしてあの人大事なお客様ですか!?どうしようボク賄なんて出しちゃって!」
「あ、大丈夫よ別に客って訳じゃないから(正体不明だしね)・・・」
彼の目撃者を探して離宮内で聞き込みをしていくと、厨房で見習い料理人のウリンさんが彼に会ったみたい。
「何処に行ったか分かる?」
「すみません」
仕方ない、また聞き込みをしながら探しましょうか・・・
銀髪の人なんて私たち以外は珍しいから直ぐに見付かるでしょう。
____________________________________________________________________
どうしてこうなった?
俺は今数人の兵士から身を隠しながら逃げ回っている。さっきの兵士が仲間を呼んだのか?
「おおおお!どこだ!!」
「探せ、だが注意しろ、相手はこの離宮周辺にも拘らず強化魔法を使うぞ!」
「おい、リア様も侵入者を探してるって話だぞ」
俺が何をした?さっきの事故、女の子の着替え中の部屋の扉を開けたのは有るが・・・
ドア越しの会話を聞きながら、息を潜め兵士たちが過ぎるのを待つ・・・さてどうするかな。
―トントン―
不意に誰かに肩をたたかれる、え?多少焦っていたとはいえ、俺人が居る部屋に隠れたのか!?
恐る恐る振り返ると俺と同じ銀色の髪をツインテールにした俺より少し幼いくらい(12歳位か?)の美少女が微笑んでいた。
「や、やあ、ははは・・・」
やあ、じゃねぇよ!ちょっと落ち着こう・・・
「リリカと同じ、銀髪・・・お兄さん?」
誰が兄さんだ!俺は一人っ子だ!っといかんいかん、落ち着け俺。
落ち着いた?よし、逃げよう!
「お兄さん待って」
「ぶっ!」
逃げようと扉に手をかけた俺腰に少女が飛び付く、
勢いで扉に顔をぶつけたがたいしたダメージでは無い。
「逃げなくていいよ、アタシも隠れてるとこだから」
この子が何から身を隠しているのか知らないが何時までもここに居るのはまずいと思うんだが・・・
扉の向うはさっき俺が扉にぶつかった音に気付いたのか人の気配が集まってきている。
「窓から逃げるか・・・」
「あ、アタシも連れてって!」
・・・・・・・・・
「きゃ!」
ち、駄々こねられるのも厄介だし仕方ないか、俺は少女を抱き上げ窓から外に出る。誰も居ないことを確認して足に強化をかける。
「口閉じてろ、舌噛むぞ」
「ん!」
少女が口を閉じたのを確認した後一気に跳ぶ、数瞬の浮遊感の後俺たちは離宮の屋根に降り立った。
ここならしばらく見付からないだろう、少女を降ろして一息つく。
「うわぁ・・・お兄さん凄い、こんなトコまで跳んじゃうなんて凄い凄い!」
ん?確かに30メートル位跳んだが、ここって魔法とかが有る世界だろ?これくらい騒ぐようなことか?
「あんまりはしゃいで落ちるなよ」
はしゃぐ少女を気にしつつ屋根に腰を下ろしこの世界の風景を眺める、此処ってやっぱ何処かの城なんだな、少し離れた所に立つ銀色の城、それの周りにこの建物のようなのがいくつか存在する、それらを纏めて囲む城壁、正面に位置する城門の先に街並みが広がり、城と街の両隣は森が広がっている、で背後に険しい山を背負っている。
ここが異世界か・・・兵士や城を見たぐらいじゃ実感できなかったけど、これは・・・
「ファンタジーだな」
「ファンタジー?」
少女がいつの間にか俺の背に乗っかっているが気にしないでおこう、それより・・・
「お前なんで隠れてたんだ?」
「お前じゃなくてリリカです。リリカ シルバーリーフ」
ふむ、名前は、名、姓か、なら・・・
「そうか、俺は涼一だ、リョウイチ 赤夜、リョウでいいぞ。
で、リリカはなんで隠れてたんだ?」
「アタシはリアお姉様に会いに来たの、でもおリア姉様に会うのはお父様に止められてて、だからこっそりと会いに来てるの!」
そうか、俺を探す為に兵士が動き回ってるから、見付からないように移動できずにあそこに隠れていたのか・・・
「リョウお兄さんは?この城の人じゃないですよね?」
それどころかこの世界の人間でもないな、正体の分からない相手に連れて行ってと言うこの子は大丈夫か(頭とか)・・・
「あぁ、気が付いたらベッドで寝かされていた。
暇なんで探索してたんだが・・・不審者扱いされている」
「う~ん、ここの人たちはアタシを見つけると城に連行するからアタシじゃ何も出来ないの、リアお姉様が見付かればなんとかなるんだけど・・・あ」
リリカの視線が下に向かう、俺もそっちを向いてみると、俺と同じ年頃の女の子が何かを探しながら歩いているのが見えた。
「リアお姉様~」
どうやら彼女がリリカのお姉さんのようだな。リリカの声が聞こえたのだろう彼女は上を、俺たちの方を見上げ驚きで目を見開いた。
「リリカ!どうやってそんなトコに!危険だから降りてきなさい!」
「待って~駄目なの、リョウお兄さんが捕まっちゃうの!」
「??」
「あ~、とりあえず彼女も連れて来たら良いか?」
リリカの肯定後、俺は身体を強化して屋根から飛び降り・・・
「あ!」
リリカと同じようにリリカの姉を抱かかえ上に戻った。
「ほいっと」
「ふぁ~やっぱりリョウお兄さん凄いの!」
「ほんと、魔法無しで人一人抱えてこの高さを跳べる人なかなか居ないわよ。
それにしても、やっと見つけたわ!」
「へ?」
下ろした途端腕を掴まれた。あれ?俺捕まった?まぁ、振りほどくぐらいわけないんだけどな。
「もう、怪我人が急に消えたら心配するでしょ!」
あ~、この人が俺の手当てしてくれてたのか。
リリカ同様銀髪だが銀というより白に近いな、まぁリリカ同様美人さんだ。
「それで、怪我は大丈夫なの?まぁ、あれだけ動き回れていれば大丈夫でしょうけど・・・
いったい何をやったの?この辺は(私が居るから)魔力がまったく使えない筈なんだけど?」
そうなのか?魔力が使えない、だから俺が屋根まで跳んだのをあんなに凄いって言ってたのか。
「どうって、自己治癒?」
「どうして疑問系のかしら?まぁいいわ、馬鹿げた身体能力を持ってるみたいだし、治癒力が高くても驚かないわ。
それより、あなたにお礼を言わなきゃね、ありがとう、あなたが居なかったら私は昨日の夜、死んでいた」
はぁ・・・?なんのことだ?昨日の夜ってことはエルリオールでの最初の・・・あぁ、空から落ちた場所の近くに居たのか?そん時の何かが偶然彼女を助けたんだろうが、むしろ俺の治療をしてくれたことを感謝しないとな。
「いや、礼はいい、唯の偶然だ、こっちも怪我の治療してもらったみたいだしな。
それよか下の奴らを何とかしてもらえないか?俺あんまりうざいと殲滅するぞ」
「あぁ、うん、大丈夫、あなたが追われているのが分かってたから、
皆には私のお客さんだって話しておいた、だから戻っても大丈夫よ」
ふう、ならとりあえず落ち着いたってことだな。
「それで、リリカはまた私に会いに来たの?」
「うん」
「もう、来てくれるのは嬉しいけど、あまり頻繁に来ちゃ駄目よ」
2人が話し込み始めた、俺どうしよう?この2人をおきっぱなしにしたら下に降りられないだろうし、待つしかないのかなぁ?
「とりあえず部屋に戻りましょうか」
お、帰るみたいだな。んじゃ、2人を集めて抱えて下に降りる。
で、戻った部屋が俺の寝ていた部屋だった。
「とりあえず自己紹介ね、私はマテリア、マテリア シルバーリーフ、一応この子の姉だけど、私たち以外の人が居る時はそのことは忘れてちょうだい」
ん?何か訳有りか?まぁどうでもいいけどな、下手に首突っ込んでも良くないしな。
「そうか、俺はリョウイチだ、リョウイチ アカヤ、リョウでいい」
「リョウね、私のこともリアでいいわよ」
そのあと少し話をしてリアの言うお礼に、しばらくここに留まって欲しいと言われた、エルリオールに来たばかりの俺には、寝床が確保できるのはありがたいのでその提案を受けることにした。
ここに居る間にエルリオールの知識を出来るだけ詰め込むとしようか・・・
その日の夜、俺は1人屋根の上でエルリオールの夜景を眺めていた。元の世界ほど街の明かりが強くない為か?空気が澄んでいるからか?星空が綺麗だ。元の世界より大きく感じられる青い月も少し欠けているが美しいと言える・・・
まだエルリオールに来て1日だけど今日だけでもなかなかに楽しめた。俺は・・・
「親父、悪いな・・・俺はやっと自分に合った世界を見つけた。もう、そっちには帰らねぇ」
青い月を見上げながら元の世界の親父に告げる、その声は決して親父に届く事は無いけど、俺は向うの世界に最後の別れを告げた。
さて、明日はどうするかね・・・
キャラ設定とかあったほうか良いか?
無くて良い様ならこのまま行こうと思う。