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第4話 - 転生した妖怪ハイブリッドの新たな人生

――世の中、どれほど見た目を取り繕おうが『オリジナルの本質』をすり替えることなんてできやしねえ。真実ってのは、現実を直視する覚悟を決めた奴だけにしか見つからねえもんだ。耳を塞ぎ、目を逸らして都合のいい嘘に逃げる連中は、一生おめでたい無知の檻の中で眠ってりゃいいのさ。

朝が訪れ、カーテンの隙間から差し込む陽光

が部屋をじんわりと照らし出していた。そしてベッドの上には、俺――いや、俺の顔の皮を被った『ナニカ』が無防備に転がっていた。全身に浮かび上がった漆黒の刺青のような呪印。まるで俺の体そのものが、生きた禁忌の呪物へと成り果てちまったかのようだ。


重い瞼を押し上げると、見慣れた天井の木目が最初に視界へ飛び込んできた。数秒間、ぼんやりと天井を見つめた後、首を横に向ける。昨晩起きた肉体崩壊のトラウマを、なぜか脳みそが「ただの悪夢だ」と必死に自己暗示をかけてやがる。正体不明の違和感を無理やり脇へ放り投げ、俺は上体を起こした。


その瞬間、手のひらにべっとりとした湿り気を感じた。触ってみれば、案の定ベッドシーツがぐっしょりと濡れそぼっている。


(クソッ、シエルの野郎……! また俺のベッドで涎垂らし放題のナイアガラやらかしやがったな?! 今度こそ力づくで洗濯板の刑にしてやる……マジで勘弁しろよ!)


ため息交じりに頭を振る俺は、その濡れた犯人が自分自身の変異脂汗だとは露ほども気づいちゃいなかった。湿ったシーツを引っ剥がして洗濯カゴへ放り込み、洗面所へ向かう。歩き方がどこか異様に軽い。それどころか、肉体のキレがデタラメに向上している気がする。……だが待て、俺が最後にジムで筋トレしたのなんざ2年も前だぞ。なんでこんなバキバキに仕上がってんだ?


好奇心に背中を押されるまま洗面所に入り、電気をつけた。そして鏡の前に立った瞬間――俺の脳髄は完全にショートした。明晰夢と悪夢をミキサーにかけてブチまけたような光景。もしこの世に「ガチの絶望とパニックが刻まれた人間の顔」の品評会があるなら、今の俺のツラは満場一致で金賞受賞モンだったはずだ。


**「うぎゃああああああああああッッ!! な、な、なんじゃこりゃあああああああッッ?!!」**


タイル張りの洗面所に俺の絶叫が木霊した。目玉がソケットから飛び出るんじゃないかってレベルで瞳孔が見開かれる。ただの貧弱な高校生だったはずの肉体が、まるでオリンピック選手みてえに鋼のように引き締まってる。それだけじゃねえ。夢の中の幻影だと信じ込もうとしていたあの幾何学的な呪印が、皮膚の下で鈍いシアンブルーに脈動してやがった。さらに言えば、黒褐色だった地毛は骨白色(ボーンホワイト)のシャープな短髪へ染まり、両目は冷徹なアイスブルーの輝きを放っている。


(嘘だろ?! 嘘だ嘘だ嘘だあああああッッ!! こ、こんなの現実にあるわけねえ! 夢だ……そうだ、絶対ただの悪夢の続きだ! 顔洗って早く目覚ませ、俺!!)


俺はみっともなく現実逃避にすがりついた。往復ビンタで自分の頬をバチンバチンと引っぱたいてみる。ただ頬がジンジン痛むだけで、鏡の中のイケメン化け物は消えてくれない。今度は濡れタオルをひったくり、肩の刻印を皮膚が擦り切れる勢いでゴシゴシ擦り始めた。妹のシエルが油性マジックで悪質な落書きイタズラでも仕掛けたんだと思いたかったが……あいつにこんな精密な幾何学模様が描けるわけねえし、マジックインクは青く自発光なんかしねえ。


どれだけ皮膚を真っ赤に擦ろうが、刻印はミリ単位も剥がれやしなかった。まるで細胞そのものに接着剤で焼き付けられたみたいに。……蛇口に手をつき、荒い息を吐きながら俺は悟った。これはフィクションのファンタジーなんかじゃない。紛れもない現実であり、俺はシラフで覚醒してやがるんだ。


(……マジかよ。夢じゃねえのかよ……。夢であってほしかったが、受け入れるしかねえ。これが今の俺だ……。って待てよ? これが夢じゃねえってことは……俺、昨夜ガチであの化け物どもと殺し合いしたってことかよ……?!)


その自覚は、超音速のスレッジハンマーのように俺の胸板を粉砕した。そして同時に、死んでも思い出したくなかった最悪の記憶がフラッシュバックする。手遅れだった。


胃袋が激しく痙攣した。俺は便器へダイブし、陶器のフチに爪を立てて猛烈に嘔吐した。内臓がひっくり返るほどの嘔吐感。脳裏に甦るのは――手足を惨殺され、四肢をもぎ取られた血みどろの路地裏で、俺があのクロガシャ(悪鬼妖魔)の頸動脈に食らいつき、そのドス黒い呪血をまるで炭酸ソーダみてえにゴクゴク貪り飲んだ瞬間の映像だ。


胸糞悪いなんてレベルじゃねえ。だが当時の俺に選べる道は二つしかなかった――路地裏で家畜みてえに解体されて無様に野垂れ死ぬか、それとも己を地獄に叩き落とした元凶の血肉を喰らってでも復讐を果たすか。


(マジで信じらんねえ……あんなヘドロを飲み干したのか俺は……?! クソッ、思い出しただけで舌の奥にタールみてえな悪味が甦りやがる……神様、当時の俺は一体何をトチ狂ってたんだよ……)


昨日の学食の残飯と一緒に、ジュウジュウと泡立つ奇妙な黒い粘液が吐き出された。自分の吐瀉物をじっくり鑑賞する趣味なんざねえので、即座にレバーを引いて全水流フラッシュ。そのままシャワールームへと雪崩れ込んだ。熱湯を頭から浴びながら、信じられないほど引き締まった自分の肉体を撫で下ろす。高校生活に向けて「武道でも習って体を絞るか」なんて呑気な妄想はしてたが、まさか魔獣の血をドーピングして一晩で頂点捕食者ボディを手に入れるとはな。チュートリアル全スキップにも程があるだろ。


シャワーを浴び終えた数分後、俺は予備の学生服に袖を通した。濃紺のブレザー、糊の効いた白シャツ、そして同色のスラックス。首元に緩めたネクタイを引っ掛け、靴下を履いてから、去年のクリスマス以来シエルが「貸して!」と執拗にねだり続けていたスニーカーに足を滑り込ませる。身支度を整えた俺は、ベッド脇の木製引き出しを開けて予備の丸メガネを取り出した。


(伊達メガネだろうが視力矯正だろうが、予備は常に一本作っておくのが鉄則だ。路地裏で化け物に踏み砕かれることだってあるんだからな……つーかこのフレーム、俺の小遣い半月分も吹っ飛んだ高級品なんだぞ!)


ネクタイの結び目を直しながら廊下へ出る。だが――何かが決定的に狂っていた。普段のこの家なら、妹シエルの「過剰ハイテンション伝染病」で朝から騒音公害レベルでやかましいはずなのだ。アニメのOPを爆音で歌い、ドタバタと床を踏み鳴らす怪獣の気配が、今朝は微塵もしない。まるで廃墟に迷い込んだかのような不気味な静寂。


(あいつ、そこまで寝相が良いわけじゃねえしな……まさか俺の油断を誘って、角からドロップキックでもブチかます待ち伏せ作戦か? ベタすぎるだろ)


慎重に階段を降りて1階へ。リビングは完全な沈黙地帯(デッドゾーン)。テレビは消え、キッチンにも人影はない。


妙だな。


(珍しいこともあるもんだ。今朝は俺の方が早起きらしい。しゃあねえ、たまには出来た兄貴面して二人分の朝飯でも作ってやるか。どうせあいつの注文なんざ昨日と寸分違わず同じ――『ケチャップ無しのチーズオムレツ3個』に決まってんだからよ)


いつものエプロンを引っ掛け、ボウルに卵を割り落とす。だが、コンロに火を点けた瞬間――俺の知覚が恐るべき高解像度ワールドへと跳ね上がった。冷蔵庫のコンプレッサーが放つ微細な電磁ノイズの唸り声まで鼓膜に届く。それどころか、半径100メートル以内のあらゆる生体情報がレーダーのように立体マッピングされていた。リビングの壁の隙間をササッと這い回るゴキブリの六本足の足音まで、鮮明に知覚できるのだ。


そして何より狂ってたのは、この肉体の『超反射速度』だった。振り返りもせず、俺は調味料ラックから木製の爪楊枝を一本掴み、指先で真っ二つにパキッと折った。そのまま手首のスナップだけで背後へフッ――と弾く。


ピシュンッ!


見れば、リビングの端にある巾木の上で、あのゴキブリが絶命してピクピク痙攣していた。折った2本の爪楊枝が、寸分の狂いもなく急所2箇所を完璧に貫通し、標本のように壁面へ縫い留めてやがったんだ。


(うっわ……マジかよ。今の一撃、自分で言うのもなんだけど死ぬほどカッコ良くね?! ギャハハハハ!)


心の中の勝利ファンファーレが鳴り止んだのと同時に、チーズがとろける熱々のオムレツ皿をテーブルに並べ終えた。カチャリ、と小気味いい金属音を立ててドアノブが回り、勢いよく扉が開け放たれる。朝からこんな演劇の主役みてえなドアの開け方をする奴なんざ、この地球上で一人しかいねえ。


(ほら来ましたよ。我が家の暴君女王、威風堂々の朝のご降臨だ)


**「忠実なる下僕ども、おっはよ〜〜っ! そなたたちの女王が永き眠りより目を覚まし――……て、あれぇ??」**


ドヤ顔の決めゼリフが、俺の姿を捉えた瞬間に喉元でピタッと凍りついた。キッチンに訪れる完全な静寂(デッドサイレンス)。互いの視線が空中でガチッと交錯する。沈黙。シエルはまるでヘッドライトに照らされた子鹿のように固まり、俺の激変したツラと肉体を穴が空くほど凝視していた。


……もっとも、その頭の悪そうなキョトン顔を見る限り、目の前に立ってるのが一体誰なのか1ミリも理解できてねえのは明白だったがな。


「あらぁ? こんにちは〜」シエルは小首を傾げ、甘ったるい笑顔を作ってみせた。「こんな爽やかな朝にお客さんが来てるなんて知らなかったな〜。もしかして貴方、この家に引っ越してきたい芸能人の方ですか? それとも……ウチの『愚兄モラックス』のお友達?」


「……愚兄ぃ??」


「うん。誤解しないでほしいんだけど、ウチの兄って見た目だけはメガネかけて秀才っぽく装ってるけど、中身は筋金入りのポンコツバカだからさ」


(……うわぁぁぁぁ! 知ってた! 薄々勘づいてはいたけど、見知らぬイケメン(※俺)の前で実の兄をここまでボロクソに売り飛ばすか普通?!! お前の血を分けた兄貴だぞコラ! なんたる裏切り! どの面下げて俺のオムレツ食おうとしてやがるんだシエル!!)


超感覚のおかげで、聞き間違いの余地なんてゼロ。彼女の本心100%の辛口レビューだった。


「それでそれで、芸能人さんのお名前は?」シエルが瞳を輝かせる。


「……あー、シエル?」


「うん! それは私の名前! で、お兄さんは?」


「マジで気づかねえの……? 俺だよ。お前の『秀才っぽい愚兄』のモラックス本人だ」


「あはははは! めっちゃウケる! 冗談きついですよ〜」シエルはお腹を抱えて爆笑した。「あり得ないから! 天と地がひっくり返っても貴方がウチの兄貴なわけないじゃん! だって客観的に格付け評価するなら、ウチの愚兄はせいぜい**【4.5点/10点満点】**だけど、貴方は余裕で**【12点/10点満点】**の国宝級イケメンだしぃ〜〜!」


「……お前、マジで分からないのか? ガチで?」


「うん! こんな彫刻みたいなイケメン、人生で一度もお目にかかったことありませーん!」


俺は腕を組み、ニヤリと口角を吊り上げた。「上等だ。お前がぐうの音も出なくなる『動かぬ証拠』を突きつけてやるよ」


「へぇ〜? それは一体どんな証拠かしら、偽物さん?」シエルが得意げに胸を張る。


「……お前が小学生の時、料理番組の真似事をしてフライパンを大炎上させ、うちのキッチンを半焼させかけた黒歴史、覚えてるよな?」


ド直撃。


その瞬間、シエルの白い頬が一瞬でリンゴみてえに真っ赤に沸騰した。口がパクパクと金魚のように痙攣する。それもそのはず、その極秘トラウマは家族以外の人間が絶対に知るはずのない家庭内最高機密だ。そして『目の前の超絶イケメン=本物の兄貴』という事実が脳内で強制連結した瞬間――先ほど自分がぶちまけた「愚兄は4.5点」「ポンコツバカ」という暴言の数々が、ブーメランとなって彼女の頭頂部に突き刺さった。


シエルは俺と目を合わせるのを必死に避け、視線をあちこちに泳がせながら茹でダコのように縮こまる。


今すぐ盛大に煽り倒して勝利のステップを踏んでやりたい衝動に駆られたが、これ以上傷口に塩を塗りたくるのも大人げない。俺はため息をついて席につき、冷めかけたオムレツを口に運んだ。その後の朝食タイムは、まさに地獄の質問攻めだった。自分自身すら何が起きたか分かってねえのに、答えようのない質問がマシンガンのように降り注ぐ。俺は世界中の全兄貴がやるように、必死でデタラメな嘘を並べて誤魔化し倒した。


朝食を終え、俺たちはカバンを掴んで登校の途についた。シエルの質問攻めは外に出ても止まらない。底なしの質問帳でも隠し持ってるのかって勢いで、俺が答えようのない疑問を投げつけてくる。だが、通学路を歩き始めた瞬間――周囲の空気が一変した。


すれ違う生徒という生徒が、全員ピタリと足を止めて俺たちを凝視してやがる。いや、ハッキリ言おう。誰もシエルのことなんざ見てねえ。全校生徒の視線が、1本のレーザービームのように俺一人へと突き刺さっていた。まるで漫画の主人公か、お忍び登校中の若手トップアイドルでも見るかのような好奇と憧憬の眼差しだ。


シエルは周囲の異様な熱気に気づくや否や、俺の腕にギュッと抱きつき、所有権を主張するように腕を絡めてきた。ベタベタくっつきながら質問を続けてくるが、まあ周囲のヒソヒソ声を紛らわす盾としては悪くねえ。


だが、彼らの反応も無理はなかった。ブレザー越しにも分かる引き締まった逆三角形の体躯。雪よりも純白に脱色された骨白色のショートヘア。首元と手首でキュッと収縮し、洗練されたトライバルのように覗く黒曜の呪印。そして仕上げは丸メガネの奥に輝く――冷徹で透明感のあるアイスブルーの瞳だ。俺自身にとっては普通の視界だが、周囲から見れば一級品のモデルフィギュアそのものだったに違いない。


(おいおい勘弁してくれよ……! そんなギラギラした肉食獣みてえな目で、服の上から全身舐め回すように見つめてくんじゃねえ! 俺は朝食バイキングのチキン南蛮じゃねえんだぞッ!!)


校舎へ足を踏み入れたところで、シエルと別れてそれぞれの学年フロアへ向かった。昨日と寸分違わない、ありふれた高校の日常風景。周囲の囁き声を綺麗さっぱり聞き流しながら、俺は自分の下駄箱兼スチールロッカーの前へ辿り着いた。ダイヤルキーを回してロックを解除する。


カチ、カチャリ。


その瞬間――耳障りで人を小馬鹿にしたような口笛が廊下に響いた。


(ハァ……またこのパターンかよ。勘弁してくれ)


「へぇ〜、おやおや? ここにいるのは誰かと思えば、裏口入学の貧乏特待生クンじゃねえか」鼻持ちならない、嫌味全開の甲高い声。「随分とイメチェンしたようだが……なんだその安っぽい格好は? ド派手なピエロにでも転職したのかよ?」


声の主は**カズヤ**。地元有力財閥の御曹司であり、この学園を自分の私有地か何かと勘違いしている典型的な傲慢貴族サマだ。


「……お前が言うなよ」俺は振り返りもせず、乾いた声で呟いた。


「あぁん?! 今なんつった? 泥水すする底辺の分際で、この俺に口答えしてんのかコラ?!」


俺はピクリとも怯まなかった。嘲笑を完全に無視してスニーカーを脱ぎ、ロッカーの下段へ揃えて収納。本日の教科書をサッと引き抜き、スチールの扉を静かに閉じた。


バタンッ。


俺の徹底的な無反応が、プライドだけは富士山より高いカズヤの逆鱗に触れたらしい。普段の俺なら、親の権力を盾にするこの手の危険人物には絶対関わらないよう愛想笑いでやり過ごしていただろう。だが――昨夜ガチで全身解体されて死線を潜り抜け、化け物どもを血祭りにあげてきた今の俺からすりゃ、こんな温室育ちのクソガキの脅しなんざ蚊が飛んでる程度にも感じられねえよ。


俺はゆっくりと振り返り、丸メガネの奥から冷徹なアイスブルーの視線をスッと落とした。


「少なくとも俺はな、回廊で喚き散らす腐った温室育ちのガキよりは自制心(ディシプリン)を持ち合わせてるつもりだぜ、カズヤ。……それと参考までに言っといてやるが、もし仮に俺がお前の親父だったとしたら――迷うことなく別の兄弟を次期後継者に指名してるね。遺言書のインクを消費する価値すらねえよ、お前」


廊下一帯が水を打ったように静まり返った。そして――


プッ、クスクスクス……!

周囲を取り囲んでいたセレブ生徒たちの間から、堪えきれない忍び笑いとヒソヒソ声が一気に漏れ出した。学園のトップ気取りだったカズヤが、特待生の一言で完膚なきまでに公開処刑された瞬間だ。「あいつ、親父さんの後継者レースから外されかけてるの本当だったんだ」「格下に図星突かれてやんの」と囁く声が廊下に満ちる。


「て、てめええええええッッ!! ぶっ殺してやるッ!!」


恥辱と怒りで顔面を真っ赤に染め上げたカズヤが、右拳を固めて俺の顎めがけて全力のストレートを振り抜いてきた。


だが――その後の攻防は、文字通りの『零フレーム』で終結した。


拳が俺の頬をかすめる風圧を生むより先に、俺のハイブリッド肉体がオートパイロットで駆動した。わずか数ミリの上体反らし。伸びてきたカズヤの手首を油圧プレスのような握力で絡め取り、体重移動を利用して足を払い、そのまま床へ叩きつける。


**ズシャァァァン!!**


次の瞬間、カズヤは冷たいリノリウムの床に顔面を押し付けられ、完全に制圧されていた――しかも、振り抜いたはずの『自分自身の拳』を、自分の眼球ギリギリ1ミリ手前に突きつけられた状態で。


廊下にいた全生徒が息を呑み、何が起きたか誰一人として知覚すらできていなかった。


(第4話・前編 完 ―― 後編へ続く)

【あとがき】第4話・前編、いかがだったでしょうか! 妹シエルに「愚兄は4.5点、お前は12点」と辛口格付けされつつ、学校で調子に乗るボンボン貴族カズヤを秒殺するモラックスの無双、最高にスカッとしただろ?! 後編もお楽しみに! 評価とブックマーク、熱い応援よろしく頼むぞ!

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