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ACT.25 来襲

二か月間、この話を放置して申し訳ありません!

「龍神の巫女」を一気に書き上げるようと注力していました。


今日から、この話を再開します。

 ルーサーの監視に送り出した二人が無事に戻って来た。報告によるとルーサーは何度も道に迷いながら、なんとか南東の方向に進んでいったとのことである。

 オークの子どもたちは、当面ワンダラの大人たちの目につかないように、ゲーンタが直接の面倒を見て、インシュンがゲーンタの話を聞きながら世話をすることになった。


 我々の拠点の要塞化は急ピッチで進められた。全員が、飯と糞と寝ているとき以外はすべて要塞化作業である。カネが示す計画を俺が確認して分かりやすい形にしてからチョーハに渡す。チョーハはそれを八人程度に分けた隊のリーダーたちに説明して実行に移す。俺は作業の進み具合を確認し、必要なら修正や追加の指示を出す。


 この作業とは別に、俺に与えられたのは投石機の製作である。むろん、木を切ってきたり、枠組みを作ったりには兵士たちの協力を得るが、投石機の構造を理解し、実際に動くようにするのは俺の仕事である。単純な計算では仰角45度で秒速31メートル少々で発射すれば100メートル先に届くはずだが、そうそう思い通りにはできない。試行錯誤を重ねて、なんとか80メートル程度まで飛ばせる性能には達した。カネに相談すると設置場所と狙う場所を調整すれば、使えそうだということになった。


 一安心する間もなく、カネは俺に面倒な工作を提案した。少し離れた谷間に流れる川を堰き止めて貯水池を作るという話である。しかも、止水壁の支柱を抑える杭に縄をつけて引き抜き一気に放流できる仕掛けを施すようになっている。俺は八人の兵士と毎日現場に出向き、泥だらけになって堰を作った。


 カネはチョーハにも俺にも製作物の意図や使い方をはっきりと説明しようとしない。次々に作業を提案して、進み具合を見て、修正を指示してくる。他方、アコとは何やら複雑な話をしている。たしかに、俺やチョーハが防衛計画の細かいところを知っても、たいして役には立たない。アコに指揮の全権を託すのが、正解なのだろう。

 ただ、少し気に入らないのは、アコとカネはえらく真剣に長い時間話しているかと思うと、急に、笑い声が聞こえることがある。どうやら楠ネタで盛り上がっているようだが、基礎的知識に欠ける俺には、どこがおもしろいのかわからず、少し腹が立つ。


 築城作業は大変だったが、ある意味、平和な時間だった。当然ながら平和な時間は続かない。ついに哨戒に出ていた革命軍兵士が、エルフに率いられた四百人ほどのオーク兵が近づきつつあるのを発見した。報告を受けて、アコは俺とチョーハとカネとで作戦会議を開催した。


 アコが話の口火を切った。

「とうとう来るべきものが来る。我々は、この三十日足らずで築き上げた要塞で奴らを迎え撃つ」


 俺にはすごく心配なことがあった。

「奴らはすぐに攻めてくるんだろうか?もし、ずっと包囲を続けられたら、すごくまずいことになる。山で採れるもので節約してきたけど、食料はそんなに残ってないぞ」

 カネが画面の中から答える。今日はえらく時代がかった軍服もどきを着て画面に現れている。

「あー、その心配はないです。偵察に出ていた者たちからの報告で、補給の輜重車はないと分かっています。おそらく兵士が自分用に担いでいる食料がすべてでしょう。まあ、一個大隊レベルの人数を揃えてきたということは、一気に攻め込んですぐにケリをつけるつもりです」


 チョーハが心配そうに尋ねる。

「俺たちの兵士は全員で百名もいないぞ。四倍もの数で攻められたらひとたまりもないんじゃないか?」

 カネがにやにやしながら答える。

「一般的には、城を攻略するには攻撃側は守備側の三倍から十倍の兵力が必要です。我々はそんなに不利じゃないですよ」

 アコがうなずいている。


 俺は聞かずにはいられなかった。

「これから、すぐにやるべきことは?」

 アコが答えた。

「斥候と哨戒に出ていた者たち全員を引き上げて、労うことだな。しばらくは、高いところから奴らの動きを見ようじゃないか。奴らはこれから戦いを始める。我々は三十日前から戦いを始めた。まずは、どう来るかを見せてもらおう」


 二日後、ついに接近するエルフ軍が要塞の見張り台からも見えるようになった。彼らは隠れもせず堂々とやって来ていた。

 アコが望遠鏡で見ながらつぶやいた。

「『大軍に兵法なし』か…」

 俺は聞いたこともない言葉である。アコに尋ねてみる。

「どういう意味ですか?」

「数が圧倒的なら、小細工なんか必要ないって意味だ。正面から押し潰せば済むからな」


 パソコンのカメラで、エルフ軍の様子をカネに見せる。今日のカネは昨日の古風な軍服姿のままだ。

「あー、来ましたね。斥候の報告通りです。指揮を執ってるのは、まず間違いなく先日ツィックマを襲ったエルフでしょう。ちょっと様子を見ましょう。面白くなるでしょう。アコ、我々の兵士諸君には休息と食事を取らせておいてくださいね」

 カネは大敵を前にしても相変わらず、へらへらしている。


 俺はすぐに要塞の周囲に奴らが迫ってくると覚悟していたが、なかなか奴らはやってこない。カネに尋ねてみる。

「おい、カネ。『奴らは一気に攻め込んですぐにケリをつけるつもりです』と言ってなかったか?まだ来ないんだが…」

「彼らは一気に攻め込むつもりですよ。ただ、どこから攻めたら要塞に近づけるかで困っているんです。チョーハに指示していた道づくりの成果です。彼らが送り出した偵察は道に迷ったり、罠に引っ掛かったりと、ひどいめに遭っているはずです。いくつか仕掛けに引っ掛かると、慎重になって、前進がなかなかできないんですよ。そして食料も減っていきます」

 

 カネは楽しそうに顎を手でこすって見せた。


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