八重子のグリーティング〜魔界からのトリックオアトリート〜
八重子「全世界全宇宙の大きいお友達のみんな……ハッピー……ハロウィン……。今日は……特別な日……。今日は誰もが露出仮装して……路上にゴミを捨てたり……トラックを横転させたりしてもいい日……」
湊 「ち、違うと思いますよ?」
八重子「仮装してるから身元も割れにくく……自分の居住地でもないから何をしてもいい……SNSの狂気が現実へと侵食してきたような日……」
万里 「なんか……現代社会に生きてることに絶望してくるんですが……」
ましろ「木凪、どうしてそんなことをするのかわかりませんが、人に迷惑をかけるようなことをしてはいけませんよ。でも今日の衣装はとってもかわいいですね。うちのシロみたいです」
八重子「ハロウィンと言えば黒猫コス……。みんなにも……コスプレ衣装プレゼント……魔女にミイラ男に……お化けのホーリー……」
湊 「(ホーリー?)……えっ、俺たちも着るんですか?」
八重子「公序良俗に反する衣装で混みあう街を練り歩いて……DJポリスを逆ナンして朝まで騒いじゃお……☆(ダブルピース)」
湊 「平素から激務の警察の皆様にご迷惑をおかけるようなことはやめましょうよ、八重崎さん……」
八重子「腐敗と自由と暴力の蔓延る澱んだ街角に繰り出すのが不安……そんな湊の気持ちはよくわかる……」
湊 「そ、そういうことではなく」
八重子「湊が破廉恥な格好で街に繰り出した場合……数歩で暗がりに連れ込まれ……オークやゴブリンのような浅ましい獣どものキャンディバー(意味深)でいたずら(意味深)されることは……火を見るよりファイヤー……」
万里 「(どんな治安の悪い場所に繰り出そうとしてるんだろうか……)」
八重子「その不安を払拭するために……、護衛もご用意しました……どうぞ……」
中尾 「おい、八重子テメェ何の集会だこれは」
万里 「(なななんかめっちゃ怖い人来たー!?)」
湊 「な、中尾さん?」
ましろ「ええと、この方は……?」
八重子「ムネハルは……ガチ五郎のフレンド……気は荒くて力持ちの……半グレボーイ……」
万里 「(うおぉ、一つも安全な要素のない人物紹介ー!(絶望))」
中尾 「おい、誰がフレンド……いやガチ五郎? とにかく俺は」
ましろ「は、はじめまして、羽柴ましろと申します。いつも八重子がお世話になっております(ふかぶか)」
中尾 「誰も手前ェの自己紹介なんざ聞いてねえし、こんな珍妙なイキモノの世話もしてねえんだが」
八重子「ムネハル……ましろを雑に扱うと……ケバい殺人鬼が日本刀で背後から斬りかかってくるから……気を付けて……」
中尾 「どんなトラップなんだよ!」
ましろ「木凪、月華のことをそんな風に言うのは良くないですよ」
万里 「(羽柴さん……。誰って言ってないのに……)」
八重子「そういうわけで……ムネハルにはハロウィンの乱痴気騒ぎ中の護衛のほど夜露死苦メカドッグ……」
中尾 「やってられるか、俺は忙しいんだ。帰る」
八重子「そんな……ムネハルは私と仕事……どっちが大事なの……」
中尾 「仕事だよ! お前は究極の選択肢の中に入ってねえよ!」
ましろ「ふふ、二人は仲がいいのですね」
中尾 「…………。お前の知り合いはイカれた奴しかいねえな……」
湊 「そ、そんなことないですよ。二人はちょっと人より天然なだけで……」
中尾 「こんなところにいられるか。俺は帰る(二回目)」
八重子「その判断が……盗人に追い銭……大損フラグとなることを……今のムネハルは知る由もなかった……」
中尾 「……どういう意味だ」
八重子「護衛任務をやり遂げた暁には……こんな時のためにムネハルのためにストックしていた……全世界の高所得者の個人情報リストをプレゼント……」
万里 「(なんでそんなものをストックして……(小声))」
湊 「(中尾さんは高所得者しか特殊詐欺のターゲットにしないとかなんとか(小声))」
万里 「(義賊!? いやいや上級国民相手でも特殊詐欺ダメ、ゼッタイー!(小声))」
八重子「でもいらないなら……ダークウェブでバーゲンする……か……」
中尾 「ちょっと待て」
ましろ「お話し中にすみません、ダークウェブとはなんですか?」
中尾 「(こいつ……無敵か?)」
八重子「ダークウェブとは……インターネッツ上に存在する魔界への入り口……。魔界を統べし魔王クツゥラトスタホースは……電波と端末を通して……常に人間界への侵攻の機会を窺ってる……」
ましろ「え……魔界の王は木凪が漏洩させた個人情報で何をするのですか……?」
八重子「……。たぶん……なんか、人間界で奴隷のリクルート的な……?」
万里 「急に曖昧すぎません!?」
八重子「異世界の魔族とはカルチャーギャップもあるから……八重子にはわからないわ…」
ましろ「た、確かに別の種族の方というと、私たちとは違うことも多いでしょうね……」
中尾 「やめろ。お前らの会話を聞いてると頭が痛くなってくる」
八重子「心は決まったようじゃの……」
中尾 「旅立ちを促してくる村長みたいな言い方やめろ!」
八重子「旅立つムネハルには……親の顔より見たジャック・オー・ランタンの衣装をプレゼント……」
中尾 「着るか! もっと親の顔見ろ」
八重子「八重子……親の顔見たことない……から……」
中尾 「……………………」
万里 「(あっ……、しまったって顔になってる。もしかしていい人……なのか……!?)」
湊 「え、ええと、そうだ、ジャック・オー・ランタンって、どういうお化け? なんですか? そういえばよく知らないかも」
八重子「ジャックは……アル中のクズ……。ある日悪魔に魂を奪われそうになり……逆に騙して生還、更生するも長続きせず、悪魔ともまたすったもんだあったけど不摂生がたたりお亡くなりに……。クズだから地獄行きで悪魔と再会したけど「お、お前のことなんか、面倒見ないんだからね。この石炭、別に捨てるだけだから、使うなら勝手に拾えば」と言って冷たくされる……。ジャックはカブの中にその石炭を入れてランタンにして……悪霊として今も地上を彷徨っている……。というのが……ジャック・オー・ランタンの……諸説の一つ……」
湊 「騙されてるのに、悪魔優しいですね」
万里 「元はカブだったんだ」
ましろ「ジャックはせっかく更生したのに、もったいなかったです」
中尾 「…………」
八重子「さあ……ムネハルもこの衣装で悪魔にもツンデレられるアル中のクズになりきろう……」
中尾 「 着 る か ! 」
(帰っていく中尾)
八重子「……なぜ怒ったのか……コレガワカラナイ……」
湊 「……ええっと……。街に繰り出すのはやめて、みんなでお菓子でも食べましょうか」
万里 「いいですね。プライベートな閉鎖空間でなら、コスプレも付き合います」
ましろ「近所の子供達に配るためにたくさんお菓子を買ってあるので、うちに来るのはどうですか?」
八重子「じゃあ……みんなで新婚の新居をスプラッタ風にデコって……帰ってきた天ちゃんをびっくりさせる作戦……発動……だね……☆(ダブルピース)」
湊 「それは片付けが大変そうだからやめましょう……」
おしまい。
次の季節のグリーティングに続くかもしれない……




