二十一・優璃はスマホを見つめて笑う
二十一・優璃はスマホを見つめて笑う
がちゃ・・・・・・ がちゃりっ
「ただいまぁー。ママー? ・・・・・・車ないし、まだ、帰ってないかー」
優璃は洗面所で手洗いとうがいをし、リビングのソファーに座った。
教科書、ノート、参考書を開き、今日の復習をまた始める。
「がんばらなくっちゃ。・・・・・・柏沼、絶対に入るんだもん!」
ペンを握り、数学や国語の勉強を必死に進める優璃。
・・・・・・ピロンッ♪
「ん?」
優璃のスマートフォンが鳴り、メッセージが入った。
「え? 海原くんだ。・・・・・・なんだろう?」
無料通話アプリを使い、優璃にメッセージを送ってきたのは、クラスメイトの海原雅人だ。
――― 海原くん 《 ゆりちゃん。いま、時間ある? 》
「なんだろうー? えい!」
優璃は文字を打ち込み、画面をタップする。すぐに海原のスマートフォンに、優璃のメッセージが送られる。
――― ゆりちゃん《 今帰ってきたところだけど、だいじだよー? 》
・・・・・・ピロンッ♪
すると、すぐに海原から返事が届く。
――― 海原くん 《 進路、柏沼で出したの? 》
「えー? なんで海原くん、知ってるんだろう? えい!」
――― ゆりちゃん《 そうだよ。よくわかったねーっ? 》
優璃は、海原とメッセージのやりとりを繰り返す。
――― 海原くん 《 職員室で前原先生と話してるの、聞こえちゃってー 》
――― ゆりちゃん《 あ、それで! 》
――― 海原くん 《 僕さ、宇河宮東に出したんだけどさー・・・・・・ 》
――― ゆりちゃん《 へぇ! 柏沼よりちょっとだけレベル高いね! 》
――― 海原くん 《 柏沼に変えようと思うんだ 》
――― ゆりちゃん《 え? どうして? 》
――― 海原くん 《 それはー・・・・・・ 》
《 何て言ったらいいか・・・・・・ 》
《 僕野中で、宇河宮東より柏沼西たヨウ素があって 》
――― ゆりちゃん《 どうしたの海原くん? 変換ミスってるよー? 》
――― 海原くん 《 ごめん! ミスった 》
《 僕の中で、宇河宮東より柏沼にした要素があって 》
《 だから、進路変更しようと思った! 》
――― ゆりちゃん《 海原くん、ゆりより頭良いもん。柏沼は楽に受かるよっ! 》
――― 海原くん 《 頑張る。ゆりちゃんも、ぜひ受かるように頑張って! 》
・・・・・・タタッ
・・・・・・ピロンッ♪
・・・・・・タタッ
・・・・・・ピロンッ♪
リビングに響く、画面をタップする音と、メッセージの受信音。優璃は、海原とやり取りを続ける。しばらく、二人のメッセージが交互に行き交っている。
――― ゆりちゃん《 そういえば、さっきの、柏沼にした要素って? 》
優璃が海原に送ったメッセージには、すぐ隣に、小さな「既読」という文字がついた。
「あれ? ・・・・・・海原くん、どうしたんだろう? ま、いいや。待ってようっと!」
再び、優璃はペンを持って勉強を続けた。海原からの返事はその後、待っていてもなかなか送られてこない。
「(そういえばお姉ちゃん・・・・・・。あれからまた、どこ行っちゃったんだろう?)」
優璃は、紅葉に助けられた時を思い出し、テーブルにペンを置いてリビングの奥に向かう。そこで、鳥かごの小さな扉を開け、インコを手に乗せた。
「おいで、ぴーちゃん! おいでー」
「ピョル♪ ピーチャン! ピョルリッ♪ ピキュピキュピキュ♪ ピーチャン!」
インコを肩に乗せ、優璃はまたソファーに戻る。
「ぴーちゃん? お姉ちゃん、どこ行っちゃったんだろうねーっ? 今日はちゃんと帰ってきてくれればいいのにねーっ?」
指でインコの頭を撫で、にっこり微笑みながら優璃はスマートフォンを見つめる。
その待ち受け画面は、ピースサインをして写る紅葉と優璃だった。




