14.他人に買わせてみた
こうなると、第1案か第3案の選択だ。
頼むとしたら家族だ。親戚は、こういうのもなんだが、あまり信用出来ない。
となると、両親か大学生の妹のヨウ子になるが、なんて説明しよう。
きっと両親は「それよりも、勤め先を見つけて働きなさい!」と間違いなく言うだろう。
でも、赤の他人なんか、親戚よりも信用できない。まだ、妹の方がいいかもしれない。
付箋はあと2枚。
どちらがいいか悩むが、まずは第1案から試してみることにした。
決断が遅れてしまい。もう今日が抽選日。買うのは18時30分までだから、それまでに何とかしないといけない。
眠れぬ夜を過ごしたカナ子は朝から付箋に8つの数字を書いたものの、「さあ、どうしよう……」と胃が痛くなるほど悩んでいると、昼前にヨウ子が遊びに来た。
カナ子は妹の顔を見ると、意を決して数字をメモ用紙に書き写して差し出した。
「ねえ。この数字でロト8、買ってきて」
昔から、大好きな姉の頼みを断らないヨウ子は、喜んで引き受けた。
「お姉ちゃん。今日抽選日よね? すぐ買ってくるから、自転車貸して」
意外なほどの即答に、悩んでいた自分が馬鹿らしくなった。
「売り切れるとは思えないけど……。はい、自転車の鍵とお金。そして、これで好きな物を買いなさい」
「わーい。お小遣いまで! 買ってきたら、あのRPGの攻略方法、教えて」
「オッケー」
ところが、ヨウ子がスキップするようにマンションを出てから1、2分後、車の急ブレーキとドスンという鈍い音が聞こえてきた。
イヤな予感がしたカナ子は、マンションを飛び出した。