59 尾行開始!
私達は、兄さん達の集合場所である公園に向かっていた。
そういえば、尾行するとかいいながら、特に変装とかしてないけど、いいのかな?
「磨北くん。 この格好大丈夫かな?」
「え? うん、良いと思うよ」
磨北くんのお墨付きも貰ったし、このままいこう!
「そっか、良かった♪」
今考えたら変装したら余計に目立ちそうだしね。
そういうところを磨北くんは考えてくれたのかな。
「それで、公園に行ったあとは何処に行くか、夕闇さんは知ってるの?」
「あれ? 言ってなかったっけ? 映画館だよ。 映画見るんだって」
「へぇ、どんな映画?」
「え!? えーと‥‥青春ものだったと思うよ」
実は兄さんが見たいと言っていた今日見る映画、もう前世で見たことがあるのだが、まだ公開からそこまで経っていないので見たとは言えない‥‥。
前世では広葉に無理矢理連れていかされたが、中々面白かった覚えがある。
今日はあの頃見た映画を懐かしみながら見ようかな。
結末とかは覚えてるし。
なので、ほぼ同じ感性を持つであろう今世の私、すなわち兄さんと趣味が合うのは当然と言えば、当然なのだろうが。
こういう時、まだ公開されて間もない、映画の内容を言いそうになるのでとても困る!
「青春もの‥‥あ、それなら僕見たよ」
え、見てるの!?
まさか、公開日当日に行ったのかな、まぁ見に行きたいと思う人は公開日に行くよね。
「そうなんだ。 じゃあ、別のもの見よっか」
何回も見てもつまらないだろうし。
私は懐かしむために見たいだけだから。
兄さんと同じもの見る必要もないよね。
正直、映画館の中まで尾行なんかできないしね。
暗いし。
「大丈夫、面白かったから僕ももう一度見ようと思ってたんだ」
気を使われてるのかな。
どうしよう‥‥。
「本当にいいの?」
「うん。 それに今日は尾行、したいんでしょ?」
「そっか。 ありがとう、磨北くん!」
私達はそのまま話しながら公園の近くまで来た。
◇◆◇◆◇◆
公園に着いた私達はその後、すぐに茂みに隠れた。
まだ二人は来ていないようだ。
「少し、来るのが早かったのかな?」
「いや、一人来たみたいだよ」
公園の入り口から兄さんが入ってくるのが見える。
遅れずに来たみたいでホッとしたよ。
「あの人が私のお兄さんなんだ。 陸って言うんだけど」
「‥‥‥‥そっか、陸さん‥ね」
少し見にくいかな?
また、家に呼んだときにちゃんと紹介しないとね。
すると、もう一人入り口から、女の子が入ってきた。
「あ、小乃羽ちゃんだ」
そして、兄さんと合流したようだ。
う~ん、ここからじゃ、声が聞こえないかな。
もう少し、近づいて見ますか。
近づいていくと段々と二人の声が聞こえるようになってきた。
「──らって遠慮しなくていいからね。 じゃあそろそろ、映画館行こうか」
「はい、お兄様」
もう、出発ですか‥‥あまり会話聞けなかったな。
「じゃあ私達もそろそろ行こっか」
「‥‥」
「磨北くん?」
あれ、どうしたのかな?
あ、もしかしたら疲れているのかもしれないなぁ。
今日早かったし。
「あ、うん。 そうだね、追いかけよう!」
よーし、じゃあ尾行開始です!