モノグラムは男らしく……なれなかった。
『敵を知り己を知れば百戦危うからず』そう昔の偉い人は言いました」
目の前にいるモノグラム君を見ながら、言い聞かせる。
「どういう意味なの」
首をかしげる様が可愛らしい。
「男らしさの逆とはなんだね?」
「……女らしさ」
「そう! 男らしさの敵となる女らしさを理解すれば、男らしさをてに入れられるはず!」
目を見開き、天恵を受けたかのような表情になったモノグラム君。
「その発想はなかった」
俺は、フッとニヒルな笑みを浮かべると、
「モノグラム君。ヤってみたまえ」
「はい!」
……それが3日前だった。
「これどうですか~?」
ボサボサの髪はキューティクルがかかり、頭の右側で花の付いたゴムで結ばれていて、眼鏡が外され大きめの目がアイシャドウを入れられて、可愛らしさを上げている。服装も野暮ったいローブではなく町の女性が着るような服を着ている。
それを見て思った。
(やべえ~。選択間違えた)
俺は見なかった事にして、現実から逃避した。
……そして、更に2週間たった。
モノグラム君(女装)は瞬く間にファンを増やし、ファンクラブもできた。でも男より女が多いってどういう事?
服装のカラーバリエーションが増え、女性が華やかになった。それが元でギルド受付嬢の制服もリニューアルされた。
「それで、何の用」
新しい制服を着たクリスがジト目でこちらを見ている。
「いや、何か依頼ないかな~って」
「薬草取りとか木の実取りならいくらでもあるわよ」
「そんなんじゃなくて、一週間くらいかかる依頼ない?」
「当店では一見さんお断りどす」
「クリスさん?俺は登録してもうけっこう経ってるよね?一見さんじゃないよ。お願いしますよー。何か依頼くれ!」
土下座する勢いですけど何か?何でかって?それは言えねーな。
「と言うか、仕事しなくていいでしょ?アンタは」
……ジト目でで見ないで。
「人間、仕事しないとダメっしょ」
「一月前のアンタに聞かせて見たら、鼻で笑いそうね」
一月前のアポ・ロンさん。どうですか~?
「笑い転げてますね」
「誰に言ってんの?」
「……いや、何となく」
ノリとしては、『ブラジルの皆さん!きこえますか~!』のノリで。
クリスと依頼を受ける、受けさせないの言い争いをしている時に弾き飛ばすような勢いでギルドの扉が開き、
「見つけました!何してんですか!」
「緊急脱出!」
俺は声を聞いたとたん、近くの窓に向かって走り出した。
窓を蹴破って自由への逃避行だ!
窓に飛び蹴りを食らわそうと、飛び上がる!
ーーベチャッ。
床にキッスしました。何で?
見ると足にロープが絡み付いている。その先にはニヤニヤしたクリスがいる。
「何すんだ!この野郎!」
「窓に飛び蹴りかまそうとする奴に言われたくないわね。ギルドの備品を壊してもらっても困るし」
くうっ、正論だけに何も言えない。
「アポ・ロンさん。大丈夫ですか?」
すぐそばに来た美少女……もとい、モノグラム君に心配そうに見下ろされている。
「いや……まあ……うん。大丈夫だ」
ホッとした顔をするモノグラム君がクリスを見る。
「クリスさん」
おっ?クリスに文句でも言うのか?『何してんですか!』とか言って。
「ありがとうございます。これ依頼の代金です」
……へっ?
「はい。依頼完了と言うことでいただきます。では、その粗大ゴミ持ってちゃって下さい」
「さあ、アポ・ロンさんカラースライム草を育てるのを手伝ってください」
「ちょっと待て!その前にクリス、依頼って何?」
足に絡まったロープを持って引きずって行こうとするモノグラムに逆らって床に爪を立てて喚く。
「この町から逃亡しようとするアホを捕まえる依頼」
「それを受付嬢がやっちゃっていいのかよ!」
「受付嬢がやってはいけない事はないはずよ」
「勝手に決めんな!そんなんだから『残念受付嬢』って言われんだぞ!」
「誰が『残念受付嬢』だ!」
「お前から暴力受けた冒険者が言ってたぞ!」
「それはお前だけだ!……って事はそれ広めたのお前か」
やべえ~。クリスが暗黒闘気をまとってやがる。
今のモノグラムには助けを求める事はトラウマになりそうなのでパス!
何故かって?料理をしてみたのはいいが、何処をどう間違ったのか目を反らしたいものになったと思ってもらえばいい。
外見、美少女。中身はマツコとミッツになりかかってるモノグラム。脛毛まで剃ってんだぞ!
「とりあえず、眠れ!」
クリスのどつきに意識を持ってかれた。




