あとがき
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後書き
これは、遠い昔に語られた、一つの物語である。
桃から生まれた英雄の伝説。
鬼と呼ばれた者たちの真実。
影で歴史を動かした者たちの決断。
そして、一匹の犬が見た戦場と平和。
この物語に登場する人々の多くは、歴史の表舞台に名前を残すことはなかった。
けれど、彼らは確かに生きていた。笑い、泣き、愛し、そして戦った。
彼らの真実は、やがて人々の語りの中で形を変え、御伽話となり、教科書に載る物語となっていった。
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桃太郎は、大きな桃から生まれた元気な少年として語り継がれた。
鬼は、悪さをする恐ろしい妖怪として描かれた。
犬、猿、雉は、桃太郎に従う家来となった。
鬼ヶ島から持ち帰ったのは、金銀財宝ということになった。
それが悪いわけではない。
人々は、平和な世を生きるために、物語を必要とした。
真実があまりに悲しすぎるとき、人はそれを美しい物語に変えることで、心の安らぎを得るのだから。
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しかし、この物語を読んだあなたは知っている。
真実の姿を。
彼らが生きた、血と泥と、それでもなお光を求めた日々を。
飢饉に苦しみ、それでも生きようとした人々。
自ら「鬼」となることを選び、大切なものを守ろうとした者たち。
影で歴史を動かしながら、ただ愛する者の笑顔だけを願った英雄たち。
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時は流れ、戦乱の世は終わった。
今、この国には平和がある。
その平和の礎には、名もなき多くの人々の苦悩と決断があったことを、どうか忘れないでほしい。
そして——。
もしあなたがどこかで、素朴な甘さのきび団子に出会ったなら。
その団子に「時雨」という焼印が押してあったなら。
あるいは、満開の桜の下で、一匹の白い犬を見かけたなら。
どうか、ほんの少しだけでいい。
彼らのことを思い出してほしい。
遠い日に、この国のどこかで、必死に生きた人々がいたことを。
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この物語が、あなたの心に、いつまでも消えない小さな安堵の光を灯し続けることを願って。
――「安堵の光」より
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【後書き・完結】
次回予告
作者の作成秘話
何故この物語を書こうと思ったのか。
その全貌が明らかに。
卒園証書を書いていたある日、ふと頭をよぎった桃太郎への違和感。
歴史嫌いの著者が、なぜ戦国時代を舞台にした大作を書くに至ったのか。
吃音を乗り越え、言葉の引き出しを増やし続けた日々。
書道家・歌手・小説家――三つの顔を持つ「太幽」の、創作の裏側に迫る。
特別編「太幽・作成秘話」に続く。
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