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癒しの異世界リラク~耳かき、整体、ヘッドスパ、足つぼマッサージなど~  作者: 森月真冬


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12/12

施術者たちの宴1

 ビルのドアを開けたところで、西門は声をかけられた。


「西門さん。お疲れ様です」


「ああ、瀬浦さん。お疲れ様」


「この後って、予定あります? よかったら晩ご飯もかねて、飲みに行きません?」


 瀬浦は右手を口の前まで持ってきて、ジョッキを上げ下げするジェスチャーをした。

 西門は、顔をほころばせる。


「おっ、いいですねー! 更衣室に江戸川さんもいましたから、もうすぐ出てきますよ。一緒に誘いましょう!」


「三人でしたら……古池いっちゃいます?」


「行きましょう、行きましょう!」


 池袋のすし居酒屋古池は、サンシャイン60のすぐ近くの飲み屋である。

 平日三名から4000円で二時間半の食べ飲み放題……江戸川、瀬浦、西門は、三人ともが呑ん兵衛である。この魅力に、誰が抗えるだろう?

 店名に寿司を標榜するだけあって海鮮が名物だが、もうひとつの名物がたこ焼きで、こちらは店外のテイクアウトでも350円で販売している。

 三人は良く冷えた生ビールの入ったジョッキを掲げて、「かんぱーい!」とぶつけあう。


 江戸川がタッチパネルを操作しながら、三人分のつまみを注文する。


「海鮮下駄盛りは、頼んじゃっていいですかね? あと、わさび巻」


「唐揚げとエイヒレ、いいですか」


「私、ネギ塩たこ焼き!」


 やがて並んだ肴を前に、三人は杯を重ねていく。

 飲む酒もビールから、江戸川は焼酎お湯割りに、西門はレモンサワーに、瀬浦はホッピーへと移行していた。

 そんな時、瀬浦がふと口にした言葉に、西門は酒を飲む手を止める。


「……変わったお客さん?」


「はい」


「それって、厄介系のお客様って意味?」


「あ、いえ。そういうんじゃなくって。外国の方で……ええと、なんて言うのかな……?」


 瀬浦は、悩む様子でしばらく視線をさまよわせ、それからおずおずと言う。


「傭兵……ううん、兵隊」


「自衛隊のお客様ってこと? それか、休暇中の米兵とか」


 問い返されて、瀬浦は首をかしげる。


「違うなあ。そういうんじゃなくて、もっとこう……体を触った感じ……」


 考える彼女の目つきが、険しくなった。


「私の印象では、そう。はっきり言えば。剣士とか。そういうの」


「「剣士」」


 江戸川と西門の声が、重なった。

 そんなゲームみたいな単語を聞かされて、ちゃかさないのは瀬浦の表情が真剣そのものだったからだ。

 江戸川は、ワサビ巻きに醤油をつけて、口に放り込みながら言う。


「そういう話なら、僕にもありますね。僕の場合は、お姫様だけど」


「お姫様、ですか?」


「はい。やっぱり、外国の方でした。日本語ペラペラでしたけど」


 そう前置きした上で、江戸川は語る。


「もちろん、僕は目利きなんてできませんよ。でもね、甘ロリとかコスプレとか、そういうのとはちょっと違って。どうも彼女、身に着けてるドレスや装飾品が、普通じゃなかった気がします。……もっと上等で、既製品(きせいひん)では出せない雰囲気があったなぁ」


 西門も片手を上げる。


「俺もひとり、気になる人が。その人、『ここはどこか?』、なんて質問してきたんですよ」


「えっ!? それって、自分のいる場所がわからなかったってこと?」


 驚いた瀬浦の声に、西門は頷く。


「そう。日本ってどこか、大陸のどこに位置するのか、なんて、大まじめな顔で聞くんです。とても冗談言ってる風には見えなかったな……ねえ。江戸川さん、瀬浦さん。そのお客様たちって、施術を受けた後はどうしました?」


「寝ちゃいました」


「同じくですね」


「その後は?」


「予約を入れた、(じん)様って人が迎えに来ました」


 瀬浦が言うと、江戸川も声を上げる。


「わ、同じだ! 白いタキシードのお爺さんですよね」


「えっ!? 私の時は、髪の長い女の人でしたよ」


「あれ? 俺の時は、双子の子供だったけど」


 しばし三人のテーブルにだけ、沈黙が落ちた。

 ガヤガヤとうるさい店内で、西門がレモンサワーを飲みつつ、おずおずと言う。


「……名前が一緒なだけで、全員別人?」


「あるいは、使いの人とか」


「そういう団体名なのかも。海外のお客様をコーディネートする会社とか」


 瀬浦がポンと手を打った。


「ああ、変って言えば。サロンにある神棚も、すっごく変ですよね!」

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