↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/34

小説163話:迷いの先に見えたはずの光

「……ご主人様……!」

思わず抱きついたヒナは、 エリンの腕の中の温もりに安堵する。


「どうしてここに……?」

「……リオンがね、連れてきてくれた。」


その言葉に、ヒナは思わず目を瞬かせた。

——過保護な王子様、出番だよ。ヒナを連れ戻してあげて——

からかうような笑顔で、わざとらしく言ったリオンが、エリンの返事を待つことなく肩を押し、半ば強引に連れてきた。いつもの気まぐれな態度。


けれど、話を聞いたヒナは

リオンのその“強引さ”が、今はたまらなく愛おしく思えていた


「……ヒナ、大丈夫?」

エリンがそっとヒナの頬に手を伸ばし、涙の跡を指で拭う。その指先は、いつものように温かかった。


「……っ……ごめんなさい……。」

堪えきれず、ヒナはエリンの胸に飛び込むように顔をうずめた。


「何も言わずに出て行って……ご主人様に心配かけて……っ」

「いいんだよ。何も言わなくても、君が辛いのは分かってたから。」

優しい声と共に、エリンの腕がヒナの背を包み込む。髪を優しく撫でる手の動きに、ヒナの心は少しずつほぐれていった。


「……リオンと、何かあった?」

その言葉に、ヒナはびくりと肩を震わせる。

「……ノアさんと……魔力譲渡をするように言われました。」

ぽつりと零れた言葉に、エリンは眉を寄せた。

「そうか……それで、辛かったんだね。」


ヒナはゆっくりと首を振った。

「違うんです……辛かったのは……ノアさんのことが羨ましかったから……。」

エリンの腕の中で、ヒナはぽつぽつと本音を吐き出す。

「ノアさんは、リオンさんに信頼されていて、必要とされていて……。ノアさんが撫でられてるのを見て、胸がぎゅっと苦しくなりました。」


「リオンさんから信頼されること、大切に思ってもらえること……それが羨ましくて……。それなのに、ボクには何もないような気がして……。」

エリンは黙ってヒナの頭を撫で続けた。

その優しさに包まれながら、ヒナはようやく気づいた。

(……ボク、何をしてたんだろう。)


ノアは、信念を持ってリオンに尽くしていた。ただ愛されたい、必要とされたいという気持ちだけじゃない。「役に立ちたい」という純粋な願いが、彼を動かしていた。


(ボクは……ただ、リオンさんに甘えていただけだった……。)

魔力譲渡を受けながら安心感に溺れ、寂しさを埋めるためにリオンを求めていただけ。 ノアほどの覚悟も、信念もない自分が、リオンの側にいられるはずもなかった。


けれど——

(あんなに冷たくノアさんとの譲渡を提案してきたけれど、本当にボクのこと、どうでもよかったんだろうか……?)


リオンの言葉は、いつだって棘を含んでいる。それでも、ヒナが弱っているときには必ず手を差し伸べてくれた。

(本当に、ただの“手段”だったなら……あんなに優しい瞬間があったのは、どうして……?)


思い返せば、リオンは一度たりとも「ヒナを拒絶」したことはなかった。 必要だから。役に立つから。そんな理屈を並べながら、リオンはいつだってヒナを見捨てなかった。


(……リオンさん……本当は、ボクのこと……考えてくれている……?)


答えは分からない。


でも、ノアに対して向けるあの柔らかな笑顔が、いつか自分にも向けられる日が来るのだろうか——そんな淡い期待が、心の奥にぽつんと灯った。


「……ご主人様。」

ヒナはエリンの胸に顔を埋めたまま、そっと呟いた。

「ボク、もう一度……リオンさんと、ちゃんと話してみたい……。」

エリンは驚いたように目を瞬かせたが、すぐに優しく微笑んで頷いた。


「……そうだね。自分の気持ちを無視して、リオンと何も話せないまま すれ違うのは悲しいから…。


話したいと思ったのなら、きちんと向き合うべきなんだと思う。

もし勇気が出ないのなら僕も同席するし、

二人できちんと話し合いたいのなら、それが一番いい気がするよ。」


ヒナはエリンの言葉に強く、静かに頷いた。

星の瞬く夜空の下、ヒナの胸に芽生えた小さな決意は、静かに温かな光を放ち始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。