つりのひと!
何だろうと、興味が湧き、見渡すならば。
甲板付近を飛行する、矢じり状の飛行物体を見た。
この艦から発進した、例のウィングビットだ。
なお、矢じりの先端をこちらに向けてはいて。
攻撃をするのか、とつい思ってしまうものの、ならすぐにでもしているはずだ。
どうもそうでないことなら、あるいは観察をしているということか。
《わりぃ!遅くなったぜ……。……え~と。終わったって感じだよな。ま、まあ、ウィザードの活躍は、記録させてもらったけど!へへっ!最高だったぜ!》
「!」
向けられた矢先に、そこから声が聞こえて。
遠隔からの物か、言ってきた。
当然、人が乗って操縦しているわけじゃない。大きさ的にも、まず不可能。
「……?」
ただ、どこからの声か気になってはしまう。
「!気になるか?」
「!!」
矢じりに気を取られていたら、横から甲板の作業員が来て、言ってきた。
振り向いて、頷きを返す。
「……ふふふ。なら、なおさらシミュレーションルームに行くべきだな。よく分かると思うよ?」
「!」
含みのある言い方で、答えはどうも。
この人たちが、早朝に言っていた場所にあるみたいで。
俺は言われて、後になるが、なおさらそこに行ってみようと感じ、頷きを返した。
「やいやい!何やってんだよ~!」
「大した物なかったくせに~!」
「……。」
傍ら、ギャラリーは矢じりに対して結構なブーイングを飛ばしている。
そっと様子を見るために、視線を向けるなら、らしく、やいやいと隊員さんたちが、からかい半分に飛ばしていた。
《あ~?!言っていいのかそういうこと!こっから機銃掃射すっぞ!!こちとらこれでも、あちこち行ってんだよ!人手不足であってもな。忙しいんだ!》
「げぇ?!」
「やっべぇ!!忘れてた!!!あれ普通に搭載兵器だったんだった!!」
「お助け~!!」
ブーイングに反撃がある。
矢じりは先端に光を集中させていて。
かつ、操作している中の人もまた、合わせて反論だ。
集まったギャラリーの人たちは、悲鳴を上げて散り散りに去っていく。
俺は、苦笑しか湧かない。
単なるラジコン飛行機やドローンじゃないんだ、攻撃兵器ならね……。
《ええい!貴様ら煽るな!!甲板を穴だらけにされたら、航空機はどうすればいいんだ?!全員海面に降りろなんて無茶は、冗談でも聞きたくないぞ!》
《うぉっと?!航空隊がお怒りだ!あんまり怒らせると、後でとんでもないお仕置きされそうだ!!任務に戻りま~す!》
ヘリの人から注意されて、矢じりは急速に反転して、その場から去っていく。
元の、任務に戻るつもりだろう。
置かれた言葉から感じられるが、どうも逃げたとも捉えられる。
《……はぁ全く。》
ヘリの隊員さんは、呆れた声を上げて、こちらも反転して。
海原へ飛行していく。こちらもこちらで、任務に戻るつもりで。
そのヘリが戻るのを見て、他の隊員さんたちもまた、俺への声掛けそこそこに。
それぞれの持ち場へ戻っていった。
ギャラリーが減っていくなら、ふと一瞬静けさが来るものの。
「!」
艦尾の下から、金属の階段を駆け上がる音がやがて聞こえて。
やがては、こちらの、甲板、それも艦尾方面に音が上がって来た。
見れば、釣り竿を持つ、朝早く擦れ違った、昨日のギャラリーの人たち。
甲板に上がっては、ふっと息を吐いて。
爽やかそうに笑みを浮かべて、こちらを見てきた。
「いやぁ!ありがたいぜ!」
「!……い、いえ……。」
開口一番に言うことは、お礼であり。
「おかげで助かったよ!命もそうだが、この釣竿を失うのも、嫌でね……。」
「?は、はぁ……。」
加えては、竿を大事そうにして、慈しむように見つめる。俺は、生返事。
「はははっ!変だろこいつ!命もそうだが、この釣竿も大事なんだって。」
「!」
「って!笑うなよ!!いいじゃねぇか!大事な物なんだし!」
もう一人が、からかうように言ってきた。
からかわれた方は、軽く顔を赤くして、文句を一つ。
俺は、聞いていて、気になってはきた。
それほどまで大事にするそれは、一体?
不思議そうにしていると。
「っと!何だか聞きたそうだ!いいぜ!これはな、俺の初めての給料で買ったもんさ!釣りが趣味でよ!……だからか知らないが、こいつは幸運を釣り上げる物って、思っちまうのよ!……変か?」
「!」
気付いた釣竿を持つ人は、嬉しそうに説明してくる。
俺は、気付かれたとつい目を丸くするが。
内容に、親近感を抱いてしまう。そっと、笑みが浮かんだ。
俺もまた、似たようなことがあると、共感する点があり。
そも、俺が今背中に負っているこのバックパックこそ、まさしくそれだ。
その中身も。
元々あんな、よく分からない盾の姿ではなかったが。
大切な物であることには変わりなく。
まあ、ただ、初めての給料で、とはまた違うけれど。
「?!って、ウィザードにまで笑われた?!くぅぅぅ……。」
「?!」
そんな思いにふける中、勘違いは起こる。
その釣竿を持っていた人は、悔しそうにしてしまった。
「!い、いえ……そうじゃなくて……。」
流石に誤解だ。
弁解を考えて、思考を巡らせて。
「……その、素敵だな、と思いまして。俺も、そういうところがあって。分かるな、と……。」
「?!」
述べるなら、その人は目をぱちくりさせる。
「うぉおおおお!!分かってもらえたぁ!しかも、ある意味最強の男に!」
「?!」
から、その人は感涙に雄叫び上げて。
……嬉しそうで何よりだが、あまりにもオーバー過ぎると。
逆に俺が、目を丸くする始末。
「またまたぁ~。世辞も上手いね~。まあ、こいつはこう、オーバーなこともする奴だからさ、気にしないでくれよ。」
「!」
助けはあり、もう一人の人が、宥めてきて。
ありがたく思い、俺は頷きを返した。
「って!お前は夢のないこと言うな~!希望を抱かせてくれよぉ!」
話題の隊員さんは、言われたことに軽くショックを受けていて。
文句を言って反発してきた。
「はいはい!ほら!さっさと仕事に戻るぞ。そろそろ、海の中の奴らが、機雷やら何やら海面に上げてくるだろうからさ。」
「ぬぬぅ~。背に腹は代えられないってか……。」
その文句は、軽く受け流されて。
自分たちのミッションを思い起こさせる言葉にて、宥められてしまう。
その人は、項垂れてしまうだけだ。
彼らとて、忙しい。
このまま、俺たちと茶々を売るのも、ということだ。
「!」
戻るならばと、はっと思い出したように気付くことがあった。
俺は、徐にポケットに手を入れたなら、スフィアを取り出す。
「……あの……っ!」
「?!」
取り出したなら、そのスフィアを持ち。
俺はギャラリーの人たちに歩み寄っていく。
何事だと、つい注目を受けるが。
釣竿を持つ、その人に俺は、スフィアを手渡した。
そのスフィアは、彼らの物だと感じて。
あの残骸を見付けたのは、その人だから。
「?!お、おい?!く、くれるってのか?!」
戸惑い気味に言ってきた。
俺は、静かに頷く。
「いや、だってよ?最終的に手に入れたのは、あんただろ?流石に受け取れないぜ……?」
キョトンとしながらも、不思議を表すように言ってきた。
俺は、まず首を横に振って。
「これは、あなた方のですよ。俺は、ただ手伝っただけですから。」
笑顔を添えて、言ってやった。
「?!」
その言葉は、ある意味度肝を抜くようなものだったようで。
言われたその人たちは、またまたぎょっとしてしまう。
構わず俺は、釣竿を持つ人に、スフィアを渡した。
ぎょっとした表情ながらも、器用にスフィアを受け取り、軽く会釈をする。
「……。」
ふと、変に沈黙があるが。
「……へへっ。こいつぁ、将来大物になるかもな!」
「!」
にやりと、受け取ったその人は、笑みを浮かべて言ってきた。
気付き、俺は耳をピクンと跳ねさせる。
「おいおい~!また冗談を。ウィザードが何だか、分かって言ってんのか?」
「うぇ?」
もう一人が、呆れたように言ってきた。
釣竿を持つ人は、今度は素っ頓狂な声を上げて、言った人を見てしまう。
「大物も大物だぜ?何せ、単独で帝国に向かうっていうぐらいの、無鉄砲、いいや、最高のイカレ野郎だぜ?」
「……あそっか……っ!」
「……。」
その根拠を述べてくる。
聞いた本人は、頭を掻きながら、何だか納得している様子。
俺は、苦笑を浮かべて。
「……俺も少しは、慎んだり、ケチったりするのをやめれば、あんな風にならなくても、大物になれるか?」
その人は冷静になり、何か言っている。
自分の心でも、ここで変えそうな雰囲気だ。
「いやぁ。お前じゃ無理だろ。……じゃあ、補給基地に着いたら、何か奢ってくれるのか?」
「?!はぁ?!何で俺が?」
「ほらぁ~……。やっぱり。」
なお、突っ込まれる。
もしそうなら、次の補給基地で何か奢ってくれるのかとも。
商談みたいな感じで言うが、断られて、やっぱりなと呆れられる。
近くではあっても俺は、聞くだけで笑うしかない。
「ぬぬぬ!ああもう!ほら、行くぞ!!丁度スフィアももらったし!」
バカにされているのは明白で、もういいやとばかりにその人は。
腹立ち紛らわすように言っては、足を別方向に向けてさっさと歩きだす。
「おっ!!早速俺たちにも何か奢ってくれるってよ!」
「マジか!!へへっ。」
「バカかっ!!!!」
後ろから、釣りグループの一群も従うが。
冷やかしの言葉を、次々と掛けていく。
聞いていて、釣竿を持つ人は、腕を振り上げては、一蹴した。
「!っと。」
少し進んだ所で、思い出したかのように立ち止まり、振り返って来た。
「?」
何だろうと俺は、不思議そうに首を傾げる。
「……へへっ!ありがとうな!また会ったら、今度は何か奢るぜ!じゃあ。」
「!!」
ここから去る前に、お礼と挨拶をとその人はしてきた。
軽い会釈に、手を振ってきて。
俺もまた、合わせる形だが、会釈し、手を振って見送った。
その人は、そっと笑みを浮かべて、また歩きだす。
「っととと!止まったり動いたり、忙しい奴。」
「……なぁさ。奢るってんなら、俺も俺も~!」
「喧しいわ!!!」
歩きだした向こう側では、冷やかしと反発し合う。
去り行く一群の、そんな姿に俺は、苦笑交じりで見送った。
「……ふぅ。」
「!」
姿が見えなくなったなら、一息とマフィンが溜息ついて。
振り返ってみるならば、この一幕だけでも色々あったのだ。
複雑そうな感じが窺い知れる表情をしている。




