うみでのすふぃあがり!
俺は、バックパックを置き、手袋をして、噂のレーセを腰に。
スフィアを一つ取り出してはまた、バックパックを背負う。
「……。」
取り出したスフィアを輝かせて、それをそっと、ポケットに仕舞う。
ポケットからスフィアの光が溢れ、全身を包み込んだ。
軽くその状態でジャンプすると、非常に軽く。
思いっきり跳躍したら、より高く跳躍できるだろうと思うほどだ。
そうしたなら、俺はまた、皆に振り返ると。
「じゃあ、行ってくるよ!」
言って、そっと笑みを浮かべるなら。
思った通りに、俺は思いっきり甲板を蹴り、大きく跳躍する。
「?!……って。そうだったわ。いってらっしゃい。」
マフィンは反応が遅れながらだが、見送りの言葉を言い。
「!いっけぇ!!」
「いいぞ!!」
《その無鉄砲ぶりには、敬服する。こちらも牽引して、安定させろ。》
また、ギャラリー状態となった隊員さんたちも声援を送り。
俺はそれを背に、光の台座へ向かって行く。
最中、ヘリの人も何かしている様子。
降ろしたワイヤー状の何かを、調整している様子が伺えた。
跳躍の終端に、俺は上手く光の台座に辿り着くと。
相当なほどの低反発な、枕かクッションかと思うほどの、沈み込みを見せて。
「?!」
思わず、目を丸くしてしまう。
「……。」
けれど、やると言ったからには、やはり最後までやらないとと。
きりっと、その先を見据える。
「……っ!」
小さく息を吐いて、膜を蹴飛ばすようにしたなら。
跳躍はより大きくなり。
簡単に、浮いている残骸と思われる場所まで導いてくれた。
「……っと。」
乗ると、一瞬ふんわりと沈んだが、よりも浮力が勝り、また浮く。
小さなボートに乗ったような雰囲気だが。
広がる海原には、不安を一瞬感じてしまった。
「……。」
頭を振り、冷静さを取り戻すなら。
早速取り掛かりたかったが、気付くことには、釣り針があり。
あの、艦尾で釣りをしていた人の物だろうと思われる。
先端が上手い具合に引っ掛かっている物の、簡単に取れそうだ。
「……。」
まずはと、ひょいっとそれを取ってやる。
もし、俺がスフィアを取り出して、沈んでしまったなら。
それも、巻き添えを与えかねない。
取ったら、振り返り、最早ギャラリー状態になっている艦尾に向けて、手を振り。
気付いたか、例の、竿を持っていた人は、糸を巻き上げていく。
「?!」
しかしそこで気付いたが、ギャラリーの数は多くなっていて。
ワイワイと歓声を上げていた。
どうやら、俺が何かするとして、通信を聞きつけた物好きたちが。
多分手が空いているのだろうが、これ幸いと活躍を見ようと集結している様子。
その状態に俺は、何だか気恥ずかしくもなり、緊張も余計に増す。
《どうした!ウィザード!》
「!……い、いや、何でもありません!緊張しただけ……。」
《そうか。健闘を祈る!》
「……あ、あはは。……はい!」
緊張は元より、ある意味現実に戻してくれる言葉はヘリより掛けられ。
我に返った俺は、大丈夫だと応答。頷いては、作業に取り掛かろうとする。
「……。」
その残骸に立ち、そっと手をかざすなら、スフィアの気配を探る。
「!」
感じ取るなら、目を見開き、レーセを取り出した。
《分析結果。反応装甲はありませんが、装甲厚はそれなりに存在します。また対象より低レベルのフォトンシールドを確認。スフィアが起動モードです。出力を上げて使用するのをお勧めします。》
「!」
俺のバックパックから、盾が言ってくる。
降り立った時から、冷静に対象を分析していた様子。
耳にして俺は。
「分かった。……で、レーセの出力調整は……?」
従うことにして、レーセを握るが。
ふと思うことがあり、どうやって出力を調整するのかということで。
《リンクいたします。レーザーセイバー、出力を向上。なお、通常よりも強力な火花が生じます。使用中のスフィアの出力を上げるのもお勧めします。》
「!……分かった。じゃあ、よろしく!」
盾はどうやら、自分で調整してくれるということで。
ついでに、身の安全を確保するためのアドバイスも加えて。
俺は承諾した。
「?」
と、自分が今使っているスフィアの発光が強くなったのは確認できたが。
手のレーセに関しては、何が変わったかは分からず、俺は首を傾げる。
そうであっても、何かしたのならと、俺はレーセをスイッチに指を掛け。
目標地点に向けた。
「?!」
独特な音を立てて、光の刃が走ったと思ったら。
その発光は凄まじく、思わず目を背けてしまう。
高温と、火花まで出て。
もし、スフィアを展開していなければ、あっという間に火傷してしまうかも。
それでも我慢して、レーセを握り締めて待つなら。
「!」
向けた方向から逆に、光が空に向かって伸びる。
レーセの反射かと思ってしまうが、しかし、強さが違うことから。
別の要因とすぐに考え直す。
もしやとして、俺はレーセを止めて、腰の、取り付けられる所に収納したならば。
軽い目の痛みに、ショボショボしながらも、覗き込む。
「!」
目にしたのは、機械と機械に挟まれながらも光を放つ水晶で。
つまりは、スフィアだ。どうやら、装甲を焼き抜いたようだ。
気付き俺は、手を伸ばすが、だが、触れる前に手を止めた。
異様な熱さを物語る、金属の赤色が、そうさせる。
また、降り注ぐ海水の滴が煙を上げて消えることからも。
ただ単に触れるとすると、これでは火傷してしまう。
「……。」
ならばと俺は、その場所に手をかざした。
目を瞑り、その先にあるスフィアに触れるように想像する。
触れたと感じたなら、目を見開き、手招くように手を動かした。
すると、スフィアは招かれるように浮遊してくる。
その大きさは、まあ、手の平に軽く収まるほどで。
前もそうだったが、こんな大きさでも、こんな機械の巨体を動かせるのだから。
大したものだと、光に見とれながらもつい思う。
優しく、俺の手に収まろうとするが。
「?!うぉっ?!」
触れるよりも前に、かなりの熱を感じてしまう。
やむを得ず俺は、海に向かわせて、入れた。
スフィアは、焼ける音と共に、軽く湯気を立ち上らせて。
「……。」
湯煙が程よくなるなら、また自分に戻す。
今度は熱くなく、このまま、ポケットに入れれそうだ。
優しく手に包んだら、何も入っていないポケットの方に入れた。
終わったと察するように、そのスフィアは輝きを止めて。
俺も、安堵にそっと笑みを浮かべた。
……が。
「?!」
光がなくなったその瞬間に、残骸が浮力を失ったか。
淵から泡立てながら沈みだしていく。
《!まずいぞ!ワイヤーを放せ!それと、救助用のワイヤーを用意しろ!》
ヘリは、咄嗟に判断して、牽引していたワイヤーを戻し。
代わりに、別を用意するようで、軽く見上げたら。
ヘリの側面から、今度は何か取り付けている様子。
「?!」
が、それよりも沈む速度が速い。このままだと、沈んでしまう。
「!!!大和!!」
マフィンは理解して叫ぶ。
見るならば、スフィアによって形成した台座を、こちらに向けて動かしていた。
飛び乗れと言わんばかりの目線も、送ってくる。
俺は見て、無言で頷くなら、今度は沈みゆく残骸を蹴り。
思いっきり跳躍してみせた。
反動に残骸は沈むが、俺は当に宙を飛び。
マフィンの用意した台座に向かっていた。
足が触れるなら、行く時と同じように沈み込む。
なら、同じように跳躍をすればいいが。
今度は艦尾の、甲板までの飛距離は足りなさそうだ。
「!」
思い付いた。
「マフィン!!俺を弾いて!!!」
「?!や、大和?!な、そんな……っ?!」
言うことには、このまま宙に弾き上げてと。
シールドバッシュ、それもフォトンシールドの。
そこに俺の跳躍を足せば、十分に足りる……はずだ。
マフィンは、聞いてぎょっとするが。
俺が言うならと、またきっとなり、真剣な表情で見据えて。
「大和!!怪我しないでね!!!えいっ!」
怪我をしないでねと、願いを言っては。
俺の体を弾き飛ばすように、スフィアを動かした。
「!」
一瞬の衝撃がある、下手をすれば、気絶しそうになりそうだが。
俺は丁度それに合わせて、膜を蹴り上げた。
「?!へっ?!」
確かに成功はした。跳躍距離、高さ、全て良好だ。だが、唯一ミスがある。
それは、想定以上に高く跳躍してしまったことだ。
眼前から見えていた艦尾が消え、やがて空の青だけに。
思わぬそれに、俺は目を丸くしてしまう。
慌てて目的地を探すなら、丁度下。だが、その下も、眼前に迫ってくる。
今度は、落下しているのだ……。
確かに上手く行ったと言えるが。
問題は安全に着地できるか分からなくなったことだ。
「?!うぉあああああああああああ!!!」
結果、俺は情けない声を上げて、そのまま落下していくことになる。
「!!」
やがて飛行甲板が迫るその一瞬に、誰かが俺の眼前に走り出て。
仁王立ち、腕を広げて構える姿がある。
アビーだ。
そうして俺は、アビーにそのまま体を突撃させてしまうことに。
「むぐぅ?!」
「うっ!」
目の前は、アビーの胸に覆われ、俺はくぐもった声を上げて。
アビーは、突っ込んできた衝撃に、軽く声を上げた。
だが、上げただけで、その後バランスを崩すことはない。
「ぷはっ?!」
顔を上げて確認したなら、アビーはまず笑顔を浮かべて。
ちらりと周囲に目をやれば、キャッチしたその姿勢のまま、立っているようだ。
「……ええと、あの……。」
「えへへっ!大和ちゃんかっこよかったよ!!」
「……あ、ありがとう……。」
言いかけるものの、それらはアビーの感想に掻き消されて。
俺は、上手く抱き締めて、キャッチしてくれたことと。
そう言われたことに感謝を述べる。
顔を赤くしながらだけども、しかし、顔を振り、冷静になっては。
「あ、アビー!大丈夫?」
気遣いに俺は、聞いた。
「?」
アビーは、首を傾げるが。すぐに気付いて、耳をピンとさせる。
「へーきへーき!あたしはこれぐらいじゃ怪我しないもん!」
屈託ない笑顔を向けては、言ってアピールした。
安堵に俺は、つられて笑顔を向ける。
「いいぞー!!」
「ひゅー!」
「この艦最高のイカレ野郎に認定しようぜ!!!」
「?!」
が、すぐに俺のその顔は、赤くなってしまう。
周囲のギャラリーからの冷やかしに、だ。
「……。」
いたたまれなくなり、俺はアビーの腰をポンポンと優しく叩き。
大丈夫だと安心させては、離れ、誤魔化しに服装を整える。
アビーは、にっこりと笑みを浮かべて見つめているだけだ。
恥ずかしいとか、そういうのはなさそう。
「!」
そんな俺の誤魔化しや気恥ずかしさは、ヘリとは別の、妙な音に掻き消され。
何かこう、ラジコンの音のような、軽快で、あるいは、羽虫みたいな音。




