こうくうぼかんのにちじょう!
「……う~ん。軍艦だからかな。大勢の人が、一斉に、一緒に動くから、こんな音を立てているのかもね。」
類推だが、軽く悩みながらも説明した。
「……そう……だね。」
寝ぼけ眼ながら、理解を示してくれた。
そうして、シンは寝ぼけ眼を擦りながら、ようやく普通になるまでに。
一方の俺は、ちらちら部屋を見渡して。
つい、外を見ることのできる丸窓の向こうを見ていた。
まだ暗がりであるものの、薄明かりが見えて来て。
つまりは、夜明けがもうすぐということか。
「……。」
早朝であることは窺い知れるものの、起きてしまったがため。
つい、退屈さを思い出してしまう。
この部屋の空間内では、やることが限られているし。
「……隣、起きてるかな?」
多少の退屈しのぎにはなるか、呟くことは隣の様子で。
「!」
レオおじさんは、聞いて耳をピンとそばだてて。
「……んん。音からするなら、起きてんじゃねーか?特にマフィンなんか、騒がしいのは苦手だろうし。」
「……ですか。」
レオおじさんが調べた結果に、頷きを示して。
「……。」
ただ、朝起き掛けの思考力が災いして、その続きが話せないでいる。
「!」
助け舟は、あった。
噂通りかもしれないが、扉からノックの音が響く。
「!」
「お!」
レオおじさんも、シンも、気付いて注目する。
「入るわよ。」
ノックに続いて、マフィンの声が響く。入室を求めるもので。
が、その声はどこか、眠たそうでもある。
待たせたなら、このまま眠りそうな気もしたが。
……いやマフィンに限って、それはないか。
「い、いいよ。」
俺は、頷いてマフィンを招き入れると、言葉を扉の向こうに掛けた。
扉は開かれて、マフィンと、その後ろに眠たそうなアビー。
エルザおばさんも続くが、こちらは眠たくはなさそうだ。
「……お、おはよう。」
俺は、入って来た三人にまず、挨拶をする。
「ええ、おはよう。三人とも、起きていたのね?」
「うん。……けどマフィン、眠そうだね?」
まず返してきたのは、マフィンで。
ついでに、珍しそうだと言っても来て。
俺は、頷きを返したなら、今度はマフィンに聞く。
「……慣れない環境で寝たから、かしら?何だか、眠った気がしないのよ。」
「……そうか。」
返答としては、慣れない環境で寝たことが災いと。
俺は、なるほどと思う。
確かに、マフィンの家なら、こんな音はするまい。
ここだけじゃなく、全体的に何か音がして。
時折、波に揺れる環境なら、無理もない。
加えて、狭い寝床となると、何だか、違和感だらけと。
「……。」
そうしたなら、視線をアビーに向けるなら。
今にも眠りそうで、頭をこくこく上下させている。
「!……うにゃ……おはよ~……。みんな~……。」
「……お、おはよう。」
俺の視線に気付いて、耳をピクンと跳ねさせたなら。
消えそうな声でも、俺に挨拶をしては、笑顔を返してきた。
俺は、アビーのそんな姿に違和感を覚え、ぎこちない返事をして。
……いかにも、眠気が残っていると訴えてきている。
いつもそんなに、遅く起きるほどではないのだが、流石に早すぎるのか?
よく分からないでいる。
それに、何か言葉を掛けようにも、そのまま眠りそうだ、そっとしておくか。
「おはよう!」
「……おはようございます。」
一方で、その三人の中で、一番元気なのはエルザおばさん。
どこにも眠気を感じさせない様子で、挨拶をしてきた。
俺も、返しては、頭を下げる。
「……ええと。」
その元気のあり様に、これまた疑問を覚えて、つい聞いてみたくもなる。
「……エルザおばさんは、やけに元気ですね。」
「!」
そうしたなら。
エルザおばさんも、耳をピンと立てて。そっと、笑みを浮かべては。
「そりゃぁ!毎日騒がしいんだから、これぐらい慣れっこよ!第一、いびきの喧しい旦那が側で寝ていんだからさ!なははは!慣れたもんよ!それと比べりゃここは天国さね!」
「?!え、俺そんないびきかくか?!」
「……そ、そうですか。あはは……。」
肝っ玉母ちゃんよろしく、胸を張っては自慢げに言ってきた。
慣れているようで。もちろん根拠はある。
苦笑しながら、思うことは。
いつもあれだけの子どもたちの相手をしていたなら、確かにそうもなるか。
「?」
ただ、疑問もあり、つい首傾げ。
レオおじさんは、ぎょっとしながら言っていることだが。
いびきなんて、していたのだろうかと。
……結論かどうかは、分からないが、目を瞑った後に意識がないことから。
俺はどうも、疲れ果てて寝ていたのかもしれない。
故に、感じていなかったと。
「してるよ!いつも。ま、それで起きない子供たちもあれだけど。」
「……?」
エルザおばさんは、レオおじさんの否定に、反論して。
腑に落ちないか、俺やシンを見て、また向き直っては、首を傾げる。
「……ま、自分じゃ分からんだろうさね。」
その様子に、エルザおばさんは呆れ気味で、そう声を掛けた。
「……と。」
「!」
エルザおばさんは、自分の旦那さんへの挨拶はそれぐらいにして。
今度はシンに視線を向ける。
向けられたシンは、気付いて体をピンと張る。
エルザおばさんは、歩み寄っては、そっと、シンを抱き、頭を撫でる。
「おはよう。」
「?!お、おはよう、……ございます。」
シンは、抱き締められて、顔を赤くしながらも、エルザおばさんの挨拶に応じて。
エルザおばさんは見て、嬉しそうに笑みを浮かべる。
「ん!いい子ね。早い時間だけど、ちゃんと起きれたね!」
「……。」
まるで、我が子のように言い聞かせては、褒める。
シンは、戸惑って、何を言えばいいか分からない様子だ。
その様子に俺は、まあ、エルザおばさんらしいかと思える。
これぐらいの子どもの扱いは、実に手馴れていた。
「……はいはいそれまでね。で、皆揃ったところであるけど。」
「!」
朝の挨拶もそれぐらいにしてと、マフィンは手を叩き。
話題を振ってきそうな雰囲気を出す。
気付き、この部屋の皆は、マフィンに注目する。
「どうする?」
村の代表として、そんな中投げ掛けてきた。
マフィンにより、朝の挨拶をそこそこにしたなら。
それぞれがそれぞれの顔を見合わせていく。
見合わせては、……互いに何も思いつかないでいるがために。
一緒に首を傾げることになった。
そもそも、何をしようにも、という状態で。
いやはや、スフィアの練習とか、それ以外にすることは、思い付けない。
昨日みたく、盾とスフィアを使って、艦内見物をとしても。
多分目新しいものはなく、ただただ退屈するしかない。
そんな時に。
「?!みっ?!」
「!!」
何か思いついて、声を上げてくれたのはアビーで。
なお、声を突然上げるものだから、つい目を見開いて、皆注目してしまう。
そのアビーは、先ほどの眠気はいずこへか。
眠気眼は既になく、耳もピンと立てていて。
周辺を探っているような様子は、いつものアビーだ。
……で、そのアビーが唐突に声を上げたのはなぜか。皆、気になってしまう。
「何だか!美味しそうな匂いがする!!!」
「「……。」」
アビーは答えを言ってくれたよ。
そうしたうえで、何か想像して、涎を垂らしそうな様子さえ見せる。
俺を含む皆は、呆れもあって沈黙してしまう。
まあ、アビーらしいけれども。
「……ふぅ。じゃ、決まりね。」
アビーのそんな様子に、何かを決めたとマフィンは言い出す。
マフィンを見るならば。
「とりあえず、朝ご飯を食べに行きましょ?後は、何をするかは、人たちに聞けばいいかしらね。」
「!」
決めたことを言うならば。
アビーの様子から閃いたもののようで、朝ご飯を食べにいくと。
後のことは、その時決めればいいという方針だ。
俺や、他の皆も、反対意見を述べることはなく、素直に頷く。
そうして、マフィンを先頭に部屋を出たなら。
「!」
「!お!おはよう!!ウィザード一行!」
「!!お、おはようございます。……?」
丁度通路の向こうから、慌ただしく何か抱えながら、走って行く人々の姿があり。
どうも、昨日会った、あのギャラリーの人たちのようだ。
挨拶を交わす傍ら、つい抱えた物品に注目してしまう。
長い、釣り竿と思われる物と、何かを入れそうなボックスのセット。
普通に考えたら、釣りだと思ってしまうが。
「!」
俺の視線に気付いて、ギャラリーの人は足踏みしながらも、口を動かして。
「ああ!これか。これは、ちょっとした物さ。多分、想像している通り、いわゆる〝釣り〟だけどね。」
「は、はあ。」
道具を見せながら、言うことには、想像したようなものだということで。
しかし、気になる言い様でもあって、俺は不思議に、首を傾げてしまう。
「ああそうだ!もしよかったら、後で艦尾辺りに来てみたら分かるよ!じゃ、また!」
「……は、はい。ええと……お気を付けて……?」
俺が、不思議そうな顔をするものだからと、提案をしてきた。
腑には落ちないが、見送りに俺は、道中の無事を祈る言葉を呟く。
「へへっ!ありがとよ!」
祈りは受け取ってもらえたようだ。
その人たちは、にっこりと笑ったなら。
そのまままた、駆け足で走り去っていく。
「……。」
俺は、その後ろ姿を見送った後、マフィンに視線を移す。
マフィンもまた、その人たちを見ていたようで。
「!」
俺が視線を向けたことに気付いたなら、マフィンもまたこちらを向く。
「……ま、次の予定は決まったわね。」
「!……だね。」
言いたいことは、次の予定であり、確かに、決まる。
それも、俺たちが部屋を出る前に言ったことの一つが、実現した。
その人たちを見送って。
こちらはこちらで、料理の匂いを辿るように足を進めるならば。
「「さー!いえっさー!!」」
「?!」
途中、どこからか威勢のいい掛け声が響いてきて。
聞こえる具合からして、結構離れた場所からのようだが。
ただ、その掛け声の威勢のよさに、つい気になってしょうがなくなる。
「!ねーねー!!」
それは、アビーにも伝わっていて。
何よりも、俺以上に好奇心の旺盛なアビーだ、目を輝かせている。
「?どうしたの?」
アビーが何か言いたそうにしていたため、マフィンは聞いてみる。
「この声、辿ってみない?」
アビーは、やはりなことを言ってきた。
その通りに。
興味津々なアビーは、俺たちにこの声を追ってみないかと聞いてきた。
「……。」
先頭のマフィンは、手を口に当てて軽く悩んでは。
「ま、いいんじゃないかしら?道すがら、……じゃないけれども、寄ってみてみるのもいいかしらね。軽い、運動みたいなものってことで。」
アビーの意見に頷いた。
「えへへっ!やったぁー!」
アビーはにっこりと笑って、喜びに体を弾ませる。
他の皆は、特に嫌がることもなく。
アビーの笑顔につられて、笑みを浮かべて頷いた。
それで、その反響する音を頼りに、歩いて行ったなら。
場所は食堂から離れて、どうも格納庫辺り。




