おしえて?!まふぃんせんせい?
黙して俺は見ていたが、何だか呆れが溢れてきた。
「……ちょっと……。」
その様子に、マフィンも気付き、ジト目になっては、言い始め。
「変な気を起こさないでね。単に、痛そうだったから診ただけよ。」
「いやいやぁ!可愛い女の子にこうされると、俺ときめいちゃう!」
「……。」
変な気を起こさないようにと、釘を刺してきたが、効果はない。
ソードは、その変な気を起こすなという、懸念通りのことを口走り。
やっぱりなそれに、俺は頭を抱えて。
また、同僚のウィッチさんは、口をあわあわさせている。
「……そう。」
マフィンは、失礼なことをするソードに、不思議なことにそれだけを言う。
文句の一つでも、ありそうなものなのに。
「?!」
と思ったら。
ウィッチさんも、俺も誰も扱っていないのに、大量のスフィアが、浮遊して。
集結していく。
中には、ウィッチさんの集めたものまであって。
何が起こっているのか、つい驚愕してしまうものの。
「沢山のスフィア、借りるわね?」
マフィンは、不気味に静かに言うだけで。
なら、これを起こしているのは、他ならぬマフィンであるということだ。
誰に言ったなんて、分かることで、ウィッチさんは言われたと思ったなら。
何だかこくこくと頷く。
「……丁度、スフィアの訓練をしていたのよね?なら、こんな攻撃手段もあるということ、教えてあげるわ?」
「?!」
「うぇ?!」
何のためかというのは、マフィンが直に言ってくれて。
そう、〝教えて〟くれるようだ。
攻撃手段についてだが。さて……。
ただ、呑気にふと思っただけで、現実、俺は嫌な予感を覚えてならない。
それは、ソードも同じようで、冷や汗を流す。
その表情は、もちろん、青冷めている。
予感。それは、流石戦闘機乗りといったところ。
「……知っている?」
マフィンは静かに問う。
ソードは、答えられない。
おまけに、マフィンからは、加えて異様な気迫を感じて。
対象ではないにしても、俺でさえ、震えてしまいそうだ。
ソードもまた、震えて。
「……スフィアをね、20個ほどまとめて、フォトンシールドを発生させて、頭上に落とす方法なの。質量は十分でなくとも、圧力で補えるだけの衝撃を与えられるの。」
「!」
その問いの先を紡ぐならば。
やがてマフィンによって支配されたスフィアたちは、大量に天井へ向かい。
集合していく。
一斉にフォトンシールドを発生させて、その光の膜の密度を増して。
……予感として分かったことは、そのまま落ちると、とにかく痛いということだ。
少なくとも、金づちで殴られるほどはあるだろう。
ブォン!という、重たい物体が振り下ろされる音が響くなら。
やがてソードの顔色は、恐怖へ染まる。
「わぁあああああ!!!ご、ごめんなさいごめんなさい!!!待った、待ったつい調子に乗っちゃっただけなんだぁ!!」
とる行動は一つ。謝る。
ソードは素早く身を翻して、土下座してみせる。
「……。」
にもかかわらず、マフィンは止めない。
「!」
まずいと思った俺は、素早く手を動かすならば。
自分のスフィアをいくつか浮遊させて。
フォトンシールドを展開、直撃に備えるようソードに向けて、動かそうとした。
しかし、遅く。
やむを得ず俺は、目を瞑るしかない。
「……?」
しかし、何もない。
うっすらと目を開けたなら、スフィアを密集して形成した。
多分鈍器のように扱える状態のは、不思議に。
ソードの頭上ギリギリにて、静止していた。
誰が?
マフィンが止めたのだ。
いくら何でも、盾がそうするわけもない。
この場において、そんな無茶なことができるのは。
盾以外は、マフィンしかいるまいて。
あと、盾は俺に危害がある場合にのみ、動くし。
「ふぅ。……馴れ馴れしくしないことね。」
マフィンは、溜息一つ、ついては言い、自らの髪を撫で広げる。
どうやら、本気で殴りつけるつもりはないらしい。
それらは全て、脅しのようだったのだ。
「……ひぃ~……。おっかねぇ……。」
マフィンの様子は、土下座で伏せている状態であっても感じ取れているようで。
ソードは、小さく言った。
「はい。ありがとう。返すわ。」
マフィンは、ソードがそんな様子であっても無視して。
ウィッチさんに言い。
扱った大量のスフィアを、丁寧に浮遊させながら戻していく。
「!!は、はい!あ、ありがとうございます。」
「いいのよ。単に気になって来ただけだから。」
ウィッチさんはまた、なぜかお礼を言って。
「それと。」
「!」
やがて、俺にも向いてくる。
そっと、笑みを口元に浮かべて。
「レーザーを発射するだけが、スフィアの攻撃法じゃないのよ。そりゃぁ、あなたが持つその盾と比べたら、効果は少ないでしょうけど。」
そう言う。
それは、指摘であり。
「!」
言われて俺は、なるほどと感心して。
そのような使い方は、想像していなかったこともある。
何せ、スフィアって、大事な物のようだから。
物理的にぶつける様な行為は、想定していない。
「まあ、大和が知らないのも、無理はないわ。」
「!」
フォローするかのように、言い始めてくる。俺は、マフィンに注目するなら。
「そもそも、スフィアって、大事な物でしょ?私も、よっぽど、例えば、そうね、レーザーが使えない状況とかでもない限り、したくないわよ。お婆さまからも言われているもの、そんなこと、罰当たりだ、って。だから、教えなかったのよ。」
「!……なるほど。」
言うことは、俺が思った通りで。再び俺は、感心を示した。
「……うへぇ~……。怖い~……。」
「!」
その感心している傍ら、ゆっくりと安全確認しながら頭を上げるソード。
上げたなら、おっかないと言わんばかりで言い。
また、その表情からも、窺い知れる。
「……。」
そのために、怖いものを見ないようにして、俺の方に視線を移すなら。
何か、言いたそうにして。
俺は歩み寄るなら。
「……マフィンっち、怖いんだな?」
「……。聞いた話だと、本気で怒ると、山一つ消し飛ばす、だって。」
「……勘弁してくれよ。余計怖くなった。」
「……。何だかごめん。」
ソードは口を開いて、改めて口頭ながら、その恐怖を露にする。
フォローにならないが、噂でしかないマフィンのことを言い。
余計に怖がらせてしまう。
謝りを述べるが、さて、どうしたものか。
誰か他に、フォローしてくれそうな人はと、俺は目配せして。
「!」
視線はやがて、ウィッチさんに行く。
俺の視線に気付いて、ウィッチさんは体をピクリと跳ねさせた。
「……ええと。」
訴えに気付いてはいるが、フォローになる言葉あるか、迷いだす。
震えて、口元を動かすならば。
「……ええと、ま、マフィンさん……!」
「?」
「!」
フォローではなく、マフィンに何か言いたそうである。そこは残念に思う。
「た、沢山のスフィアを扱われていて、その、すごいと思いまして……。あのその……。」
「……。」
マフィンは耳をピクリと跳ねさせて、聞き入るが。
ウィッチさんが言うことはどこかしどろもどろ。
なお、マフィンがすごいということは伝わる。
「……そう?でも、あんまり褒められたものじゃないのだけども。それに、敬うのは、大和じゃなくて?私の力じゃ、あんな褒められる存在にはなりえなかったわ。」
マフィンは言われても、だが、謙遜しているのか。
自分にとっては、当たり前と言わんばかりであって。
また、言うべきは俺にではないかとの言い様。
「う……そ、そうですけど……。あんな、大量のスフィアを扱う技術、と、とても、すごかったです……。」
「……。」
大したことじゃないというマフィンに。
ウィッチさんはフォローを入れているようで。
マフィンは静かに聞いていて。
ちらりと、俺を見てはまた、ウィッチさんに向き直る。
「!」
「……まあ、スフィアの扱いに関しては、私が大和に教えたからね。」
俺は、耳をピクリと跳ねさせたが、マフィンは続けることには。
元々、俺に教えたのは自分だからということで。
「!」
「!!」
その言葉に、ウィッチさんやシンは、ごくりと唾を飲み込んで、緊張し。
それは、単純に、先生の先生だからだろう。
単に俺と仲のいい知り合い程度であるなら、ここまでの緊張もすまい。
知っているか、今知ったかということはあんまり関係なく。
先のマフィンがしたこともあって、なおさら緊張するのだろう。
「あら?皆どうしたの?」
その緊張は、既に見抜かれていて。
マフィンは、先ほどとは違う二人に、首を傾げて。
「え、ええと……。」
ウィッチさんは、何も言えないでいる。
「!あら。変に緊張させたかしらね。いいのよ。緊張しなくて。」
自分がそうさせてしまったかと気付いたなら、マフィンはほぐすように言う。
が、二人とも緊張が抜けることはない。
「……う~ん。私が来て緊張させてしまうってなると、何だか悪い気がするわね。……何かあるかしら?」
なら、緊張が解ける何かアイデアをと、翻って悩むものの、まだ出せないで。
「!」
そう思った矢先に、そんなことをしてくれそうな足音が一つ。
隣の部屋の扉を開けて迫る。
雑で、慌ただしいそれは、他ならぬ、アビーので。
「……。」
当然、マフィンも耳にしていて。
悩み一転、呆れ顔になり、頭を押さえる。
「楽しそー!ねーねー!入っていい?」
やがて、こちらの扉の前から、声がして。
楽しみだと感じる声色であり、そのために、俺に了解を求めてきていた。
「……いいよ。」
断る理由は特にない、招き入れた。
扉は元気よく開かれ、アビーがその姿を現す。
待ってましたと、元気を表に出していて。
いつもの、アビーらしい。
マフィンもまた、目にして、鼻で溜息を吐く。
呆れているのが、伺えた。
「!」
しかし、おかげで場の空気が変わったとも言える。
アビーが登場した後、シンもウィッチさんも、緊張はほぐれて。
……いや、その後ウィッチさんだけ、また緊張の面持ちになってしまう。
アビーの、分け隔てない態度は、ある意味緊張を呼ぶからね。
「……まあ、おかげで変な緊張もなくなったし。」
「ん?どして?」
「……何でもないわ。」
マフィンもそんな光景に気付いていて。
同じく、おかげさまでと思っていた。
アビーは耳にして、何でだろうかと、首を傾げて。
そこら辺鈍いアビーに、これ以上のことを告げることもなく。
マフィンは言い切った。
「ま、いっか!それでそれで!何してたのー?」
マフィンの言い切り、気に留めることもない。
アビーは変わって、俺たちが何していたのか気にしている様子。
「!そりゃぁ、スフィアの練習をね……。」
「!!」
言われたから、答えたなら。
アビーは聞いて、目を輝かせて。
「さっすが!大和ちゃん!」
にっこりと笑みを浮かべて、褒めてきた。




