こしがぬけちゃった……
俺は、勢いに引き気味であっても、手を振って見送る。
その手振りが、見えたかは分からないが、もう、この部屋から出ていった。
そうして、この場には、村から来た俺たちだけになる。
「……。」
無言で俺は見渡せば、その場にいる皆はだが。
何も言わずとも、笑顔を見せていて。
レオおじさんや、エルザおばさんとかは特に、何だか楽しんでいたようで。
その余韻が、顔からも伺えた。
「あ、あの……!」
「!」
そんな、余韻感じる静けさに、一石を投じたのはシンで。
俺は、視線を向けると。
「その……。大和お兄ちゃん!かっこよかったよ!……すっごかった!あんなに動いて、それでそれで、あんなに沢山の、……何だっけ?使って戦っていて、ほんと、本当に、ウィザードなんだね!」
「……。」
感想を言い、それも、やはり航空隊や。
ギャラリーの隊員さんたちと似たような感じ。
最後はウィザードと褒め称えられて締めると。
やっぱり、気恥ずかしくなってしまう。
そうして、顔を隠すために、逸らしたなら。
「……?大和お兄ちゃん?」
「!」
シンは気にしてしまう。
「……い、いや。ちょっとね。恥ずかしくて。あはは、ありがとう。」
何でもないよと、俺は言い、宥める。
「……ところで。」
話を俺が変えることには。
「シン。ヘッドギア……みたいなのを付けていたけど、どうだった?」
シンは、俺たちと一緒に飛べなかったが。
代わりとして、ソードが用意した、不思議なヘッドギアを装着していて。
場面を見ていたのだが、さて、どんな様子だったか。
聞くと。
「!んとね。ソードお兄ちゃんの操縦、すごかったよ!沢山相手が攻撃してきても、ひょいひょいって避けて!お空を飛ぶのって、あんなのかなぁ~。」
凄かったらしい。
思い返して、興奮も感じる。
傍ら思うことは、あれは多分、普通の飛行じゃないということで。
そもそも、ソードは現役の、戦闘機のパイロットだ。
悠長な飛行なんてやってられない。
聞いて苦笑する。
「!」
そんなシンと俺との間に、エルザおばさんが歩み出て。
「?!」
「わぁ?!」
俺とシンの頭を撫でた。何事と俺は思い、シンと一緒に目を丸くする。
「良かったねぇ!」
優しく、子どもに接するような雰囲気で言いだしてくる。
それはまるで、テーマパークでの一幕のよう。
子ども専用のアトラクションに子どもだけで行き、帰ってきて喜ぶその。
シンはされて、何だか嬉しそうにしていて。
俺は、……多分そういう年齢じゃない、気恥ずかしさにまた、顔を赤くした。
「大和ちゃんも、なかなか良かったわよ。あたしだったら、あんなことできないさ。」
「……え、えと。あ、はい……。」
褒める言葉が掛けられて、でも、素直に喜べない。
ぎこちなく、頷きながらも。
なお、悪い気はしない。
「がはははっ!全く、お前さんは。やっぱり、そうだよな。ウィザードって名前は伊達じゃないってか。突拍子もないことをするといい、なぁ!」
「……あはは。」
エルザおばさんの影からレオおじさんが顔を見せては。
豪快に笑いながらも、言ってくる。
釣られてはいるが、何となく苦笑いを返す。
「まあなんだ。すっごいってことでいいじゃねぇか。さっきの連中も言っていたが、胸張っていいんだって。自信持てよ。聞いた話じゃ、スフィアと、ほら、お前のお気に入りの盾を一緒に使って、何でも、映画館みたいなことしたとか、聞いたしよぉ。なぁ!」
「……あはは……。」
もっと自信を持っていいと、言われる。
やっぱり、苦笑いしかできない。どうしようかと、思ってしまう。
言われて嬉しくないわけじゃないが、戸惑いも隅にあって。
どうしようか、迷いも出てしまう。
苦笑でしか、返せないのが、何だがもどかしい。
「そこは、大和ちゃんらしいね!」
「!」
割って入ってくるのは、アビーで。
俺に、寄り添うように腕を組んだ。
その結果で、何だか気恥ずかしくなり、余計に顔が赤くなる。
おかげでか、先の悩ましさは飛んでしまう。
「迷いながらも、ちゃんと考えてくれる!それでいて、自慢しないし、皆を大切に思ってくれる。それが、大和ちゃんのいい所だし、あたしは好きだよ!」
「?!」
俺の悩ましさが消えたと感じてか、アビーは続けて。
俺のいい所を言っては、にっこりと笑みを浮かべた。
紡がれた言葉耳にして、心音が跳ね上がるのを感じる。
好かれたと感じて、また、多分直接言われるのは初めてかもしれないと。
その意識は、俺の鼓動を跳ね上げてしまった。
「?」
口にした本人は、どこ吹く風、いつものように、首を傾げて。
口にしたのが、どれほどのことかはよく考えてはいないといった様子で。
そこはやっぱりアビーらしい。
「……がははは。ま、そうだな。そういう、真面目なのが大和らしいな。」
「そうよね。大和ちゃんは、変に胸張らないのがいいのよね。本当は、うちの旦那のように、大笑いしそうなとこだけどね!なははは!」
アビーのおかげで、場の空気は変わり。
レオおじさんは、まあ、確かにその方が大和らしいやと言い。
エルザおばさんもまた。
なお、エルザおばさんは、レオおじさんも引き合いに出し。
「えぇ?!いや、いいじゃんかよ!俺ぁ、胸を張りたいことありゃ、鼻高々、自慢だぜ!それが、男ってもんだと思うからよぉ!」
「まあ、それはそれで、あんたらしいわね!そうじゃないと、あんた、変な物でも食べたんじゃないかと思っちまうよ!なははは!」
「……?あ、まあいいか!がははは!」
引き合いに出されて、レオおじさんは自分の意見を言う。
それこそ、レオおじさんらしい意見だ。耳にして、らしいなと俺は頷き。
エルザおばさんも、同じく。
もし、レオおじさんがそうじゃなかったら。
何か具合でも悪いのかと、思ってしまうと。
エルザおばさんのその意見に、レオおじさんは引っ掛かりはしても。
まあいいかと、笑い飛ばす。
俺は、……ちょっとだけけなしが入っているんじゃないかと思うものの。
レオおじさんんがそうならと、苦笑だけに留めておく。
「えへへっ!」
そんなやり取り、アビーは笑顔で見ていて。
何だか、嬉しそうにしてはいるが。
果たして、理解しているのだろうかと、気にもなってくる。
けれど、野暮なため、黙っておく。
「あ……!」
と思っていたなら、アビーがまた、何かしてくれた。
このように笑い合うやり取りを中断する、お腹の鳴る音。
アビーからで、耳にした俺は、思わず笑みを浮かべてしまう。
これは苦笑ではない、アビーの、らしいやということに。
「ごめんね!お腹空いちゃった!えへへ……。何だか、恥ずかしい。」
「……あはは。」
お腹が空いたと、少し恥ずかしそうに顔を赤くして、言ってくる。
俺はその言葉聞いて、そこは恥ずかしいなんて思うんだと。
心の中でつっこんでしまう。
アビーらしいけれどね。
「がはははっ!アビーはアビーらしいぜ!」
「ほんとっ!いつものアビーちゃんね!」
こんな、仲睦まじいやり取りに、水を差すような音であっても。
レオおじさんとエルザおばさんは笑い。
「……じゃあ、早速行くかい。ここにずっといても、何だか悪いね。」
ならばまあ、場所を変えようとエルザおばさんは提案してくる。
口調はどこか呆れながらも、仕方ないといった具合。
「!わーい!」
その言葉耳にして、最もはしゃぐのはアビー。やっぱりねと感じる。
「それじゃ、行こうよっ!……あれ?」
「?」
話がまとまり、そろそろここから食堂に行こうとした矢先に、違和感が。
俺も覚える。
そう、皆が住む村の一団に、今更ながら誰か足りないと感じてしまう。
そう、この輪の中に、なぜかマフィンがいない。
アビーが声を上げて、進もうとした矢先で、話区切り。
アビーは首を傾げてしまう。
どこだろうかと、見渡すものの姿は見えない。
「み、皆、ちょ、ちょっと待って……。う、うぅぅ……。」
「?」
どこからかマフィンの声が。
その方向に視線を移すと、そこは、例のカプセル付近で。
「!」
ならばと気付いて、アビーと一緒に向かうと。
……未だにカプセルから体を出さずにいる、マフィンの姿があった。
おまけに、何かに怯えているかのようで。蹲ってもいる。
「ええと、ま、マフィン?」
俺は、とりあえず、声を掛けてみた。
「!」
マフィンは顔を上げて、だが、途端に顔を思いっきり真っ赤にしてしまう。
「い、言いたいことは、分かったわ。そ、そのごめんなさい。」
「?」
どうしたの、と言いたそうだったことは察されて。
マフィンが先に言うことはいきなり謝られて。
なぜだか分からず、またまた首傾げ。
「……こ、腰が抜けちゃって……。うぅぅ……。恥ずかしい……。」
「……。」
俺が理解しようとしまいと、マフィンは続けてくることには。
腰を抜かしてしまい、動くに動けないということで。
言い終えては、マフィンは顔を赤くしてしまう。
俺は、……何も言えなくなった。
こう、腰が抜けるほどというと、やっぱりシミュレーターでの一幕。
撃墜された衝撃が、あまりにも大きく。
マフィン自身、多大な恐怖を覚えて、こうなってしまったのか。
「どして?」
アビーは、聞いていた。察しがよくはないために。
「そ、それは決まっているでしょう?撃墜されたからよ!あんな衝撃があるなんて、思いにもよらなかったわ……。」
「……やっぱり。」
察しの悪いアビーに対して、マフィンが答えることは、やはりのことで。
小声で、俺は呟いた。多分、聞かれてはいないだろう。
一方、それを聞いたアビーは、何だか可愛いものを見る様な目になり。
「えへへっ!マフィンちゃんかわいー!」
言って、笑顔になった。
「!!ちょ、ちょっと!!笑わないでよ!わ、私だって、怖いものは怖いんだからね!!」
可愛いと笑われて。
余計に顔を赤くしたマフィンは、アビーに怒ったような口調で言う。
が、体が強張ってしまい、それが余計に可愛さを増してしまう。
「……そ、それよりも、だ、出して……よ。」
そうであっても、何もできないでいるがため。
ついには、涙目になっては、訴えてきた。
「うんうん!分かったぁ!」
意地悪はない、アビーは頷いては。
マフィンをカプセルから出すために、その手を出すが。
「!!」
マフィンの両脇に、自分の手を通し。
組んで引きずり出せるようにするものの。
よりにもよって、組んだ部分は、マフィンの胸の部分であった。
そんな光景見て、俺は思わず顔を逸らしてしまう。




