ゆうしょくまえにひとこま!
「~~~~~っ?!」
マフィンは、そうされて、何だか言葉にできない叫びを上げてしまう。
ちらりと見れば、その表情は沸騰しそうなほど赤くなっていて。
「はいっ!と。」
アビーはしかし、気にも留めず。
軽々とマフィンを上げては、カプセルから出した。
「あ、アビー!!!!」
「?」
出されたなら、沸騰した挙句、マフィンの恥ずかしさは爆発する。
声を荒げてアビーに言いだして。
なお、当のアビーは、応えていない様子。
猫のように可愛らしく、首を傾げて。
「何で!!何で、私の胸に……っ!!」
「!ごめん!苦しかった?」
「……。」
マフィンは怒りの原因を匂わせるよう言ってくるが。
アビーは、どうやら、苦しいのかなと勘違いして、マフィンから組んだ手を放す。
チラ見しながら思うことは、何か違うと。
アビーから解放されたなら。
マフィンは振り返っては、徐にアビーの頬を掴み引っ張り出す。
「?!い、いひゃいっ?!ろ、ろーしてー?!」
「わ、私の胸をいきなり触らないでよ!!」
「ふぇ?」
どうしてこうなったのか、アビーは理解できないから。
懇切丁寧にマフィンが言ってくれるものの、やはり理解していない様子。
「胸……?え、でも、マフィンちゃんおっきくなってるよ!気にしなくていいと思うよ!」
「!!」
「~~~~~~~っ?!」
胸のことだと気付いたが、アビーはまたまた勘違い。
気にしているという視点が、ずれていて、マフィンの成長を口にした。
俺の体は、嫌に反応してしまい。
マフィンは言われて、余計に顔を真っ赤にしていて。
「言うな~~~~~~っ!!!」
言葉にできない悲鳴を上げながらも、アビーの頬を思いっきりつねった。
「?!い、いったぁ~い!!ご、ごめんねぇ~!」
やられてアビーもまた、悲鳴を上げた。
「……。」
俺は、どうすることもできない、ただ、静かに見ているしかできなくて。
これは、アビーとマフィンの問題だからで、俺では、どうすることも。
だが、このまま見逃すのも、何か嫌で仕方ない。
「!」
ここでも閃きがある。
というか、それが元々の目的なわけだし。
「……ええと。まあ、何だ。喧嘩とかはもう、その辺にしてさ。ほら、他の皆が待っているよ。食堂の方に行こう。」
「!」
「!!」
俺が閃いたというより、当初からの目的に戻そうということで。
口にすることは、他の皆が向かった先を指す。
耳にしては、喧嘩の様相は鎮まり返る。
なお、マフィンは止まったままだが。
アビーは加えて、痛みはいずこへか、期待に胸膨らませる様子が伺えた。
「そーだ!食堂!ご飯っ!!」
そんな様子に、言葉までもそうで。
そんなアビーには、痛みに歪んだ顔はもうなく、いつもの明るい顔になっていて。
見ていて俺は、ほっと一息と、らしいやと安堵。
「はぁぁ……。」
アビーがそんな様子を見せるものだから、怒り肩のマフィンも、呆れ果てて。
肩を落とし、溜息を漏らす。
どうやら、アビーがそんなのだから、怒るのもバカらしくなっているようだ。
怒る気力も、失せて、いつものマフィンに戻っていく。
「お!まとまったかい?」
「!」
諍いの向こうには、エルザおばさんがいて。
マフィンとアビーのやり取りは静かに見ていて。
そこで俺が言ったことに、場の雰囲気が変わったとみては、声を掛けてきた。
俺は、多分と呟き。
また、振り返り、アビーとマフィンの二人を目にしては、確信した。
「じゃあ、行こうか。」
ならばと、エルザおばさんは頷き、俺たちを誘導していく。
「……しかしまあ、宥めるとは大したもんだ。さすがは、大和だ!」
「!」
エルザおばさんの傍ら、レオおじさんも言ってきては、にやりと笑う。
そうかなと、思い俺は顔を赤くしながら、頭を掻いた。
皆で、このシミュレーションルームを後にする。
誰も、置いてけぼりはいないか確認したなら。
俺に皆顔を向けて、頷きを見せてきた。
ならと、進むなら、自動で扉は閉まり、最後は圧を抜いて密閉。
簡単には、開かないようになった。
多分、最初見たあの、状態に戻ったことになるのだと。
再度、皆がいるかどうか、確認するなら。
誰もはぐれてはいない。ちゃんと、シンもいるし、アビーもマフィンも。
レオおじさん、エルザおばさんもいる。
村から出向いた人は、全員揃って、この場にいた。
なお、マフィンはまた、思い出したように顔が赤くなっていて。
加えて、近寄りがたい雰囲気が出ていた。
「!……ぁぅ……。」
その雰囲気だけは、流石のアビーでも感じ取って。
珍しく、申し訳なさそうな顔になり、変に小さな声を漏らしていた。
「……。」
そうであっても、アビーは、らしくないやと頭を振り。
申し訳なさを払ったなら、アビーは少しだけ足を弾ませて。
「……はぐっ!」
「?!きゃぁぁ?!」
マフィンの後ろから、抱き着いてきた。思わぬそれに、マフィンは驚き。
悲鳴を上げて。
「……。」
「……何よ!」
しかし珍しく、アビーは何も言わない。
悲鳴の後、どうしてか聞いたのは、抱き着かれた本人で。
その瞳はまた、睨み付けるようなもの。
「マフィンちゃん。」
「……?」
言われたからではなく、そこからぽつりと呟く感じで、口を動かしてきた。
ふざけたものじゃないと感じたマフィンは、睨み付けをやめて。
アビーが言葉を紡げるように、露になった感情を抑えた。
「……ごめんね。マフィンちゃん、気にしていたって、分からなかったの。」
「……。」
アビーは、耳を垂らし、呟くことには謝罪の言葉であり。
それも、先の、カプセルから出した時の悶着のことで。
その様子は、普段のアビーらしからぬ、項垂れた様子。
マフィンは、静かに聞いていて。
なお、顔は赤く、恥ずかしさはあるようだ。
「……。」
アビーをチラ見して、前に向いたなら、口をもごもごさせる。
「わ、私も悪かったわ……。ごめんなさい。あ、あれは、言い過ぎたわ。でもアビー……。ちゃんと人の気を考えるようになりなさいね……。でないと、色々な人に迷惑を掛けるわ。……。それと、もう、気にしていないわ。」
その先にマフィンが紡ぐことには、アビーのことを許すという。
顔が赤いままながらも、だ。
アビーは、抱き着いて耳にしてか、その耳がピクンと跳ねて。
にへらと、いつものらしい笑顔に変わった。
「……はぁぁ……。」
アビーらしさに、やっぱりとマフィンは溜息をついて、呆れ果てる。
その頃には、もういつものマフィンの表情に戻っていた。
「……ほら。アビー。歩けないわ。」
「うん!分かった!」
戻った側から、そもそも、抱き着かれると歩きにくいと注意して。
アビーは、もうマフィンが怒っていないと分かり。
さっと離れ、マフィンを優しく見つめていた。
結果として、マフィンが先頭に立ち、食堂まで案内する形になる。
そうした、やり取りの後、階段を下り、迷路とも思えた細い通路を行く。
最初迷路と思えたそれも、マフィンが先導するが、記憶しているか、迷いはなく。
滞りなくやがて、俺たちは目的地の食堂まで来た。
「!」
食堂の入り口まで、人だかりがあり。
賑やかさが、前に見た時よりもあることに、つい目を丸くしてしまう。
時間が決まっていることもあってか。
船内中の人間が、ここに集結しているのかと思ってしまうほどだ。
また、この船も、決して小さくはない。
それだけの人数がいるということか。
「!」
「!わ!おいしそー!」
アビーが声を上げることには、漂う香りへの感想。
アビーが言うからと、こちらも鼻を動かすなら、確かに香る。
先ほど訪ねた時よりも、香ばしい。
匂いだけでも、美味しそうだ。
それは、調理の完了を意味し。
狭いながらの艦内故、人を呼び寄せるもするのだろうね。
「おぉ!大和っちも来たかい!」
「!」
やがて、俺たちの後ろから声が聞こえ。
振り返るならば、シャチを思わせる風合いの服装だが。
水着ではないものの、知ったる人物がいて。そう、サカマタさんだ。
また、それだけじゃない、サカマタさんたちのチームもその後ろに続いて。
彼ら彼女ら、サカマタさんと愉快な一行、だ。
「あたちたちもいるよー!」
「聞いた聞いたー!」
「空戦!すごかったって!!」
「見たかったぁ!」
「……。」
噂が広まるのは速いようで。
俺が振り返るなら、サカマタさんの部下たちは、一斉に色々言いだして来て。
それも、俺がさっきまでやっていた、仮想空間での空戦のこと。
その速さに、俺は苦笑してしまう。
「おぃおぃ!驚かんでくれよぉ!こう見えても、あたいもこいつらも、皆それなりに諜報員としてもやってんだから!」
俺の表情から、疑問までも察して、サカマタさんが言ってきて。
自慢げに胸を張る。
「そー!あたち、よく聞こえるもん!」
「分かるー!」
「噂は網羅ー!」
「ネズミの足音も、聞き逃さないー!」
「潜水艦も聞き逃さないー!」
「「うぃぃいいいいい!!!」」
「……。」
隊長がそうならと、彼ら彼女らも続き。
自慢げで、かつ、最後は皆が皆、自分自身で盛り上がっては、歓声を上げる。
た、楽しそうだなと、思ってはたじろいでしまう。
沢山の歓声の上がり方といい、勢いといい、ある意味恐怖を覚える。
「……こ、今度は何よ……。」
「あ……。」
その勢いに驚かされたのは、何も俺だけじゃない。マフィンもだ。
見れば、歓声に思わず耳を塞いでいるマフィンがいて。
「……。」
俺と視線が合ってしまうが。
見ているのは俺ではなく、サカマタさんとその一行のようだ。
見てマフィンは、口ごもる。
「!」
さらに、俺を手招いては、何か言いたそうにしていた。
気付いて寄ると、俺の耳に口を近付けてきた。
「……あの人たち、どこでもああなのね……。」
「……だね。」
囁くように言うと、そうだねと俺は頷く。
マフィンが思うのは、多分例の潜水艦の玩具で誘導したことであって。
あの時もこのノリだったしと。
「おうさ!あたいらは、いつもこう!」
「!!……聞かれてた。」
が、サカマタさんが言った通り。
ネズミの足音さえ聞こえるとは、嘘でもなさそうだ、聞こえていて。
やはり、鼻高々に。
聞こえたのかと、俺は驚いてしまう。
「どんな音も聞き逃さないー!」
「潜水艦退治のエキスパート!」
「「うぃいいいいいいいい!!!」」
「……。」
合唱かと思うほどの、息の合い方に、挙句、歓声までもとくれば。
これもまた恐怖を覚えるほどの一群だと、たじろいでしまう。




