やまとちゃんのすっごーいあいであ!
アビーもシンも、よく分かっていない様子。エルザおばさんは、呆れ顔だ。
レオおじさんもまた、何だか悩んでいる様子。
「……一応、診ておくけど……。」
「!」
マフィンは、傍ら続けて。
今度は、俺の肩に置いた手を、額に持ってきて。
目を瞑り、何かを感じ取っているようで。
熱を計っているとも、考えられる。
「……ええと……。」
「……熱はなさそうね。……やっぱり、素で思っていたのね。……はぁぁ。」
計り終えたなら、熱にうかされたわけではないと分かり。
大きな落胆の溜息をついた。
「……あ~、マフィン?」
「?」
近くで、悩みに悩んでいたレオおじさんが、この時口を開く。
マフィンは、レオおじさんの方を向いた。
「まあ、何だ。他にアイデアがないなら、大和のアイデアを採用しても別に問題じゃないだろうよ?別に、損することはないし。」
マフィンが注目したと見るや、俺への助け舟だった。
「それに、今日はたまたま、有益な情報が得られなかっただけで、明日とか、あるいは別の機会があったらさ、それで上手くいけばいいじゃん。」
言い切って、そっと、レオおじさんらしく笑うのだ。
「……はぁ、そうね……。」
マフィンも、否定しない。呆れ顔は相変わらずで。
何せ、彼女も彼女で、代替案が存在しないのだから。
この場合、俺のアイデアを見届けるしかない。
「ああそうだ。希望的な話なら、大和の奴がよ、上手くしてさ、案外事が上手く運ぶようになるかもしんねぇぜ!がははは!」
付け加えとして、事がよく進むかもしれないとの希望も残し、豪快に笑う。
それはきっと、前回のことがあってか。
あの時出会った、幼子の願い叶えるために。
俺は帝国へ向かおうと言い出したその場面。
確かに、結果として上手くいったけれども。
あれは、俺だけの力じゃないだろうな。
「……。」
付け加えを聞いて、マフィンは押し黙り、思考を巡らせる。
「分かったわ。」
観念したとも捉えられるが、マフィンは言って、俺を開放する。
改めて、俺に向き直っては。
「やってみなさい。方法はどうせ、思いつかないもの。」
「!」
背中を押すように言ってきた。
マフィンのその様子、これじゃ、観念したとみなされても仕方ない。
そうであろうとなかろうと、背中を押されたんだと、俺は思い。
頷いて、自分のアイデアを実現させようと行動する。
皆には背を向けて、波打ち際に向かい、手にした玩具を浮かばせる。
手を放し、俺は、スフィアを扱うように、手を動かした。
俺の指示に従って、潜水艦は行く。波打ち際から、沖へと向かい。
やがて、潜航し、眼前から姿を消していった。
だが、手にはまだ、感覚が残る。
搭載されたスフィアを通して、感じている。
俺は、より集中力を高めるため、目を瞑った。
《アタッチメントを確認。リモートコントロール、高感度に設定。》
補助として、バックパックの盾がやってくれた。
盾も通して感じることには、海の中の感触。
潜水艦は、より遠く、深い場所まで移動していた。
……なお、何の気配も感じはしない。
《アクティブソナー、打ちます。》
「!」
盾はコマンドを告げる。
俺は静かに頷いたなら、甲高い金属音のような音が、その周辺に鳴り響いた。
木霊するように、海中を反響していく。
《動体反応チェック……。反応なし。より遠洋へ向かわせるのを、提案いたします。》
「うん。」
分析は、盾が行った。結果、見つからないとのことで、提案もしてくる。
俺は、その提案に乗り、より遠い場所を目指して、動かした。
移動させたなら、同じように音を発する。
《アクティブソナー、打ちます。反応あり。》
「!」
今度は、何か見つけたらしい。
《艦船4。分析結果、駆逐艦3、小型空母1。現在、艦隊行動を行っている模様。》
「!……大当たりだ!」
分析結果は、大物だった。
艦隊だ。この結果は、他の人も驚くぞ。俺は、期待に頬を緩ませる。
なら、発見されやすい、より近くにまで向かわせよう。
俺は精密に分かるよう動かした。
《ソナー、打ちます。艦隊まで、残り100メートル。》
「よし。」
《マスカー確認。反響音低下。》
「……?」
接近して、ソナーを打ったなら、……なぜか妙な言葉が盾から聞こえる。
「それって……?」
《対潜行動を確認。対潜ミサイル、対潜魚雷、確認。回避。》
「……いやーな予感……。」
聞くと、こちらの玩具に、何か行動を起こすつもりのようだ。
「?!うぅ?!」
途端、爆音と衝撃が、伝達されてきた。
潜水艦に対して、攻撃をしているかのよう。
俺は、攻撃によってびりびり痺れた感じがしながらも。
玩具の感覚を逃すことなく操作して。
回避したなら、とにかく、海域を離脱するように動かした。
「?!」
妙な感触が伝わってくる。
《動体反応あり。多数の人員を確認。推測、対潜行動要員、潜水艦に対して、強襲する部隊の模様。》
冷静に盾は告げる。
「……つまり、逃すまいと……?」
《そのようです。》
冷静な言葉に、多少反芻して、理解したなら、相手方の行動の意図を知り。
かいつまんで言ったなら、盾はその通りと返してきた。
「……逃げよう。」
嫌な予感、強まった俺は、そういう選択肢を採った。
どうも、大人しく俺の手紙を手に取ってくれる雰囲気でもなさそうだ。
まるで、糸を手繰り寄せるように動かす。
「!」
急いでいるのだが、海水の抵抗が大きいからか、いつもより大分遅く感じる。
いつも、大気中で扱うなら、これほど遅くもないのに。
そうであっても、必死に手繰り寄せて。
《動体反応接近。このままでは追い付かれます。》
「……ぐっ……。どうしよう?」
《スーパーキャビテーションを用います。スフィア活性を上げます。プローブケーブル、展開。》
「!」
このままでは、誰かに追い付かれてしまうということだが。
俺にはどうしようもない。聞くと、方法があるらしい。
盾が言った後、目を見開くと、盾が振動し。そして、俺が向こう。
そう、玩具のある方向にかざした手を通して、光の線が伸びていた。
「!」
玩具から伝わる感覚が、より鋭敏になる。また、強く引く力があり。
……海中で何をしているのか分からないが、えらく速度が上がった様子。
その勢いに任せて、思いっきり引いた。
―までごるぁあああああああああ!!!!せんすいかーーん!!!!―
「?!」
引き上げる際、聞き覚えのある声が聞こえた。
だがそれよりも、同時に眼前の海面が大きく盛り上がり、迫るのを見る。
直撃すると、一たまりもないや、何が迫るかも分からない。
思わず、別の手を動かしたなら、沢山のスフィアを展開する。
「フォトンシールド!!!!」
《フォトンシールド、オービタルレンジ。》
叫ぶことには、コマンド。すると、展開したスフィアたちが一斉に輝き。
広範囲、それも、後ろにいる皆を守るようにも、光の膜が広がった。
巨大な波は、すぐに俺たちを飲み込んでいく。
「?!ちょ、ちょっと!!な、何?!」
「うおー!!すっごーい!!」
「?!うぉおぉお?!」
「?!あ、あらま……!!」
「?!な、何……っ?!」
後ろの方から、それぞれこの光景に驚き、声を漏らしていた。
飲み込みはしたが、幸い、誰も濡れることはなく。
やがて、波が引き、目の前には、……打ち上げられた人よろしく。
シャチ、あるいは、イルカの人たちがいて。
その人たち、皆、軍用のウェットスーツに身を包んでいる。
その内の一人が、起き上がったなら。
手には俺の潜水艦の玩具が握り締められていて。
中央にいる、シャチの人に、自慢げに見せてきた。
「てきの潜水艦を、発見!でし!!」
そう、嬉しそうにしていて。
「……。」
その光景に、何も言えないでいる。
まだ回り続ける、玩具のモーター音が、空しさを演出し。
回転が遅くなり、ピタリと止まったなら、酷い静寂が辺りを包んだ。
さて、向けられた方も、がばっと起き上がっては。
まじまじと、その玩具を見つめて。
「この、おバカーーー!!!!」
静寂を壊すように、シャチの人は叫んだ。
聞き覚えのある声と、姿、そうとも、噂のサカマタさんだ!
「?!あわわっ!!ごめんちゃい!!」
言われた方は、頭を伏せ、謝った。
それらやり取りは、やはりサカマタさんたちだったよ。
それで、サカマタさんは、不満露にしながら、玩具をその人からぶんどる。
「……ったく。こいつぁーな、ロマンチックな潜水艦って奴で、普通、この中に荷物を入れて、ただ真っ直ぐ流れていくだけ、の物じゃい!本物の潜水艦と見間違えるなんて、何て情けないんだい!」
手にしながら、説教を始める。
「……だが、ソナーとか、海中で急激な反転やら、スーパーキャビテーションとか、明らかに魔改造な気がするが。どこのどいつの改造やら。」
意外と詳しいらしく、今度は手にしたそれを、訝し気に見つめて、呟く。
「……。」
何か思いついたように、にやりと笑っては、徐に手を、玩具の先端に当てた。
力強く捻ったなら、先端は簡単に開き、中身を露にした。
「お!手紙が入ってやがる。おまけに、スフィアも。へへへ。手紙は別にいいとしても、スフィアとくりゃぁ、儲けもんだぜ!!」
見ては、今度は喜びに満ちた表情に。
入れていたスフィアに、儲かったとばかりに。
どうやら、この際、誰宛てなのかを見てやろうかという魂胆で。
根底にあるのは、憂さ晴らしなのだろう。
なお、本人は気付いてはいないが、サカマタさん宛てなのだが。
「隊長!手紙もちゃんと見ないといけませんぜ!!もしかしたら、届け先の人が、心配するかもしれません!」
「意見具申いたします。もしかしたら、重要機密な物かと!」
「ていこくのだれかに、秘密指令!」
手紙の方を無視していたと、気付いた部下たちは、口々に言ってくる。
「えー……。あたいには、どーでもいーよ!どうせスパイだの何だの、やれ暗号だのあんだろ……?」
手紙に対しては、興味がないようだ、つまらなさそうに言っている。
「……!いや待てよ……。」
と、思ったら、翻って、何か思い付いたみたいで、言葉区切り。
手紙の方に手を出して、マジマジと見つめて。
「……ほうほう……。おぉぉおお?!」
隅々まで、見たなら歓声を上げた。




