おねがいされちゃったよぉ!
「?!どうしやすた!あねさん!!」
「なになに~!!」
部下たちは一斉にどよめいて。
「あたいへの、ラブレター?!!!!」
「「?!」」
続くサカマタさんの言葉に、どよめきは余計に増し。
「……そんなつもりじゃないんだけど……。」
水を差すようだが、書いた本人が言うんだ。
そんなつもりじゃないと、この状況に、引きながらも呟いた。
なお、未だに俺たちがいることに気付いていない、くれない。
「「うぃぃいいいいいいいいいい!!!!」」
どよめきから一気に、歓声が噴出してくる。部下たちは一斉に声を上げ。
「あねさんにはるがきたー!!!」
「めでたいめでたい!!」
「よっしゃ!!帰ったら、宴の準備じゃ!!」
それぞれ、口々に喜びを口にしていた。
「……ああ。あたいを好いてくれる人が、ついに来たんだねぇ……。かれこれ苦節、……何年だっけ?苦労したなぁ~……。嬉しくて、早速会って、夜にあれこれしたいぜぇ!!!」
「?!ぞっ?!」
喜びを噛み締めるサカマタさんは、相手に思いを馳せて、色々と口にして。
なお、書いた本人たる僕は、そんなつもりじゃない。
耳にして、とてつもない悪寒を覚え、身震いしてしまった。
嫌な予感もして、そっと、スフィアたちを呼び戻し。
逃げようと自分のバックパックを背負う。
「で?あねさん!あいては?あいては?!」
「聞きたい!!」
「まぁ、待てよ!どぉれ……。何々、大和より……。」
「!」
差出人は誰だろうかと、話題は移り。
和気あいあいとする傍ら、ようやくかと俺は思う。
そうであっても、逃げる姿勢は崩していないけれど。
「「……。」」
なお、サカマタさん一行は、俺の名前を聞いて、急に無口になる。
「……誰だっけ?聞いたことあるような、ないような。」
「……。」
次にサカマタさんが紡いだことに。
俺は心に何か突き刺さるような感覚がして胸を押さえた。
自分たちは、俺をウィザードだと言ったのに。忘れられて、軽くショックがした。
「!あ、この名前、この書き方!!!!」
「!お、知ってんのか?」
「ウィザードだぁ!!あたち、サイン貰ったもん!!」
「ウィザード……。」
「「ウィザード!!!!」」
「!」
救いはある。
一行の内の一人が、俺の文字に気付き。
あの時サインを送ってくれた人だと確信し、言ってきた。
ウィザードという言葉、ぽつりと紡がれたなら、輪唱するように他の人も。
言われて俺は、何だか心がぱっと明るくなる感触を得る。
「俺たちのウィザードが、呼んでいる!!」
「助け?助け?」
「うおお!!ウィザード!ウィザード!!」
「「ウィザード!!ウィザード!!ウィザード!!」」
盛り上がっていき、サカマタさんが音頭を取れば。
コールが辺りに響き渡っていく。
静かな海岸は、彼ら彼女らの声に、包まれていった。
「こうしちゃいられねぇ!!ようし!現在位置を確認後、ウィザードの捜索に移るとするか!潜水艦探しは、いい!」
「「いえっさー!」」
盛り上がりは頂点に達し、挙句俺を捜索する話に移っていった。
……さっきから俺は、側にいるのだが。
残念ながらまだ、ここの一同は、気付いていない。
捜索をすると意気込んだ一人は、やがて周囲を見渡して。
「!」
「あ……。」
ようやく、俺や仲間と目があった。
サカマタさんたちも、捜索をした一人に従って、注目してくる。
「……。」
「「……。」」
すぐに捜索が完了したよ。
だが、気付いたら気付いたらで、急に沈黙してしまい、どうしようもない。
どうやら、向こうも向こうで、既に側にいたことに、思考が停止したようだ。
急に、何だか気まずさを覚えてしまう。
「「いぇえええええええええええええええい!!ウィザードぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」
「?!」
だが、急変し、歓喜が沸き起こった。
サカマタさん一行、全員、飛び跳ねる様な勢いで。
歓声から、こちらにダッシュで駆け寄って来た。
勢いに驚き、俺もまた、逃げるようにダッシュする。
だが、間に合わない。
「?!」
海獣の人たちに捕まり、挙句俺は、空中に放り投げられてしまう。
「「ウィザード!!ウィザード!!ウィザード!!」」
「?!わ、わぁああああああ?!」
落ちては投げられ、落ちては投げられ。
歓声も合わさるなら、胴上げをやられたようだ。
思わず俺は、悲鳴をあげてしまう。
何だか、デジャヴを感じて。
そうとも、帝国を倒したあの後。
帝国からの帰り、特に俺は、こういう風に捕まり、同じく胴上げをされた。
目を回してしまい、そこから少しの間の記憶が曖昧になった気がする。
当然ながら、今回も俺は、勢いに怯えた反動もあって、目を回してしまい。
「はっ?!あ、あねさん!!!報告どうしましょ?!」
「あ。」
「「あ……。」」
歓声を上げ、歓喜に興奮する一団の中にいて。
ふと我に帰った者が一人、ぽつりと呟く。
恐らく、任務の途中であって。
浮かれている場合ではなかった、ということだろうか。
その冷静な一言に、サカマタさんといい、その一行といい、固まってしまう。
しまったとの思考停止も合わさった。
「?!」
それだけならまだしも。
よりにもよって、俺を宙に投げ上げた後でそうなったため、宙を浮く俺は今。
誰にもキャッチされない状態になっていた。
こちらも一転、嫌な予感を覚え、目を丸くする。
「おわぁあああああああ?!」
情けない声を上げてしまい、当然宙から地面に落下してしまった。
……にもかかわらず、猫のように宙で体を回転させ。
上手く砂浜に着地してみせる。
我ながら、大層なものだと思ってしまう。
けれど、いきなり放り出されたためか、まだ心臓の鼓動は速くなったままだが。
なお、そのような芸当を見せたにもかかわらず、誰も感心しない。
サカマタさんは、どうもまだ固まったままだ。
「いっけね!!!上に何て言おう!!」
からの、我に帰っては、慌てた一言を口にした。
「や、やばいっすよ!!」
「おーこーらーれーるー!!!わぁあああああ!!!」
もちろん、部下たちにも波及し、慌てた様子を示してきた。
「いや待てよ……。」
と思ったら、サカマタさんは冷静になった。
察知した一行も、慌てぶりを止め注目する。
何事かとこちらも注目していたなら。
「……。」
「?!」
睨み付ける様な雰囲気を出し、俺を見た。
その一睨みに、俺は震え上がる。
「……まさかとは思うが……。」
「?!ご、ごくり……。」
言葉を紡ごうと、口が動かされ。俺は、唾を飲み込む。
「……あたいらをおちょくるためにしたんじゃないだろうな、なあ?」
「へっ?!」
紡がれたなら、睨み付ける眼光が鋭くなり。
威圧さえ、混じる。混じった挙句、殺気さえ放出し。
また、サカマタさんの一言に、一行も同じく、鋭い眼光へ変わる。
殺気以前に彼ら彼女らの場合、……ワクワクする高揚感も裏に感じて。
以前に、彼ら彼女ら、軍人である。
その威圧感たるや、百戦錬磨そのものだ。
若輩者の俺では、……実力以前に、気持ちで負ける。
怯える俺は、命乞いよろしく、情けないがこんな言葉を使うしかない。
「わぁあああ!!!た、食べないでください~~!!」
と。
「そうか……。食われてほしいんかい……。いいぜぇ?……って言っても、気分が悪い。……ウィザード……。貴様を餌にして、サメやら何やら、おびき寄せて……。ひひひ、ふひひひひひひ!!!」
「?!」
効果は、……なさそうだ。
不気味に笑いながら、サカマタさんが言ってきた。
喰われるよりも、なお悪いことが予感される、そういう内容だ。
不気味な笑みは、余計に恐怖を煽り。
「わ、悪気はないんだ、ご、ごめんなさい!!」
「!」
命乞い以前にやることは、謝罪。
許されるかどうか、別にしても。俺は、頭を思いっきり下げた。
そのためかは知らないが、威圧感がピタリとやみ。
「そ、その。俺たち、シンの国、リオンキングダムへ行きたくて……。でも、航路もなく、まして、戦争状態ってことで、誰も近づけなくて……。」
その次に続くのは、理由。
怒らせた言い訳としても悪く、気が良くなるものでもない。
そうであっても、正直に話した。
「……リオンキングダム……?」
「……サバンナ地方の……?」
「!」
その正直さが通じたか、何か通じるのを感じて。
サカマタさん一行の雰囲気が変わってくる。
何か、思い当たるのか。
口々に何か、紡いでくる。
何が起こったのか、気になってしょうがなく。
顔をゆっくりと上げたなら。
意地悪そうな笑み浮かべた、サカマタさん一行がいた。
「……?」
非常に気になる。首を傾げた。
「……丁度いい……。」
俺が顔を上げたなら、サカマタさんがこれ幸いと、何か言ってきた。
「いやぁ~!ほんと、あたいは運がいいねぇ!」
「……?」
それから、サカマタさんの機嫌がよくなり。
合わせて、一行も機嫌よく。
何が起こったのか、俺は理解できない、首をますます傾げて。
「いやね。あたいらな、いや、あたいらだけじゃねぇ、艦隊の連中も、丁度、そっち方面に用事があったんよ!ほんと、ついてるわー!こんな偶然、またあるとはねぇ。なぁ!ウィザード!」
「!」
頭を掻きながら、やや照れ臭そうにその理由を言ってきた。
どうも、偶然俺たちが行きたかった所に用事があったらしい。
……またも、ここでデジャヴを感じる。
以前、帝国に行こうとした時も。
偶然通りかかったサカマタさんに協力してもらい、帝国まで侵入できたんだ。
それがまた、ここで繰り返されるとは。
偶然が重なり、俺ははっとなった。
そう、偶然が重なったらなったらで、サカマタさんは素早く心変えて。
今度はサカマタさんが拝み手よろしく、そんなポーズをしてきた。
「?!」
「いやぁ!これも、何かの縁!ウィザード!協力してくだちぃ!そしたら、好きな所、連れて行ってやっから。」
お願いされてきた。
その変わり様が早すぎて、俺は目を丸くし、軽く困惑してしまう。
「……。」
困惑もあれど、だが、乗りかかった船といえば、そうだ。
サカマタさんの言うことに、協力すればいいのだから。
結局、目的地はそこだし。
迷いは、あまりない。
ただ、皆と相談せずに決めるのも、あれだ。
「……皆と話させて……。」
俺は、願いを聞き入れる前に、とりあえず相談をすることを提案した。
自分一人で決めるのも、何だかなと、思い。




