唐突な直くん
「本田ちゃん、俺のも一口やろうか?」
塚本部長が問いかける。塚本部長は葡萄だ。
ムムム。
「直くんの以外はいりません。」
塚本部長と間接キス…オエッ。
「本田さん!」
直くんが私に声をかける。どうしたの?
「直くんおせーよ。俺傷ついちゃった。そんなに嫌そうな顔しなくてもさー。」
ん?
「す、すみません。」
直くんが塚本部長に謝る。どうしたの?
「本田さん、顔に…出てるから。」
直くんが私に言う。顔に?あ。
「塚本部長すみません。私とっても正直で。」
オエッが顔に出てたのね。もう、私ったら。
「…本田ちゃーん。せっかく彼氏が謝ってんのに、ケロッと言うなよー。直くんフォローの意味なし。」
「直くんありがとう!!塚本部長、私は素直なんです!すみません!」
直くんにはお礼を声高らかに。塚本部長には平常運転に、伝える。
「あーもう本田ちゃんは!じゃあ高田のイチゴは?仲良いじゃん、高田のだったらいいの?」
高田さんと間接キス?
「絶対イヤです。」
本田百子、直くん以外の男性と間接キスなんて出来ません!私には直くんだけです。この気持ち、もうずっと変わっていませんから!
「あー面白れ〜!」
「部長〜!直くんももちゃんコンビで遊んじゃダメですよ!」
塚本部長の言葉に先輩社員が突っ込む。楽しい職場だ。
✽✽✽
今日も一日が終わった。本田百子、直くんの真面目さを見習って真っ直ぐ家に帰りますとも!
「本田さん!」
後ろから声が聞こえる。この声は愛しい直くん!
仕事終わって声をかけてくれるなんて…もしかして…直くんももう少し私と一緒にいたいとか?
ヤダ!嬉しい!
「直くん!どうしたの?」
ウキウキ。んもう、直くんったら素直じゃないんだから!
「…今日、なんだけど」
「ん?」
ふふっ、直くんったら分かってるわよ。私ともっと一緒にいたいんでしょう?
「あのさ…」
「うん!」
もう。待ちくたびれちゃうじゃない。
「…。」
「…。」
おい、急げ直くん!
心配しなくていいのよ!私は直くんの全てを受け入れるから!
「今日、頭三回洗って。」
え…
……
………
「ん?」
ごめん、直くん。よく聞き取れなかったわ。ふふっ、私ったら。
「だから…今日、頭三回洗ってほしい。」
…
……聞き間違えじゃない?え?え?
「はぁーーー!?」
私の頭は臭いかい!?
「ごめん。俺のワガママなのは分かってるんだけど。」
直くんがそんなに気になるくらい今日の私の頭は臭かったかい!!ちゃんとシャンプーしてるよ!?なぜ!?
「…分かった。」
グスン。悲しい。かっこいい直くんに臭い彼女。最悪の構図だ。
「あ、ありがとう。百子。」
…直くんさ。そんなにホッとした顔しないでよ。異臭を振りまいてたって結構ショックなんですけど。
「明日は無臭を振りまく。」
「?」
直くん、キョトンとした顔しないでよ。余計傷つくから。
直くんは結局真っ直ぐ帰るんだってさ。
どれだけ真面目なのよ。もう。やさぐれちゃうわよ私は。
本田百子、社会人3日目。
宇宙一愛しい彼に臭い女認定を受けた…春。グッスン。