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スーパーマン


百子の胃袋が掴まれてしまった。これはマズイ気がする。


「今日もね、またついていく約束してるの。楽しみ!」

「そう…」


嬉しそうにニコニコと笑う。完全に高田さんに心を許してる。


「高田さんってさ、なんか歓迎会のとき、やたら直くんにも私にもつっけんどんな言い方してたから、警戒してたんだけど、話してみたらいい人だった!ご馳走してもらったし!仕事中に至福〜!」

「へぇ…」


出来ればそのまま警戒してて欲しかったんだけど。

…言えない。


「ハッ!今、それ以上カロリーとるなって言った!?」

「…言ってない。」


変な解釈するより、俺のこの幼稚な嫉妬を察して欲しかった。俺の器は小さい。


「直くんはお兄さんから聞かなかったの?私に会ったって。」

「帰り遅くて朝早いから。」


話が高田さんから兄貴に戻った。

避けてる、とは言えない。


「そうなんだ…」


百子の元気がなくなる。なんで兄貴?

…ダメだ。兄貴にまで嫉妬をしている。百子のことで。




百子と二人で、二人しかいない世界に行けたらいいのに…


百子を取られる心配もない。百子とたった二人の世界に。




…いけない。現実逃避だ。百子は社交的で、沢山の人の輪の中で笑っているのが似合うし、楽しそうだ。


俺は心が狭い。嫉妬深い。百子を閉じ込めるような、そんな恐ろしい事を考えているなんか…絶対に知られたくない。




――百子が笑ってくれる場所を、俺が奪ってはならない。




✽✽✽


昼休みが終わり、午後


「本田さん、今日外回り。ついてきて。」


(あ…)


高田さんが百子に声をかける。


「はい!」


百子は嬉しそうだ。


「おー。いいお返事。エライエライ。」

「もー。子供扱いしないでください!」




百子が嬉しいなら、喜んでいるなら。


仕事だし、他意は無い…かもしれない。


仕事だ…!


「子供だろー」


――ポンポンッ


(ッ!!)


高田さんが百子の頭に手を乗せる。瞬間、身体中の血液が燃え上がる。


(俺の!!俺の百子に…!勝手に…、、)


堪えろ。


…堪えろ!


なんとかやり過ごそうと力いっぱい手を握りしめる。




「こらこら。それはグレーゾーンだよ。」


突如、知った声が聞こえて来た。


この声は…


「CEO!!?」



――兄貴だ。



皆が一斉に兄貴に注目する。


「どうして下界に?何かありましたか?」


社員が兄貴に声をかける。


(なんで、ここに…)


「塚本くんから頼まれてた書類を捺印したから持って来たんだよ。」

「CEO〜!あざーす!」


塚本部長が兄貴から書類を受け取る。

…やっぱりフランクだ。


「いつもご苦労様。出先で知り合いが経営してる所のアイスを買って来たからみんなで食べてね。」


兄貴が差し入れを塚本部長に渡す。

…気の利く兄貴だ。


「CEOホントは直くん見に来たんでしょー。ケケケ、ブラコーン。」

「…かもね。戻るよ。黒崎くんに怒られるから。」

「怒られるCEO、受ける。」


塚本部長が兄貴をイジる。ここはフランクな会社なのか…。

(ブラコンは否定して欲しいんですけど…)


「高田くん、出かけに声かけて悪かったね。いつもありがとう。」

「い、いえ…」


戻ろうとした兄貴が高田さんに声をかける。高田さんは急に大人しくなった。


「し、CEO!僕、CEOに憧れて入社しました!宜しくお願いします!!」


兄貴と話してみたいと言っていた同期の新入社員が兄貴のそばに走って行って声をかける。


「それは嬉しいな、ありがとう。期待してるから、頑張ってね。」

「は、はい!!頑張ります!!」


「あ、塚本部長から聞いたよ。初日から歓迎会だったそうで、配慮が足らず申し訳ありませんでした。」


兄貴が新入社員全員に向って謝る。


「親御様は不信に思われませんでしたか?」


兄貴が新入社員に質問する。


「「い、いえ…」」


新入社員が驚きながら答える。


「良かった。今後この様な事が無いように致しますので、今後共宜しくお願いします。」

「いーじゃないっすかーCEO〜!飲みは楽しいっすよー!」

「そりゃ塚本くんは楽しいかもしれないけどね。」

「ハッハー!バレたか。」


新入社員に謝る兄貴とフランクな塚本部長。


「皆ご苦労様。いつもありがとう。」


兄貴はそう言って戻って行った。


…兄貴はスーパーマンだ。俺のピンチに颯爽と駆けつけて何事もなかったかのように穏便にまとめていく。


兄貴が来て空気がガラッと変わった。サラサラとした。爽やかな空気だ。


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