新入社員のお仕事
ランチタイムを終え、少しづつ仕事をもらう…のだが!!
「直くん、これコピー取ってー。」
「直くん、この書類見て。」
直くんが思った通り、ここでは皆さん直くんのことを〝三井くん〟では無く〝直くん〟と呼ぶ。
学生時代にはなかった光景だ。
…仕方ない。同じ名字のお兄さんもいるんだし。お兄さんも〝直くん〟って呼んでるし…。
なんか…なんか寂しいけど。これが社会なんだと割り切るしかない………やっぱり、なんか嫌だけど。
「本田さんはこの資料をホッチキス止めてもらっていい?」
話しかけられてハッとする。いけないいけない。仕事とプライベートは分ける。直くんもさっき言ってたじゃない。
「はい!」
他の新入社員と共にホッチキスを止めていく。
(あ~、なんかさっきから足が痛い。靴擦れしたな。ヒールで結構歩いたし。)
どうしよう…。あと5時間近く…。まだ歩くことあるかな?
今日に限って絆創膏持ってない。昨日ちゃんとパパに忘れ物ないかって言われたのに…
けどあと5時間くらい座ってるだけなら…
「新入社員〜!今日仕事終わったら歓迎会しようと思ってるんだけど、どう?いきなりだから予定がある場合は無理しないで。」
塚本部長に声をかけられる。
これは…いかないわけにはいかないでしょう…
✽✽✽
終業時間を迎えて、社会人一日目が終わった。
これから歓迎会だ。まだ一日目は終わっていない。
(足痛い…)
絆創膏を持って来るのを忘れ途方に暮れる。これからまた歩かないといけないのに…。
「本田さん。」
愛しい直くんから久しぶりに名字で呼ばれる。
プライベートと分けて…寂しい。
だけど、ビジネスモードな直くんは宇宙一かっこいい。
「はい。」
直くんに何やら渡される…絆創膏…。
「あ、ありがとう。」
直くん気づいてたのかな?
「痛そうにしてたから。」
…直くんも私も今日は初出勤で、更に直くんは皆に囲まれて、慣れない環境で、緊張したはずだし、疲れてるはずだ。
それなのに…気づいてくれた。気遣ってくれた。
「わざわざ買いに行ってくれたの?」
直くんは普段から絆創膏を持ち歩いている訳じゃない。
「…うん。」
この緊張感でいっぱいの中、抜け出して買いに行ってくれたんだ。
私の為に…
「ありがとう直くん。嬉しい。助けてくれてありがとう。」
「うん…」
私がピンチの時に駆けつけてくれる。直くんは私のヒーロー。
ここが会社じゃなかったら抱きつきたいのに!
「おーい!新入社員!置いて行くぞー!」
…今はビジネス。
その後ササッと更衣室で絆創膏を貼れました。
(直くんマン、ありがとう。)




