新入社員
(す、すごぉい…)
直くんのお兄さんが壇上に上がって挨拶をする。次に上がってきたのは直くんの叔父さんという人。
(な、直くんって御曹司さんだったんだ…)
なんだかすごい人と付き合っていたのでは、と不安になる。
…直くん、私をおいて遠い世界に行かないで。
✽✽✽
入社式が終わり、新入社員はそれぞれ少人数に別れて研修をする。
全部署を一週間づつ周り、その後配属部署に正式に移動する。
今日は営業部。私と直くんは同じグループだ!
(もしかしたら、お兄さんの計らいだったりして?…いやいや、あいうえお順だろうな。良かった、名字が近くて)
「部長の塚本です。宜しく。」
部長と言うにはかなり若い男性。
(なんか、チャラそう。)
「「宜しくお願いします。」」
新入社員が揃えて挨拶をし、自己紹介をする。
「…お!直くんじゃん!いきなり会っちゃった!おーい!みんなー。直くん来たぞー!」
(え?え?何事?)
机に座って仕事をしていた人達が一斉にバッとこちらを見てくる。
(こ、恐い…)
「CEOの弟!?」
「どれどれ?」
「おー!噂の御曹司!」
「やーん。かわいい顔してるじゃない!」
直くんに様々な言葉が浴びせられる。
(そっか。直くんは創業者一族の御曹司…)
なんか…寂しい。だけど!!さっきの最後の言葉を私は聞き逃してはいない!〝かわいい顔〟つまり直くんが狙われている。
直くん、大丈夫よ!心配しないで。私が直くんを守って見せるわ!!!
「あはは。ごめんな、直くん。いきなりびっくりするよなー。」
「…いえ。」
塚本部長が謝る。直くんはやはり驚いていたようだ。
「前にCEOと飲んだ時に〝弟が入社する〟って聞いてさー。楽しみにしてたんだよ!」
(CEO…お兄さんの事だろうな。)
「ごめん、ごめん。他の新入社員が固まってるわ!これ、エコヒイキじゃないからなー。じゃあ仕事の説明をしまーす。」
塚本部長は何事なかったように、仕事の説明を始めた。
(チャラいけど、悪い人じゃないんだろうな。)
昼休み、同じグループの新入社員で社食に行く。お昼ご飯だ!!
料理を受け取り、席につく。
(お腹空いたー。美味しそう!)
「…三井くんって、創業者一族なの?」
同じグループの男の子が尋ねる。
「…うん、まぁ。」
直くん答えにくそう…
直くんは特別扱いも嫌いだし、好奇の目に晒されるのはもっと嫌いだ。だけど、ここに入社したら否応なしにそうなる。何とかしてあげたいけど…
「あ、じゃあやっぱりコネ入社だ?」
…おい。直くんの優秀さを知っての言葉か!?
「…。」
直くんは返答に困って喋らなくなった。やっぱり嫌だよね。よし!
「すごぉい優秀なの。知らないの?」
渾身の笑みよ!更にブラックオーラもプラスしといた!ドヤ!
「…あ…そう、ですか。」
ヨッシャ!勝ったー!!流石です!百子選手!
見事、直くんをお守りしましたー!




