短編 一般的とは
弟は高校生になった。そして反抗期だ。
「お兄ちゃん、魚。骨。」
と、思ったらなんか違う。年々兄貴にベッタリになる。ちょっと気持ち悪い。
「魚キレイに食べれるように練習しよう?まずは…」
兄貴は毎回懲りずに教えようとする。
すごい忍耐だ。俺なら貴にこんな事言われたら…無視だな。
「いい。骨取って、食べやすくして身だけおいて。」
30歳の兄が16歳の弟の魚の骨をとるなんておかしいだろ。
「…貴ちゃんが魚を食べる時いつもお兄ちゃんがいる訳じゃないからさ。一人で食べれるようになってた方がこれからも役立つよ。」
兄貴が諭す。兄貴が怒らないから、貴将が増長するのに。
「その時は魚、食べない。」
「…。」
あ、兄貴負けた。
結局、兄貴が骨を取ってあげた。
弟の我儘が日に日に酷くなる。なんか兄貴がかわいそうだ。
✽✽✽
今日の晩御飯は煮魚。
そして兄貴は仕事で遅くなる。これはいい機会だ。
「キヨさん、魚、骨。」
「貴。いい加減にしろ。」
今度はキヨさんか。
「…お兄ちゃんに電話して、帰って来てもらう。」
何を言ってんだ。
…あんなにご飯大好きな弟が結局一口も食べない。
「貴、キヨさんが片付け出来ないだろ。食べな。」
いつもうるさい弟が喋らないと調子が狂う。
「…お兄ちゃん待っとく。」
「…。」
兄貴の教育方針は変えた方がいい。甘やかしすぎだ。
✽✽✽
百子と学食で待ち合わせて昼ご飯を食べる。
「でね!それでね!」
「うん。」
楽しそうに喋る百子にこっちまで楽しくなってくる。俺はもっぱら相槌しか打たないが…
「ママがパパに〝そんなに甘やかさないでー〟って怒って!」
「…。」
そういえば、百子の家はどうなんだろう。
うちは兄貴が過保護で、貴が中学に上がるまで靴下を履かせてあげていた。そして今は高校生なのに兄貴が魚の骨を取ってあげている。
俺は異常としか思えないが、周りと比べた訳じゃない。そもそも知らないし…。
もしかしたら俺が異常と感じる世界は世の中の一般なのかもしれない…
「百子さ、魚の骨どうしてる?」
百子が一般的かは分からないがとりあえずこんな事聞けるのは百子しかいない。
「魚?今日の学食はアジフライだから骨ないよ!美味しいね!」
ニコニコ笑って食べる百子がかわいい…
じゃなくて、、ダメだ。百子にいつも翻弄される。
「いや、学食の話じゃなくてほら、家とかで魚が出たときとか、骨どうしてる?」
「パパが取ってくれるよ。」
「え?」
今…随分サラリと…
「あ!だ、大学生にもなって!って思った?家だけでだよ!パパがいくつになっても子供扱いで!」
物凄く弁明している…
「直くん!引いてる!そんなに引かないで!!」
「いや、びっくりしただけで…」
というより混乱している。
「うちはパパが過保護だから!私だってちゃんと出来るんだからね!?」
…。うちの兄貴も過保護だが…
…それが一般的かはどうかは置いといて、分かった。
俺はまた百子から教わった。
たとえ、百子が一般的でないとしても俺は何にも気にならない。
世の中の基準は分からない。いつだって普通と異端は個人の線引きで大多数と少数派に別れるだけだ。
異端になりたい訳ではない。だけど、個人の主観で物事を判断するのはやめよう。
人を傷つけないように生きたい。
…ただ、これだけは聞いておきたい。前もって準備が必要だ。入念にリサーチしておかないと…
「百子、百子のお父さんって…どんな人?」
【おしまい】
そろそろ次章にいきます(*´―`*)
短編も読んで頂きありがとうございます(〃艸〃)