短編 何でもしてあげたい
俺の兄貴は世話焼きだ。
日曜の夜、高校生の弟が部活の試合で勝ったからと外食することになった。
弟のリクエストで今夜は中華だ。キヨさんも誘ったが遠慮された。中華だもんな…
「いえーい!!餃子餃子〜!!ライスは大3つで、お兄ちゃんも大にして半分ちょうだい!」
「うん、いいよ。直くんと貴ちゃんが良いのを好きなだけ頼んでね。」
そして兄貴は俺と貴に甘い。
「うん!酢豚と油淋鶏でしょ。あと、チャーハンと天津飯に〜」
そして弟には遠慮というものがない。
大3つのご飯に兄貴のご飯半分に更にチャーハンと天津飯を頼むという、もはや意味の分からない行動に出ている。
しばらくすると、弟が挙って注文した料理が大皿で次から次へと運ばれてきた。
「はい、直くん。」
「はい、貴ちゃん。」
兄貴は自分の食事を後回しして俺達にせっせと取り分けてくれる。
「兄貴食べないの?」
「食べるよ?」
いや、いつ食べるんだよ…
「美味しいぃ〜。お兄ちゃん、おかわり!!」
「うん。」
弟が兄貴に皿を出し、兄貴がまた取り分ける。
なんで貴はいつもそう大将なんだ…
兄貴は食べず、俺達の食事とドリンクの残量に気を配る。
なんとなくモヤモヤして、俺は目の前にあった回鍋肉に手を伸ばす。
「あ、直くん。お兄ちゃん取るよ。貸して。」
俺の兄貴は目ざとい…。
「いいよ。自分で取るから。」
✽✽✽
今日は百子とイタリアン。目の前に大皿でパスタが運ばれてくる。
俺は取り分けようと手を伸ばす。――が。
「直くん、私がする!」
静止された。
「こういうのはね、彼女の役目よ。」
なぜか誇らしげに言い放ち、取り分けようとする。…なんか不安だ。
案の定、スムーズではない。というか危ない。見ていられない。
「百子、俺取るから。貸して。」
「彼女がするの!」
……これは何かに感化されている。
「何かに載ってた?」
聞くと、シュンとした彼女がボソボソと話始める。
「…雑誌に〝男子が胸キュンする彼女の行動ベストテン〟に料理を取り分けるって…」
…。
あまりのかわいさに吹き出して笑いそうになるが何とか堪えた。一生懸命取り分けてくれてるのに笑ってはダメだ。
かなり時間をかけて、何とか取り分けられた。
「直くん、胸キュンした?」
「…今日パスタの理由が分かった。」
彼女は米、ご飯が大好きだ。それなのに今日はイタリアン。唐突に言われ意味が分からなかったが、ようやくここにきてその意図を知る。
「恋人とのデートはね。イタリアンがいいんだって。」
雑誌で得た知識を繰り広げる。
「はい。百子の分。」
まだ取り分けていない百子の分を取り分け渡す。
「わーい!ありがとう直くん!」
喜ぶ彼女が見れて嬉しい。
俺の分を取り分けて満足したのか、目の前に料理が来て、もうどうでも良くなったのか彼女はいつもの調子に戻って食べ始める。
「はっ!違う!直くんキュンとした?」
どうして答えないといけないようだ。
「うん、した。」
そもそも、この状況でしてないという選択肢は無いだろうに。
「本当!?やったぁ!」
目をキラキラさせて喜ぶ百子がかわいい。
一生懸命取り分けてくれた百子が愛しい。
それと同時に美味しそうに食べる百子を見ていたい。百子の役に立ちたい。何でもしてあげたい。
ふとあの時の兄貴を思い出す。
(兄貴も今の俺と同じ気持ちだったのかな…)
…俺は最近兄貴の気持ちがわかるようになったみたいだ。
直くんはももちゃんといると、家でのお兄ちゃんのポジションに変わるようです(〃艸〃)




