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短編 予想通り

2.5章から2年立ったお話ですo(*´▽`*)o

直くんももちゃん20歳です☆


俺の兄貴はおせっかいだ。



「今度またももちゃん連れておいでよ。晩御飯一緒に食べよう。」


…始まった。


だから言いたくなかったんだ。こうなるから。


「いいよ。」


これは肯定ではなく、やんわり、断る。


「なんで?」


気の利く兄貴はこういう時、空気を読んでくれない。


「この前も連れて来ただろ。」


そう、何度もしつこく兄貴に言われ、折れる形で連れて来た。


「…この前ってほどでもないだろ?」


せめて半年に一度…いや、一年に一度に抑えたいのが俺の心境だ。


そして百子が来るたびに兄貴は俺の小さい頃の話をする。百子が喜んでいるから黙っているけど、あまり子供のときの話はしてほしくない。


「片付けしてたら、直くんの小学生の時の作文が出てきたから、百子さんに見せようと思って。」


「連れてこないから。」


そんな羞恥に耐えられない。


「成人式の写真も出来たよ。みんなで見よう。」


兄貴は変な所で押しが強い。そして、圧がある。


「…聞いてみる。」


俺は結局この偉大な兄を前に大人しく言うことを聞くことしか出来ない。強い口調じゃないのに有無を言わせないその独特の空気感はやはり経営者だと思う。





✽✽✽


「こんばんは!お邪魔します!」


そして百子は誘うと100%断らない。つまり、兄貴に提案されたが最後。この図式は出来上がってしまった…。


「いらっしゃい。どうぞ上がって。」


兄貴が促す。


「ももちゃん!わーい!ももちゃんが来たー!!」


貴が喜ぶ。


「ようこそおいで下さいました。」


キヨさんが微笑む。


俺は一気に居心地が悪くなる。





「それで、その時直くんが…」


また兄貴が俺の子供の時の話をする。留学していた兄貴とそんなに一緒にいた記憶は無いのに、なんで毎回そうネタがあるんだ…


「ももちゃん、俺ね!この前ね!」


また貴が自分の話をする。コイツの話に相槌を打つのは気力と忍耐を使うはずだ。疲れるだろうな…


「百子さん、沢山召し上がって下さいね。」


またキヨさんが大量の料理を作って百子に差し出す。明らかに量がおかしい。これをまた百子が〝せっかくだから〟と食べて後で太ったと言って嘆くのに…





✽✽✽


「あー。お腹いっぱい!!もう何にも入らない!」


ようやく居心地の悪さから開放され、百子を送るために家を出て二人きりになる。

案の定、腹10分目を超えたようだ。


「毎回無理して全部食べなくていいよ。」


というか残れば貴が全部食べると思う。


「ハッ!今〝それ以上食うな!〟って言った!?」


解釈がおかしい。


「そうじゃなくて…」


ダメだ。百子がうちに来ると俺は居心地の悪さか神経を使うからか、もう頭が回らない。


「直くんの家族に良くしてもらえて嬉しい。」


「?」


「直くんのお家に行って、お兄さんと貴ちゃんとキヨさんが迎えてくれる事が嬉しい。」


「…。」


「直くんの一番近い人達に近づける事が嬉しいの。」


ダメだ。やっぱり頭が回らない。中々理解出来ない。


「直くんの家族に受け入れてもらった気がして…私もその中に入っているような気がして…」


あぁ、なんとなく分かったような…


「直くんファミリーの一員!目指したい!」


段々言って照れたのか、スパッと切り上げる。


かわいいなぁ。と胸がいっぱいになる。


「馴染んでるよ。」


「え?」


「俺の家にいる百子がしっくりきてる。」


うん。兄貴がいて、貴がいて、キヨさんがいて。


――百子がいる。



見慣れた、当たり前の風景のようだ。


―――最初から、百子がそこにいるのが当然のように…



【おしまい】

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