第七話の二
「くくくっ……おぬしは我の部下になるかもしれない男。ならば、我の真意を語るのも仕方なしというやつなのじゃ!」
と、シャロンは胸を張って喋り出す。
「まず、事は我が魔王になった経緯に遡るのじゃ! 我がどうやって魔王になったかというとじゃな……単純に魔界の奴ら全員を倒し、屈服させたのじゃ!」
「それって一対一でか? お前、本当に強いんだな」
「我は強いのじゃ! 質問の件なのじゃ……うむ、一対一もあったし、軍を率いる事もあったのじゃ。とにかく、我は魔界で言うところの百年戦争を制し、無事に魔王になったのじゃ」
えっへんと、一息つくシャロン。
彼女はさらに続ける。
「次は人界の征服……と、ここで問題が発生したのじゃ」
「問題? 裏切られでもしたか?」
「我の部下にそんな奴はいないのじゃ! 万が一裏切られたとしても、我に勝てるような奴は魔界には存在していないのじゃ!」
シャロンは「話がズレたのじゃ、まったく」と一言ぼやき、当初の話を続ける。
「問題とはすなわち、我の部下――魔界の民は戦争に疲れてしまっていたのじゃ。我が成り上がる戦いで、魔界全体が疲弊していたのじゃ」
「まぁ、そりゃあ百年も戦争続けたらな」
「我は良き王でいたい……我が魔王でいる間は、民に苦労をかけたくない。そこで、我はとんでもない策を思いついたのじゃ!」
シャロンのボルテージの上がり方から考えるに、これこそが彼女が冒険者をやっているに違いない。
さて、その理由は――。
「正当な方法で我が人界の王になればいいのじゃ!」
と、シャロンはドヤァっと続けてくる。
「第一段階として冒険者に、第二段階として上級冒険者に、第三段階として英雄に! ここまでくればあとは最終段階……我は民からの親愛と共に王に祀り上げられるのじゃ!」
「…………」
「くくくっ……どうやら我の計画がすごすぎて、声も出ないようじゃな! よいよい、それも仕方のない事なのじゃ!」
「…………」
「苦節五十年! 我の計画はすでに第二段階を達成しているのじゃ! あとは第三と最終のみ……くくくっ、我が王になる日は近いのじゃ!」
「…………」
アッシュはシャロンの話を聞いていて思うのだった。
(どうしよう。こいつ思ったよりバカだ)
そもそも、英雄になったからといって、必ずしも王になれるわけではない。そんな問題点はあえて無視するとしても。
「おまえ、そのペースだとあと何年かける気だよ……進行速度遅すぎるだろ」
「なっ!? おぬし、今我の事をバカにしたのか……許さないのじゃ!」
言って、シャロンはベッドからジャンプし、アッシュへと飛びかかってくる。
「ちょ……っ!」
アッシュは咄嗟の事態に反応できず、椅子から床と落下。そのままシャロンに押し倒される様に床へと倒れてしまう。
「くくくっ」
と、シャロンはアッシュに覆いかぶさるように乗っかったまま、言葉を続けてくる。
「返事を聞いていなかったのじゃ……我のものになれ、人間。偶然とはいえ、我に勝ったおぬしに、我はとても興味があるのじゃ」
「俺は興味ないから! どけって! この態勢やばいだろ! あ、おい! 服の中に手を入れ――」
「騒がしいけど、どうかしたんですか?」
と、聞こえてくるのは受付のお姉さんの声。
そう、彼女が扉を開き中の様子を窺ってきたのだ。
それはつまり、アッシュとシャロンの現在の様子も、当然見られた訳で。
「…………」
バタン。
お姉さんは笑ったまま無言で、部屋から出て行くのであった。




