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「手を引いて走ると言うとカッコいいけどこれはただの逃走である」

「せ、先輩!?なんでいきなり走り出して………はっ、もしかして駆け落ちですか?駆け落ちなんですか?」

いや違うけどな?まったくもって駆け落ちなんてもんじゃないけどな?

確かに、手を引いて走ってるって状況は駆け落ちっぽいけどさ、でも違うんだよなぁ。

これはただの、修羅場および恐ろしいものからの逃走だ。

俺は小市民なんでな、何が何でも大きなトラブルは避けたかったんだ。

だって怖いし、なによりあの状況であそこに居たらなんらかのこじつけと部長の責任転嫁で俺がやられる可能性があったしな。

ほら、ヤンデレって変なところから嫉妬するっていうだろ?

だからさ、一応は女の俺が居たらそれの対象になって槍玉にあがる可能性だってあるし、そこから部長へ更なる被害が行く可能性もあった。

だから逃げたのさ(言い訳)

「違うぜ後輩ちゃん、これは逃走っていうんだ」

俺は後輩ちゃんにも言い訳を言いながら、どうにかこうにか部室からそこそこ離れたところまで辿り着く。

ちなみにこっちからであれば部室の方の状況を見る事が出来るから、もし何かあって追いかけられても先に気付くことが出来るし、ひとまずは安心だろう。

「?………何から逃げてるんです?」

まぁ、一応ある程度は安心できる場所に来たわけだし、後輩ちゃんにも説明した方が良いのかね。

なんたって、現在進行形で巻き込みingしてるわけだし。

「………つまりは、部長の求愛が成功した挙句ヤンデレ化しちゃった子が来て、何も知らぬ俺と郁馬と武の助力により入部、そして部長が大ピンチってことだ」

とりあえず簡単に説明して、理解してもらおう。正直なところ一割も説明できた気はしないが、それでもしないよりかはマシだろうしな。

うん、本当に一割たりとも伝わってないだろうけどさ。

「えと、つまり部長が自業自得して、女の子が捕まえに来たってことで良いんですか?」

あ、意外にもちゃんと伝わってたね。流石は後輩ちゃんだ。

俺よりも理解力に優れ、俺よりも高性能で、大抵のステータスで多分俺を上回っている後輩ちゃんであればこんなにも分かりにくい説明であっても理解できるんだな。

流石だぜ、流石は俺の彼女。

「いやー、でもあの部長でも口説ける女の子が居るんですねぇ」

感心したのも束の間、後輩ちゃんが核心っぽい部分に触れた。

まぁそりゃそうだわな。女好きが祟ってそれはそれでまったくモテない部長が、そこそこ可愛い女の子を落とせてるなんて驚いたね。

確かに部長は色々とアレでも顔も良いし、その上天才(一応)だ。

しかしなぁ、どうやって落としたのやら気になる所………


ガシャーン!


………っ!?

おいおい、なんか文ゲー部の部室から嫌な音がしてきたぞ?

しかも、何かが砕けちまったかのような音がした。………文ゲー部で砕けるようなものとすればまぁ、普段であれば砕けたのは部長のハートって言いたいところだが、おそらく部室にある中でもっとも壊れやすいことからしてボードだろう。

そもそもアレであれば倒れただけでも今の音は出せるだろうしさ。

まぁ、ここで見にいってみてもいいかな?後輩ちゃんと相談して意見が合致すれば、だけど。

「後輩ちゃん、部室の方でボードか何かが倒れたみたいだけど………見に行ってみるか?」

ひとまず後輩ちゃんの意思を確認する。

その答えは………

「行きましょう先輩!なんかすごく楽しいことが起きそうな予感がします!」

あれま、俺の予想の斜め上を行っちゃったな。

なんというか後輩ちゃんがトラブルに自ら首を突っ込むスタイルだとは、今初めて知ったよ。

まぁ最初に決めていたことだし、後輩ちゃんの意見に合わせてみるとしよう。

俺たちは文ゲー部室へ向かって歩き出した。


――――――――――


そして文ゲー部部室、略して文ゲー部室にて。

そこでは色々と予想を上回る光景が広がっていた。

それはなんというか本当に、すごく………

「「あ、お楽しみのようでしたね、それじゃごゆっくりー」」

R-18指定されても仕方ない一歩手前の状態で、部長が加奈ちゃんに押し倒されていた。

つーわけで俺と後輩ちゃんは退散することにするよ。


長年の溝を体で求め合って埋めようってんなら、ごゆっくりってことさ。

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