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【第24話】軍師の土下座と、旦那様の容赦なき外交

「……ふむ。つまり貴様らは、俺の妻がシーツを干すという重要な任務を遂行している最中に、土足で領地に踏み入ろうとしたと。そういうことだな?」


泥だらけになり、見る影もなくボロボロになったガルシア伯爵と軍師シエン。

彼らは辺境の巡回部隊に易々と捕縛され、そのまま公爵邸の執務室へと引きずり出されていた。


ルーファス様は、組んだ足の上に肘を乗せ、絶対零度の声で二人を見下ろしている。その後ろで、私は「あの、お洗濯は任務というか趣味なんですけど……」と小さくツッコミを入れていた。


「ひぃぃっ! お、お許しを、ルーファス閣下! すべてはこの東方の詐欺師がそそのかしたのです! 私は騙されただけで……っ」

「見苦しいぞ、ガルシア。貴様の領地はすでに我が辺境軍が制圧した。貴様は今日をもって平民に降格の上、我が領地の鉱山で死ぬまで石を砕くがいい」

「そ、そんなぁぁっ!」


ルーファス様の容赦のない宣告に、ガルシア伯爵は白目を剥いて気絶した。

そして、ルーファス様の氷のような視線が、残された軍師シエンへと向けられる。


「さて、そこの東方の男。貴様は……」


「おお、偉大なる天候の支配者よ!!」


ルーファス様が言葉を終えるより早く、シエンは突如として私に向かってズサーッ!と凄まじい勢いで土下座を決めた。額が床板にめり込むほどの勢いである。


「な、なんですか急に!?」

「私は思い上がっておりました! 気圧を読み、風を計算した程度で、天の理を理解した気になっていたのです! しかし、貴女様は雲を払い、雷を呼び、嵐を意のままに操られた! あれほどの神威を見せつけられては、もはや平伏するしかありません! どうか、どうかこのシエンを貴女様の一番弟子にしてくだされ!!」

「ええっ!? 弟子って言われても、私、お洗濯物を早く乾かしたかっただけで、雷とか竜巻はただの巻き添えというか、お天気の手違いで……」

「なんと! あの大嵐がただの手違い!? ああ、なんという底知れぬ力……一生ついていきます!!」


完全に目をキラキラさせて信奉者と化してしまった軍師を前に、私はどうしていいかわからずルーファス様に助けを求めた。


「……おい貴様。俺の妻に気安くすり寄るな。斬り捨てるぞ」

「おっと、これは失礼。ですが閣下、私を殺すのは惜しいですよ? これでも内政や事務仕事には自信があります。アリア様の生み出す莫大な利益の計算や、新しい領地の統治など、必ずやお役に立ってみせましょう。給金は結構、ただアリア様の天候操作の術を間近で拝見できれば!」

「……チッ。まあいい、俺とアリアがイチャイチャする時間を増やすための書類整理係としてなら、使ってやらんこともない」


こうして、隣国からの侵略という一大ピンチは、私の無自覚なお洗濯チートによって一瞬で解決した。

おまけに隣国の領地まで吸収し、優秀(でちょっと変な)事務官まで手に入れてしまった辺境は、ますます最強の国家へと成長していくのだった。

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