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借金まみれの輸送艦長、最強姫騎士の勘違いで銀河皇帝にされる ~俺のために勝手に宇宙を征服してきて、維持費と胃痛が限界突破  作者: 星灯ゆらり
第四章 戦艦なんて必要ない。最硬のオンボロ輸送艦と最強の姫騎士による、理不尽すぎる防衛戦

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ただ通信しただけで『絶滅戦争』を宣言されたハイエナ艦長。報復として特級料金で敵の軍事機密を暴露し、形勢逆転を狙う

「ジャバウォック銀河帝国国営放送総合ニュースの時間になったのです!」


 画面の一つにギョーショーの顔が映る。

 本人はニュースと言っているが内容は『ギョーショーのやりたい放題』だ。


「今回の自動調理器は、向こうの銀河の最新版なのです!」


 ほとんどの内容が通販番組で、司会兼解説兼リポーターであるギョーショーの価値観が偏っているのでニュースとしては微妙。

 ただ、ギョーショーは嘘は言わないし、超光速通信を使っているのでほぼリアルタイムの放送だ。

 視聴率は、銀河帝国内で一二を争うほど高いらしい。


「艦長。ギョーショーの超光速回線を使うか?」


「こっちの武器を知らせる必要はないだろ。普通に金を払って以前からある通信でいこう」


 俺たちは『フリーキャッスル』から、エルザとの通信を開始した。



  ☆



「ポーター……」


 地獄の底から響いてくる声があるなら、これだろう。

 久しぶりに見るエルザは、美しさはそのままだが怨念とかのマイナス要素が激増している。


「お前のせいで、お前のせいでっ」


 リゼのような特別な力は持っていないはずなのに、エルザの憎しみで映像が歪んで見えた。


「落ち着けエルザ。移籍は無理でも、私との通信ならいつでも可能だろう」


「うう。私の味方はリゼさまだけですぅ」


 銀河共和国の地方総督が全力でリゼに媚びを売っている。


「姫さん、スカウトは無理か?」


「エルザは不義理を良しとする性格ではない。この状況では無理だ」


「えへ。褒められちゃいました!」


 エルザの外見年齢でそういう言動をされると、違和感が非常に強い。


「本来ならもう引継ぎを終えて銀河帝国行きの船に乗っていたはずだったんです。でも……」


 エルザが肩を落とす。

 細く長いエルフ耳も力なく垂れている。


「派遣されてきた艦隊にハイエルフが乗っていたんです。第四十七星系にはハイエルフはいなかったですし、直系である私しか対応できるエルフがいなくて……とほほ」


 自虐風自慢『ではない』。

 無理をしてでも素早く退職しなかったのを、本気で悔いている態度だ。


「そっちはややこしいことになってるのか? こっちはでかい『ミミズ』がやって来て面倒なことになってるが」


 俺の言葉が届いたエルザの顔が、一瞬で『私人』から『公人』に切り替わる。

 そこからは大変だった。

 ダンジョンで魔王をしていたかもしれないが、一惑星の一部を支配していただけの国の騎士だったリゼと、つい最近まで輸送艦一隻しか持っていなかった俺では、四十以上の星系を支配する国の高官の相手は厳しい。


 しかし、エルザにも不利な点がある。

 リゼと『ミミズ』と『剣』だ。

 リゼのことはどれだけ大事でも『私事』なので我慢することはできるだろうが、『ミミズ』を発生させて周辺星系へ逃がしてしまう『剣』についてしらばっくれるのは不可能だ。


「この星系の地方総督としては、帝国が『壁』になってくれるなら魔王の剣を引き渡してもいいの」


 譲歩しているようでかなり厳しい条件だ。

 銀河共和国は第四十七星系の駐留戦力を最小限にして、『剣』をくれてやった銀河帝国に周辺星系の治安維持を押しつける意図がある。

 帝国は苦労して戦力と治安を維持して、共和国は低コストで通商の利益を得るってわけだ。


「でもハイエルフは、魔王の剣を持ち帰って再度封印するつもりよ。どれだけコストがかかってもね」


 エルザは深いため息をつく。

 高度技術で作られた化粧品でも隠しきれない『疲れ』が見える。


「エルフ族のメンツか? もしそうなら、こっちも無理は言えなくなるが」


 利益のための戦争ではなく『絶対に譲れないもののための戦争』になってしまうと、勝っても負けても甚大な被害が出る。

 『剣』は非常に惜しいが、銀河共和国と死ぬまで殺し合うのを覚悟して戦争を吹っかけるつもりはない。


「メンツよ。……失礼。ハイエルフに呼び出されたわ。……ソール様? それは、はい。承知いたしました」


 エルザが戸惑った表情でリゼを見る。


「ふむ?」


 リゼも少し戸惑いはしたが、エルザに話をするよう促す。


「リゼさま。ハイエルフであるソール様が、リゼさまとの面会を希望しています」


「艦長ではなく私か? 私はただの騎士だぞ?」


「リゼさまがただの騎士と自称されても、リゼさまを知る者はそうは思いません」


 外見は完璧な共和国の政治家なのに、目が崇拝者のそれだ。

 リゼが俺に目配せする。

 リスクはあるが、このままだと何もせずに『剣』を諦めることになる。


「姫さん。ダンジョン時代にエルフに名乗っていたか?」


「特に名乗った覚えはないな。当時のエルフは、人間のことを人語を喋る猿としか思っていなかった」


 俺が頷くと、リゼが「よかろう」と返事をした。


「……頭と胃が痛くなる話だな」


 俺とリゼが話している間に、向こうの準備が整ったようだ。

 共和国の『戦艦』の中にある貴賓室が映し出される。

 ランス級が数十隻建造できそうな金がかかっている貴賓室よりも、豪奢な椅子に『ちょこん』と座っているエルフの方が目立っている。


 それは、恒星めいて輝く髪を伸ばした、エルフの幼女だった。

 手足も体も細く、決して顔色は良くないが、視界に入るだけで絶対に無視できないレベルの美貌。


 要するに、リゼほどではないが、リゼと比較できる程度にすごい、圧倒的美形って奴だ。


「……見覚えはないな」


「姫さん。まずは挨拶だ。……俺はポーター・ジャバウォック。銀河帝国の皇帝です。こちらは軍事部門のトップのリゼです」


「騎士のリゼだ。要請に応じて参上した」


 今のリゼは翼を伸ばしていない。

 ピンクの髪と、金の瞳孔の瞳と、姫騎士の鎧とヒートソードを装備した、美しい人間の姿だ。


 「ひゅっ」と絶命の瞬間のような呼吸音が聞こえた。

 エルフ幼女の表情は『驚き』のまま完全に停止して、見開かれたままの瞳から、人間(エルフを含む)が流す涙としては異様な量の涙が流れている。


「魔王」


 鈴が鳴るような声、という表現が正しいかどうかは分からない。

 恐怖で塗りつぶされてもなお心地良く響く声が俺たちに届く。


「なんで、封印されたはずなのに。なんで、なんで、なんでぇっ!?」


 呆然から興奮へ。

 興奮から狂乱へ。

 絶望と恐怖が臨界を突破し、殺意という表現でも足りないものがリゼとその周囲に向けられる。


 貴賓室とその周辺に控えているエルフたちが慌てているが、幼女エルフに近付こうとしても近づけない。

 輝く髪が太陽のプロミネンスのように立ち上がり、まるで『リゼが気合いを入れたとき』のような光が幼女エルフから出ている。

 光の強さは、リゼと比べればかなり弱い。


「ソールさま! おやめでください。それは……ソールさま!」


 エルザが悲鳴をあげる。


「あの。ポーターさん。あっちの『戦艦』が宣戦布告を連呼しながら絶滅戦争を宣言しました。もとからの駐留艦隊は動いてないですが、残りは従うみたいです。……何したのです?」


 呆れ顔のギョーショーが、ギョーショーが設置した超光速回線で連絡を入れてくる。


「俺も姫さんも何もしてねーよ! って宣戦布告ぅっ!?」


 俺が悲鳴をあげた直後、通常の超光速通信で、『フリーキャッスル』に宣戦布告信号が届いた。


「艦長!」


「ギョーショー! 第四十七星系に駐留する艦隊全ての情報を広域で公開しろ! これは正式な依頼だ」


「特急料金で了解したのです! 人類保護機構優先で情報を送ったのです!」


「良くやったギョーショー! これで時間を稼げば共和国は滅茶苦茶になる。第四十七星系には、結構な数の『戦艦』がいる。これだけの『戦艦』がいなくなった戦線は、さぞかし脆いだろうぜ」


 俺は、恐怖で引きつった表情のまま『にやり』と笑おうとする。

 おそらく酷い表情になっただろうが、気にしている余裕はない。


「ちょっ……ポーター!」


「悪いなエルザ総督。こうなったらお互いやるしかないだろ。……マジの絶滅戦争になる前に和平派を連れてきてくれ」


「ハイエルフは連れて来ない方が良さそうね」


 それで通信が完全に切れた。


「思い出した。エルフの雑兵を私へ突撃させて、まとめて魔法で殺そうとした、あのときのエルフか。あの小物がああ育つとは、予想以上に時間が流れているようだな」


 いきなり全面戦争が始まったのに、リゼは落ち着いている。


「姫さん、派手に戦ってもらうぞ」


「任せておけ」


 不敵に微笑むリゼの背中で、気合いの入った光の翼が広がっていた。

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