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借金まみれの輸送艦長、最強姫騎士の勘違いで銀河皇帝にされる ~俺のために勝手に宇宙を征服してきて、維持費と胃痛が限界突破  作者: 星灯ゆらり
第四章 戦艦なんて必要ない。最硬のオンボロ輸送艦と最強の姫騎士による、理不尽すぎる防衛戦

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「ただ浮いているだけの要塞なんて楽な的だ」海賊の装甲をえぐり取ったハイエナ艦長、大戦争に向けた『前線基地』を狙う

 レーザーを浴び続けた『シールド』が消滅したタイミングで、複数の銃弾型質量弾が敵『巡洋艦』に突き刺さる。

 既にミサイルを撃ち尽くした敵巡洋艦は、装甲も本体の構造も穴だらけになり、しかし爆発はしない。


「降伏っ、降伏するからっ」


 猛烈な勢いで通信と降伏信号が送られてくる。

 悪名高い海賊の必死の命乞いは、本当に心地よくはあった。


「降伏する奴は艦内で罠の準備はしねーよ」


 ギョーショーの圧倒的なハッキング能力と比べれば平凡未満ではあるが、俺もこの銀河基準では『使える』ハッカーなんだ。

 相手が装備も訓練もしっかりしている正規軍ならともかく、僻地でふんぞり返って、しかも俺たちに負けるまでは慢心していたような賊なんてカモでしかない。

 大破して戦闘能力を失った残骸の中で何を準備しているかなんて、お見通しだ。


「艦長。今なら簡単に占領できるが」


「今欲しいのは装甲だからな。この後もいくつか星系巡りするんだ。姫さんは体力を温存しといてくれ」


「……どうにも、本当に姫あつかいされているようで、恥ずかしいものだな」


 リゼは軽く咳払いする。

 顔が少しだけ上気して、小さく背中に出ている翼も『ぱたぱたっ』と動いている。


「姫か騎士かは人によるだろうが、銀河帝国は姫さんの存在が前提の国だ。頼りはするが大事にもするさ」


 俺がくたばってもリゼがいたら問題なく存続できるだろうしな……。

 もっとも、俺は現状を屈辱とは感じていない。

 リゼという特別な存在がいるのに、銀河帝国の中に『ポーター(俺)を排除しよう』という動きは皆無だ。

 一人の船乗りとして、艦隊や艦隊を支える国を動かす立場ってのは、本当に魅力的すぎる。

 健康(特に胃の健康)を犠牲にするのをためらわないくらいにな。


「う、うむ。今日は艦内温度を上げ過ぎではないか?」


「不快なら姫さんが設定を変更してくれ。……おいそこの自称降伏希望の賊。本当に大人しくするなら命と健康だけは保証してやるよ」


 厭味ったらしい表情で回線の向こうの賊に向けながら、俺はキーボードと別画面による通信でランス級艦長たちと相談する。


「あいつはぁ、性格悪いですぜぇ」


「罠を警戒しながらパーツ取りってのは怖いですな」


「スピード優先でいきましょうよ、陛下!」


 こいつら、口では色々言ってるが、自分たちも新装甲を使いたいって本音が隠せてないな。

 俺の口の端が釣り上がる。

 俺の表情はよほど邪悪らしかったようで、リゼの翼が少し警戒した動きをして、回線の向こうの賊が慌てて本気の命乞いを始めた。


 数分が経過した。


 賊は脱出艇で艦から追い出し、自爆装置を仕掛けられている可能性がある場所は避けて装甲だけ剥ぎ取る……というよりえぐり取る。

 残ったのは再利用も難しい『艦だった残骸』数隻分と、装甲を載せるために『フリーキャッスル』から下ろした商品だ。


「あんたが星系政府のトップか? 同じことを言ってきたのが他に五人いるぞ」


 星系のあちこちから届く通信を、俺は雑に扱う。


「必要物資は相場で売ってやる。ただし前払いだ。情に訴えても値段は変わらんぞ。……ああ、今、他の奴が三割増しで払ったから全部売った。あんたにはなしだ。じゃあな」


 超高速回線を使った『支払い』を確認してから、商品が入ったコンテナを購入者がいる方向へ打ち出す。

 非常に原始的なやり方だが、意外と有効なやり方でもある。

 高速で飛ぶ荷物に追いつくか先回りして捕獲や破壊するのは大変なんだ。

 飛んでくる荷物を捕獲する設備があるなら、こういう『配達』を選択するのは『よくあること』だ。


「陛下ぁ! 次の襲撃ぃ……んんっ、通商ぉ、行きやしょうっ!」


「装甲を第一星系の工場に引き渡してからだ。それとお前、結構被弾したんだから第一星系のランス級と交代だ。交代後は装甲の張り替えをしとけ」


 『フリーキャッスル』を敵艦に狙われて頭に血が登って突撃したからな。

 こいつの艦はダメージを受けている。

 それでも小破にしかなっていないのが、ランス級の恐ろしさであり、設計の見事さだ。

 ランス級は、新装甲とかの別銀河由来の技術を全く使っていないんだ。


「この程度かすり傷ですぜぇ!」


「かすり傷でも数が増えれば艦が沈むだろうが。共和国の『戦艦』ともやりあうかもしれないんだ。休めるときに休んどけ」


「艦長。張り替えというのは、新装甲にか?」


 リゼが聞いてくる。

 ギョーショーから分けてもらったらしい牛乳(正確には牛乳を長期保存可能なように加工した飲み物)を少しずつ飲んでいる。

 一応俺も分けてもらってはいるんだが、体質的に合わないようで(腹がゆるくなって苦労したんだ)、俺の分もリゼのものになっている。


「ランス級は『操縦室』だけだ」


「そりゃないですぜ陛下ぁ!」


 艦長が悲鳴をあげた。

 気持ちは分かる。

 高性能なパーツを使いたいのは、船乗りの本能だ。


「共和国とやりあうときまでは我慢しろ。『フリーキャッスル』だって新装甲を使っているのは推進機関連だけだぞ」


「艦長。やはり艦長の守りを固めるのを第一に考えるべきだ」


「却下だ却下。最優先は姫さんの移動手段、次に姫さんの武器防具、その次が『操縦室』だ」


 リゼは別格で強いが無敵ではない。

 実際、今より強かったらしいダンジョン生活も石化で強制終了させられたのだ。

 相性の悪い敵を避けるための移動手段は、攻撃されてもちょっとやそっとでは壊れないようしておく必要がある。


「姫さんが殺されたら俺もこいつらも終わりだ。俺は、俺が生き残るためにも、姫さんを最優先にするぞ」


 俺は、情けない本音を率直に口にする。

 リゼに対する情はもちろんある。

 それと同等以上に、生き残りたいんだ。


「陛下ぁ」


「艦長。私の前なら構わないが、部下たちの前では、もう少し取り繕った方が良い」


 艦長やリゼから、可哀想なものを見る目を向けられてしまった。



  ☆



 第一星系に戻って、『店作り』をしているギョーショーに装甲の山を引き渡し、商品を『フリーキャッスル』に積み込んで次の星系へ出発する。

 護衛のランス級は一隻増えて五隻。

 艦長が体調不良の一隻と小破した一隻が護衛から抜けて、第二星系から届けられた三隻と新人艦長が『フリーキャッスル』の護衛として参加している。


「ふむ……」


 ARメガネをかけたリゼが、ギョーショーの『カタログ』を眺めている。

 ジャバウォック銀河帝国という『国』を相手にした特別製で、他の客には絶対に見せないような裏メニューまで全て載っている完全版だ。

 自動調理器はもちろん、『駆逐艦』や『巡洋艦』や『戦艦』、果ては『機動要塞』まで載っている。

 巨大なものの実物は在庫にないようだが、生産するための技術はギョーショーの頭の中にあり、ギョーショーが属する超大国からも建造と販売と購入の許可が出ている。


「高いな」


「契約国連合に従属すれば一気に安くなるが、さすがにそれはな」


「ふふ。独立心があって心強いな」


「独立心もあるが、それ以上に連中が怖いんだよ。『カタログ』に載っている兵器なんて、弱い順からレーザー、亜光速ミサイルに亜光速質量兵器と来て、その次がいきなり恒星をぶっ壊せそうな超光速大型質量弾だ」


 カタログに載っているのを見たとき、頭痛と胃痛に襲われてしばらく悶絶したぞ。


「センパイという機械人間が言及していた、『致命的な技術』か?」


「いや。連中にとっては超光速大型質量弾も普通の技術らしい。「この程度は自衛に最低限必要なのです!」だとよ」


 俺が質問したときのギョーショーは、間違いなく本気で言っていた。

 隣の銀河が地獄なのか、契約国連合が狂った国なのか、両方なのかは分からない。

 いずれにせよ、深い付き合いはしたくない。


「艦長。気持ちは分かるが今から関係を断つのは不可能だ。客観的に見て、我々銀河帝国は援助されている側だ。恩を返さず関係を断てば、契約国連合は自身の威信を守るために我々と敵対するしかなくなる」


「だよなあ」


 ため息が出る。

 ついでに胃も痛くなる。


「これを見るだけで、連中が危険視されて敵対されるのが当然と思えてくるぜ」


 俺のARメガネに『カタログ』を表示させる。

 銀河規模の技術先進国の商品一覧のはずのそれが、悪魔や邪神の『魂と引き換えに提供可能な商品』に感じられる。


「ポーターさん! それはすごい侮辱です! 契約国連合の住人が内心うすうすみんな思っていても、口に出したら侮辱なのです!」


 第一星系で常設の大規模取引所を建設中のはずのギョーショーが、俺たちに対して直接通信してきた。


「おう、ギョーショー。お前の船で合流するか?」


「僕の『おみせ』ができるまで、まだ時間がかかるのです。装甲は僕も使わせてもらっていいです?」


「こっちで装甲を新装甲にするより、ギョーショーが新装甲にする方が効率が良いからな。そっちで適当に計算していい感じにしてくれ」


「契約国連合の建国初期みたいなどんぶり勘定なのです!」


 そう言うギョーショーは嬉しそうだ。

 とんでもない距離を移動して、平然と商売を続けられるバイタリティあふれる奴だから、珍しい経験を楽しめているのかもしれない。


「それより報告なのです! 第一星系と第二星系の近くでは、僕資本の超光速通信網を展開できたのです! ショッピングも楽々なのです!」


「ほう。事業拡大が順調か」


 リゼは『カタログ』の閲覧を止めて、ジャバウォック銀河帝国とその周辺の地図を閲覧する。

 敵味方(帝国と賊とそれ以外)を表示しているのは分かるが、情報の切り替えが高速すぎて詳しいことまでは分からない。


「このままだと銀河帝国が宅配も担当することになりそうだな」


 ギョーショーとの直接取り引きを望む者は銀河帝国の中はもちろん外にも多い。

 しかしギョーショーは『面倒なこと』は全部俺に押し付けるつもりらしい。


「誰でもできることは他人に任せるのが効率良いのです!」


「誰でもはできねーよ。まあやるけどよ」


 第一星系と第二星系だけでは、たいした商品は用意できないからな。


「艦長。次の目的地だが、要塞らしきものがある」


 リゼが俺のARメガネに情報を送ってくる。

 この情報が正しいならかなり良いパーツを使っている要塞だ。

 超光速移動できないことを除けば『戦艦』に近い。


「我々への備えともとれるが、この星系単独では建造は難しい規模だ」


「人類保護機構が戻ってきたか、ポーションか何かに気付いた他の星間国家が補給用に『建てさせた』宇宙要塞かもしれんな」


 第二星系と銀河共和国第四十七星系を行き来するのに、ちょうど邪魔になる位置にある。

 この宇宙要塞に小規模な艦隊を駐留させるだけで、俺たちの商売を邪魔できるだろうな。


「ギョーショー。第四十七星系の状況は分かるか?」


「例の『ミミズ』より小さな『ミミズ』が何匹か現れて、少なくとも一匹が星系外へ逃亡したようなのです」


「銀河共和国の艦隊が迎撃に失敗したのか? 『戦艦』もいるのに?」


 俺は驚き、少し大きな声を出してしまった。


「艦長。艦には攻撃力と防御力はあるが小回りは利かぬ」


「……ランス級で倒せたのは、姫さんが最初に傷をつけて動きを鈍らせることができたからか。厄介だが……これは使えるな」


「危険な魔王の剣を管理できていないから、銀河共和国の代わりに銀河帝国が管理するっていう理屈ですね! さすがポーターさん! 性格わるいのです!」


 どう考えても煽っているようにしか聞こえない言葉を、本気の笑顔と賞賛の態度でギョーショーが口にする。


「この程度常識だ常識。……エルザが共和国側の交渉人として出てきたら交渉で負けるから、姫さんは交渉前にエルザの引き抜きを頼む。それと……ギョーショー、あの要塞の法的な所有者は誰か分かるか」


「宇宙海賊のフロント企業です。最近の資金の流れが怪しい……あ、これ、結構遠くの星間国家から資金が流れてるのです!」


 敵を増やしたくはない。

 特に、星間国家規模の敵はな。

 だがこの宇宙要塞は本当に『ちょうどよい』場所にある。

 ランス級を集結させて、物資を運び込んで補給をさせて、『剣』を奪うために銀河共和国に攻め込む拠点としては理想に近い。


「艦長。あの要塞を攻め取るつもりか? ある程度外殻を壊してからでないと、私でも内側に突入するには時間がかかるぞ?」


「あの要塞は『戦艦』並の攻撃力と防御力があるのです! 僕が売ってる兵器か艦を買ってからがおすすめなのです!」


 リゼもギョーショーも『今は』戦わないことを勧めてくる。

 しかし俺は、いや、俺だけでなく、この宇宙の船乗りたちの判断は違う。


「『戦艦』が恐ろしいのは、要塞の火力と耐久力を持ったまま超光速移動できるからだ。ただ浮いているだけの要塞なんて楽な的だ。占領して前線基地にできる程度にな。……いけるな、お前ら」


 通信が繋がったランス級の艦長たちが、獰猛な、満面の笑みを浮かべた。

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