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借金持ちの輸送艦長、うっかり銀河皇帝になる ~配送中の石像が伝説の姫騎士(バーサーカー)で、俺の借金返済のために銀河を征服してくるんですが~  作者: 星灯ゆらり
第三章 姫騎士に魅了された超エリート総督と、宇宙を駆けるヤンデレ魔剣の襲来

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ヤンデレ魔剣、恋敵のヒートソードに敗れて『アクセサリー』へとクラスチェンジする

 『ミミズ』の死体が淡い光に包まれた。

 ギョーショーが目を強烈に光らせて興奮し、銀河帝国と銀河共和国の人間が戦いに忙殺される中、リゼだけが懐かしそうに見ていた。


「死体の質量が完全に消滅しました! 超光速移動でも位相跳躍でもないのです! これは世紀の大発見なのです!」


 ギョーショーの頭の上の空間が少し歪んでいる。

 いや、これは歪んでいるのではなく、ギョーショーの頭が強い熱を持った結果か。


「ダンジョン深層の格を持つモンスターだ。良いドロップが期待できるはずだぞ。……あの頃は、強力なマジックアイテムやポーションより、清潔な水や布が欲しかったがな」


 リゼは遠い目をして、背中の光の翼は『へにょん』と力が抜けていた。

 そんなやりとりの間も戦いは続いているが、その展開は一方的だ。


 『巡洋艦』とはいえたった六隻のランス級でも、リゼの援護があればほんの数秒で、援護がなくても一分間もあれば無傷の『ミミズ』を倒せるのだ。

 艦の数が多いだけでなく一隻に搭載された兵器も多い駐留艦隊は、銀河帝国から見ると『贅沢にもほどがある』弾薬とエネルギーを使って『ミミズ』の群れを押し止め、仕留めていく。


「直方体の物体が出現しました! 宝箱なのです!」


「ランス級が倒した死体から現れたものだけ回収しろ。姫さん?」


 俺はリゼに確認をとる。


「罠がある可能性はあるが、ダンジョン深層産でも、この時代の『シールド』を貫通する威力はないはずだ」


「回収の際にはトラクタービームを使え! 箱も高値で売れる可能性がある。戦闘後でも気を抜くなよ」


 ランス級に乗り込んでいる連中は元海賊や元自警団だ。

 前職のノリで行動しないよう、注意しておく必要がある。


「総司令。あの『剣』の回収は可能でしょうか」


 一番早く『それ』に気付いたのはエルザだ。

 言葉も態度も柔らかいが、意図は素晴らしく分かり易い。


「全力を尽くします。国民の安全が第一でよろしいでしょうか」


「無論です」


 『ミミズ』包囲網の中から、数隻の『駆逐艦』が離れて『剣』に接近する。

 魔王の剣という凶悪な存在ではあるが、エルフ族が想像を絶する時間受け継いできた過去の遺物でもある。

 遠距離から大火力で破壊、という行動は、即座には無理なのだろう。


「姫さん。所有権を主張しないでいいのか?」


「この宇宙が私にとっての未来なら……ややこしいな。エルフ族にとっては、私を倒して手に入れた戦利品だろう。今さら返せというのは、騎士として恥ずかしい」


「リゼさん! 今から戦利品にしちゃ駄目なのです?」


「おまっ、ギョーショーっ! 姫さんを焚き付けるんじゃない! 共和国の連中が殺気立ってるだろうが!」


「待て。殺気立っているのではない。あれほどの戦闘力の持ち主と戦うことを考えれば、訓練された軍人でも冷静ではいられないだけだ」


 駐留艦隊総司令は冷静だ。

 だから俺も、少し落ち着いて考えて発言を続けることができた。


「で、どうする姫さん」


「うむ! 色々考えたが、どうやらインテリジェンスソードになり、自らの意思で行動できるようだ。ならば生き方は自分自身で決め、その結果は自分自身で引き受けるべきだろう」


 リゼは停止したままの『剣』に、優しげではあるが甘さのない目を向ける。


「いいのか?」


「ギョーショーと出会う前であれば私が全てを引き受けようとしていたかもしれん。だが、機械であるギョーショーもひとりの人間なのだ。お前だけを特別扱いはできぬ。……達者でな」


 リゼはそう言って、十分に冷えたヒートソードを鞘におさめようとした。


「目標が活動を再開しました!」


「目標へ接近中だった『駆逐艦』の乗組員全員が気絶しています!」


 艦橋が悲鳴と混乱に包まれる。

 それをもたらした本人(?)である『剣』は、瞬間移動じみた速度でリゼに迫り、ヒートソードの代わりに鞘に収まろうとしている。


「やめぬか!」


 リゼが止めようとするが、攻撃ではないので『剣』は止まらない。

 『やめてたまるか』とか『そこはわたしの場所』とかの感情が、テレパシーじみた何かで『剣』から撒き散らされる。


「耳を手で塞いでも無関係か」


 俺にとっては『うるさい』だけだったが、エルザもそれ以外も『めまい』に襲われたようだ。

 なお、ギョーショーは何も感じていないようで不思議そうにしているし、リゼには『聞こえて』はいるようだが体調不良の気配はない。


「ここまで謎生物っぽい武器は初めて見ました! 契約国連合の研究部門が知ったら、建造コストバカ高な銀河間連絡船を超速で建造して、こっちの銀河へ乗り込んで来るかもです。……えっと、そのときは確実に侵略になるので、早めの降伏をお勧めするのです。あいつら、研究対象に夢中になると、中央の言うことも聞かないのです」


 ギョーショーに冷や汗を流す機能はないと聞いている。

 うろたえたように目を点滅させながら『わたわた』するギョーショーには、嫌な方向性の説得力があった。


「勘弁してくれ」


 俺は強い痛みを感じて腹をおさえる。

 リゼは『剣』の柄ではなく刃の部分を手で押さえ、考え込んでいる。


「利益にならぬ戦争などしたくはないな。……ふむ。マジックアイテムではなくダンジョン最深部のモンスターと考えれば……」


 シリアス顔のリゼの背中で、久々に神々しく輝いた翼が大きく広がった。


「そういう事情なら仕方あるまい。私についてくるがよい」


 その瞬間、何かが起きた。

 『剣』は直前までと変わらずリゼの至近にあるのに、その存在感が激減している。


「私の剣を鋳つぶして材料にしたか」


 リゼはヒートソードを鞘におさめ、動かなくなった『剣』をランス級の装甲に突き立てる。

 そして、少し前までは存在しなかったはずの、自らの目の前に浮かぶ小さな金属片を、両手でそっと、抱きしめるように捕獲する。


「御苦労」


 その言葉で、魔王の剣による騒乱の第一幕が終了する。

 ほんの少しだけ小さくなった『剣』を巡って第二幕が始まるのは、俺たちがこの星系から出発してからの話になる。



  ☆



「すぐに出発したかったんだがな」


「艦長。長い距離の航行では、最初の防疫も重要だぞ」


「それはそうだが……」


 ここはギョーショーの大型輸送艦だ。

 ランス級の乗組員の一部が俺たちとともに訪れている。


 リゼがギョーショーに問う。


「兵士たちに何か仕込まれていないか確認したい。ギョーショー、可能か?」


「どの程度詳しく調べるです?」


「予算と時間の制限もあるだろうが、できるだけ詳しくだ。ランス級は特に優れた艦だと聞いた。乗組員を騙したり脅したり買収したりハニートラップで絡め取ったりするのはよくあることだろう」


 リゼは強いだけでなく頭もまわるな。

 俺は全く思いつかなかった。

 リゼはダンジョンにたどり着くために密航したという話だから、ハニートラップの経験もあるのかね?


「まあ、ハニートラップは私は未経験だ。一度試みたがエルフの船長に恐怖で失禁されて、私のトラウマになってな」


 リゼ本人は真面目な顔だが、光の翼が『しょぼん』とした。

 リゼの首のネックレスが『エルフの船長』に対する怒りを動きで表現する。

 まるで生きているかのようだ、ではなく、実際に『生きて』いるんだろう。

 別銀河のおっかない連中にバレると危ないんだから、大人しくしていて欲しいぜ。


「んー。だったら、一度健康診断しちゃいます? 諜報活動では薬とか肉体改造とか小型機械を体内に入れるとか色々あるですから、この際まとめて検査しちゃいましょう!」


「ふむ?」


「ギョーショーお前、そんなことまでできるのか?」


 リゼと俺が視線を向けると、ギョーショーは三頭身の体で得意げに腕を組んで『ふふん』と笑う。


「機械人間をなめないでくださいなのです! 二日酔いの治療からパワーアップまで、なんでもできちゃうのです!」


 非常に調子に乗っているギョーショーを見た俺は、慎重に『健康診断』を進めることに決めた。


「ちくっとしますよー!」


 それから十数分後。

 『病室』が船倉から引っ張り出され、『健康診断』が開始される。


「あの、痛くないんっすけど」


「あれー? あっちの銀河でしたときはめちゃくちゃ文句言われたんですけど」


 ギョーショーの言動は相変わらず軽いが、体の調査と治療の速度は凄まじい。


「嘘っ。体が軽いっ」


「今ならいくらでも酒を飲めるぜぇ」


「ありゃ? 俺、なんであんな女に貢ごうとしてたんだ?」


 脳を含む臓器の治療を、とんでもない速度で劇的に成功させていく。

 なお、帝国軍兵士は男の方が多いが女もいる。

 かなり『むさ苦しい』連中なんだが、治療を受けた後は異様に肌艶も良くなったような気もする。


「それじゃ次はリゼさんですよー」


「うむ。頼む」


「……折れたのです」


 針状の細胞採取装置が、リゼの肌に負けて壊れた。


「姫さん、軍人……じゃなくて騎士だったんだろ? 一度も負傷しなかったのか?」


「艦長。私は決して無敵ではないぞ。毒をまかれて苦しんだこともあるし、魔力制御が甘かった頃は怪我もしていた」


 リゼの方から『にゅんっ』と光の翼が現れる。

 自身の圧倒的な防御力を誇るかのように『きらり』と自ら光った。


「えーっと、じゃあその『魔力』を減らしてください!」


「こうか?」


 光の翼が全力で縮こまるが、それでも大きい。

 リゼ本人は気付いていないようだが、尖った『針』に視線を向けようとしない。

 二本目の『針』は壊れはしなかったが、リゼの肌を突き刺さることができずに表面を滑った。


「リゼさまは天使だったのね」


 圧倒的速度で仕事を終わらせて合流したエルザの発言だ。

 黙っていれば典型的エルフ美人、澄まし顔の冷たい印象の美形なエルザが、憧れと欲と快楽に染まった『成人向け』な表情と雰囲気だ。


「天使を殺したことはあるが……いや、今のは忘れてくれ。ダンジョンの中での話だ」


 またダンジョンか。

 普通ならファンタジーすぎてリゼの妄想を疑うところだが、リゼの言うダンジョンよりリゼの方がファンタジーなんだよな。

 そんな俺の思考は、直後のリゼの発言で文字通りに吹き飛んだ。


「ギョーショー。私と艦長の間で子供が作れるかどうか分かるか?」


 えっ。

 それは、どういう意図での発言だ?


「作れないんですか? ふたりとも肉人間さんですよね?」


「精密な遺伝子検査をして初めて『作れない』ことが判明することがあるの。……あの、リゼさま。何もこの男を相手にしなくても」


 エルザは極自然に俺を下げてくる。

 まあ、生まれが良かったとはいえ実力で星間国家の高官になったエルザからすれば、リゼに巻き込まれて成り上がった俺は物足らない相手なのだろう。

 実際、俺も強く否定はできない。


「五体満足で戦いを終えられるとは思っていなかった。ここは私にとっての新天地だ。同族と子供を作れるなら作りたいと思うのは自然だろう?」


「あの、いえ、人間のお相手が必要でしたら私が用意させることも……」


「両親の細胞がひとつずつあれば子供は作れますよ? あっ。ひょっとして自然妊娠でしか子供は作っちゃ駄目な社会です? だったらごめんなさい」


 ギョーショーは珍しく真剣な表情で、深々と頭を下げた。

 なお、三頭身なのでバランスがとりづらいというより謝罪慣れしていないようで、転がる寸前にリゼに助けられていた。


「ねえ、ギョーショーさん。それは、性別や種族が違っても可能なのかしら」


「あっちの銀河基準だと、この場にいる全員、僕を除いて全員肉人間です! 当然可能です! 種族が違うときと比べると超イージーなのです!」


「詳しく、聞かせて頂戴」


 目を血走らせて、表情だけは優しく、有無を言わせぬ手つきでギョーショーを捕獲する。

 銀河帝国における『最優先スカウト対象』であるエルザを止める理由も止めようとする帝国人も存在せず、ギョーショーはエルザに連れて行かれる。

 去って行くエルザが一度リゼに視線を向けたとき、リゼが『びくっ』と体を震わせ、光の翼もエルザを警戒していた。

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