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常識外れの戦法にドン引きする機械人間と、正規艦隊に「物理」で激突する元海賊たち

「ポーターさん! 艦隊はどこですか!?」


 ギョーショーが目を『ぴかぴか』光らせている。

 帝国軍宇宙艦隊が集結すると聞いて、全ての予定(冷却水プールでの水浴びや宇宙港でのコンサート鑑賞)をキャンセルして『フリーキャッスル』に詰めかけたのだ。


「集結は終わっているぞ」


「うむ。砦や城の大きさの艦がこれだけ並ぶと壮観だな」


 宇宙港に比較的無防備な背中を見せる形で、物騒なデザインの艦がずらりと並んでいる。

 もとは単艦や多くても数隻で構成されていた宇宙海賊(一部は自称自警団)の艦ばかりだが、装甲、兵器、推進機を可能な範囲で統一したので、予想より統一感がある。


「まさか、あの小舟の群れが艦隊なんですか!?」


 ギョーショーが『よろり』と体勢を崩す。

 短くふっくらとした指が、それぞれの艦を指差すたびに、ギョーショーの混乱の度合いは増していく。


「星間国家の正規軍と比べれば小さいが、辺境では非常識な大戦力だぞ」


 一つの兵器だけを強力にした一点豪華主義の艦隊ではない。

 数多くの敵と戦うだけでなく、戦いを繰り返しても修理して戦闘能力を保つことを重視した『戦い続けるための艦隊』だ。


「ミサイルはもっと積みたいんですがねぇ」


 文句もゼロではない。

 一隻の艦長に抜擢された小柄な機動兵器乗りは、予備の少ないミサイルに不満顔だ。


「敵の『シールド』を撃ち抜くためだけに使えばそれで十分だろ。正規艦隊相手に威嚇は通じん」


「元自警団に要求がきついですぜぇ。しかし初戦が人類保護機構たぁ、さすが陛下ぁ!」


「へへっ。助けた奴らを守ってクソどもと戦うなんて、まるでホロムービーのヒーローっすね!」


「馬鹿言え、ヒーローじゃなくて宇宙帝国さっ!」


 星間国家の遊撃艦隊を丸々一つ相手にするという状況なのに、帝国艦隊の雰囲気は悪くない。

 リゼも満足そうだ。

 唯一不満、というより狼狽しているのは、ギョーショーだ。


「あらかじめ知ってたら僕の船にある兵器を売ってましたよ! それになんですあの『シールド』! 位相障壁と比べたら大きいだけで柔らかすぎです!?」


「ギョーショーはギョーショーの艦の中にいろと言ってるだろ。俺たちの国に肩入れしてくれるのは助かるが、戦争にはノータッチにしとけ」


「むむっ。僕は大人ですよ!」


「大人なら最初の賭けで全額使おうとするなってことだ。……契約国連合がこっちの銀河に関与してくるならギョーショーに頼ることになる。自由に動ける立場を維持しとけ」


「好き勝手に動いていいってことですね! 僕、そういうの得意です!」


 ギョーショーは上機嫌だ。

 俺は頭が痛くなった。


「偽ニュースと挑戦状でどれだけかかったか理解してるか? 星間国家とまともにやりあうよりはマシだが、『フリーキャッスル』を売り飛ばしても足らない額だからな」


 俺が銀河帝国の皇帝だからまだ『返済』だけですんでいる。

 皇帝だからそんなことをすることになったとも言えるが、あんなのを放置するよりはずっとマシだ。


「見つけました! あの星系です!」


 ギョーショーが騒ぐ。

 ARメガネに表示される『借金額』がまた増える。


「人類保護機構の遊撃艦隊が、現地の宇宙港から出港中です。僕を追いかけ回していたときより多いです! 倍くらい!」


「全力出撃か。『戦艦』はいないが重武装の『巡洋艦』が三隻に、重装甲の輸送艦が六隻。後は『駆逐艦』が二十隻以上か」


 銀河帝国を一撃で終わらせるつもりだろう。

 それはこっちも同じだ。

 ここで、遊撃艦隊を仕留める。


「ふむ。大規模な艦隊戦なら、私が直接敵艦に乗り込むのは難しいか」


「姫さんでも複数の『巡洋艦』から集中射撃されたらさすがに死ぬだろ。勝てる相手と戦ってくれ」


「ふふ。馬鹿にされたと怒るべきかな?」


「『巡洋艦』複数じゃないと殺せないってのは、生身の人間に対する評価としては異次元の高評価だと思うがね」


 俺とリゼは視線を交わして『にやり』とする。

 ふたりと一隻で始めた旅は、ずいぶん賑やかになった。


「ふたりだけ仲良くしていてずるいです!」


 ギョーショー声が、元気に響いていた。



  ☆



「亜人どもに裁きを!」


 偽情報とか偽報道とか色々言っていたが、人類保護機構の言いたかったことは結局これだ。

 星系外縁で輸送艦による補給を終えた遊撃艦隊が、一部を輸送艦の守りに残し、三隻の『巡洋艦』を先頭にした三列縦隊で進撃してきた。

 速度は高速の一割程度。

 俺たち帝国艦隊も同じ速度で迎撃に向かうから、進撃開始から戦闘可能距離まで約一日ってところだ。


「遅いですー……」


 出港直後は騒いでいたギョーショーからは完全に気合いが抜けている。

 まあ、ギョーショーがいるのは宇宙港に停泊中の大型輸送艦(少し前に停泊許可が出た)で、超光速通信で帝国艦隊の視界から見たり、俺たちと話したりしている。


「位相跳躍なら星系内でも超高速なのにー。僕のお船にも在庫があるんですよー」


「修理施設も建造施設もない超光速機関なんて買えるか! しかも足元を見たとんでもない価格だったろう!」


「技術差と輸送費を考えると相場だと思います! ギョーショーちゃん、運ぶのたいへんでした!」


「ふたりともそこまでだ。始まるぞ」


 帝国艦隊は『フリーキャッスル』を中心にした『ごちゃっ』とした隊列だ。

 球形ですらなく、無秩序な賊の群れにすら見える。

 数は『駆逐艦』級が十四隻、戦闘用の装甲とレーザーが搭載された輸送艦が一隻だ。

 『巡洋艦』三隻と『駆逐艦』二十一隻の敵より、明らかに劣勢だ。


「敵がミサイルを発射したぞ」


 三列縦隊が一つに意思を持つかのように広がり、うねり、ミサイルをばらまく。

 数が非常に多い。

 レーザーで破壊しても残骸はそのまま前進するので、帝国艦隊がレーザーで迎撃しても『シールド』への甚大なダメージは確実に思われた。


「餅は餅屋だったか? 俺は実物を見たことはないがな」


「ギョーショーちゃんもです! こっちの銀河と比べて水汚染が酷くてですね、手間のかかる食料がすっごく高いのです!」


 俺はギョーショーと雑談をしながら『ギョーショーから購入した計算機』を使って艦隊のレーザーを操作する。

 『フリーキャッスル』だけでなく、『駆逐艦』が十四隻を含めて俺の手足のようにレーザー砲が動く。

 ギョーショーにとっては『お小遣いで買える計算機』が、俺たち帝国にとっては『帝国艦隊がもう一セット揃えられる値段の超性能コンピュータ』に匹敵する能力を持っていた。


「あんな超光速が可能なのに水の汚染を除去できないのか?」


「たぶん、ポーターさんたちがまだ見つけていない『汚染』です」


 レーザーの照射を開始する。

 AR眼鏡がレーザーの向きと出力を分かりやすく表示して、青の光が敵からのミサイルに直撃する様がよく分かる。

 ただの直撃ではない。

 ミサイルの推進機を『適度』にぶっ壊し、ミサイルを『残骸』ではなく『目標に届かない不良品』に変える『直撃』だ。


「すごーい! ポーターさん、これならパイロット養成校に入学できるかもです!」


「パイロット資格はもらえないのかよ」


「えっと、はい。ギョーショーちゃんが合格したのが奇跡な難易度なのです……」


 命と金のかかっていないシミュレーターの模擬戦では、俺とこいつの操縦技術と射撃技術は同程度だった。

 そんなギョーショーがここまで言うとは、さすが銀河規模の超大国だな。


「うひょー! 正規艦隊のミサイルを全撃破だぁ!」


「「「陛下ばんざーい! 帝国ばんざーい!」」」


 帝国軍はいつも通りだ。


「艦長! 進路はこのままで問題ない。衝突まで後十五秒!」


 『姫騎士』の涼やかな声が響き、俺も含めた全員がひしまった表情になる。

 これならいける。


「全弾ミサイルを発射しろ! 目標は三隻の『巡洋艦』だ! その後は突撃! 『巡洋艦』に艦をぶつけるのに成功した奴はそのまま『巡洋艦』に乗り込んで制圧しろ!」


「もともと乗ってた艦はどうしやす?」


「『巡洋艦』と引き換えなら安いもんだろ? 勝てば『巡洋艦』艦長とそのクルーってわけだ」


 元海賊たちが心底楽しそうに笑う。

 破滅的なのに、貪欲に勝利を求める気配が、艦隊全体を満たす。


「陛下はどうするんでぇ?」


「姫さんと一緒に『巡洋艦』にお邪魔するさ。ぶつけられなかった奴は『駆逐艦』相手に時間を稼げ。ついでに俺の『フリーキャッスル』も守ってくれよ!」


「うーん、蛮族。でもこういうの、中央の主力艦隊司令さんたちとか、謎生物さんたちは大好きだろうなー……」


「亜人どもっ、何を考えてっ」


 人類保護機構が何か言ってた気がするが、俺たちは特に気にせず突撃する。

 これまで温存していた推進剤を盛大に使っているので、速度も加速も十分だ。


 帝国艦隊と敵艦隊が衝突するより早く、敵艦隊にミサイルが到達する。

 一部は外れ、大部分は対空レーザーで迎撃され、大量の破片と少数のミサイルとして敵艦隊を襲う。

 巻き込まれた『駆逐艦』三隻が装甲ごと本体の一部を抉られて機能を停止する。

 『巡洋艦』は分厚い『シールド』で、被害を本体に届かせない。

 だが、それで、『シールド』は薄れて一時的に消滅した。


「うっひょー!」


「さすが陛下! 海賊より海賊してるぜ!」


 そして帝国艦隊が人類保護機構の遊撃艦隊に激突する。

 角度が悪くて弾かれた艦も多いが、衝突の瞬間絶妙に角度と速度を変えて敵『巡洋艦』に『突き刺さる』ことに成功した艦もある。


「艦長! 今だ!」


「おうよ!」


 俺は接触させない。

 極限の集中で『ゆっくり』近づいて来る『巡洋艦』の『シールド』発生装置と、狙える限りの推進器をレーザーを打ち込む。

 『シールド』が防御の中心だったらしく、予想より短い時間で発生装置も推進器も融け崩れた。


「艦長に白兵戦はさせたくないのだがな」


「正規艦隊の軍艦相手に遠隔のハッキングは無理だからな。白兵戦の役には立たないから、護衛、期待してるぜ」


「無茶を言う。だが、任せておけ!」


 宇宙服を着込んだ俺を肩にかついだリゼが、『フリーキャッスル』から飛び出し敵『巡洋艦』に『着地』する。

 ここからは時間との勝負だ。

 『巡洋艦』をクラックして無力化できれば俺たち帝国軍の勝ち。

 『巡洋艦』が耐え抜いて『駆逐艦』が反撃に成功すれば俺たち帝国軍の負け。

 勝負の時間だ。

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