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BLR15「ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました」  作者:


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35/52

三十五、黒いローブの男は(注意 暴力&暴言の表現あり)


  ――注意――

 暴力&暴言の表現あります。

 苦手な方はご注意してください。

 ――――――――



  「あうっ……!」

 床に顔がこすれて、背中を足でグリグリと踏みつけられている。


「みんな、お前が原因だ……」

 僕が、原因……?

「父がおかしくなっていったのも、母が死んだのも!」

「ぐっ……!」

 足に体重を乗せ、背中を踏みつけた。


「しっぽは、出さないのか? ちぎり取ってやるのに」

 ハハハハッ! 男は僕を踏みつけ見下して笑う。

どうして……。


 子供の頃を思い出して、体が(すく)む。

震える。いや……駄目だ! ――すべて、やめさせないと。


「ルカ!」

ドカドカドカ!

 アラン様が異変に気がついて来てくれた。鍵はかけてなかったので良かった。入口からリビングまですぐだ。

「ちっ……、面倒くさい」

 黒いローブの男はダルそうに、何かの魔法の詠唱を始めた。


「くっ! 駄目だ!」

僕はひじを床につけて上半身を少し起こし、うつ伏せの体勢からひねって、手のひらを黒いローブの男に向けた。

疾風(しっぷう)!」


「は!? え、うああああ――!」

手のひらから、強い風を出して男を吹き飛ばした。リビングからキッチンへ、男は背中から壁にぶつかって落ちた。


「アラン様!」

「ルカ! 大丈夫か!?」

急いで僕に駆け寄って来てくれる。腕を伸ばしてアラン様の手を取ろうとした。


「ルカリオン、お前さえいなければ! 父は獣人を憎むこと無く、獣人奴隷売買に手を染めなかった! 母も父に斬り殺されなかった!」

 男は叫んで、指先からバチバチと音を立て小さな稲妻を出した。

 それはあっという間に大きくなって、僕達に向けて放たれた。


 近い距離で放たれた、眩しい電撃は防ぐ間もない。

僕が出来るのは目を伏せることだけだった。



 バチンッッ!

一瞬、リビング中が眩しい光でいっぱいになった。


「?」

体に衝撃が来ない。この距離からだと、あの魔法が直撃する。無傷ではいられないはず……?


 そぉ……っと目を開けると、アラン様の背中が見えた。しゃがんで僕の盾になっていた。

「アラン様!?」

ゾッとした。僕をかばってあの魔法を体で受けた!?


「アラン様!!」

急いで起き上がって、アラン様の広い背中にしがみついた。

「アラン様! アラン様、大丈夫ですか!?」

どうしよう、どうしよう! 僕はどうすればいい?


 焦る僕の、肩にアラン様の大きな手がポン! と、乗せられた。

「大丈夫だ。ほら、見てみろ」

「え……?」

大丈夫? 大丈夫のはずはない! かなり強力な稲妻の魔法だ。ケガは!?

 

「指輪だ。この指輪のおかげで、俺は生き残れた。仲間も」


 指輪がはまっている方の手の甲を相手に向けて、アラン様は足の片方を立膝でしゃがんでいた。

 指輪から、魔法を弾く結界の盾が展開されていた。


「結界の盾……」

あれはあのとき、アラン様が『無事に帰って来られますように』と願ってつけた加護。

 無意識に色々な加護をつけた……。それがアラン様の命を守れた?


「だから、この指輪の創り手を探していた。もう見つかったが、な……」

 ニヤリと笑って僕を見た。


 ははっ……と力の無い、乾いた笑いが男から聞こえた。

「何もかも、うまくいかない……」

ユラリと、黒いローブの男は立ち上がった。かなりの怪我を負っている。

 

 動けば動くほど傷口が開いていく。また指をこちらに向けて、魔法を出そうとしていた。

「お前のせいだ」

 

「もうやめて! もうやめて、リオネス兄様(にいさま)!!」

 

 パリン……! と、口封じの魔法が解けた。身体中、痛みが走ったが夢中でリオネス兄様の名を呼んだ。

「ッ! 何だと……! 俺の口封じの魔法が!」


  

母様(かあさま)は最期に、リオネス兄様のことを呼んでた。『体が弱くて離れ離れになって、ごめんなさい』『リオネスとルカリオン、二人とも愛しているわ』『リオネス……! 最期に会えなくて残念だけど、いつも見守っているわ』と。僕が孤児院を抜け出して、最期に会って、穏やかな顔で逝ったよ……」


「……!」


「リオネス兄様……」

僕は知らないうちに涙を流していた。

「母様は僕達二人を心配していた。でも最期まで僕達を愛して、そして逝った」


『母様! 母様!』と何度も呼んだ。

けれどもう返事がないので、悲しくて。

 

 でも僕は、孤児院の皆や商店街の皆さんに優しくされて、頑張れた。

 もちろんアラン様に助けてもらったことは、忘れてない。国を皆の平和を守ってくれたこの人を、誇りに思う。

  

「はっ……? いまさら何だよ……。俺は、俺達は母様に()()()愛されていたのか……」

 ヨロヨロと壊された勝手口に歩いていく。

「俺は、馬鹿みたいじゃないか」


「調査した所。君の父君は、獣人達を奴隷として売買していた。もう拘束されるだろう」

 アラン様が立ち上がり、兄様に話しかける。

「だが君は、獣人や人間の子供達を管理はしていたが売買はせず、逃がしていたと報告があった」


「兄様……!」

 逃がしていた?


「父君よりは罪が軽くなりそうだ。事情を聞きたいので、同行してもらえないだろうか?」 

アラン様は穏やかに伝えた。でも隙がなくピリピリと威圧感があった。また魔法を使えば、さらに罪になる。


「ルカリオン」

 兄様が僕の名を呼んだ。

「はい」


 しばらく僕を見つめて、口を開いた。

「その母様譲りの、緑の瞳がうらやましかった。お前が半獣人と分かる前は、仲良かったな……」

傷口から赤い血が床に色づく。

「兄様、傷口が!」

  

「あの日、私は学校にいて家にいなかった。母様は切られて深い傷を負っていて、ルカリオンは半獣人の半端者と父に教えられた」

 兄様はかすかに笑っていた。泣きそうな顔だった。


「あまり母様に会えないまま、逝ってしまったから……」

 悲しみをお前にぶつけた……と兄様は呟く。

 

「みんなお前のせいだ、と思わなければ生きて行けなかった……。ごめんな、ルカリオン」

 


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