12 スキル発動
陽悠はあまりの頭の痛さに気を失ってしまったらしい。
次に目覚めた時に視界に入ったのは傷んだ木の天井だった。
「ここは?」
陽悠はまだ少し痛む頭を手で押さえながらゆっくりと起き上がる。
辺りを見回すとそこは小屋のような場所だった。
光は差し込んでおらず暗いため、今は夜なのだということが分かる。
周りに兄弟の姿は見えない。陽悠は不安になり、布団から立ち上がり、兄弟の姿を探そうとした。
しかし、急に立ち上がったため、眩暈をおこし、盛大にこけた。
ガタンという音が響き渡り、陽悠に鈍い痛みが襲う。
「大丈夫か!?」
陽悠が転んだ先から起き上がろうとすると、月冴が慌てて扉から飛び出てきた。
「大丈夫です」
陽悠がとっさに言葉を発し、何事もなかったかのように立ち上がろうとした。
しかし、それは叶わず、やはり起きたばかりで頭がまだ覚醒していないのか再び体が揺れた。
月冴は陽悠の身体を素早く支える。
「おい、体調が悪いなら無理をするな」
月冴はそう言うと、陽悠を抱え、布団に戻らせる。
布団に戻り落ち着いたのか、陽悠はハッとして、ここはどこか尋ねた。
「陽悠が倒れたすぐの場所だ。この簡易な小屋はカイが作った」
「そう、ですか」
陽悠はそう返事をすると、布団から起き上がった。
そんな様子の陽悠に月冴は、陽悠の身に何が起こっているのかを尋ねた。
「ただの船酔いの延長線上の体調不良ですよ、なんて言ってもごまかせませんよね」
「ああ、俺は医者だ。陽悠の身体の事はお前より知ってるよ。あと敬語。俺しかいないのに敬語を使うってことはなんか隠してんだろ」
月冴はそう言うと、陽悠の頭をなで、「翔愛と永遠を読んでくる、洗いざらい話せ」と言って立ち上がった。陽悠は「わかった」とだけ言い、その返事を聞いた月冴は小屋を後にした。
しばらくすると、月冴が翔愛と永遠を連れて戻ってきた。陽悠はそこで頭痛の原因であるスキルについて話した。
「え?!陽悠兄スキル使えんの?!使ってみてよ!」
スキルについて話した翔愛の最初の一声は、歓喜だった。
月冴は、陽悠がスキルを使うことによって起こる可能性がある体調不良などの危険性があるため、スキルを最初に発動する時には自分と一緒の時にしてくれという話だった。
永遠は、目をキラキラさせて「いい、な」の一言だった。
陽悠はそれらに対し、笑い、安堵の表情を見せた。それはきっと、無意識だろう。陽悠はスキルが使えるようになったという事実が兄弟たちにどう受け止められるのか不安だったのだ。
「それなら、今使ってみましょうか」
無意識の不安を解消した陽悠は軽やかだった。
――『スキル 助手 発動』