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---86--- マムラ王国 城の仕掛け確認!

 ラナ王国からマムラ王国に伝令役として放たれた使者であるカイ・テテラは早朝から見てはいけない光景を目撃してしまった。


 早馬の足に魔法を施し移動速度を上げ、フジイデ王国領内を横切り通行出来る一時的な許可紋章を手に入れ、領土内を抜けきり無事、マムラ王国付近迄到着した。

 地図には未だに関所の位置が掲載されていない。いや更新されていないだけだと思い通常どの国でも関所を置いているであろう北側を目指し馬を走らせる。

 幸い国境結界は川を挟んで設けられているので川沿いに進めば丁度マムラ王国の北側に出る地形になっている。

 あと半日も走れば、今日のお昼頃にはマムラ王国に着けると思われる距離まで来た頃、前の河原付近から土煙等が上がっているのを発見する。


 発見したと言っても直線にして二十キロは離れている。通常の視界では捉える事は不可能な程の土煙だ。

 なら何故気付けたかだが、答えは簡単だ。この者の左目には魔法で遠くのモノを近くに見せる魔法を施しているのだ。

 コレは暗殺部で培った技術だ。早い段階で敵の位置や行動を(つぶさ)に把握し先手行動に移す暗殺技の一つである。


 この魔法の効力は約二十キロまでと離れた個所にあるモノを、あたかも近場前方二キロ前後に有るかのように見る事が出来るもので、移動の際はこれ程便利なものはない。

 移動中に片目の視界がそんな状態では動きにくくないのかと思うかもしれないが、暗殺技術として訓練で身に付けたカイ・テテラにとっては、この片目の視界だけが違う事が自然な事なのだ。


 土埃を目撃したカイ・テテラは乗って来た馬を躊躇する事なく森の中に放ち馬を捨てる。

 河原にある巨大な岩の後ろに身を隠し、手持ちの覗き筒(小型で持ち運び可能な「L字型」潜望鏡)を取り出し岩陰からソレだけを出し左目で覗き込む。 大抵の人族以外の種族は気配感知という特殊な能力が有り距離が離れていても感知出来る事を知っているので、体温感知する者が居ては、体温の高い馬が居ると不味いと思い先程咄嗟に馬を捨てたのだ。


 そこに映し出されたのは、魔族と思しき者が陣を取り何やら反対の森目掛けて突進をしているようだった。その突進行為が土煙の正体だ。


 幾ら自分が自国内で暗殺部隊に所属し、各国の要人で魔族も特殊な武器と魔法道具を使い数人暗殺した経験はあるが、あのような軍勢に発見された場合、脆弱な人族の身で、四方八方囲まれれば、一瞬で屠られるのは容易に想像出来た。

 所詮は脆弱な人族なので魔族相手でも、奇襲に成功し一対一で、それなりの武器や道具を持たない限り勝ち目等は端から無いので、これより先に進む事は危険と判断する。


 しかし訪れようとしているマムラ王国はあの集団が居る辺りで間違いないはずだと、地図を再度確認し目測で距離を測り辺りの地形と地図を照らし合わせる。


 そんな事をしていると、マムラ王国のある位置から数名が追加で現れ早朝から夕暮れ時迄の間、激戦が繰り広げられた。 それを唯々息を潜め岩陰から観察する事しか出来なかった。 今自分が此処で一歩でも動けば相手に気配を探られ攻撃されるかもしれないと思うと恐怖で身動きが出来なくなり、この巨大な岩から一歩も離れなられなくなってしまう。


 長時間信じられない破壊力のある戦闘を見せられて、もう使者としてマムラ王国に行くのがどれだけ危険な事なのかと痛感する。 あのフジイデ王国はどうやってあの者達と同盟を結び対話をしたのだと尊敬の念が生まれる。


 もうこの場から逃げ帰りたいという思いでいっぱいになる中、誰もいなくなった河原を見ながら今後どうすべきか悩んでいると二名の男が前触れも無く忽然と姿を現した。 遅れて女性一名が現れた瞬間、手持ちの覗き筒(小型で持ち運び可能な潜望鏡)に映るその女性と目線がばっちり合う。

 その表情はもう見透かされていると思えるぐらいだ。

 悲鳴をあげてしまいそうになる自分を必死に抑え、ゆっくりと手持ちの覗き筒(小型で持ち運び可能な「L字型」潜望鏡)から目を離し、岩陰にピッタリと背を付け息を殺す。

 ココまでの距離を気配感知出来る生物はいないと教わっているが、アレはもう気づいているそんな目線であったのだ。


 一つ息を小さく吸った瞬間全身に氷水を掛けられたかのような悪寒が走る。

 そして気付かれていたっと思い恐怖が全身を駆け巡り身動きが取れなくなる。


 しばらく身動きが取れず居ると大きな破壊音が聞こえる。ふと右側に目線を向けるとゴリゴリの男が吹き飛ばされて来ていた。

 その男と目が合うが相手は興味の無いモノを見るような目線を一瞬向けた後その場から忽然と姿を消しさった。 もう生きた心地がしない。 出来ればあの場で一思いに屠ってくれたらどれだけ救われた事かと思うと同時に足に力が入らなくなりその場で座り込んでしまう。 冷たい砂利に臀部が当たっているので大地の冷えを直接肌で感じられている事が、またより一層今生きていると実感出来恐怖にかられるのだった。


「もういや・・帰りたい」


 心底そう願った言葉だろう。 重みがある。 もうそれ以上、動く事も引き返し国に戻る事も叶わない。 暗殺部隊で幾多の死戦は経験しているが、それすら赤子の夜泣き程度ではないかと思える位「行くも死」「逃げ帰るのも死」っと思える程に極限な状態を今味わいながら、その場で一晩を明かすしかないと思いながら、明日自国の者達が自分より早くマムラ王国に到着してくれないかと切に願うのだった。


 光源が月明かりしか無い、闇と静寂が支配するそんな時間、川の流れる音に交じって突如女性の声が自分に向けられる。


「ね~キミは何者かな~迷子さんかな~夕方もソコに居たよね~。

 一応ココで~野垂れ死にされるのは~困るんだよね~」


 何とも耳障りの良い美声なのだが何処か変な間延びをした口調で話す者は誰なのか?っとその人物を確認する為、周囲を見渡すが誰もいない。

 一瞬今日は極限状態なので夢を見て幻聴を聞いたのだと思い視線を下げる。 視線の先自分の足元に月明りに照らされて出来た人の影が映っているのを発見する。


 慌てて目線を上空に上げる。


 上空に月明かりに照らし出され、正に「美」っと呼称してもおかしくない綺麗な金髪をなびかせた女性が浮いていた。 先程夕方に目が合った者だと、一瞬で理解する。 そしてココで自分の命は恐らく終わりを告げるのだと思い体が勝手に恐怖しガクガク震えだす。


 ゆっくりとその浮遊していた女性(ルル)が眼前に降りて来る。

 恐怖に身を支配されているが、その美を見なければ損だと目で追い、自分の容姿等足元にも及ばないと心で嘆きながら息を飲む。


「あれ~喋れないのかな~・・・」


 顔を覗き込み見つめてくるその瞳は虫けら以下の者を見る、そんな瞳をしていた。 そしてその目は早く答えないと躊躇なく屠りますと言っているような感じを受ける。 目線を外し相手の手元に自然と目線を落とす。 右手の甲に王族紋章が刻み込まれている。 これでこの者がこの地域の国の王族である事が分かったが、その紋章がどの国の者なのか分からないので、どの国かを特定する為に右手の甲をじっくり観察する。 その視線に気づき見えやすいように手の甲を向けて確認させてくれる。


「ふふふ、コレ気になるの~。 この紋章はね~そこにあるマムラ王国って国の王族の紋章なんだよ~。 これはね~この世界に在るどの国のよりも価値のあるモノなんだよ~キミはそれが見れて凄く幸せだね~」


 実に嬉しそうにしている。 まさかこの様な国外で使者として送り込まれる国の王族と出合うとは思っていなかった。 すぐさまその場でひれ伏し詫びを入れる。


「御身が王族の方である事に気付かず、ひれ伏す事を怠り佇んでいたご無礼をどうかお許しください。 そしてどうか一つ私めの願いを聞いていただけませんでしょうか」


 本来王族相手に、このような事をすれば、他国の民であろうと殺されても文句は言えない。

 だが、もう自分はこの場から一切動けない、いやこれより先へ行く勇気が無いのだ。


「う~ん、私ね、今機嫌が良いけどね~キミに全く興味ないんだよね~。

 身形からして魔法職をやってるんだね~そしてキミから死臭がするから暗殺者って所かな~でも使者として送り込まれたって方が正しいかな~って思うんだけど、どう違うかな~?」


「はいそうです。 ご洞察通り私は我国「魔法戦術国家、ラナ王国」国王で在らせられる「リンテ・ラナ」国王様より、御国「全種族間交流国家、マムラ王国」マムラ・シアキ国王様宛に伝令クリスタルを届けるべく参上した使者で御座います。どうか・・・」


「う~ん、うん、やっぱり興味ないや~。 あ・し・た~そこの北関所にお昼前に来たらいいよ~。 それまで死なないでね~この辺り結構モンスターが居るそうだよ~」


 そう言い残すと忽然と姿を消してしまった。 転移術?そんな装置がこの場所に設置されていたのかと辺りを探るが何も術の痕跡も無いかった。

 先程の王族女性(ルル)の言葉で明日の昼前に北関所まで行けば、あの方が取り次いでくれると思うだけで折れそうになっていた心が回復脱力し安心感が生まれそのまま眠りについてしまった。 一応ルルはこの場で死なれるのは面倒だと思いモンスターを寄せ付けない様に殺気を少しばかり残して去って行ったが、それには使者のカイ・テテラは全く気付いていない。


 一方転移でルルは天空露天風呂に戻り、備え付けの椅子に腰かけ、右手を天にかざし手の甲を眺めうっとりしている。

 今日は気持ちが高揚しており、演技で寝る気分では無いので、仲間達が寝静まったら頃に、少し抜け出し夜の散歩をしていたのだ。

 そしてレレが生者の居る空間に少し嫌気がさしたのか、外の空気を吸いに来たのかは不明だが、ルルの前に転移で現れる。


「お姉様、どちらに行かれておられたのですか?」


「う~ん、ちょっとね~外を散歩してきたんだよ~」


 隣に座りレレも右手の甲を左手で優しく撫で眺めている。


「お姉様、(わたくし)、少し変なんです。少しお話を聞いて下さいまし」


 真剣に悩んでいる時の表情をしているので、聞く態勢を整え座り直してレレの方を見る。


(わたくし)、このままでは、お義兄様の仲間以外の劣等種や生者に全く嫌悪感を抱く事なく[ア]の一族として・・いえ、冥神族として腑抜けてしまうのではないでしょうか?。


 トカゲっ娘(フェンラ)だけが、特別と思っておりましたが、最近、他の者達と過ごしていても以前の様な強烈な嫌悪感や苛立ちを抱く事がなくなってきていますの・・(わたくし)、このままでは・・・。

 恐らく今、トカゲっ娘(フェンラ)達を躊躇なく屠る自身がありませんの、情けないですがそんな気がしますの」


「あははは、レレちゃんもその悩みにぶち当たったんだね~それ分かるよ~。

 私達神族は基本劣等種族相手に話したり、前に立たれるだけでも、苛立ちや嫌悪感が生まれるものね~。

 私はシアキの仲間以外に~、ちゃ~んと苛立ちも嫌悪感をも~あるから~心配はしなくて良いと思うよ~。


 まぁ~私の場合はシアキとの約束もあるから~仲間達を躊躇なく屠れるけどね~。

私もラフェルちゃんだけは、少し躊躇して葛藤が生まれるな~。

 でも、シアキとの約束もあるし~「やれ」っと言われたらやるけどね~」


 姉も同じ事で悩み、且、仲間以外には嫌悪はしていると聞き安心する。

安心するとあの高次元生命体の襲来の時、姉は躊躇する事なくシアキを屠った事が気になる。 あの行為で姉はこの者達と遊びの一環として共に行動しているのだと理解した。

 だがそれと同時に神族では求愛に等しい言葉を口にしていたにも関わらず屠ったのが少し引っ掛かり気になっていたので、この際に疑問を少し解消する為、聞いてみたくなる。


「お姉様一つお聞きしたいのですが、お義兄様を躊躇なく屠って見せられましたが、お姉様はお義兄様の事を、その・・ほれ・・」


 本当は、これ以上聞いてはいけない、本当にあの者に「惚れて」いるのかと聞いて良いのか迷う。


「レレちゃん、私がシアキ達に興味ない遊びの一環で行動してるって思ってる~?。

 アレの時(襲来時)、私がシアキを躊躇なく屠ったのはね~このシアキと冒険する上で、ある決め事をしてたから出来た事なの~私だってあの時、惚れた子を手に掛けたくなかったんだよ~。


 シアキ以外の子達が仮に命を落としても~平気で状況を分析して~事後対処する自信はあるけどね。

 正直シアキが負傷したり、絶命するのは、理性を保つ自信は、蚤の毛も無い位に我慢来ない事なの~。


 それ位私はシアキと言う人物に惚れてるの~分かるよねこの意味?。

神族であるレレちゃんなら分かるよね~」


 神族全般喜怒哀楽と言う感情を同族に対してもあまり興味を示さない。

 一切「愛する」とかの表現文言は使用しない、そもそも生殖行為を必要としない種族に愛等と言う概念が理解出来ないのだ。

 自分達より劣等種に対して恩恵を与える際、言葉受けが良いので、表現上「皆を愛しています」等と言葉を使う事もあるが全くその感情を理解していないのだ。


 そして神族はその代わりに「惚れる」と言う表現も良く使用する。

 これは神族にとっての「愛する」に匹敵する文言だ。 例えば相手の力に惚れる、これは相手の力にしか興味が無いという表現で捉えられる。

 神族間でも結婚と言う概念はある。 だがそれは相手の力に惚れこんでより強者を生み出すと言う目的でしか捉えられていない。


 結婚している神族夫婦にアナタは相手に惚れてますかと言えばきっと十人中十人共に相手の「力に惚れている」と返答してくるだろう。

 神族が「惚れた」と言う三文字をその人物に対して使用する事は、「その人物全てを愛している」と言っているのと同じなのだ。


「お姉様がお義兄様と何かしらの約束事をされて、あの行動をされたと知れて、少し安心しましたわ。


 (わたくし)も、お義兄様、いえ、「マムラ・シアキ」と言う人族に惚れておりますが、一つ不安を感じますの。

 肝心のお義兄様はその事に気づいていない、いえ、周りの者達の事を何とも思っておられない素振りをしている様な気がするのですわ。

 お姉様はそれに関して不安はありませんの?。


 この王族紋章もそうですわ。皆に与えてその意味を分かっておられこの様な事をしているのではないかと(わたくし)は思うのですが・・・お風呂の際も仰っていましたが本当にそうなのか少し不安がありますわ!」


「あはは、そうだよ~ね~うん、うん、そう言う感情が欠如してるんだよね~シアキは~。女心とか全く理解出来ない鈍感王だからね~。

 さっきのお風呂の時も言ったけど~この紋章を皆に与えたのは、ただ仲間達は等しく城内を出入り出来るようにしたいって考えてやった行動だよ~それ以外は多分今は考えてないと思うよ~、ふふ、そこがシアキらしいな~って思える位に~レレちゃんも成らないとだよ~」


「でしたら、それ内容をきっちり意味合い迄お義兄様に知らせるべきではありませんか?」


「あ~駄目駄目そこ教えても無駄だよ~私達が「愛する」ってのが理解出来ないのと一緒で~シアキはその辺が元々理解出来ないからね~「ふ~ん、そっか分かった、今後それは気を付けないとだな、教えてくれてありがとなレレ」って言われてて二度とその行為をしなくなるからね~シアキの場合、そんなのつまらなくなるから駄目よ~教えちゃ~」


「何でしょう、お義兄様も(わたくし)達と似た一面があるのですわね」


「ふふ、これからレレちゃんも分かればいいじゃないかな~さぁ~戻ろっかこれ以上は聞かせられないしね~ふふふ」


 そしてこの両者の話声を聞き寝ていたエラルが目を覚ましており周囲の匂いと聞こえてくる話し声で人物を特定していた。 もう修行を終えたエラルは獣人でも達成しえない範囲までの物音等を聞き取れる迄になっている。 仲間の神族二名の話している内容はシアキに関する女子トークであったので、緊急事態ではないと分かり再度全員が目覚めるまでの間、二度寝をする事にする。 しばらくするとルルとレレの両名が話を終えて転移して元居た布団の上に戻って横になったのを確認する為薄目を開けるとルルと目線が合いウィンクされ右手人差し指を口元に当て内緒ねっと言いたげな表情をして見せた後、瞼を閉じ眠りについたのでエラルも合わせて二度寝するのだった。

 それから数時間後、早朝朝日が顔を出すか出さないかという時間にリムが目を覚ます。

 上体を起こし室内を見渡し、自分が寝ていた箇所が汚れていないかまず確認しホッとする、もうコレはリムの日課になりつつある行動だ。

 ゆっくり掛け布団を綺麗に畳み、音を一切立てず扉の開閉時の音も出さないように細心の注意を払い、見事な抜き足で室内を出てリビングに向かう。


 その行動を見て睡眠など不要な神族二名と既に起床時間が近くなり起きていた獣人のエラルは、アノ行動は恐るべき能力だと思うのだった。 次にエラルは聞き耳を立て起きるタイミングを計る。 リビングでリムがシャボちゃんと挨拶を交わし、楽しそうに会話をするのを聞きアワアワしだしたのを見計らい起床し、少しゴソゴソと物音をたてながら部屋を後にする。


 その物音をキッカケに、ラフェルがモソリと状態を起こし半寝状態でしばらくそのまま座った状態で過ごす。

 朝決められた時間になるとサジュラが目を覚ますので、座って二度寝してるラフェルを揺すり起こし、その行為でようやくラフェルは目を覚まし、ルルを揺さぶり起こす。

 全員を一通り起こして回り、先にリビングに居るリムと合流し料理調理班は台所に各々集合し朝食の準備をする。


 そして、女性陣の中で一番朝が弱いフェンラを、ルルが引きずり起こすのが今までの流れなのだが、コレはレレの役目になったようだ。

 このパーティー内の女性陣達の朝の流れは今は大体こんな感じでゆるく進んでいく。


 また、別部屋で一人寂しく男一人で寝ているシアキは、空腹を感じ、朝食が出来上がり美味しそうな匂いが室内に漂ってこないと目を覚まさない。 いや、それでも起きず昼過ぎまで寝ている事もある。 だが今日は朝食準備中にシアキは部屋から姿を消した。


 もう仲間達はあの高次元生命体が襲来して以降、気配感知を行える者は、シアキの気配を事有る事に常に感知し続けている。

 そして感知していた者達は、また勝手に行動したと知り、ルルとレレの方を無言で見つめ、どうなってるのかを聞かせろと言う感じで見つめるのだった。


「大丈夫だよ~今拠点上空に居るから~。

 また朝日でも見ながら、今後何しようかな~とか考えてるんだよ~」


「お姉様、お義兄様のあの単独で行動されるを止めさせるべきですわ。

 また、あの高次元生命体なる不届き者達に狙い撃ちで襲われる危険性がありますわよ」


「そうなのじゃ、レレ殿の言う通りじゃ。 シアキ殿には今後護衛を付けるべきじゃと思うのじゃ」


 両者に言い寄られ、ルルは困った顔を見せる。


「レレちゃん、フェンラちゃん、シアキさんはアレで何か考えていますし邪魔をすると痛い目みますよ」


「そうそう、シアキは考え事する際、必ず一人で何か考えるからね~。

 アレを一度、ラフェルちゃんは邪魔をして痛い目に合ったものね~あの時のラフェルちゃん面白かったな~。 ぷふぁふふふ思い出したら笑えてきたよ~」


 思い出し笑いをしているルルに対し、少し頬を膨らませて抗議する。


「もうあの事は忘れて下さい。 アレは恥ずかしくて誰にも知られたくない事なんですから、絶対他言しないで下さいね。

 もし話したら~・・・その時からルルちゃんの食事だけ三食「美味しいサラダ」「シャキシャキサラダ」「普通のサラダ」って野菜主体にしますからね!」


 目を見開き激しくそれだけはイヤイヤと言うように首を横に振り、ラフェルの足元に(すが)り付き潤んだ眼で訴える。


「イヤ!、お肉が無い生活は絶対イヤ!。 ソレもう料理じゃないよ~葉っぱの盛り合わせだよ~葉っぱ洗って盛っただよ~。 私ラフェルちゃんの美味しい料理食べれない食生活は嫌だよ~お肉、お肉が食べたいよ~絶対喋らないから~ね、ね。


 ほら、もう内容忘れた~、うん、うん、もうすっかり何の事か綺麗サッパリ忘れたよ~だから~食事はお肉も付けて~」


 そのルルの全力の嫌だアピールを見て、完全にラフェルに胃袋を握られ、餌付けされているのだと、全員思うのだった。

 そんなやり取りをしているなか、お風呂に繋がる渡り廊下部分の扉が開く。


 その扉から主人(シアキ)がリビングに入って来たのを確認すると、すぐさまリムは食事の配膳を開始する為、台所に入っていった。

 それに合わせてビデア、サジュラも加わり三名で全員分の朝食が各席の前に配膳されて行く。


 全員の視線を集めながら、さも何もなかったかのように、片手を上げて、元気よく朝の挨拶をしてくる。

 そして、ラフェルの足元に縋り付いて潤んだ目をした、ルルと目線が合う。 お互いニターっと笑う。


「オハヨ~いや~朝日見てると一日始まった~って思えるな。

 ・・・所でルル、何してるんだ?」


 先程の悪戯っ子がする微笑みを見たラフェルは今までの経験上この二人は悪戯を仕掛けてくると分かったので、慌ててルルの口を手で抑え会話を成立させないようにする。


「ふぁふぉふぉふふふぉ・・・」


「ちょっとルルちゃんが、悪戯しそうになったから注意してただけです。

 何でもないですよ!本当に何でもないですからこれ以上追求しないで下さい」


 目を見開き、真剣に訴えてきているので、これ以上の追及をしたら機嫌を損ねると嫌なので次の話題を振る事にする。


「・・そっか、リム~リルムは起きてるか~」


 声を掛けられ台所から朝食を乗せたお盆を持ち、ピョコっと顔を出す。


「ご主人様、まだ神様は、お眠りになられてます」


「そっか~まだか~アイツも相当力使ったぽいし、仕方ないか・・・。

 今日は楽しみだな~完成したお城と街並どんなかな~」


 楽しみが体から滲み出ている。 もう眼が爛々に輝いている。 いやもうワクワクが止まらないのだろうと全員思いながら配膳しない者達は各々各自定位置の席に着き、ラフェルは配膳に加わり朝食を次々と長机に並べられていく。


 今日のメニューは「お肉と野菜がたっぷり入ったスープ、ラフェル特性自家製パン、すこし燻製した肉のスライス、彩り豊かなサラダの盛り合わせ、いつもの果実水、茹でた卵」っとこの世界で朝食として食すには豪華な食事が眼前に並べられている。


 もうルルは、配膳された朝食前にして、嬉しそうにお肉を眺めている。


 全員席に着き「いただきます」の合図と共に食事が開始する。


 やはりシアキが居るのと居ないのとでは食事の楽しさとが違うのだと今日も痛感する。

 朝食の量からして、無言であれば数十分で食べ切ってしまうだろうが、雑談等をしながら食事をしているので約小一時間掛かった。


 食べ終わった全員分の食器類全てを台所に素早くこの冒険者パーティーの料理調理班が運込んでいき片付けられる。


 全員再度席に着き今日の行動を確認をする。


「え~皆、今日は俺の国がようやく完成したから全員で見に行くぞ。

 城の各種仕掛け等をダンさんが説明してくれるから、それも覚える事。


 それが終わったら、主だってする事なければ自由行動だ!、城内探索でも街を探索するなど色々していいぞ、それと今日の夕飯前迄に全員の強さ等を確認させてもらうな。

 修行はルルとレレに今後任せる。 俺がやるより早いし的確に出来そうだからな。

 俺は、今日ちょっとオオサ帝国に行って、無機物と融合させる魔法の複製品を作って来ようと思ってる。

 着いて来たい奴が居たら着いて来ていいぞ」


「シアキお兄さん」


「ん?どうしたエラル?」


「私は何時アイ様と共生するんですか?忘れてませんよね?」


「あ~それか~今日やろうと思ってる。 一応国に戻って獣人達と昆虫人達全員の前でやるつもりだ。 恐らく反発が予想され、各所から侮辱行為だって声が上がると思うが全員それに対して威嚇も牽制も何も行動に移さない事。

 発言と行動をしていいのはエラルのみとする、良いな皆!」


 全員無言で同意を示すように頷いて見せる。


「よし、俺は少し着替えてくるから、皆も着替えて準備して、リビングに集まってくれ」


 部屋に戻りシアキは着替えを済ませ、念話をダンに繋ぐ。


『ダンさん、おはよう、今から国に行くけど、良いのかな~もうそっちに行っても?』


『ん、小僧か!良いぞ・・いや待て!儂が小僧達を連れて行ってやる。

 目を瞑ったまま移動してもらった方が、それだけ感動が大きいだろうし、儂に感謝の念が生まれるだろう』


『ははは、そっかじゃ~リビングに来てくれ、因みにラフェルはまだ怒ってるからあまり下手な事を言わないでくれよ。 宥めるの大変だからな』


『そ、そうだな!あの魔族の娘(ラフェル)のあの冷たい目線を浴びる事になるのだったな。

 ・・・儂が何故劣等種である魔族にこうまで(ほだ)されねばならぬのだ、あ~少し気が重いぞ。小僧、儂を弁護してくれ、いいな!』


『なるべく善処しますよ。なるべく(やま)しい気持ちを捨てる事をおすすめしますよ。

 俺もソレでアノ視線を乗り切りましたから!』


『あぁ~少し精神集中してから行くので待ってろ』


『では、これで念話終了します-念話終了-』


 最近念話ばかり使用しているので、通信網は念話が良い気もするが。

 折角話しながら電話のような魔法を作ったのにアレを捨てるのは勿体ない。 それに念話を広めた際、かなり自分が不利に陥る可能性もあるので、やはり音声有の通信手段を広めようと思いながら部屋を後にする。


 リビングには全員着替え終わり集まっている。

 しばらくすると、ダンが、今度はシアキの後ろに転移で現れた。


 現れると同時にレレは動き手刀をダンの首元に向け睨みつける。


「本当に不愉快ですわね、お父様。お義兄様の後ろを取り何をするつもりですのかしら?」


 少しでも動けば喉元を切り裂かれるか首を切り落とされると身の危険を感じすぐさま飛び退き防御態勢をとる。


「レレ、大丈夫だ。ダンさんには国まで俺達を連れて行ってもらう為に呼んだんだ。

 後ろを取ったのは、また机の上に乗る危険性を考慮しての事だから安心しろ。


 さぁ~全員集まって手を繋げ」


 全員手を繋ぎ輪になるのを確認しシアキはダンに目線を合わせる。

 その中に居るモンスターのシャボちゃんに目線を向けダンは目を見開き驚く。

 本来モンスターに、どんな紋章等を与えるという事はしないのが常識とされている。


 仮に最低強度でも与えてしまえば、そのモンスターが他国の者に怪我をさせれば、訴訟問題になるだろう。

 ましてや理性の欠片も持ち合わせないモンスターが、いつ自国の民を襲うか等を考えると正気の沙汰とは思われない。

 しかもその身には王族紋章である紋章が刻み込まれていた!。


「こんな短期間の内に何とモンスターに迄とは・・・小僧正気か!。お前は解ってて全員に王族紋章を与えたのか?」


 この世界の普通の婚姻の方法を知らないが国持ちである者が、他者に王族紋章を与えるのは婚姻または親戚にしたとでも思われることを学習しているので、きっと全員と婚姻をし、しかもモンスターとも結婚したと思い込んでいるのだろうと推測する。


「ん?そんなの当り前だ、モンスターだろうと、此処に居る全員俺の大切な仲間なんだぞ。

 その仲間達が、城内に入れないとか絶対有り得ないだろう?」


 その発言を聞きルルとレレが笑い出す。


「あはは、やっぱりシアキらしい発言だわ~」


「ふふ、お姉様が昨日お風呂で仰った通りですわ。 全くお義兄様はそう言う考えでコレを全員に与えられたのですのね」


 両者に笑われ何か可笑しな事を言ったかと自分の発言を思い返すが何処も可笑しな言葉は無いので首を傾げる。

 その姿を見たダンはもう考えるだけ無駄であると悟る。


「もう良い、小僧に儂等の常識を求めて考えるのは馬鹿らしい!。ほれ!目を瞑れ、儂が良いと言うまで開けるでないぞ」


「ん?そっか!そうしてくれるとありがたい。よし!全員目を瞑れ~」


 その号令で全員目を瞑る。ダンはそれを確認し全員を連れ転移する。

 視覚情報が無くても分かる程に、肌に当たる空気の冷たさ、森の木々が風になびく音、室内では無い土の香り等の情報が身に飛び込んでくる。


「まだ眼を開けるな、儂が方向を変えてやるからそれまでは目を瞑っておれ」


 数秒後全員城のある方へ向きを変え終る。


「よし!目を開けていいぞ」


 全員目を開ける。

 「レレ」「フェンラ」「サジュラ」「ビデア」「アイ」は、既に模擬戦闘でこの城まで一度来て、城や街並を見ているので左程感動は無い。

 「シアキ」「ルル」「ラフェル」「エラル」「リム」は、眼前の城を見て感動している様だ。

 「シャボちゃん」は地面が土では無く石畳で綺麗に舗装されているので、城を見るよりも地団太を踏んで気持ち悪さを必死に耐えている。


「シアキもう駄目シャボちゃん限界、気持ち悪い」


 気持ち悪さが頂点に来たのだろうシアキに抱きつき足を地面から離し気持ち悪さを訴える。


「ん!どうしたシャボちゃん、あ~そっか、待ってろ」


 魔素操りで森にある土を厚み十センチ、縦横五十センチの土のブロック状にし浮かせ手元に引き寄せる。 その上にシャボちゃんを優しく抱えて乗せてあげる。 地面から数センチ宙に浮かせた状態にしシアキが動けばそれに合わせて動くように魔素で固定する。


「シアキ、シャボちゃんはこの場所駄目!、土が少ない、あまり居たくない」


 少し屈んで目線を合わせ、頭をよしよしと撫でてあげながら諭す。


「大丈夫だ、城内にも土の道を後で作ってやる。

 それに後でこの道の舗装も一部剥ぎ取って、シャボちゃんが自由に通れるようにしてやるから、今日はその上に乗って俺達と一緒に回ろうな」


 全身の棘がフニャフニャになっている。

 この姿にするのは、シアキにしか出来ない、誰がどんなに褒めて頭を撫でても、その部分だけしか棘はフニャフニャにしてくれるだけだ。

 仲間全員いつかシアキのように全身フニャフニャしてやりたいと密かに思うのであった。


「分かった、シアキと一緒に回るぞ」


「良い子だ!。 ダンさん!これは凄いな、この城それにこの綺麗に舗装された道も流石だ」


 眼前に広がる景色はこうだ、城を取囲むように堀があり綺麗な水が絶え間なく循環しているのだろうか少し堀内をゆっくり水が流れている。

 城に続く橋が東西南北一箇所づつ架けられている。

 全てゴシック様式で統一され欄干橋脚一本に至るまで細工な彫り込みがなされている。


 そしてこの橋がまた凄い。 等間隔に橋灯(きょうとう)や、橋脚灯(きょうきゃくとう)が設置されている。

 朝なので明かりは左程確認出来ないが、その一つ一つ国の紋章の魔法陣が薄っすらと浮かび上がって輝いている。

 夜になると恐らく堀の水に反射し幻想的な風景になるだろうと予想出来る。


 城もゴシック様式で左右対称と実に美しいシンメトリーを醸し出している。

 東西南北どの方角から見ても、一つとして城は同じ顔は見せることはないが、必ず違う表情で左右対称に見えるように工夫されている。


 街並は全て城を囲うようにゴシック様式で統一し建てられている。


「儂の傑作品だ。凄いだろう。

 この橋に施した橋灯(きょうとう)や、橋脚灯(きょうきゃくとう)には贅沢にも結界を更に強化をする紋章術を施し、夜の光源としても利用しているんだぞ。

 そして夜になるとその水に光が反射し幻想的に城を浮かび上がらせる、どの方角の街から城を見ても同じ表情が無いように考えて造ったのだ。

 さぁ~城内に入るぞ。城内は儂も凄い凝ったから見て驚け」


 嬉しそうに自慢げに先導している。それに着いて行き彼方此方観て回る。

 城に入ると柱が規則正しく立ち並びその一つ一つある一定の高さに橋に設置されていた橋灯(きょうとう)と同じく紋章が浮かび上がるモノが設置されている。

 淡い光で優しく空間を照らし出している。


「小僧この城にある灯りは全て橋灯(きょうとう)に使用しているモノと同じだ。

 因みに街全体家屋全ての灯りはこれを利用しているぞ。

 あと城内の王の間には各所の灯りを一度に調整出来る魔法陣を設置してある。 目盛りを調整すれば「点灯」「消灯」「微調整」が可能だ。


 それと各通路にも、そこだけ専用の調整用の魔法陣が設置してあるぞ」


 通路の端まで来ると柱に手のひらサイズの魔法陣がある。 その魔法陣は時計回りに「消灯」「点灯微調整幅」となっている様だ。

 試しに全開まで目盛りを回す。 目を開けれない程の強烈な光が通路に生み出される。 慌てて元に戻す。


「目がイテ~結構眩しいな全開は!」


 夜目が利く者達と強い光に対して弱い者達は目をシバシバさせている。


「シアキお兄さんやめて下さい。目が痛いです」


「そうじゃぞ!急にされると我ら夜目の利く者にとっては目眩ましになるのじゃ。

 その行為は今後止めてくれなのじゃ・・目がまだチカチカしてるのじゃ」


「マムラさん、私はこう言う光に弱いみたいです。あ~目がチカチカします」


「・・・」


 もう一人、いや、目玉そのものであるアイは、悲鳴にならない声を上げ、地面に転がり目を閉じて悶え苦しんでいる。


「すまん、アイ、大丈夫か?」


「シアキ様・・・流石にこれは無しでお願いします。 私には強烈過ぎます・・・」


 それを見てレレは、何も言わず無意識にアイに手をかざし治癒を施す。


「・・・はぁ~目玉(アイ)。 これで治ったはずですわよね。

 しかしその位の事で、その様なハシタナイ行動をするとは呆れますわね」


 その光景をルルとシアキは見てお互い目線を合わせ驚き合う。


「レレ!お前今、自然に何も考えず、アイを治療したよな?」


 ん?っと小首を傾げ自分の行動を見返し分析し目を見開き驚いた表情をして見せる。


「あ!・・・何ででしょう?全く無意識下で治しておりましたわ」


「いやいや、それでいいんだ。うん、うん、レレは俺の仲間にも慣れて来たって証しだな。

 さぁ~どんどん案内してくれ、ダンさん」


 通路を抜け中庭と思しき個所に出る。そこでシアキは固まる。

 そこは綺麗に石畳で舗装され、周りに草花があり、森から一本木が持ち込まれ設置されている。

 そして中央に噴水が設置されている。 ココまではよくある中庭だと理解出来る。


 だが!その噴水の中央に、シアキが半裸で腰に布だけを股間部分を隠すように巻いた状態で、水瓶を横にして右肩に担いで持つ石像が設置されているのだ。

 その水瓶の口から水がコンコンと流れ落ちている。


 全員その惚れた男の半裸石像を見て心の中で「ダン、よくやった、でかした、グッジョブ」とそれぞれ叫び。

 その石像は今すぐにでも壊される可能性があるので、食い入るように見て、脳内保存、脳内保存と心で叫び噴水の周りを舐め回すように観察する。


「ダンさんこれは流石に無いだろう、恥ずかしすぎるから撤去してくれ」


「駄目だ、これが有るのと無いのとでは、城の締まりが違うのだぞ。

 これは丁度中庭にあたる箇所に設置しているので、来城者がどの階からも中庭に眼をやると目にする事が出来るようになっている。

 そして来城者は皆揃ってこう思うだろう。 この国は凄く裕福で、しかも王への忠誠、忠義、威厳全てが保たれている国だと!。


 小僧はこの世界に慣れておらんから、そう恥ずかしいと思うのだ。


 見ろ!小僧、あの真剣な眼差しで見ている、小僧の仲間達を!、あれが他国の者達が見る時と同じ行動だ。 疑うなら小僧の仲間達に聞いてみるが良い、それが有るのと無いのとでは、この国の捉え方印象が何処まで違うかを!」


 確実に揶揄われているようにしか思えないので確認を取る。


「皆、どうだ、ソレは、あった方がこの国の為になると思うか?」


 騒然自分達にとってある方が良い他人がどう思おうと有るべきだと全女性陣達はそう思っているので、その問い掛けにハモるようにこう言う。


「「あった方が良い」よ~」です」のじゃ」ですわ」と思います」です」です」です」と思います」」


 全員の答えは何か違う気がすると思い最後に横に居るシャボちゃんに聞いてみる。


「シャボちゃん、アレは必要無いと俺は思うんだが、どうかな?意見聞かせてくれないか?」


 全員の目線が注がれる。絶対必要だと答えてっと言う強い視線を向ける。


「必要だぞ。アレは!シアキじゃないが、シアキの顔そっくりだからあるとシャボちゃん嬉しい。

 ココでお留守番する時アレ見て過ごしてたら寂しくない。

 アレと同じ物をもう一つ向うの拠点にも欲しいぞ」


 その発言ナイスっと全員心の中で叫び。その案にルルが乗っかる。


「うん、うん、そうだね~シャボちゃんは、お留守番時私達と離れちゃうから寂しいよね。

 よ~し、今日拠点に帰ったら私が同じ物を作ってあげるね~」


 鼻息荒く製作する気満々だ。何故か他の女性陣達も団結している。


「そうですよね。シャボちゃんはシアキさんの初めての仲間ですし、そのシャボちゃんが悲しい思いするのはダメですよ。

 ルルちゃん、ソレはコレより、もっとシアキさんに似せて作るべきですよ、ね!フェンラちゃんもそう思うでしょ」


「そ、そうじゃな、これは良い出来じゃが、まだシアキ殿の威厳と言う物が滲み出ておらんしな。

 作るなら似せてココのモノと入れ替えるべきじゃな。ここにあるモノは壊さず拠点の洞窟風呂の方に設置して湯を流すのに使うのが良いと我は思うのじゃ。

 どうじゃろう、レレ殿もこのままのモノでは駄目じゃと思うじゃろ?」


(わたくし)は、トカゲっ娘(フェンラ)が言う事が正しいと思いますわ。

 ココのお義兄様の石像は出来がイマイチだと思いますの、こう、もう少し大胆にそして細部に至るまでお義兄様である事を忠実に再現出来ていませんわ。

 それにコレは、お父様の作品でしょ!、(わたくし)はそう思うだけで寒気を感じますわ。

 ココに飾るなら絶対、お姉様の作品が宜しいと、(わたくし)は思いますわ」


 考えてた以上にこの世界の美的感覚と常識が自分には無いのだと言う事を知りシアキこれ以上聞いていると恥ずかしさのあまり転移して何処かで叫びたくなる思いが生まれて来たので、手を叩き全員の注目を集める。


「分かった、分かった、この件に関してはルルと皆に任せる。 俺はこの辺の美的感覚がこの世界と少しズレてるみたいだから任せるわ。

 何だろう、どっと精神力が削られる思いだな・・さ~ダンさん気を取り直して次に行こうぜ」


 中庭を後にし階段に到着する。 もう至る各所にこだわりが詰め込まれている。 橋もそうだったが階段一つにとっても凄い造りだ。

 一段一段、そして手摺に至るまで細かい細工が施されている。 二階に上がる。 この階は中央に舞踏会用の広い空間が設けられ、客室から来賓用の接客室が何部屋もある。

 一つ一つ見ていくとキリが無さそうだが、一番目立つのは扉だ。 どれも天井ギリギリ迄の観音扉で細かな細工が施されて中央に紋章の魔法陣が浮かび上がっている。


「小僧その小さな部屋に仲間達だけを入れ扉を閉めてみろ」


 言われるまま部屋に仲間達を入れ扉を閉める。 すると扉の魔法陣が輝き出す。

 そして中から悲鳴と歓声が聞こえる。


「大丈夫じゃ、今不思議な体験をしておるのじゃ、もう大人しくなったな開けてみろ」


 扉を開けると中に居るはずの仲間達の姿を確認出来なかった。


「・・ダンさん?何をした?」


「今城は誰かに襲われた状態である設定にしてあるのだ、儂等も行くぞ」


 躊躇する事なく部屋に入り手招きをしているので、魔聖素で体を覆い警戒しつつ部屋に入ると扉が閉まる。

 扉が閉まった瞬間、部屋全体が揺らぎダンの姿が消えた。


 これは転移装置か何かのだろうと思い魔聖素の膜を解除すると部屋全体が揺らぎ視界が変わる。

 四方八方何もない壁に囲まれた広い空間に出た。仲間全員その何もない広い空間に集まっていた。


「どうだ、コレは身に小僧が王族紋章与えた者しか入れない隠し部屋だ、ココは四方何処にも出口のない部屋だ。

 出る為には、専用の魔法陣を起動しないと出れないようになっている。

 ココは各種術では探知出来ないようにしてあるので、もし戦闘になってもこの場所は見つける事は出来なくなているぞ、凄いだろう」


 確かに凄い、食料を備蓄しておけば、俺達が駆けつけるまでの間、城に残した仲間は避難して安全を確保できる。

 だが、王族だけの避難場所となると城で働く者は助けられないという事になるので、必然的に城で働く者は王族紋章を与えるということになるのだろうかと悩む。


 それは流石にやりたくない。大きな括りでは仲間や家族と扱いたいが、冒険者パーティーの仲間や一部の行動を共にする者以外には王族紋章は与えたくないのが本音だ。 不用意にそんな者達を増やせば、不敬な考えを持つ者が、私欲の為に暗躍し馬鹿をしでかすに決まっている。


 この部屋は恐らく今日この日使用しただけで、今後は使用せず忘れられた部屋になるだろうとシアキは考える。


「シアキ、止めてよ。城で働く者全員王族とかにしようって思ってるでしょ~」


「あ~それ無しですよ、シアキさん、それなら誰でも有事は飛ばせる様にすれば良いだけですよ」


「そっかそれは出来るんだな良かった~。

 う~んじゃ~ココはあれだ!宝物庫として使おう王族限定なら丁度良い」


「宝物庫は宝物庫で用意している。全面鉄格子で囲ったものを用意してあるぞ」


「じゃ~ソコは捕虜を一時的に入れておく個所にでも使えば良い、さぁ~次行こう次!」


 少しダンが不服そうな表情をみせるがお構いなしだ。

 実際想像していたのよりは仕掛けが地味で飽きてきているのだ。

 魔法陣が軌道し全員元居た小さな部屋に戻っていた。


 次に三階は少し広めの謁見室がある以外、二階と同じで造りで、書庫や各個別の部屋が並ぶだけで何も見る物が無かった。

 最上階四階部分は「王の間」と呼ばれる個所と王族が住むに相応しい広い部屋が数ヶ所ある程度で見る個所は王の間しかない。


 王の間と呼ばれる部屋の造りはこの城内で最も豪華な造りだ。


 足が沈むのがはっきり分かる程の、フカフカな絨毯が敷き詰められ、扉から王座がある箇所までの動線は色分けされ絨毯の質が少し替えられている。

 最奥には十段程上げられ、王が座るに相応しい天井に届くのではないかと言う背凭れがある椅子が設置されている。

 その後ろには、ステンドグラスが嵌め込まれており何とも幻想的だ。 部屋の至る所に、国の紋章魔法陣が浮かび上がっている。

 天井には豪華なシャンデリアが数個、ぶら下がっている。


 それらを見てもシアキは何ら新鮮味を感じない、フジイデ王国で見た物よりは規模が大きく派手で装飾品一つ一つが一々凝っていると言うだけである。

 左程この様な部屋を見ても感動を覚えなくなっている。 だがルルとレレ以外の仲間達は違うようだ。 目を輝かせている。


「ダンさんもう部屋は大体造りが同じだから説明はいいや、正直飽きた。

 それより仕掛けを早く見せてくれないか?侵入者用の間抜けな罠とか、本を引くと抜け道が現れたりとかそう言うのを造ったんだろ?」


「はぁ~小僧!この豪華な部屋を見て、もう飽きたとか言うな、普通はもっと・・。


 はぁ~そうだな、罠は落とし穴に落ちたら直結で堀の水の中に落ちる仕組みになった物や、色々相手を小馬鹿にしたようなモノを用意したぞ。

 あと男心を擽る抜け道を数多く用意したぞ、もう一つコレが傑作品と言う物を造ってやったぞ。


 それはだな、何と主砲を機械仕掛けで城の天辺に備え付けたんだ!。

 これがまた屋根部分が変形して動いてだな、会心の良い出来に仕上がったんだ。

 もう、こう屋根がガコベキってなってズドドドドって主砲が納められているモノが上がって来てだな、最後パカって割れて中から主砲がガシャーンって飛び出るんだ」


 良い歳したゴリゴリの男が、身振り手振りを交えながら、少年のように目を輝かせ悪戯作戦の計画立案を話している時の様な感じで話している。

 女性陣達は、何故そんな幼稚で馬鹿げた事に全力で事をなしているんだっと思い少し軽蔑する感じで冷ややかな目線を送る。


「お~何それ早く見たい、見たい、変形とか凄いじゃん、それ男心擽りまくりじゃん。

 お~変形スゲ~楽しみだ」


 そのシアキの行動は、一瞬眼前の良い歳したゴリゴリの男と、自分達が少なからず惚れている男が同じ分類の馬鹿であるかのように見えた。

 だが、シアキが今まで見せた事の無い嬉しそうな表情をして喜んでいる。

 その表情が見れるなら、これはこれで悪くはないと、全員心の中で「ダン、アナタは、とても良い仕事をしたのかもしれない」っと少し褒めるのだった。


 それから彼方此方罠の確認をし、主砲の起動確認をする。

 興味の無かった女性陣も主砲の仕掛けを見て少しだけ興奮を覚えた。


 正にあの擬音そのままだ、主砲が納められている個所の屋根が綺麗に折り畳まれて収納され、次に箱状のモノがせり上がり、それが割れて主砲が現れて砲が飛び出し伸びたのだ。

 しかもそれが各屋根に仕込まれている。

 それを見たシアキはもう目を輝かせ撃ちたい撃ってみたいと言っていたが、主砲一つ放つだけで「周囲の地形が変わるから、止めておけ」と諭されたので撃つ事を諦めた。 その時の残念そうな表情を見た女性陣達は少し撃たせてあげればいいじゃないっと思い、ダンに対し苛立ちを覚えた。


「ダンさん凄い良かったよ。 罠もそうだし抜け道も俺の想像を遥かに超えたものだったよ。 あと何よりも凄かったのは、アノ最後の主砲は予想外だったよ。


 俺、ダンさんのセンスに惚れたよ。あとは国運営だけだな。


 計画に必要な人材も集めないとだな。

 よし、チャチャっと今日やる事やるか!、誰かオオサ帝国迄、着いてくる者は居るかか?今日は転移じゃなくて関所を一回通ってみようと思うから走るぞ」


 全員我先に行きたいと言う表情をし、その表情をルルが確認すると真っ先に今日の予定を話す。


「シアキ~ゴメンね~私は少しラフェルちゃんとエラルちゃんの修行をしたいの~今日は着いてけないかな~」


 修行があると言われ両者はルルの方を見て抗議の目線を送る。


「お義兄様、(わたくし)が受け持った者達も、あと少し修行をさせないといけませんので、今日は着いてはいけませんわ」


 追随するようにレレも修行をさせると言いレレ組の者はレレに抗議の目線を送る。


「そっかじゃ~修行の無いのは誰だ?」


 修行が無い二名が手を上げる。


「シャボちゃんとリムか!よし二人一緒に行くか?」


「シャボちゃんお留守番でいいぞ、シャボちゃんは死んだら蘇生出来ないってレレに言われた。 お出かけして戦闘になったら困る、だからお留守番してるぞ」


「そっか、蘇生出来ないのか!そうだなそんな事になったら大変だから、お留守番しててくれ。 じゃ~リム一緒に来るか?」


「はい、私はご主人様の鉄壁の盾です、何所でもお供します」


「じゃ~皆まずは全員で街の広場に行くぞ~昆虫人族達の返答を聞くのと、エラルの種族変更を獣人達に説明しないとだからな。

 獣人達怒るだろうな~種族冒涜だしなこれ・・・皆も罵声が飛んでも絶対何もしない事良いな」


「シアキお兄さん、きっと大丈夫でよ」


 何処からそんな強気な発言が出てくるのかとエラルに問いたい。

 今から種族的な寿命の短さを自己の我儘で冒涜する発言をしに行くのだ、自分ならそれは受入られる事では無く、その発言する者を軽蔑したり怒りを覚えるだろう。

 何故かそこまで楽観視出来るのかが分からないが、種族変更する本人が「大丈夫」と言うので、それを信じるしか今の所、自身の心の平穏を保てないのでそれに縋るのみだ。

--- 86話目のみの後書き----------------------------------------

86話目最後まで読んでくださりありがとうございます。

どうでしたか?楽しんで頂けたならうれしいですが。


---余談---

大砲撃ったらどうなるかその威力をいつかは試したいです。

そして間抜けな罠や秘密の抜け道等を使って遊びもしてみたいですね。

浴場等は城内にまだ完備していませんので、抜け道を使って覗きは出来ませんよ。

・・・こらこら何考えているんですか!。


では、次87話目で、お会いしましょう。

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